ドルアーガの冒険   作:まぁしい

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32 それぞれの思い

私はルエリア。ラジャフ村の村長、タムドの一人娘よ。

 

今日はドルアーガの塔での依頼を済ませて帰ったんだけど、途中で旅の人達が山賊に襲われているのを見つけたの。

 

本気で人が殺しあうのを見たのは初めてだったから怖かったわ。ガッツやルウアの前では見栄をはって怖くない振りをしたんだけどね。

 

それでも、私やルウアが人を傷つけるところをガッツは見たくなかったみたい。

 

口では『お前たちは俺の全力を見ていない。悪いが周りでチョロチョロされた方がやりにくいんだ』なんて言ってたけど、本当は違うって分かってるわ。

 

パーティを組んでいると口に出さなくても相手の気持ちが少しずつ分かってくるの。そうじゃないと心から協力して戦うのは難しいのよね。

 

ガッツは戦闘中は基本的に回復職のルウアを守っているけど、私にモンスターの攻撃が集まりそうな時には真っ先にフォローに入ってくれるわ。

 

だからこれまでモンスターから受けたのはかすり傷程度。見かけによらずやさしいのよね、ガッツは。

 

だって山賊たちのことを剣で切らないで、いつもは使わないメイスだけでやっつけちゃうなんて考えられないわ!

 

普通ならあの人たちは殺されても仕方がないぐらいなんだから。モンスターには襲われないと思うけど、街道に放置されて怖い目を見るのはいい気味よね。

 

それに、あの山賊のリーダーみたいな人を村まで連れてきたけど、何かおかしい。あの人、剣技スキルを使っていたのよね?冒険者ってことかしら。

 

ガッツもただの山賊だとは思ってないみたい。衛兵の詰め所へ連れて行ってラクターさんに取り調べてもらうっていってたわ。

 

これでますますガッツが有名になっちゃうわね。父さんの話じゃないけどライバルが増えそう…。

 

それに最近のガッツはバビリムの情報を集めてるみたいだし、ラジャフを出て行くつもりなのかしら。

 

パーティを組んで前よりは身近な存在になったけど、ルウアもいるから牽制しあってあまり積極的な行動には出れていないわ。

 

ルウアなんてあの胸をこれ見よがしにガッツの腕へ押し付けてたから、負けずに首へ抱きついたけど反応が鈍いのよね。

 

こうなったら手段は選べないわ。だってガッツがラジャフから、いえ、私の前からいなくなるなんて考えられないもの。

 

 

 

*****

 

 

 

「アドナーン、悪かったな遅くに食事の用意を頼んで。」

 

「いいんですよ。それにしても山賊だなんて物騒ですね。ガッツさんたちがいなかったらどうなっていたか…」

 

「そうだな。無事では済まなかったろうな」

 

「モンスターがそこら中にいるからそんな連中も最近は見かけなかったんですがねぇ」

 

「そうか。まあ、疲れたんで俺もそろそろ休ませてもらおう。アイリーンにもよろしく言っておいてくれ」

 

「分かりました。おやすみなさいガッツさん」

 

 

 

 

ガッツさんは自分の部屋へと階段を上がっていった。ドルアーガの塔まで依頼を果たしに行った帰りに、山賊退治までやってはさすがに疲れただろう。

 

いつものように食事中に話を聞かせてもらったら五人をガッツさん一人で倒したらしい。何て人なんだ!

 

最近は同じ宿の冒険者や商人などもガッツさんの冒険談を聞きたいらしく、たくさんの人が私に話をせがんでくるほどだ。

 

ガッツさんもバビリムの情報が欲しいらしく、他の人とも話すようになったので少し減ったが皆の関心は高まるばかりのようだ。

 

パーティが無い時には、単身で黒のオベリスクや迷いの森へ行っているらしい。同じ宿の冒険者に聞くと、四・五人のパーティで行かないと命がいくつあっても足りないとのこと。

 

そこへ一人で行ってたくさんのモンスターを狩り、道具屋へアイテムを時折り売っていると聞いたが、その量も一人にしては異常なほどだと雑貨商人のエリカが言っていた。

 

この宿もガッツさんが長くいるおかげで、凄腕の冒険者のいる宿と商人の間で噂されているらしく、ほとんど満室の状態が続いている。ありがたいことだ。

 

一度夕食どきに飲みすぎた冒険者が暴れそうになったことがあったが、ガッツさんがその男の近くで手のひらを横に振ったら、糸の切れた人形のように男が意識を失っていた。

 

体術のひとつらしいが、なんとも凄まじいものだ。そのためか、うちの宿で暴れるお客なんて最近は見かけないもんだ。

 

そのガッツさんだが、彼もバビリムへの情報をよく集めているところを見ると、ここに長くいることはないのだろう。

 

アイリーンもガッツさんに故郷の変わった料理をいくつか教えてもらって研究しているようだ。

 

私も一度食べた肉を細かく刻んで楕円にかたどってから焼く”ハンバーグ”という料理は大好きになった。年寄りや子供にも評判がいいらしい。

 

何にしても残念だが、彼の前途を思えばラジャフに留められる人ではないことは十分わかるつもりだ。

 

今にして思えば、『男同士の話がある』と部屋に呼ばれ、質のいい女性のいる例の店を教えたことさえいい思い出になる。さすがにアイリーンの前では話せない話題だからな。ガッツさんも気を使ったのだろう。

 

「森の妖精」の場所を教えた次の日にガッツさんの機嫌が良かったところを見ると満足してくれたらしい。何度か深夜に宿を抜け出して行っているようだ。

 

最近は私もごぶさたしているが、一度ガッツさんと飲みに出かける振りをして行ってみようかな?もちろん、アイリーンには内緒で。

 

 

 

*****

 

 

 

「ルウア、ご苦労だったね」

 

「本当に助かりました。ありがとう」

 

「いえ。それではエブラ様、サリア様、失礼します」

 

 

 

役目を終えて、私はやっと神殿の私室へ帰ってきた。本当に長い一日だったわ。

 

ドルアーガの塔からの帰りに山賊に襲われた旅の方たちをガッツさんが助けて、その後始末に時間がかかってしまったの。

 

首領らしき人はガッツさんが衛兵さんのところへ連行していったけれど、旅の方たちは衛兵さんと少し話した後で開放されたみたい。

 

その上、サリア様は上流階級の方のようで、エブラ様のこともご存知だったんです。ラジャフにいらっしゃった目的の一つがエブラ様に会うためだったの。

 

私もイシター神殿の巫女の一人ですから、サリア様をエブラ様のもとへご案内しました。何でもエブラ様がバビリムにいらっしゃた時にお知り合いになられたそうです。

 

サリア様はとてもお綺麗な方で、その振る舞いもおしとやかに見えます。もしかしたら、貴族のお嬢様なのかもしれませんね。

 

エブラ様はイシター神殿でも上から2番目となる”大神官”というとても尊い役職にある方ですから、バビリムにいた頃は貴族の方ともお付き合いがあったに違いありません。

 

バビリムといえば、ガッツさんはやはりバビリムへ行ってしまうのでしょうか…。

 

三人のパーティーも連携が取れてきて、戦いは大変だけどみんなでいる時間がとても楽しいんです。亡くなったお父さんとお母さんもこんなふうだったのかしら。いつまでもこんな時間が続けばいいのにと考えてしまいます。

 

私もそれが無理なことは承知しています。お婆さんやエブラ様からもガッツさんがラジャフに長くいる方ではないと言っていました。

 

それでもガッツさんと離れたくないという気持ちが、最近抑えられないんです。

 

もちろん、私はイシターの巫女ですから神殿から離れるわけにはいきません。何かいい方法は無いでしょうか。

 

一度、お婆さんやエブラ様へ相談してみようかしら。いい方法を教えてくれるかも知れません。

 

そう言えば、ガッツさんが『旅人のうち、若い男女の動きに注意しろ。見た目では判断できないから様子を見てくれ』と言っていましたがどういう意味だったのでしょうか?

 

サリア様はエブラ様とお話されていますし、怪我をした男の方は神官長に治療を受けています。そう言えば、アルフェスさんという若い男性の姿が見えなかったようです。どこへ行かれたのでしょうか?

 

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