ドルアーガの冒険   作:まぁしい

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少しだけアダルトモード?です。


37 最後の夜

「とうとうこの日が来たか。予想していたとは言え少し残念ではあるな」

 

村長のタムドの家を訪ねると言葉をかけてくれた。最後に村長の家を訪れたため、外は夕暮れに近い状態だ。

 

「そう言ってくれると嬉しいがこれも運命だからな。俺がバビリムへ行きたいと望んだ時期と依頼が重なって急な出発になった」

 

「実力のある冒険者はラジャフでも貴重だからガッツには少しでも長く居て欲しかったが仕方が無い。機会があればまた手を貸して欲しい」

 

「もちろんだ。ラジャフのみんなは、一時的に一部の記憶を失って不安だったこの俺をここまで導いてくれたんだからな」

 

「ただ、ルエリアは気持ちの整理がついていないようだ。同じパーティーを組んでいたガッツとルウアがここを離れるのは辛いのだろう」

 

「ルエリア一人を残す結果になって申し訳ないとは思っている。声をかけてやりたいが…」

 

衛兵のラクターにも言われていたのでルエリアと話をしたい。

 

「おそらく無理だろうと思う。午前中にルウアからバビリム行きの話をしたようだが、かなりショックだったようで声をかけても部屋に閉じこもったままだ」

 

引きこもっちまったのか?それほどルエリアの心を三人で過ごした日々が占めていたとは…。一人だけ仲間はずれにされる様な気持ちなのだろうか?

 

「だめで元々だが声をかけてみよう」

 

「頼む」

 

 

 

タムドがルエリアの部屋の前に行ってドアを叩く。

 

「ルエリア、ガッツが来ているぞ。別れの挨拶に来てくれたそうだ。出てこないか?」

 

「誰にも会いたくない!」

 

「そう言わないで出てきたらどうだ?ガッツに会う最後の機会かもしれないんだぞ」

 

「うるさい!」

 

 

 

締まっているドアに枕でも投げつけたような音が聞こえた。

 

「悪いが出てくる気配が無いようだ」

 

「そうか…。今は無理でも明日の出発までに時間を作って会っておきたいと思うんだが」

 

「そうしてくれ。ルエリアも予想外の事で混乱しているんだろう」

 

「分かった。それでは村長、世話になった」

 

「またラジャフへ来てくれ。その時はバビリムの土産話でも聞かせてくれんか」

 

「ああ、せいぜい面白い話を仕入れておくよ」

 

明日にでもルエリアに会えればいいんだがな。ただし、会ったら会ったで万が一泣かれでもするとお手上げだ。女の涙はどんな強力なスキルにも勝る破壊力を持っているんだから。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

私がベッドに伏せていると家に誰かが入ってきた気配がした。ガッツが来たみたいだわ。

 

お父さんと話している。別れの挨拶をしているようね。

 

でも、急にこんな事になるなんて。ガッツとルウアがラジャフを離れてバビリムへ行くなんて思っても見なかった。

 

いいえ、違うわ。ガッツがいつかラジャフを離れるんじゃないかってことは想像していた。でも、ルウアが一緒だとはまったく考えていなかったのよ。

 

ルウアだって正式な巫女になったのだから、そのうちにバビリムへ行く事もあるとは知っていたけど、まさかこんなに早く行くことは考えられなかったわ。

 

ガッツが私達の思いに答えてくれなくてヤキモキしていたけど、三人で過ごす時間は私にとってかけがえの無いものだった。

 

それが私一人がラジャフに残される事で終わるなんて信じられない…。

 

私もガッツと一緒にバビリムへ行きたいと少しは思ってしまった。でも、村長の一人娘である私がラジャフを離れる事なんて出来ないわ。

 

だからこそガッツを落とそうと思っていたのに!

 

コンコン。

 

ドアを叩く音がする。お父さんかしら?

 

 

 

「ルエリア、ガッツが来ているぞ。別れの挨拶に来てくれたそうだ。出てこないか?」

 

「誰にも会いたくない!」

 

今は誰とも顔を会わせられられないわ。だって、大泣きして目が真っ赤なんだもの。

 

「そう言わないで出てきたらどうだ?ガッツに会う最後の機会かもしれないんだぞ」

 

「うるさい!」

 

締まっているドアに近くにあった枕を投げつけた。

 

 

 

しばらくして玄関のドアの閉まる音が聞こえた。ガッツは帰ったみたいね。

 

今回のことはショックだったけど、私の気持ちをこのまま終わらせる訳にはいかない。

 

だって、ガッツへの想いは本物なの。その印が欲しい。

 

この夜が私の気持ちを伝える最後のチャンスなら、この時を逃したくないの。

 

決して後悔なんかしないわ。

 

 

 

*****

 

 

 

 

営業の仕事をしていた時の様な挨拶周りを終えた俺は、宿での夕食を終えてほろ酔い気分でベッドに座っている。皮鎧も外してあるのでとても身軽な状態だ。

 

これから夕食の後片付けを済ませたアドナーンと二人で出かける予定なのだ。

 

場所は「森の妖精」だ。例の店だよ。アドナーンも結婚してからはご無沙汰らしいから喜んでいるはずだ。

 

もちろん奥さんのアイリーンには二人で飲みに行くだけだと言ってある。

 

ベッドの上で俺の頭の中はすでにあんなことやこんなことを妄想中だ。男子諸君にはこの気持ちを分かっていただけるだろう。

 

しかし、規制に引っかかるのでこの妄想を言葉ではとても言い表せない。すまん。

 

コンコン。

 

「ガッツさん、いらいっしゃいますか?」

 

「アドナーンか?入ってくれ」

 

「失礼します」

 

アドナーンがドアを閉めて部屋に入ってきた。

 

「仕事はすんだのか?」

 

「はい。アイリーンは席を外していますが一段落ついていますから問題ありません」

 

「そうか。それでは行く『ちょっとお待ちください』」

 

アイリーンが急にドアを開けて現れた。

 

「あなた。今日はガッツさんと飲みに行くということでしたよね?」

 

「そ、そうだがそれがどうした?」

 

「これは何ですか?」

 

アイリーンの声が1オクターブ下がって聴こえる。手にはピンク色のタブレットを持っているようだ。アドナーンが汗をダラダラかいてそれを見ている。

 

ゲッ!それは「森の妖精」の会員証じゃないか!それも割引が大きいVIP用だ。アドナーンが独身時代に通って手に入れたものだな。

 

「あなたが落としたのを見たんですが、何かおかしいと思って雑貨商人のエリカさんに聞いてみたんです」

 

き、聞きに行ったのか?それで席を外していた…。

 

「そうしたらこのタブレットはいかがわしい店の会員証だと言うじゃないですか?あなたはこれを持ってどこへ行こうといていたんです」

 

ヤバイ。アドナーンの顔は既に赤から青、そして白に変わっている。

 

「いや、それはお客さんが落としたのを拾ったんだよ。私のものではないんだ」

 

そうそう、そういうことにして置いてあげて~。

 

「このタブレットにはニックネーム欄があるようですが、そこに『宿の若旦那』と書いてあります。これでも言い逃れるつもりですか?」

 

アドナーン、詰んだな。これは無理だわ。

 

「これから少~しだけ、お・は・な・し しましょうね?ガッツさん、そういうことなので飲みにはお一人でいらっしゃってください」

 

かわいそうに、アドナーンが首根っこを掴まれて連れて行かれてしまう。悪いがこの罪は一人でしょってくれ。

 

「そうそう。ルエリアがガッツさんに話があるそうなので下にいますから来てもらってもいいですか?」

 

ルエリアが?会ってくれる気になったのか…。

 

「ああ、いいとも。部屋へ来てくれ」

 

こんな夜に何だろう?あの時は話せなかったことでもあるのだろうか?

 

 

 

 

コンコン。

 

「ガッツ、入るわよ?」

 

「ああ、いいぞ」

 

ルエリアが入ってきた。夜だからだろうか?いつもと違い大き目のフードの付いたローブを羽織っている。

 

「家に来てもらったのにごめんなさい。あの時は気が動転していたの」

 

「そうか。仕方が無いだろう。俺にも急な話だったし、ルウアが同行することを聞いた時も驚いたんだ」

 

「まさか私が一人になることでこんなに不安になるなんて思っても見なかったわ。そして、ガッツが居なくなることが分かってこんな気持ちになるなんて…」

 

こんな気持ちって、俺が居なくなると寂しいってことか?こんなシュチュエーションは経験が無いので対応出来ないぞ。

 

「だから、思い切ってガッツの元に来たの」

 

ルエリアがドアの蝶番(ちょうつがい)をかけ、そして、テーブルの上にあるランプを消した。

 

暗くなった部屋の中をルエリアが俺の方へ近づいてくる。俺の鼓動が早くなっているのが分かる。

 

「行かないで欲しい。ううん、それが無理な事も分かってるの。せめて私の全ての気持ちを受け止めて欲しいの」

 

確かに俺はルエリアから逃げていたのかもしれない。それはここが俺が居るべき世界では無いという気持ちがあったからだ。

 

そして、好意を持った相手に対してハンパな気持ちで向き合えない俺の不器用な気持ちのせいなのかもしれない。

 

「ルエリア、俺は冒険者だ。ずっとラジャフには居られないし、ルエリアと一緒に居る事も出来ないんだ」

 

俺は震える心に耐えて言葉を紡いだ。しかし、その言葉を聞いたルエリアは俺の胸に飛び込んで来た。

 

動揺して反応することも出来ない俺は、ルエリアにベッドへ押し倒される状態になった。

 

「それでもいいの…」

 

俺の目を見つめながらルエリアの薄い柔らかな唇が俺の口をふさいだ。

 

そして、ルエリアが身に付けていた厚手のローブを脱ぐと、そこには生まれたままの美しい姿が現れた。

 

無理だ…。俺の理性も限界のようだ。

 

俺は再び抱きついてきたルエリアを優しく抱きしめると、その身を自然にまかせて夜の闇に同化した。

 

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