スキルチートなウマ娘になりまして。   作:coka/

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第16R:デビュー戦の後に

 一着 スノースウィート

 二着 フレチャアンヘル

 その差、アタマ差(約40cm)。 

 

「……だよね〜」

 

 掲示板に出た結果を見て私はそう呟いた。

 

 残り10mぐらいの所で、完全にスノー先輩が半歩程前に出ていた。

 負けじと私も距離を詰めようとしたけれど、間に合わずにそのままゴール板を駆け抜けていた。

 それ故に、この結果には納得でしかない。

 あ〜あ、逃げ切れなかったかなぁ……

 

 正直、反省点は多い。

 タイミングの問題で【序盤巧者】や【スリーセブン】を使うことができなかったし、スタミナを心配し過ぎて【しゃかりき】や【あやしげな作戦】を切る事ができなかった。

 特に後者二つは【二の矢】と比べてギャンブル性が高いしねぇ……

 それと、やっぱり距離系やデバフ系のスキルも取っておいた方が良いのかなぁ?

 でも、前世の私はそっちにスキルポイント割くぐらいなら作戦や汎用にってタイプだったみたいだから、私もそっちに引っ張られてるんだよね。

 今回、念の為に【リスタート】を取るか迷ったけど結局取らなかったし。

 ……流石にためらい系ぐらいは取った方が良いかなぁ?

 

 

 そんな風に一人反省会をしていたその時。

 ふと、勝者であるスノー先輩の方に視線を向けると、彼女は座り込んだまま息を整えていた。

 先に息を整え終わった私は彼女へと歩み寄り、手をさし出す。

 

「おめでとうございます、スノー先輩。ほら、早く立たないと、格好がつかないですよ?」

「ハァ…ハァ……なぜ…貴女はそんなにも余裕そうなのかしら?」

「アハハ、私スタミナだけはあるみたいなので」

「……そうだったわね」

 

 彼女は私の手を掴み、立ち上がった。

 そして、観客へと礼をする様に、片脚を斜め後ろの内側に引くカーテシーをしながら深く頭を下げる。

 

 体操服にブルマ姿とはいえ、彼女のそれはとても様になっていた。

 

 私は彼女に背を向け、地下道へと下がる。

 さて、負けたとはいえ2着である。ライブの準備をしないとねぇ〜

 そう思いながら歩いていると、目の前には私のトレーナーが。

 

「よう、お疲れ様」

「あはは……ごめんねトレーナー。勝てなかったや」

「他のウマ娘を大差で引き離しての2着なら充分だろ。むしろ、あの白雪姫が異常過ぎる」

「う〜ん、それは確かにそうかもね? でも、負けは負けだし」

「とりあえず、控室に戻るぞ。着替えもせにゃならんし」

「は〜い」

 

 そうして控室に戻った私は体操服からライブ用の衣装に着替え始めた。

 トレーナーは扉の外から私に話しかけてくる。

 

「それで? どうだったんだその固有スキルとか領域とかっていうのは」

「そうだね〜、やっぱり強力だと思ったよ。こう、心象世界っていうのかな? そういうのに引きずり込まれたと思ったら、突然後ろにいる先輩の圧が膨れ上がって少し寒気まで感じた。それからは見てもらった通り。一気に追いつかれて、並ばれて、ゴールギリギリでちょっと抜かれちゃった!」

 

 私がそう言うと、トレーナーは少し沈黙した後、

 

「楽しかったか?」

 

 と聞いてくる。

 

「うん! それはもう、凄く楽しかった! それに、スキルチートがあってもやっぱり勝てない事もあるんだって認識できたしね。慢心ダメゼッタイ!」

「……悔しい、か?」

 

 ? なんでそんな事を聞いてくるのだろうか?

 

「そりゃまあ、負けちゃったんだから少しは悔しいよ? 当たり前じゃん。でも、先輩が勝ってくれたのが嬉しいとも思うかな〜。あ〜、あれだよリスペクトリスペクト」

「そうか……またあの白雪姫と走りたいと思うか?」

「さっきからどうしたの? ああ、もしかしてトレーナー、私は負けて思いの外悔しかったとか?」

「いや、確かに俺も悔しいとは思うが、お前等のあんな走りを見せられたら嬉しいやら呆れるやらでなぁ……って、そんな事はどうでも良くてだな……」

「スノー先輩と走りたいかって言われれば、そりゃ走りたいよ? というか、先輩もティアラ路線らしいからこれから何度も当たる事になると思うし。次はリベンジしないとだね〜」

「そうか……まあ、今はそれでいい」

「なに? もしかして、私がもう先輩とは戦いたくない〜とか言うとでも思ってたの?」

「お前さんそんなタマじゃねぇだろ……」

 

 失礼な! 私だってもしかしたらそうなる可能性があるかもしれないじゃん!

 

 まったく、このトレーナーは私の事をなんだと思ってるのか。

 そりゃあ、前世持ちの非凡なチートウマ娘だけどさぁ。

 他のネームドウマ娘に比べれば結構マシな方だと思うんですけど? 割と優良物件なはずでは?

 まあ、今回負けたからちょっとマイナス評価だろうけどさ。

 

 そんな反省会とも言えない様な話をしながら、衣装へと着替え終わった私は扉を開ける。

 

「それじゃあ、バックダンサー頑張ってくるね〜」

「おう、行って来い」

 

 軽く手を振りながらトレーナーと別れる。

 よし、この為にダンスレッスンだってしてたんだし頑張るぞ〜

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 その後、無事先輩のライブは大成功を収めました。

 まあ、負けた子達は悔しそうにしてたり、なんか怖がってたりしたけど。

 

 そして、それから一週間後。

 

 

『フレチャアンヘル速い速すぎる! 後続を突き放しもはや独走状態! 後ろはもう完全に追いつけない! フレチャアンヘル、今大差でゴールイ〜ン!!』

 

 

 私は阪神レース場にて未勝利戦に勝利した。

 無事メイクデビューのライブも披露できてひと安心だね。

 

 

「お前、マジであのデビュー戦なんだったんだよ」

「ネームドやそれに連なる同格以上のウマ娘がいなきゃこんなもんなんじゃない?」

「その理屈は考えるまでもなくおかしいからな?」

 

 と、そんな会話をしながら私は脳内のスキルチートを確認していた。

 

 

 前回、デビュー戦での先輩のライブが終わった直後、軽い頭痛と共に新しいスキルを手に入れていた。

 それがなんと、前回使ったスキル達の金スキルだったの!

 その時は遂にゲットできたと滅茶苦茶喜んだと共に、いや遅いよとも思った。

 

 どうやら、前々から謎だった金スキルの解放条件は、公式レースで使ったスキルの金スキルがライブ後に解放されるという仕様みたい。

 実際、前回使えなかった【しゃかりき】や【あやしげな作戦】、【序盤巧者】の金スキルも今回この三つを使ったことで解放されていた。

 しかし、金スキルにはもう一つ解放条件があり、それが公式レースでの勝利だった。

 つまり、前回は敗北してしまったが為に、やっと手に入れた金スキルを取得する事ができなかったというわけだ。

 

 そんなこんなで、私は今回少々無理を言って早めに未勝利戦に挑ませてもらい、無事勝利したのであった。

 これで私も遂に金スキル持ちだよ!

 

 

 だが、公式レースに勝利した事で、前回よりも激しい頭痛と共にスキルチートにまた一つ新たな追加項目が……

 

 

「スキル合成…ねぇ……」

「そりゃまた、どういう能力なんだ?」

「まあ、名前そのまんまなんだけど、二つ以上のスキルを一つにまとめる能力だね。メリットとしては一つにまとめる事で使いやすく、そして元よりもほんのちょっと強くなるみたい。逆にデメリットとしては元のスキルを個別に使えなくなる事」

 

 例えば、【直線巧者】と【直線加速】を合成すると一つのスキルとしてほんのちょっと強くなった物を使えるけど、この二つの効果を向正面と最終直線で別々に使いたいと思っても個別には使えなくなるということらしい。

 

 いや、使い勝手難し過ぎない?

 それなら単純に、進化スキル化できる能力とかの方がありがたいんだけど!?

 しかもこれ、合成には一回100Ptもスキルポイントが必要。

 因みに分解もできて、ポイントは50Ptらしい。

 そして、この能力を解放するにはダートレースとGⅠレースで一回ずつ勝てとのこと。

 

「条件がわりと厳しい……」

「まあ、両方走れるお前さんじゃなきゃかなり厳しかっただろうな。 GⅠはともかくダートで1勝ってのは」

 

 

 そして、最後にもう一つ。

 パッシブスキルの最上段にて存在感を示している新しいスキルがあった。

 それは、本来であればシニア級でしか取得できない特殊スキルであり、私のこの脚質適性では本来手に入れられる可能性があまりにも低いスキル。

 

 

 

【大逃げ】

 

 

 

「未勝利戦とはいえ、公式レースを逃げで大差勝ちしたから解放されたみたいなんだけど……」

「…………なるほどな。よし、フレチャアンヘル。ちょっとこっち向け」

「はい? また急にどうしたの?」

「良いから、ほら」

 

 そう言ったトレーナーと私はお互い向かい合い、彼がジーッと私を見つめてくる。

 

「……ねぇ、これ地味に気恥ずかしいんだけど?」

「…………言うな……っ! やっぱビンゴか」

「?」

 

 トレーナーがメモ帳を取り出してサラサラと何かを書いていく。

 そこには私の脚質適性が書かれていて。

 

 

 芝 A ダート A

 

 短距離 A マイル A 中距離 A 長距離 B

 

 大逃げ A 逃げ C 先行 G 差し G 追込 C ???

 

 

 私の適性に大逃げが増えていた。

 しかも、御丁寧にAランクとして。

 どこのご都合主義だよとも思ったけれど、気になったのはそれだけではない。

 

「この???は一体?」

「知らん。前に見た時は無かったから、大逃げ同様にどっかのタイミングで増えたんだとは思うんだが、心当たりは?」

「全然無いねぇ〜」

「だと思ったよ。 とりあえず今後の方針は決まったな。その大逃げを試してみるしかない」

「あっ、じゃあさ。私、ダートレース走りたい! ダート系の金スキルも開放していかなきゃだし」

「……分かった、いくつかピックアップしておく。つってもジュニア級のダートレースはほとんどが九月以降だし、地方中心になるだろうけどな」

「全然オッケー! あ、忘れそうだったけど笠松で走れるなら走りたいからそれもよろしく!」

「了解。探しとく」

 

 という事で、私達の次の目標は大逃げを試しつつ、ダートを走ってスキルの解放を目指すという事になりました!

 なんだかんだ言いつつ、楽しみだなぁ〜

 

 

 

目標達成

ジュニア級メイクデビューに出走

 

 

↓NEXT

ダートレースで7勝・GⅠレースで1勝

 

 

 





 という事で、あっさりと未勝利戦に勝利しました。
 そしてまさかのスキルチートが色々と強化。
 実はこれ、元々は入学祝い的な感じでもっと早く出すつもりだったんですが、展開的にこのタイミングになりました。

 合成は正直、スキル発動描写を楽にする為の物でもあります。
 勿論、本編内でも今後重要になってくると思いますが……
 しかも、これが使える様になるのまだ先の話なので。

 別に舐めプしてる訳じゃないんだけど、距離系スキルとデバフスキルの扱いに地味に困ってます。
 まあ、この辺は作者の好み云々……

 次回は息抜き回か地方レースへ向けての会議回かで悩み中です。
 もしかしたら両方書くかも?
 それでは、また来週(次の日曜日)もお楽しみに〜
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