神官がイシター神殿の奥から連れてきた巫女は、ルエリアと同じぐらいの年の少女だ。
白地の上着とロングスカートに青と金色の模様が袖や裾に入っていて巫女らしい神秘的な印象を与える。
そして、その顔はとてもかわいらしいく癒し系で、スタイルはボンキュッボンという感じ。
MMOではどちらか言うときりっとした美少女タイプのNPCだったのだが、こっちの方が断然いい!
正直言って超好みのタイプである。リアルでは出会えないね。
残念ながら俺はどこかの某主人公のようにバストスカウターのスキルを持っていないが、Dカップは確実だと思う。うん。
こうして俺が勝手に妄想していると、神官がルエリアを紹介してくる。
「ガッツさん、彼女がルウアです。ルウア、この方があなたを訪ねてみえたガッツさんですよ」
ルウアは肯くと、改めてこちらを向いてお辞儀をした。
「はじめましてガッツさん、巫女見習いのルウアです。探していた素材を持ってきていただいたと伺ったのですが?」
「ああ、ラジャフ街道でルエリアの依頼で狩りをしていたんだが、一緒にクモを仕留めたんだ。そこで誰かがクモの素材を探していると聞いてここに来た訳だ」
「よかった。実はエブラ様にお使いを頼まれたんですが、それがかざり紐の製作だったのです」
「それならそれほど難しくないんじゃないか?」
「それが紐の材料から集めなくてはならないのです。その材料となる糸はラジャフ街道にいるウェブメーカーから取れるのですが、私、クモ苦手なんです…」
「それも試練の一つという訳だな」
「はい。ただし、私の場合はあの姿を見ただけで失神しそうなので…」
ルウアは消え入りそうな声で答えた。
「それならこの素材は役に立ったと言うことか」
俺はバッグに手を入れるとイベントリでウェブメーカーの糸を選択し、取り出して見せた。
「これ!これです、これが欲しかったんです!」
ルウアは飛びっきりの笑顔を見せたが、表情を改めるとこちらを向いて懇願した。
「更なるお願いで申し訳ありませんが、この依頼者を材料屋のアトラさんに渡してもらえないでしょうか?かざり紐の装飾具が必要なんです」
俺に好みの女性の願いを断るという選択はほぼ無い。
「いいだろう。材料屋のアトラに渡せばいいんだな」
肯くと依頼書を受け取った。
「ありがとうございます。私はその間に、糸を紡いでおきますので」
隣にいた神官も一言添える。
「ありがとうございます、ガッツさん。本来は自らが素材を準備する場合が多いのですが、神官や巫女は人との繋がりも重要ですのでこうやってお願いすることもあるのですよ」
「まあ縁があったってことだな」
深々とお辞儀をするルウア達に見送られて広場に面している材料屋のアトラの所へ向かう。
材料屋とは生産することを目的とした素材を売っている店だが、簡単な加工をして売る場合もあるのだ。
広場まで来るとウインドウで店にアトラが居るのが確認出来たので声をかける。
「ルウアに使いを頼まれて来たんだが、あんたがアトラか?」
「そうだが、何だ?ああ、神殿の巫女のルウアか。お前も大変だな。どれどれ、依頼書を見せてくれ」
俺はアトラに依頼書を渡す。
「かざり紐の装飾具が要るのか。こりゃ…作るのはいいがニンギシュダの樹皮が必要だな」
ニンギシュダとは神殿が神木として、よく神具の材料にしている木だそうだ。
「依頼された装飾具を作るには、ニンギシュダの樹皮が必要だ。悪いが、採ってきてくれないか?」
「それはいいが、どこに生えているんだその木は?」
「ラジャフ街道のどっかだったと思うが…、近くに石碑があったような気がするがな」
それならば何となく位置を覚えている。
「分かった。今日はもう日も落ちるから、明日にでも樹皮を取って来るとするか」
「すまないが頼んだぞ」
こうしてアトラの元を去った俺は宿へ向かった。
宿へ行くと外にいたアドナーンが俺を見つけて声を掛けて来た。
「ガッツさんご無事で戻られて何よりです。依頼はうまく行きましたか?」
「ああ上出来だな。既に商隊の荷物はルエリアに届けてきたところだ」
「それはそれは。詳しい話は後で聞かせてください。お疲れでしょうからお部屋へどうぞ。同じ部屋を空けておりますのでカウンターで鍵を受け取ってください」
肯いて俺はカウンターのアイリーンの元へ向かう。
「ガッツさん、お帰りなさい。ご無事でよかったですわ」
「また世話になる。2泊で頼む」
「かしこまりました、こちらが部屋の鍵です。料金はまた50銅で結構です。お部屋で体の埃を落としたら食堂へどうぞ」
鍵を受け取った俺は50銅を渡すと部屋へ向かった。
部屋でやっと重い鎧を脱いだ俺は、体を濡れた布で拭いて汗を取ると軽装の皮鎧に着替えて食堂へ行くことにした。
食堂ではアドナーンが待っていて、カウンター席に座っていた俺の所に料理の注文を取りに来た。アイリーンの方がいいのに…。
お勧めの川魚の香草焼き定食を頼んだ俺にアドナーンが聞いてくる。
「ガッツさんはエール(ビール)はやらないんですか?」
大人の男なら食事と一緒にエールを飲むのが常識だから不思議だったかな。回りも大概飲んでるしなぁ。
「この街の雰囲気に慣れない内は自重してたんだ。酔っ払って身包み剥がれたらことだからな」
軽いジョークで返すとアドナーンが提案してきた。
「またまた旦那。それなら今でしたらいいんじゃないですか?村長の娘さんや衛兵さんともお知り合いになったみたいですし」
「よく知ってるな」
「商売柄人がよく出入りしますからね。それはそうと、今日の狩りの話を後で聞かせてくれませんか?」
「ラジャフ街道での狩りなど、それほど珍しい話でもないだろう?」
「私は冒険者の話を聞くのが趣味なんですよ。お礼にエールを1杯サービスさせてもらいますから」
そこへ他のテーブルへ料理を運ぶために側を通ったアイリーンが声をかける。
「あなた、ガッツさんにご迷惑をお掛けしてはだめですよ。すいません、うちの主人はどうにも冒険者の方の話を聞くのが好きらしくて。もしご迷惑でなければ後で話してやってください。仕事に実が入らなくなると困りますから」
苦笑するアイリーンを見て、俺は食事の後で話をすることに了承した。
その後、配膳された川魚の香草焼き定食とエールを平らげて、さらにエールを1杯追加注文する。
ガッツの身体はアルコールに強いらしく、1杯ほどでは酔いもあまり感じられない。
本来の自分なら1杯で顔を赤くするお得な?体質なのだから、身体に大きな変化あるのだろう。
そのうちに仕事を一段落したアドナーンがやって来たので話をしてやることにした。