日の暮れ始めた街道をマラソンしてラジャフに着くと、とりあえず村長の家を目指す。
コンコン「冒険者のガッツだがルエリアの依頼の品を届けに来た。ルエリアはいるかい?」
「あら早いのね。もう10箱回収したのかしら」
「ああ、22箱回収出来たので受け取ってくれ」
「な、なんですって、22箱も!5人のフルパーティで行っても15箱ぐらいなのよ!ありえないわ」
「そうは言っても回収したもんはしかたねえだろ?タブレットで品物をトレードするからこのカードを触ってくれ」
ルエリアが俺のタブレットを触った状態でウインドウのトレードを実行すると、彼女にも22個の隊商の積荷が確認できたようだ。
「本当にあるのね。剣士じゃ簡単に飛行系のモンスターを難しいはずよ。あなたどういう腕してるのよ」
「まあ、そこいらのヤツには負けねえ程度ってとこかな?」
少しニヤニヤしながら答える。レベルとか言えないしね。
「なんか誤魔化されてる気がするけど、まあいいわ。報酬の220銅よ、受け取ってちょうだい」
タブレットを触った状態でお互いがトレードするものを確認し、了承するとトレードが成立する。
こちらのイベントリからは隊商の積荷が消えて220銅が増えることになった。
「これだけ回収できれば助かるわ。かなりのモンスターも討伐できたんでしょ?」
「ああ、それなりには狩ったはずだ。あの辺の通行が多少は楽になるといいがな」
「そう…。あなたこの村で雇われる気はない?」
ルエリアは意外な話を向けてきた。
「あなたほどの腕を持った冒険者はなかなか居ないのよ。報酬はお父様と相談して考えるけど、どうかしら?」
「悪いがここに長居するつもりは無いんだ。今は事情があってすぐに戻れないが、自分の国に帰らなくちゃならん。悪く思うなよ」
「残念ね。でも、もしかしたら気が変わるってこともあるからあきらめないわよ」
ルエリアの顔が少し赤いんですけど何かフラグたった?そんな展開知らないポ…。
「また回収出来たら届けてちょうだい。他にも頼みたいことが出るかもしれないわ、どこへ行けば会えるの?」
「い、今は夢屋に泊まっているが…」
何だか押され意味だ。
「分かったわ。またねガッツ」
「ああ、またなルエリア。」
こうして何か熱い視線を背中に感じてそそくさと村長の家を後にしたのだった。
リアルではありえない美少女からのアプローチに、こっちが赤くなっていなかったか不安であったりする。
隊商の積荷回収はただのクエストのはずなのに、予想外ですこの展開は…。これがツンデレか?
やっぱり似ているけども違う世界ってことだわな。パラレルワールドだっけ?
そう考えながら広場を歩いていると、あることを思い出した。
ウェブメーカーのクエストが誰か確認するんだった。ラクターを探そう。
いつもの広場を探したが残念ながらラクターはいないようだ。24時間警備できないモンねやっぱ。
よく見渡すと、衛兵が建物に入っていくのが見えた。衛兵の詰め所のようだが行ってみるか。
「ラクターはいるか?」
そこには兜を外したラクターが椅子に座っている。
「おおガッツか。依頼は受けてくれたらしな」
「ああ、さっきルエリアに回収した積荷を届けたところだ。ところで一つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「何だ、俺に分かることなら教えてやるぞ」
「クモ型モンスターのウェブメーカー関連で依頼があると聞いた気がするんだが知ってるか?」
「う~ん、それならばイシターの巫女見習いのルウアじゃないか?クモの糸が欲しいと聞いた気がするが…。今ならイシター神殿にいると思うぞ」
いつも広場で武器屋のそばにずっと立っていたNPCの巫女見習いか。まだ広場に居れば楽だったんだけどな。
「そうか、それならばイシター神殿に行ってみよう。助かったぜ」
「こっちも依頼を受けてもらったしお互い様だ。もし都合が合えば依頼を頼むことがあるかもしれんしな」
こうしてクエストの依頼主を確認した俺はイシター神殿へ向かった。
村の西端に位置するイシター神殿は歴史を感じさせる白く大きな建物だ。
ギリシャ神殿を連想させるその外観は、神への信仰の強さを感じさせる独特の雰囲気を持っている。
柱の意匠などは旅行で行った時に見たパルテノン神殿に似ているようだ。
神殿の中に入ろうかと思ったが、大きな扉の前に神官が一人いたので巫女見習いについて聞いてみる。
「俺はガッツという冒険者だが、ここに巫女見習いのルウアが居るか?集めている素材を持ってきたんだが」
「そうですか。ルウアなら神殿の奥で祈りを奉げているはずです。呼んで参りましょう」
「ありがたい。この辺で待たせてもらう」
神官は軽く肯くと、そのまま神殿へ入っていった。
MMOの時は神殿内に入ることはできなかったので興味があったのだが、なぜか入りにくい雰囲気を感じてしまう。
もしかすると、ガッツの意識が少し影響しているのかもしれない。
ガッツはあれほど神秘的な体験をしているのに神様を信じていないようだった。
その代わりに悪魔や妖精は身近にいたので受け入れているようだったが…。
また、いくら外観がワイルドなガッツになったからといって、普段なら自分はこれほどラフな言葉は使うのは難しい。
演技が入っているとはいえ、それがスラスラと口に出来るあたり意識下で影響を受けているのではないかと多少違和感があったりする。
そんなことを考えながら待っていると、先ほどの神官がルウアらしき巫女を連れて来るのが見えた。