「おい、これは一体どう言う事だ!?」
トレーナーが一枚の紙を私に突きつけながら吠える。
そこには、私が書いた出走希望のレース一覧が書かれていた。
今日は会議をすると聞いていた為に、トレーナー室でその紙を渡してお茶の用意をしていた矢先のことである。
「何か問題あった?」
「問題しかないだろこんなもん!? どんなクソローテだよこれ!!」
緑茶を湯呑みに注ぎながら聞くと、彼は用紙をテーブルに叩きつけながらドカッと備え付けの椅子に座った。
うんも〜、そんな事したらお茶がこぼれるでしょ?
それにしても、何をそんなにカリカリしてるんだか。
「先ず、阪神ジュベナイルフィリーズとその前哨戦のファンタジーステークスは解る。桜花賞に進むんならここを走るのが王道だからな」
そう言って、トレーナーは赤ペンで用紙に書かれている二つのレース名に丸をつけた。
「次に、お前さんが元々走りたいと言っていた笠松のレースからピックアップされた、ラブプリンセス記念」
ファンタジーステークスの下に書かれたそのレースにも丸が付けられる。
「で、その次が全日本ジュニア優駿……お前、GⅠレース2つも出る気かよ」
「悪い?」
「…………いや、これに関しては百歩譲ってまだいいさ。変に朝日杯やホープフルにも出たいって言われるよりは全然マシだ。問題は他のレースだよ!!」
ジュニア優駿に丸を付けながらトレーナーが叫んだ。
「他の6つはどう考えたっておかしいだろ!」
その用紙に書かれていたのは全部で10レース。
09/26 園田プリンセスカップ
10/10 エーデルワイス賞 JpnⅢ *1
11/2 ファンタジーステークス
11/7 ラブプリンセス記念
11/12 金沢シンデレラカップ
11/19 ローレル賞
11/25 プリンセスカップ
12/8 阪神ジュベナイルフィリーズ
12/18 全日本ジュニア優駿
12/31 東京ジュニア優駿
実にクソローテと呼ぶにふさわしい物となっていた。
「なんなの、お前バカなの!? なんで11月にこんなにも詰め込んでんだ!?」
「走りたいなって思ったレースを書いたらこんな感じに……これでも減らしたんですよ?」
「減らしてこれとか、お前さんジュニア級で引退するつもりかよ?」
いや、全くそんなつもりはありませんが?
ちゃんとシニアまで走りたいと思ってるよ?
「つーか、中4日で京都、笠松、金沢の連闘とか流石に無茶が過ぎるだろ」
「京都からの帰り道なんだから別に問題はないでしょ?」
まあ、途中で北上する事になるけどね……
「ルートの問題じゃねぇわバカ。いくらお前さんの脚が他のウマ娘に比べて頑丈な方だとはいえ、こんなもん許可できるわけないだろ」
「えっ、でももう理事長さんの許可は貰ってきたよ?」
「なんだと!?!?」
だって、どうせトレーナーを説得できても秋川理事長やたづなさん辺りに反対されるのがオチだし、なら先にトップの説得を済ませておいた方が色々とスムーズでしょ?
「勿論、最初はかな〜り渋られたんだけど、私がどうしても走りたいんです!って力説したら嬉しそうに許可してくれたよ」
「流石は転生者…世渡りが上手いと言うかなんというか……」
まあ、一緒にいたたづなさんはちょっと苦い顔をしてたけどね。
後、本当に世渡り上手い人なら成績オールCとかにされないと思う。
「という事で、今年はこのローテーションで逝きます!」
「お前それ絶対行くのニュアンス違うだろ……いや、地方を大荒れさせる事になりそうだから間違ってはないのか?」
トレーナーは深い溜息をつきながら項垂れた。
まったく、細かい事気にしすぎるとストレスでハゲるよ?
「……前哨戦ならファンタジーステークスじゃなくてアルテミスステークスでも良いだろ。てか、日程的にそっちの方が―――「それを捨てるなんてとんでもない!」」
「なんなんだよその強いこだわり……」
いや、単にクラスメイトがいつか走る予定のレースだったはずだからっていう理由なんだけどね。
「……はぁ~、途中で脚に少しでも違和感が出たら絶対に言えよ? その時点でいくつか出走をキャンセルするからな」
「りよ〜か〜い! ありがとう、トレーナー!」
「言っても聞かない上に、先に外堀埋められてたらどうしょうもないだろ……」
「それもそっか。あっ、それでさ走るときの作戦なんだけど……」
今度は私がペンを取り、レースの横に作戦を書き込んでいく。
「園田から笠松までは大逃げを試しつつ、確実に勝ちを積み重ねて行きたいと思ってる」
「まあ、逃げCの現時点で大差勝ちなんてやってるからな。最初の園田での試用結果次第ではあるが、充分勝てるだろうさ」
「うん。で、金沢以降は追込みで行くつもり。金スキルの解放もあるし、試せる事は今の内に色々試しておかないとね〜」
「直前まで大逃げしてたウマ娘が追込みで走るとか……」
「勝てば誰も文句なんて言わないでしょ。そして、スキルと作戦を完璧に仕上げた状態でGⅠに挑む」
「……なぁ、やっぱり片方だけに「しません!」分かったよ。」
こうして、私達の今後のレース日程が決定した。
まあ、正直これ以上会議を重ねても鬼に笑われるだけなので早々に切り上げよう。
さてと、トレーニングトレーニング。
「おい待て。まだ他に決めることがあるだろうが」
「えっ? 何かあるっけ?」
トレーナーはおいおい、こいつマジかといった感じの表情で呆れていた。
はて? 本当に心当たりがないんだけど……
「はぁ〜……勝負服だよ。GⅠに出るんならデザイン考えねぇとだろうが」
…………夢膨らむ奴、来たぁ〜!!
⏱
とりあえず勝負服のデザインを二人であーでもないこーでもないと話し合い、一応完成したデザイン案と共に勝負服の申請を出した。
なんか、結局シンプルな感じでまとまった気がする……
「ああ、そういえば、お前に今度取材をしたいっていう話が来てるんだが」
「取材?…………あっ。それってどこの記者さん?」
「今回、取材依頼が来たのは二人だな。片方は月刊トゥインクルだ」
はい、予想通り。
恐らく、あの素晴らしいですっ!が口癖の某女性記者だろう。
アプリそのままだったらどうしよう……あの人のテンションと妄想混じりの拡大解釈は流石にちょっと疲れる。
まあでも、信用はできる記者さんだよね。
「もう一つは?」
「あー、なんか熱心にお前さんを取材させてくれって売り込んできたフリーランスの記者だとさ。なんでも、ネット上で自分の書いたウマ娘関係の記事を売ってるらしいぞ。定期購読とか過去記事のまとめ本とかな。あとは、ぱかチューブも使ってて割と人気があるとかないとか」
フリーの記者が未勝利戦に勝ったばかりの私を?はて、 一体どんな物好きなんだろう?
シングレに出てきた新聞社の二人ではなさそうなのは確かだろうけど……
「まあ、適当に聞かれたことに答えてればそれでいいさ。このクソローテを見たら度肝を抜くだろうけどな」
「それはそうかも」
というか、むしろ見せない方が良いまでない?
さて、これで今度こそ連絡事項は全て終わり。
トレーナーは私が用意したお茶を啜りながら考え事をしている。
まだ夕飯まで少し時間もあるし、私は軽くランニングでもしてこようかな〜
……あっ、そうだ。さっき、勝負服のデザインを考えてる時に思い出した事が有ったんだった。
「ねぇトレーナー、ちょっと夏の内に行きたい所があるんだけど」
「夏の内に?」
「うん。だから外泊届とか宿泊先の予約とか色々したいんだよね。できればトレーナーも一緒だとありがたいかも……」
「おいおい、そりゃまた一体何処に行くつもりなんだ?」
私はニッコリと笑顔を浮かべて言った。
「ちょっと御嶽山まで」
「はぁっ!?」
会議と言う名の伏線貼りまくり回。
今回は終始トレーナーが驚かされ続けました。
レースは2019年グランダム・ジャパン2歳シーズンから抜粋。
阪神と2歳優駿も2019年の物を採用しております。
これも初期から決めていたジュニア級での設定ですね〜
あらすじの師走より霜月の方が無茶無謀だろって?
前哨戦レースの事すっかり忘れてましたorz
まあ、この時代に中5日ルールは無いし余裕余裕。
ラブミーチャン記念は実装されてない上に、世代的にも後なので改変させていただきました。オグリ世代ど真ん中なのにオグリキャップ記念が有ったりしてもおかしいですしね。
次回は幕間の小話や記者回、久しぶりの掲示板回なんかをやっていきたいと思っています。
来週もどうぞお楽しみに〜
追記:どうやら全国交流競走の他地区出走枠に中央所属馬は含まれない為、本来は地方馬限定レースらしいです。
完全に勘違いしてましたorz
ウマ娘世界なので、中央所属でも交流戦なら出れるよ!というご都合主義で御了承お願いいたします……
ウララが中央所属だから行ける行ける()
ぱかぱか裏話
☆流石に今年のグランダム・ジャパンを参考には出来ませんでした。ファンタジーと盛岡のプリンセス中0日は無理。