スキルチートなウマ娘になりまして。   作:coka/

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 序章開幕。




序章:幼少期篇
第1R:転生したらウマ娘!?


 

 最初に目を覚ましたのは寒空の下のベランダだった。

 

 何でこんなところで寝てるんだろう?と思った瞬間、頭の中がぐるぐると回り始める。

 一気に膨大な情報が脳内に詰め込まれ、頭痛と知恵熱で意識が朦朧とし始めた。

 おぼつかない足取りで部屋の中に入ろうと思ったが、鍵が掛かっているのかガラス戸は開かない。

 そして、そのまま私の意識は暗転する…………

 

 

 

 次に目を覚ました時、私は病院のベッドの上にいた。

 

「どこだろここ……病院?」

 

 起き上がろうとしてみるが、どうにも体が動かない。

 というか、体のあちこちが痛い様な気がする。

 後、なんか頭の上に違和感が……

 そんな風に思っているとまた頭痛がしてきた。

 そして、記憶が()()()

 

 学校で色々な勉強をしていた記憶。

 大人になって仕事をした記憶。

 ウマ娘のアニメを見て泣いた記憶。

 ウマ娘のゲームで遊んだ記憶。

 

 父親が別の女と出ていった記憶。

 ウマ耳の母親が暴れ狂って私を虐待する記憶。

 食事もろくに与えられず飢えた記憶。

 母親の彼氏が私をベランダに締め出した記憶。

 

 それは私の前世と今世の記憶。

 それらが溶けるように混ざり合い、私は思い出した。

 鏡で見た今世の自分の姿を。

 

 伸ばしっぱなしの長いクリーム色の髪、その上にある黒色のアホ毛とウマ耳。

 そして、お尻には黒色の尻尾がある。

 

 

 …………もしかして私、ウマ娘に転生した?

 

 

 その事実に放心していると、看護師さんが私の病室に入ってきて、驚いた表情を浮かべながらお医者さんを呼んでいた。

 

 これは後から聞いた話なんだけど、私の住んでた部屋の斜め上の住人が、たまたまベランダで倒れている私に気がついて救急車を呼んだらしい。

 そして、ここに運び込まれた時の私はそれはもうボロボロの状態だった様で……

 寒く冷たいベランダで寝ていたせいで、低体温症になり凍死寸前だった上に、痩せ細った身体はアザだらけ。

 すぐに虐待を疑われ、私の母親とその彼氏はそのまま逮捕された。

 担当医の先生曰く、まだ10月だったから良かったものの、これが本格的な冬とかだったら確実に凍死していたらしい。

 余談だけど、どうやら私は戸籍すら無かった様で、検査後に最初に書かされた書類が就籍届だったりした。

 と言っても、名前書いただけですけどね。

 

 あ、因みに私6歳です!

 なんというか世知辛ぁい…………

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 それからしばらくして……

 

 病院のご飯をモリモリ食べたおかげで、栄養失調気味だった私の体は子供らしいぽっこりお腹へと変貌していた。

 痩けていたほっぺたもプルプルである。

 しかし、1つだけ困ったことがあった。

 

 この体、めちゃくちゃ燃費が悪い!

 

 やはりウマ娘だからなのか1日3食バランス良く出される病院食では少し物足りないのだ。

 いやまあ、一般的な人間の子供に比べたら量が多いとは思うけどさ……

 

 といった感じで、ある程度の健康体を手に入れ余裕ができた私は、ここに来てようやく今の自分の状況を整理することにした。

 

 

 まず、私の前世の記憶。

 といっても、覚えているのは学校や職場で学んだ一般的な知識やウマ娘のアニメやマンガ、ゲーム関連の知識だけみたい?

 前世、誰とどこで何をしたかとかどういう風に死んだといった、所謂エピソード記憶については完全に抜け落ちている状態だ。

 というか、男だったか女だったかも良く覚えて無いんだけど……

 ただ、この世界では役に立つ事間違いなしだとは思う。

 

 

 そして、今世の記憶。

 といってもまだ6年程しか生きていないのであまり覚えている事は少ない。

 4歳ぐらいの時に、人間だった父親がどっかのお金持ちの女の人と出ていき、両親が離婚した事。

 ウマ娘の母親が朝から晩まで働いて、家には殆ど帰って来なかった事。

 たまに帰ってきたと思ったら食事だけ置いて出ていったり、機嫌が悪いと暴力を受けた事。

 ついには食事すら貰えなくなった頃に、母親が新しい男を作って帰ってきた事。

 その男に襲われそうになって反撃したら、男が怪我をしたので蹴り飛ばされてベランダに締め出された事。

 

 …………碌な記憶無いじゃないですかやだ〜

 

 うん、現実逃避は止めよう。

 とりあえず分かることは――――私の両親、両方共クズすぎない!?

 毒親も毒親だよコレ……

 あと多分だけど、母親の方は絶対()()()()お店で働いてる奴だ。

 確か年齢的にも結構若かった筈だし、妙にブランド物のバッグとかコートとか着てたし……

 新しい男もなんか危ない雰囲気の人だった気がする。

 というか、よく成人男性相手に反撃できた今世の私! 子供とはいえ流石はウマ娘! ガリガリだったけど力が違うんですよ力が!

 

 とまあ、今世のろくでもない記憶は脇に置いといて。

 いまは私の今後について考えないといけない。

 

 まず、懸念事項だった戸籍関係の問題は既に解決済み。

 医療費や入院費等に関しては、母親の口座から支払われる予定だから問題なし。

 だから、一番の問題は私の引き取り手に関してなんだけど……

 

 先ず最初に上がった父親に関しては足取りが掴めず断念。

 次に親戚関係だが、母親の両親は既に居らず他の親戚にも見捨てられている為、頼る事は一切できないと来た。

 うーん、人生……じゃなくてウマ娘生ハードモード過ぎない?

 全然プリティーでも何でも無いんだけど……

 

 そんなこんなで、私の引き取り手に困ってしまった。

 いくら前世持ちのウマ娘とはいえ、6歳児が一人で生きていくのがどれだけ厳しいかなんて事は考えなくても分かる。

 しかし同時に、今の私にはどうする事も出来ず、児童ウマ娘養護施設送りを待つばかりとなっていた。

 

 そうして無駄に時間だけが過ぎていったある日。

 

 

「あんた、高山市に来ないかい?」

「はい?」

 

 

 え、何? 誰このおばちゃん。

 というか、高山市? えっ、ここ岐阜県だったの!?

 あれ? という事は笠松まで行けばオグリキャップとかに会える? いや、でもシングレ見た限りだとちょっと微妙? あと単純にあそこに巻き込まれたくはない……

 

「私はね、高山でウマ娘の児童養護施設をやってるんだ。けどね、もうすぐ今居る子達が全員巣立って行く予定なのさ。で、あんたの話を聞きつけてここまで来たって訳」

「ああ、なるほど……」

 

 つまり、この恰幅の良いおばちゃんは私を迎えに来たというわけか。

 …………そういえばこの辺の地理について全然調べてなかったけど、この病院どこにあるんだろ?

 

「それにね、少し遠いが笠松の方まで行けば『岐阜ウマ娘カサマツトレーニングセンター学園』通称、トレセン学園がある。アンタが競走ウマ娘になりたいって思うんならそれが1番の近道だし、あそこに通えれば他の就職先も見つけやすいだろうね。もちろんそれ以外の選択肢もあるけど」

「はあ……」

「まあ、急に色々言われても困るだろうから、私の所に来る気があるならココに電話を寄越しな」

 

 そう言って、おばちゃんは電話番号が書かれた1枚の紙を渡してくる。

 

「あっ、電話の使い方分かるかい?」

「はい、それは大丈夫です」

「そうかい、それじゃあね」

 

 伊達に前世持ちではないのだ、それくらい分かる。

 まあ、今世ではまだ一度も使ったこと無いんだけどね?

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 ということで、再び脳内会議のお時間です。

 といっても考える議題はほぼ一つだけ。

 

 トレセン学園へ行きたいか行きたくないか。

 

 まあでも、答えは最初から決まっている。

 私はトレセン学園へ行く。

 せっかくウマ娘に生まれたのだから、このウマ娘生を謳歌したい。

 その為には、本能に従って全力で走る他ないと思う。

 だから私は競走ウマ娘になる為におばちゃんの所でお世話になるつもりだ。

 

 でも、どうせトレセン学園に行くのであれば地方じゃなく中央へ行きたい!

 だから、まず最初に目指すのは東京都府中にある『日本ウマ娘トレーニングセンター学園』。

 ……なんて、今の私が言っても某会長に中央を無礼(なめ)るなよされそうだけど。

 

 とりあえず、当面の目標は決まった。

 トレセン学園は中等部からの筈だから、使える時間はあと約6年。それまでに色々トレーニングとかをしなくちゃいけない。

 いや、あえて高等部からの入学にして自主トレに9年かけるのもあり?

 まあでも先ずは、あのおばちゃんに連絡しないとね〜

 っと、そういえば…………

 

「看護師さん。この病院のパンフレットとかある〜?」

「うん? ええっと、はいこれだよ〜」

「ありがと〜」

 

 私は病院のパンフレットの後ろを見る。

 大体、病院名や地域名なんかはこういう所に書いてあるからね。

 え〜っと、この病院の名前は……

 

 『木曽ウマ娘総合病院』

 

 …………木曽?

 えっ、木曽って長野県の!?

 あれ、ちょっと待って? てことは、私の所謂ウマソウルってもしかしてサラブレッド系とかじゃなくて……

 

 

「木曽ってこと〜!!??」 

 

 

 





 一話からちょっと重め。

 サラブレッドの血統では無いけどレース自体には出れるよ!な世界観でお送りします。
 もちろん、それで勝てるのかと言われると……

 次回は時間が一足飛びに過ぎていく模様。
 来週をお楽しみに〜
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