ドルアーガの冒険   作:まぁしい

33 / 40
読んでいただきありがとうございます。


33 イシターの神託

「そうか。まあ、疲れたんで俺もそろそろ休ませてもらおう。アイリーンにもよろしく言っておいてくれ」

 

「分かりました。おやすみなさいガッツさん」

 

これでやっと部屋でゆっくり休める。忙しかったな今日は。

 

少しエールも飲んだし、お腹も満たされたから熟睡出来そうだ。

 

明日は、もしかするとラクターに呼ばれるかもしれないし、場合によってはお姫様絡みでイベント発生するかもしれんからなぁ。

 

さっさと寝よう。俺はベッドに横になると、のび太君並みの速さで意識を失った。

 

 

 

 

 

気が付くと、俺は自分の部屋ではないところで目覚めていた。

 

そこは、壁や床が真っ白な10mほどの正方形の部屋だった。材質は石ではない。さわった感じはプラスチックのように滑らかだ。

 

すると、いつの間にか部屋には美しい女性が現れた。輝く白い肌と豊満な肉体、神話に出てくるような胸元が大きく開いたノースリーブの白いドレスを着ている。

 

何だか後ろからは光が溢れ出しているし、見た目は食いつきたくなるほどの美女だけど身体が少し引いてしまう。

 

 

「やっと会えましたね」

 

「…どちら様でしょうか?」

 

「私はイシターです」

 

「イシターって、神様の?」

 

「そうです。バビリムの守護神であるイシターですよ」

 

 

女神キターーーーーー!とうとうテンプレが来たようだ。でも、何で今なんだろう?

 

 

「テンプレが何かは知りませんが、あなたは私が会いに来るのが遅いと思っているんですね」

 

「あ、すいません。考えていることが分かっちゃうんですね。普通はもっと早くお会いできるものなのかと思っていて」

 

「私も早く会うつもりでしたが、上手くいかなかったのです。身体と精神の融合に時間がかかっているようでしたね」

 

「自分ではよく分かりませんが、身体を動かすことには慣れてきたように思います。身長も現実より少しだけ高かったんですがだいぶ慣れました」

 

「そうですか。それだけでは無いようですね。何日か前に魔力の限界突破を行ったことで、精神の融合がかなり進んだようです」

 

「え、そうなんですか?」

 

「はい。そのために普通ならば成長が止まるはずの魔力量が、これからは少しづつ伸びていくはずです」

 

「それは凄い。ゲームではそんなことありえないのに」

 

「ここはあなたから見れば異世界です。一種の平行世界(パラレルワールド)と言えるかもしれません。ですからあなたが知っている世界と同じ訳ではありません」

 

「平行世界ですか…。そう言えば、どうして俺はこの世界に呼び出されたんですか?」

 

「少し長くなりますが、あなたはドルアーガを倒す為にギルガメッシュが塔へ上ったことは知っていますね?彼は最上階のいるカイを助けるためにドルアーガに戦いを挑みました」

 

「ギルがドルアーガを倒しましたんですよね」

 

「そうです。そして、ブルークリスタルロッドを手に入れて最上階へ上り、カイを助け出したのです」

 

「それならば無事終了じゃないですか」

 

「その後で大きな問題が発生したのです。ギルに倒されたドルアーガは密かに自分の写し身(コピー)を塔に残していました。そのためにバビリムは今だに塔の魔力の影響を受けているのです」

 

「そうか。だからモンスターの活動が収まらなかったのか」

 

「はい。完全体ではないとは言えドルアーガの影響力は大きく、バビリムは塔の魔力に苦しめられたままです」

 

「だったら二人はもう一度ドルアーガを倒しに行ったんじゃないんですか?」

 

「ギルたちは『まだやり残したことがある』と王国の重臣に告げて行方不明になっているのですが、実はそうではありません。二人は…、駆け落ちしたのです」

 

「か、駆け落ち!?それってありなんですか!だってギルはバビリムのたった一人の王子でしょう?責任放棄じゃないですか!どうにか連れ戻せないんですか?」

 

「それが…、ブルークリスタルロッドの力とギル自身が持つ力を使って異世界へ駆け落ちしたらしいのです」

 

「異世界へ行ったんですか。それでは簡単に連れ戻すわけにも行かないでしょうね」

 

「そうなのです。私はこの世界の神ですが、異世界に干渉するのは簡単ではないのです。あちらにも神はいますからね。それも相手がギルではあまりに力が大きすぎて干渉しようがありません」

 

「でもなぜ二人は駆け落ちしたんですか?」

 

「ギルは王子、カイは巫女。二人は身分が違いすぎてバビリムの世界では結ばれないと思ったのでしょう。それに、カイは神に使える正式な巫女ですから結婚は出来ないのです」

 

「若さゆえの暴走ですかねぇ。そこまでは分かりました。でもなぜ私が呼ばれたのか分かりませんが?」

 

「もう一度ドルアーガを倒すためにギルに代わる”英雄”を作り出さなくてはなりませんでした」

 

「”英雄”ですか。ギルの代わりなんて作れるんですか?」

 

「ええ、少なくともこの世界ではそうやって世界を救うために英雄を誕生させてきました。ギルはバビリムの王マーダックの子ですが、彼の母である女王ニンスンは女神の化身です。英雄となる半神ギルは人間よりも強く長寿なのです」

 

「母親が女神ですか。半神なら単独でドルアーガを倒せるほどの強さも納得できます。しかし、簡単に英雄(半神)なんて簡単に作ることが出来ないのでは?」

 

「実は英雄の予備(スペア)がこの世界には存在していました。神の血を引く者がいたのです。ある事情から幼い頃より密かに彼は人の目の届かないところで育てられてきました」

 

「それならば私が呼ばれる必要はなかったのではないですか?」

 

「いえ、彼の身体は英雄になるために十分な素質を持っていたのですが、精神がそれに伴っていませんでした。そこで彼の身体に合う精神体を異世界から召還したのです」

 

「それが私なんですか?」

 

「そうです。バビリムを理解し統べる力を持つ精神体。全てを司り平和をもたらす者。それをエンドウの肉体に召還したのです」

 

「エンキドゥじゃないんだ。…、エンドウ?俺?いや…、待てよ? 今のイシター様の言葉を聞いて思い当たる人がいるんですが」

 

「あなたではなくですか?」

 

「はい。私の世界でこのバビリムによく似たゲームを生み出した人です。スーパーバイザー遠藤○伸さん。私と同姓同名の人です」

 

「…、不思議なこともあるものですね?」

 

「…、そうですね。もしかすると、私がバビリムに呼ばれたのは間違いなんじゃないですかね?本当は私ではなく遠藤さんが呼ばれて、この混乱を解決するはずだったんじゃないかと」

 

「そんなことは無いはずです。現にこの世界を救う者としてあなたが召還されたのですから」

 

「そこが疑問なんです。自分にその力があればうれしいですし、喜んで力をお貸ししましょう。しかし、それが誤りで、私がこの世界に召還されたために、別の誰かも一緒に召還されてしまったとしたら」

 

「それはあなたを補うために誰かが召還されたということですか?誤って召還されたことが事実ならば、可能性としては考えられなくもありません」

 

「有りえるんですね」

 

「はい。実はあなたを召還する時に、世界が別の歪みを発生させていたことは知っていました」

 

「原因を確認しなかったのですか?」

 

「力も小さく邪悪なものではないと感じていましたし、あなたと連絡を取ることを最優先にしていたので、詳しい確認は後回しにしていたのです」

 

「その力が今どこにあるか分かりますか?」

 

「おそらくバビリム周辺にいるはずです。それほど動いてはいないようですから」

 

「…そうか、繋がったぞ。ナリス、ヴァレリウス、イシュト。彼らは私が使っていたこの世界に似たゲームの分身(キャラクター)です。バビリムにいるのは彼らだと思います」

 

「分身ですか。そんなことがあるとは知りませんでした」

 

「私も内心は驚いています。彼らはあくまでゲームの中のキャラクターですから。しかし、ドルアーガが現実に存在すれば、その中に存在していたガッツや彼らもまた存在してもおかしくありません」

 

「それでは、あなたの力だけではドルアーガを倒せない可能性があるというのですね」

 

「ええ、正直に言って無理ですね。最低限でも私と彼らの四人でパーティを組んで戦うか、もう一人補助する者をパーティに入れなければドルアーガにさえたどり着けないでしょう」

 

「そうですか。分かりました。これからはあなたを含めた四人を陰ながら支援しましょう。あなた達を支援する者にも心当たりがあります」

 

「ありがとうございますイシター様。支援者にもかなりの実力が必要だと思います。簡単にはいかないでしょうが、必ずドルアーガを倒します。そうでもしないと、私たちは元の世界に帰れないのでしょう?」

 

「申し訳ありませんがそうなのです。ドルアーガを封印するために必要な三つのクリスタルロッドのうちの一つで、ブルークリスタルロッドに次ぐ封印具、レッドクリスタルロッドをギルたちが残していきました」

 

「そのクリスタルロッドはどこに?」

 

「ドルアーガが近くに置いています。強力なモンスターに守護させていますが、これを倒してドルアーガを封印すればレッドクリスタルロッドと私の力であなた達を元の世界へ戻すことが出来るのです」

 

「じゃあ帰れるんですね!よっ、良かったぁ!異世界召還だと話によっては帰れないことも多いと聞いているので安心しました。これで全力でドルアーガ封印に集中出来ます」

 

「その言葉を聞いてこちらも少し安心しました。そうそう、こちらからの支援の一つとしてギルと同じように魔法を使えるようにしてあるのですが、分身の影響が出ているようです」

 

「どういうことでしょう?」

 

「おそらくあなたの使える魔法はLvが上がっても一次職の範囲まででしょう。しかし、予想外の魔力の限界突破と概念突破で既にこの世界の魔法の枠を超えつつありますね」

 

「それは<ファイヤーボール>の圧縮発射などのことでしょうか?」

 

「そうです。この世界の者が持っていない概念で発現させる魔法のことです。新しい魔法を創造することは出来ませんが、このような工夫によってあなたの力はこれからも大きくすることが出来るでしょう」

 

「そうか。魔法が一次職までしか使えなくても、これまでのように思いつく限りの方法で魔力を効率良く使って強力な魔法にして見せます」

 

「もう一つヒントをあげましょう。もしかしたら気付いているかもしれませんが、あなたが使えるのは他の職種の魔法スキルだけではありません。剣技スキルの一部も使えるはずです」

 

「スカウトの剣技の一部が使えるんですか!イシュトで使っていたし、ルエリアの戦いを見て使えればなとは思っていましたが、そうですか。いろいろな剣技を試してみます」

 

「そうしてください。今日はここまでにしましょう。またお会い出来る日を楽しみにしていますよ」

 

「はい。これからもよろしくお願いします」

 

そう返事をするとイシター様は霞のようにゆっくりと消えていった。

 

しばらくすると俺はベッドの上で目を覚ましていた。内窓を閉じていた窓からは、うっすらと朝日が漏れ、小鳥のさえずりが聴こえる。

 

新しい朝だ。俺は新たな出発の日を迎えたような気分だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。