あれは夢では無かったのだと思う。
改めて女神イシターからの言葉を思い返してみた。
俺が異世界に呼ばれた原因がギル王子と巫女カイが駆け落ちしたためだったとは、改めてあきれた話だ。
あれ?でもアニメではギルとカイが結婚してたんじゃなかったっけ?パラレルワールドでは周囲の反対が厳しくて無理だったのだろうか。
そのおかげで召還された俺ってどうなんだ。それもイシター様は否定してたけど、俺の感じゃ勘違いで召還されたっぽい。
本当は同姓同名の遠藤○伸スーパーバイザーが召還されたはずだと思う。あの人なら、ある意味この世界の創造主の一人だから混乱をまとめられると思う。
それに比べて俺はいちプレーヤーだ。それもカンストする熟練者ではなく、たまにインする中級冒険者。
だから召還も一筋縄ではいかなかったんだろうな。そのせいで別のパラレルワールドにいたガッツや、おそらく一緒に巻き込まれて召還されたナリス達には悪いと思う。
良かったのは、元の世界へ帰ることが出来る可能性があることだ。ドルアーガを倒してレッドクリスタルロッドで封印すれば、イシター様の力で元の世界へ返してくれるのだ。
異世界で生きていくのに何の未練も無いとの話も良く聞くが、俺の場合は大有りだ。
やっと得意先の事務の女の子達と合コンをして、目当ての女性からメアドをゲットしたのだ!髪の長い少し小柄なDカップの女性なのだ。
おかげでモチベーションが大きく上がって仕事も順調だった。まさかこんなどんでん返しが待っていようとは…。
しかし、ナリス達のおおよその消息もつかめたし、バビリムまでの旅を実行に移す時が迫ってきたと言っていいだろう。
これまでの情報収集から、近々バビリムへ向かう商人がいると聞いている。護衛として雇ってもらえば不慣れな道も問題ないだろう。十分俺の名は売っているはずだ。
それにしてもリアルでナリス達に会えるなんて少しワクワクするなぁ。小説の挿絵やアニメでイメージはあるんだけど、どちらに近いんだろう?
その前に衛兵の詰所へ行って昨日の聴取の続きをしてこないとな。よし、今日も一日がんばろう!
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ふぅ、こんなに連日忙しいなんて。もう夜中になっちまった。それにしても大変なことになってしまったようだな…。
安易に考えていた山賊退治の聴取は予想外の展開で俺を悩ませることになった。
衛兵達の話によれば、俺達がバビリム街道の安全地帯に放置してきた山賊風の冒険者達が何者かに殺されたらしい。その傷跡からもモンスターに襲われたのではなく、人間に刃物で刺されて死んでいたようだ。
その上、ラジャフに連行して来たリーダー各の冒険者も昨夜のうちに独房で死んでいたのだ。死因は毒のようだ。朝に衛兵が確認したらすでに死んでいたんだそうだ。
詰所へ行った俺やルエリア、ルウアも再度詳しく昨日の状況を聞かれることになった。こちらに隠すことは無いので全て正直に話したが、山賊とはいえ人がたくさん死んだので簡単には済まなかった。
あまりに聴取の時間が長くなったので詰所で昼食を取ってもらったが、残念ながらカツ丼は出てこなかった。今度、宿のアイリーンにカツの作り方から教えることにしよう。ネズミカツになるかもしれないが…。
しかしこれはどう考えても不可解な話だ。俺達がラジャフ街道に山賊達を置いてきた時も、注意して周辺に人がいないかどうかマップで確認しておいたのだ。少なくとも同じフィールドに不審な者はいなかった。
考えられるとすれば、ドルアーガの塔あたりから別働隊が来て彼らを殺していったのかとも思うが、そんなことをするのなら一緒に逃げた方が安全だったと思う。
さらに、独房で死んだ男に関しては外部からの接触が難しく、自殺か内部の犯行か判断が難しいらしい。
俺だけは襲われた旅人に王女が混じっていることを知っているが、衛兵達は殆んど知らないはずだ。
ラクターだけは王都で王女を見たことがあるらしく、真相を知っていて昨日からかなり焦っているようだ。ここで王女が暗殺などされた日にはどうなるかわからないからな。
王女一行はエブラ神官の好意でイシター神殿に泊まっているらしいから比較的安全だと思う。
あそこの神官は回復魔法が本職だが、メイスやハンマーを振り回すつわものも多くいるのだ。
それにしてもギル達が駆け落ちしたことをイシター様から聞いたので、今回の事件の重要性が高いと感じた。
アドナーンに聞いたところによれば、襲われたサリア王女はバビリム王国の第1王女らしい。王位継承者第2位という話だからギルが帰らない今となっては王又は王女に一番近い人なのだ。
こんな話に巻き込まれては俺の現世復帰が遅れてしまうので早くバビリムに行かなくてはな。
コン!
なんだ?窓に何かが当たったようだが…。夜も遅いんだが、開けてみるか。
「ん、ルウアじゃないか。どうした?」
「ガッツさん、お話したいことがあるので外へおいでいただけませんか?」
な、なんだと!深夜に男を誘いに来るとは…、イ、イベントか~っ!
「それはいいが。下に行くから少しまっていてくれ」
「はい」
こんな時間に何の用だろう。いろいろ想像=妄想が膨らんでしまう。告白タイムとか…、いやいやそれは自意識過剰だよな。
俺達は水辺の景色のいい木陰で話を始めた。夜中ではあるが、ラジャフでは広場に浮かぶ巨大なオーヴが光を放っているのでそれほど暗くは無いのだ。
「待たせたな」
「いえ。こちらこそこんな深夜にお呼びして済みません」
「それで用とは何だ?」(どんなお話かな?)
「はい。実はイシター神殿までいらっしゃっていただきたいのです」
「イシター神殿?」(え、神の前で愛の告白とか?)
「そうです。エブラ様がガッツさんに重要な依頼をお願いしたいということです」
「エブラ神官が…」(ガクッ_| ̄|○ )
「はい。一緒にサリア様もお待ちです」
「サリア様も?(まずい展開か…。しかし拒めない)分かった、案内してくれ」
こうして俺はイシター神殿に向かった。俺はさらに混沌とした運命に巻き込まれるようだ。