スキルチートなウマ娘になりまして。   作:coka/

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 今回はアルマちゃん視点のお話です。



幕間:サンタアルマと初レースの裏側

 

 ……私、サンタアルマがこの施設で暮らし始めてはや数ヶ月が経ちました。

 最初の頃はどうせまたたらい回しにされるんだろうなって思ってたんだけど、園長先生や職員のお姉さん、そして私の一つ上のお姉ちゃんはとても優しくて、私のことを温かくむかえ入れてくれました。

 世の中、悪い事ばっかりじゃないんだね。

 

 お父さんとお母さんが事故で死んじゃった時はとても悲しかった。

 だけど、親戚のみんなに厄介者扱いされてあっちこっちたらい回しにされていく内に、心がどんどん冷たくなっていく感覚を覚えていった。

 なんかお金目当ての人とかもいた。

 お姉ちゃんみたいにギャクタイとかはされてなかったから、まだマシだったって言えるのかも?

 

 そんな感じで、心が冷え冷えだったけど、ここに来てからは心がぽかぽかしてる。

 特に、お姉ちゃんはとても面白い。

 

 学校にも行かず、毎日走るトレーニングばっかりしてるのに頭が良い。

 ずっと無表情なのに、声は喜んでたり悲しんでたりとすっごく感情がわかりやすくて面白い。

 普段はどこか大人っぽいふいんきがあるのに、時々めちゃくちゃ子供っぽくなる。

 あとなんか変な走り方をしてる。

 なんだか、見ていて全然飽きない。

 

 だから最近はお姉ちゃんに付いて回って、一緒に走ったりしてる。

 なにか、新しくて面白い事が見つかるんじゃないかと思って。

 実際、走ってるのは気持ちが良くてとても楽しい。

 お姉ちゃんはウマ娘の本能って言ってた。

 良くわからないけど、楽しいならそれで良い。

 見て覚えたお姉ちゃんのマネをするだけで、どんどん脚が早くなってる感覚もあって余計に面白い。お姉ちゃんは変な顔してたりするけど。

 あと、学校に行って無いのに頭が良いから勉強を教えてもらったりもしてる。

 でもね、お姉ちゃんに教わってたらいつの間にか全教科の四年生の範囲がもう終わりそうになってたよ?

 ……そのうち五年生の範囲に入ってるかもね。

 

 そんな、たらい回しにされてた頃なんか目じゃないくらい楽しい毎日を送っていたある日の事。

 お父さんとお母さんが死んじゃった時以上の衝撃を受けた。

 それと同時に、私の中で何かが爆発するような感覚を覚えたのでした。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 『さあ、始まりました。小学生以下限定、全国ウマ娘ちびっこレース大会笠松カップ。まもなく、五年生の部第1レースが出走となります。毎年、URAとNAUの共同で行われるこのレース。先程の六年生の各レースも大変な盛り上がりを見せましたね』

 『それはそうでしょう。毎年ここから笠松での活躍を期待される優駿達が発掘されておりますからな。これから行われる五年生のレースも楽しみでしかたがありません。それになんといっても、この第1レースではあのクサノギ家のウマ娘が出場するとの事です。これはますます期待が高まりますよ! 』

 

 園長先生に連れてこられ、やってきたのは笠松レース場。

 私達の目の前には学校や施設のグラウンドよりも軟らかそうな砂で埋め尽くされたコースが広がっている。

 なんでも、園長先生がお姉ちゃんと私をこのレースに出場させたみたいです。

 ……ちょっと楽しそう。

 レースは六年生から順番に数回ずつやるみたい。

 私の出番はもう少し後だから、お姉ちゃんのレースを見ることができます。

 

 『お〜っとここで、レースに出場するウマ娘達が入場してまいりました! それぞれ、砂の上をしっかりと踏みしめながら返しを行っているようです』

 『彼女達の中には始めてコースに出る子も多いでしょうから、ここでレースの感覚を掴めるのかがとても大切になってきますね。それに、ダートはなんといっても力強さが重要になるコース。彼女達がこの800mをどのようにして走り切るのか、注目しましょう!』

 

 レースに出るウマ娘達がコースに入って身体を動かしてる。

 1人、見覚えのあるウマ娘がこちら側に向かって軽く走ってきてるけど……

 

「なんだい、こんな方まで来て。まだレースまで時間があるとはいえさっさと体を整えな」

「まあまあ良いじゃないですか園長。せっかく来てくれたんですし」

 

 はい、お姉ちゃんでした。

 お姉ちゃんは嬉しそうにえへへと笑っていた。

 あいかわらず無表情だけどね。

 ……私も何か言っておこうかな?

 

「……お姉ちゃんガンバ」

「うん、楽しんで走ってくるね〜!」

 

 応援したらすごく楽しそうに返事が来た。

 やる気満々みたい?

 

「いいかい、せっかくレース場を走れるんだ。アンタはアンタらしく全力で走ってきな。今までのトレーニングの成果をここで出し切るんだよ!」

「…………うん、分かった。私全力で走って全力で楽しんでくる」

 

 園長先生と話した後、お姉ちゃんはスタート地点まで戻って行きました。

 そして、ファンファーレの後、用意されたゲートの中に入って行く。

 

 『各ウマ娘ゲートに入りました。今回、このレースの為に特注で作られた18頭立てのゲートを飛び出し、勝利を収めるのは一体どのウマ娘なのか!』

 『力強い走りに期待しましょう!』

 

 実況と解説の人の声が響くなか、一瞬シーンと辺りが静まり返える。

 そして、ガコンッという音と共にゲートが開いた。

 

 

 その瞬間、私はあるウマ娘の姿を捉えた。

 

 

 ゲートが開いた瞬間、スタートダッシュを決めて先頭を駆け抜ける1人のウマ娘。

 あれは…………お姉ちゃんだ。

 お姉ちゃんがスタートとほぼ同時にぐんぐんと他のウマ娘達を引き離していく。

 

 『さあ、各ウマ娘一斉にスタート! おおっとここで11番、すごい勢いでハナを進みます! どうでしょう、この展開!』

 『ふむ、スタートが上手かったですね〜。ゲートが開くと同時に飛び出して行きましたよ。しかし、これは少し掛かってしまっているかもしれませんな。息を入れるタイミングがあれば良いのですが……』

 

「うわ、すっご。あれ、スタートほぼ完璧でしたよ!?」

「ほう、初めてのゲートで緊張するかと思ったけど、どうやら余計な心配だったみたいだね」

 

 園長先生とお姉さんが驚いている。

 それだけ、お姉ちゃんのスタートが上手かったらしい。

 

「でも、あんなスピードで走ってて大丈夫なんですかね? 途中で息が切れるんじゃ……」

「ふん、あの子はお前と違ってそんなやわな鍛え方はしてないよ。それにしても、どこであんな上手い走りを覚えてきたんだか……」

 

 お姉ちゃんはどんどんと後ろを突き放していく。

 そして、コーナー直前に息を入れながら加速しているのが遠目からも見てとれた。

 多分これが園長先生の言った上手い走りなんだと思う。

 だけど、これは毎日お姉ちゃんがあのグラウンドで練習していた走り方だった。

 

 『さあ、早くも11番が最初のコーナーへと駆けていきます! 後ろは大きく離され既に7バ身差! これは紛うことなき一人旅だ!』

 『他のウマ娘達も必死に追い付こうとしておりますが、これは厳しい戦いになりそうですね。11番の逃げ切りを阻止できるウマ娘はいるのか! 逆に11番はまだ余裕がありそうだ!』

 

 綺麗にコーナーを曲って走っていくお姉ちゃん。

 なるほど、いつも曲がる時に変な動きしてる様に見えてたけど、この為だったんだ。

 

「はぁ!? 遠心力で外に広がりすぎず、かと言って内にも入りすぎてないめちゃくちゃ上手いコーナリングなんですが!? 先生あんなのいつ教えたんですか!? 私ですらあんなのマスターするのに2年ぐらいかかってたのに!」

「……あれは多分あの子の独学だよ。去年辺りにはいつの間にか上手く曲がれるようになってたさね」

「えっ、マジで!? これでまだ11歳とか末恐ろしい……」

 

 お姉さんがなんか大騒ぎしてるみたいだけど、気にしない様にしてお姉ちゃんを見る。

 コーナーで速度を上げつつまた息を入れている。更に加速もしてるみたい?

 ……遠目からじゃ良く見えないや。

 

 『11番、コーナーをモノともせずどんどんと加速していきます!』

 『すごいですね、11歳であのコーナリングは将来が楽しみです!』

 『あっ〜と、そしてついに最終コーナーへと入っていきました!』

 『っ!? ここでまだ加速するとは!?』

 『残り200mを通過。最後の直線、後続を突き放しこれはもはや独走状態! 誰も追い付くことができません!』

 

 最後のコーナでお姉ちゃんはさらに加速する。

 そして、そのまま一気に速度を上げて駆け抜けた。

 

 目の前をお姉ちゃんが通り過ぎていく。

 一瞬だけ見えたその表情はいつも通りの無表情だったけど、どこか苦しそうで、でもすごく楽しそうにも見えた。

 

 

 

 …………私も、あんな走りを

 

 

 

 『11番、今一着でゴールイ〜ン!! 後続はまだ11バ身以上後ろ!! 驚異的な逃げ脚で勝ったのは、11番です!!』

 『いやはや、まさか最後まで逃げ切るとは思いもしませんでしたな。これでまだ小学五年生だというのですから将来が楽しみでしかありません』

 『確かにそうですね! おっと、ここでようやく後続のウマ娘達がゴール板を駆け抜けました! 2着は13番、3着は――――――』

 

 レースはお姉ちゃんの圧勝でした。

 他のウマ娘達を10バ身以上離しての大差勝ち。

 観客席は大盛り上がりで、歓声が響いている。

 それが聞こえたのか、お姉ちゃんはこちら側を向いて拳を上に伸ばしていた。

 

「はん、調子に乗ってカッコつけてるねありゃ」

「まあまあ、今日ぐらいは良いじゃないですか。結果だけ見れば快勝だったんですし」

「結果だけを見れば、ね。だが、まだまだ課題は残ってるよ。それに今回はダートだったけど芝での走りを見てみないことには……」

「えっ、先生それってまさか……」

 

 

 おばちゃんとお姉さんがなにか話してるけど、そんなのはもう耳に入ってこない。

 今、私の心はゴウゴウと熱く烈しく燃え上がっている。

 だけど頭はすごく冷静で……

 

 先程見たお姉ちゃんの走りを思い出す。

 

 スタートのタイミング。

 砂の上での走り方。

 直線での加速の仕方。

 息の整え方。

 絶賛されるほどのコーナリング。

 最後の末脚。

 

 軽く脚と身体を動かしながら馴染ませていく。

 当たり前だけど、完璧に覚えられたとは言えない。

 でも、短い間とは言えお姉ちゃんと何度も一緒に走った私なら……

 

 そんな事をしている内にお姉ちゃんと合流。

 でも、話をしている暇も無いまま私は控室へと移動することとなった。

 

 

 

 

 

 コース内に入場した私は砂の上で軽く脚を動かす。

 これなら、多分大丈夫。

 あとは見た事をそのまま試してみるだけだ。

 ファンファーレが鳴り響き、係の人に呼ばれてゲート内へと足を踏み入れる。

 少し狭く感じるけど、関係ない。

 

 

 

 さあ、今度は私の番だ。

 

 

 

 ガコンッという音と共にゲートが開く。

 それと同時に私は駆け出した。

 私には、お姉ちゃんみたいに後ろを引き離して走ることはできそうにない。

 でも、それでも、ただただゴールを目指して先頭を走り続ける。

 

 直線での加速の仕方は見た。

 息の入れ方は一緒に走って覚えた。

 コーナリングは完全に見様見真似。

 どれもこれもお姉ちゃんには遠く及ばない未完成な状態だけど、それでも今はこれが私の武器になる!

 

 心は熱く燃えている。

 

 頭は冷静なまま次の行動を考える。

 

 脚が重くなる。

 

 息が少しずつ荒くなってきた。

 

 

 それでも私は――――――

 

 

 

 

 結果は5バ身差で私の逃げ勝ち。

 お姉ちゃんの半分以下だけど、それでも満足する事ができる結果だった。

 …………また、走りたいなぁ

 今度は、お姉ちゃんと一緒に。

 

 

 そんなこんなで、私の初レースは終わりを告げたのでした。

 

 

 

 

 

 みんなと合流したら、お姉ちゃんになんか苦々しいって感じの目で見られました。

 ………………なんで?

 

 





 アルマちゃんは転生者ではありません。
 ただ単にちょっと精神年齢が高めなだけです。

 次回も幕間です。
 やっとタグ回収ができます。どうぞお楽しみに〜
 まて、次回!

ぱかぱか裏話
この世界にはもう一人・・・・・・
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