スキルチートなウマ娘になりまして。   作:coka/

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 唐突な修行回。



第3R:霊峰

 

「山へ行くよ!」

 

 7月の中旬。

 おばちゃんが突然そう言って私を連れて来たのは、御嶽山の登山口がある温泉地でした。

 しかも、まだ朝の6時前なんだけど?

 

「なんでこんな所に?」

「アンタがスタミナを付けたいって、いつもいつもうるさいからここに連れてきたんじゃないかい」

「?????」

 

 良くわからない。なぜスタミナを増やす為に山でトレーニングを?

 足腰を鍛える為って事ならまだ分かるんだけど……

 

「ほら、さっさと走る準備をしな!」

「え、あっはい……」

 

 準備と言っても、体操服は既に着ているのでタオルぐらいだけどね。

 

「アンタには、今からこの道路を走ってもらうよ! 私はゴール地点で待機してるからね。車で15分掛からない程度の道だから、まあ今のアンタなら1時間ぐらいで着くだろう。じゃあ、他の車に気をつけながら頑張りな」

「えっ、マジで言ってる!?」

 

 私の返答も聞かずにおばちゃんは走り去ってしまった。

 え〜、これは流石にスパルタ過ぎない?

 あと、9歳の子供を置いてくのはどうなの?

 まあでも、やるしかないよねぇ。流石にここから一人で施設には帰れないし……

 

「よ、よ〜し、やるぞ~! えいえいむん!」

 

 

 ……1度言ってみたかったんだよねこれ。

 

 

 

 

 

「ふむ、1時間切ったねぇ。上出来上出来。ほれ、水飲みな?」

 

 そう言っておばちゃんは私に水を差し出してくる。

 だけど、私にそれを飲む余裕はない。

 というか今それ飲んだら吐くかも……

 

 おばちゃんが待っていたゴール地点までしっかりと走りきった私は、その場に座り込んでぜぇぜぇと息をしていた。

 昔みたいに大の字で倒れ込まないのは成長と言えるかも?

 

 今回走らされた道路はカーブと上り坂が多かった。

 いくら舗装されてるとはいえ、これはめちゃくちゃキツイ。

 あとなんか、何時もより少しだけ呼吸がしにくい感じもした。

 これでもし前世に何かで見た、マスクをしながらのランニングとかしたら絶対酸欠と熱中症で倒れると思います!

 

「今の内にしっかり休んで呼吸を整えておきな。この後は2箇所あるウッドチップのコースでトレーニングだよ!」

「む、む〜りぃ……」

 

 そんなこんなで、おばちゃんによるスパルタトレーニグは続いていった。

 

 先ずは長いウッドチップコースで体を慣らし、次に山を少し登った所にあるウッドチップコースを走る。

 上に行けば行くほど酸素は薄くなるので、めちゃくちゃ辛い。

 あと、途中うさぎ跳びでの周回をさせられたりもしました。

 …………これ、根性トレーニングとかじゃなかったっけ?

 

 その後、昼過ぎ頃までこれを続け、ヘトヘトの状態で少し遅めの昼食。

 正直、喉を通らないんじゃないかと思ってたんだけど、そこは流石ウマ娘。疲れていた分、普段よりもガツガツと大盛りのお昼ご飯を食べる事ができました。

 

 その後は来た道をまた走って戻らされ、今度は砂のコースを走る。

 どうやらここはクロスカントリーのコースらしい。走ったことないけど、多分ダートの砂よりも硬いだろうという事はわかる。

 そこを日暮れまで走らされて、本日のトレーニングは終了だった。

 

 

 

 

 

「ば、ばたんきゅ~」

「ほら、こんな所で倒れてないで温泉に行くよ!」

 

 今日宿泊する旅館に着いた私は、部屋に入るなり倒れ伏した。

 ああ、畳が気持ちいい……

 しかし、おばちゃんはそれを許さず、私をお風呂へと連行していくのでした。

 まあ、汗とか砂とかでもうドロドロだしねぇ。

 

 

「ぷは〜、生き返った〜!」

 

 はい、温泉で汗と疲れを流してサッパリしました!

 それにしても、お風呂上がりのコーヒー牛乳ってなんでこんなに美味しいんだろうね〜?

 

「この後は食事だけど、食べたら今日はもう早めに寝るんだよ?」

「は〜い」

 

 言われなくても、今日はもう疲れ果てているのでぐっすり寝ててしまうと思う。

 というか、明日も同じメニューやるのかな?

 今日一日でそこそこスタミナが付いた気もするけど、明日もとなると流石にキツそう……

 

「ああ、明日は山に登るからね」

「えぇっ!?」

 

 キツイとか言ってる場合じゃないかも……

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 岐阜県側からの御嶽山への登山道は2つ。

 その1つがここ、小坂口登山道である。

 昔は修験者や山岳信仰者が良く使っていたルートだったみたいなんだけど、なんか元々の登山道が災害の影響で潰れたらしく、迂回ルートを通って元の登山道に合流するらしい。

 

 時刻は午前9時過ぎ。私達は今、その登山口の前に立っていた。

 

「荷物は持ったね?」

「うん」

 

 まあ、荷物と言っても私のリュックサックには2リットルの水が入ったペットボトル2本しか入ってないんだけどね。

 あとはタオルと腰に下げた水筒のみ。

 因みに服装は、いつもの体操服の上からジャージの上下を着て帽子を被っている。あと、おばちゃんがいつの間にか買ってくれていた登山靴。

 対象的に、おばちゃんのリュック……というか大容量のバックパックにはなんか色々入ってるみたい。

 そして服装もなんか本格的な感じ。

 ……あれ、もしかしてこれ山頂付近でお泊まりだったりする?

 

「よし。じゃあ、今回アンタは初めての登山だから私の後ろについて慎重に来るんだよ。途中休憩を挟んだりはするけど、こまめに水分補給をしながら、登るペースはあまり落とさない事を意識しな」

「は〜い」

 

 ということで山登りがスタートしました。

 

 最初に板である程度舗装された林道を小走りで通る。

 その後、木材や石で作られた登山道に入った。

 一部、通りにくい所はあるけど、この辺はまだまだ余裕。

 そして、登山開始から約1時間ぐらいで最初の休憩。

 

「あれ? なんか臭う?」

「これは硫黄の匂いだよ」

「へ〜! あっ、鐘がある。鳴らしてみよ〜」

 

 そんな感じで休憩をして、また登り始める。

 しばらくすると小屋が見えてきた。あと、また鐘がある。

 

「この先は岩や砂利が多いから気をつけるんだよ?」

「は〜い」

 

 少し休憩してから岩と砂利の道を登っていく。

 これが結構キツくて、一気に体力を持っていかれた。

 しかも、酸素が薄くて呼吸もし辛いから余計にツライ……

 そしてペースが落ちそうになると、早く来な!とおばちゃんからの檄が飛んでくる。

 控えめに言って地獄かな?

 

 それから数十分後、私達は八合目に到着しました。

 標高はなんと2450mらしい……うん、正直ピンとこない。

 あと、なんか元々給水所みたいな所だったのか『お助け水』という名称がついていた。

 なお、お水は出てませんでした…………

 

「ここからは更に道がキツくなるから、気をつけなよ」 

「は……は…い……」

 

 因みに、この時点で私の体力はわりと限界です。ついでに水筒の水も無くなりました。

 休憩中におばちゃんがあんパンとお水くれなかったら諦めてたかもね。

 

 ある程度私の体力が回復したので登山再開。

 ゴツゴツとした岩の道を、ペースを落とさないように登っていく。

 なんか、周りにある低いマツの木が可愛い。

 そういえば、八合目の看板に森林限界とか書かれてた気がする。なるほど、これより高い木は生えないんだね。

 あと、右側を見てると下に滑り落ちそうでちょっと怖い……

 

 そうして岩と砂利の道を進んでいき、私達は大きめの小屋と池がある場所まで辿り着いた。

 

「はい、到着だよ。先に山頂の方に行こうか」

「はぁ……い……」

 

 ということで、私達は小屋の裏手にある山頂へと向かった。

 いや〜、それにしても疲れた。

 でも、なんとか頂上まで来ることができたね!

 これは良いトレーニングになったんじゃないかな〜?

 

 山頂には祠があり、看板には()()()()標高2811mと書かれていた。

 …………あれ? "飛騨"山頂? 御嶽山頂上とかじゃなくて?

 

「どうしたんだい?」

 

 私はサーッと血の気が引き、おばちゃんの顔を見た。

 おばちゃんは悪戯が成功したかのように薄っすらと笑みを浮かべている。

 や、やられた!?

 

「ふん、どうやら気付いたみたいだね? そう、ココはまだこの山の頂上じゃないよ。今日はさっきの山小屋に泊まって、明日また頂上を目指すのさ。ほら、小屋の方を向いて景色を見てみな」

 

 おばちゃんに言われるがままに景色を見る。

 そこには池とここより高い山があり、更にその奥にゴツゴツとした山があるのがうっすらと見えていた。

 

「あの奥の山が頂上だよ」

「ひへ〜、もうむ〜りぃ……」

 

 

 残念、私の冒険はココで終わってしまった!

 

 

 

 

 

 

 はい、終わらせてもらえませんでした……

 

 

「私は受付をして来るから、そこの畳の所でコレ食べながら待ってな」

 

 そう言って、おばちゃんは私にビニール袋を渡してくる。そこそこの重さがあった。

 

「あ〜、もう歩きたくな〜い〜」

 

 衝撃の事実に絶望したまま、私は靴を脱いで畳に寝転がる。

 こうしていると、段々ココから動きたくなくなってくる。

 なるほど、これは人をダメにする畳だったのか〜

 

「あ、ヤバいこれ本当に寝心地が良い。このまま寝ちゃおうかなぁ」

 

 なんて独り言を呟いていると、唐突にグゥ〜っとお腹が鳴った。

 そういえば、ここまでお水と軽食のみでお昼ご飯すら食べてなかったね……

 時刻はとっくに12時を回り、もうそろそろおやつの時間だ。

 私はおばちゃんに貰ったビニール袋の中身を見る。

 そこには新しいお水と大量のおにぎりが入っていた!

 あと、なんかパンパンに膨らんだポテトチップスの袋。

 

「お〜、すごい。こんなに膨らむんだ……」

 

 気圧とかの関係で密閉された袋が膨らむのは知識として知ってはいたけど、実物を見るのは初めてだった。

 地味に感動を覚えつつ、私はおにぎりを頬張る。

 丁度いい塩加減の鮭おにぎりがめちゃくちゃ美味しい!

 ふと、疲れとか今明かされる衝撃の真実ゥとかでそれどころではなかった、此処からの風景にちゃんと目を向けてみる。

 

 池とその奥に見える山の眺めがとても良く、少し肌寒く感じる風が心地良い。

 あ、なんか鳥が一匹飛んでる〜

 しかし唐突に、明日はあの山に登るんだなと思い出し、なんともモヤモヤとしてくる。しかも、あそこはただの中間地点という……

 

 そんな微妙な気持ちにはなりつつも、景色に癒やされながらお腹を満たす。

 すると、飲み物とお皿を持ったおばちゃんがコチラに戻って来た。

 

「ほら、シフォンケーキ貰ってきたから食べな」

「わ〜♪ ありがとうおばちゃん!」

「まあ、今日はゆっくり休むんだね。明日はあの山を超えて頂上を目指すんだから」

 

 おおう、唐突に天国から地獄へ落とされた気分。

 ……なんか、おばちゃん飴と鞭の使い方上手過ぎない? いやまあ、鞭多めな気もするけどさ。

 

 そんなこんなで、私の初登山一日目が終了したのであった。

 

 

 

 

 

 …………夕飯後に出された、薪ストーブで焼いたピザはめちゃくちゃ美味しかったです。

 

 





「そういえば、私達以外の登山者全然居なくない? 数人程度しか会わなかった気がするけど」
「こんなクソ暑い夏休み前のド平日に登る奴なんかほとんど居ないさね」



 高地トレーニングって知ってますか?

 はい、という事でなぜか修行回という名の登山回が始まりました。
 というか、描写細かくし過ぎてまさかの三部作に……
 今回は前編という事で、あと二回ほど9歳編は続きます。
 
 次回も登山回。頂上を目指して登り、トレーニングを始めます。そして、新たな出会いも……?
 来週もお楽しみに〜





ぱかぱか裏話
☆子供の頃に登らされた時と様変わりしすぎてて、調べるのにめちゃくちゃ苦労しました。
描写が細かすぎるのは多分そのせい。
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