スキルチートなウマ娘になりまして。   作:coka/

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第4R:頂上と神の鳥

 

 登山二日目、午前7時。

 

 私達は昨日泊まった五の池(おばちゃんに聞いた)から、頂上を目指して登り始めた。

 勿論、私は昨日と同じく4リットルのペットボトルが入ったリュックサックを背負っている。

 まあ、それは良いんだけど、問題は脚の方。

 なんか体力は戻った感じがするけど、脚がいつもより少し重く感じるんだよね。

 一応、夜に軽くマッサージとかをしておいたんだけど、どうやら疲労感は抜けきらなかったみたい。

 これは結構キツそう……?

 いやいや、せっかくここまで来たんだから最後まで頑張らないと!

 

 最初は山小屋から見えていた摩利支天山の方へ登る。

 ここもゴツゴツとした岩の道なので、少し慣れてきたとはいえ結構キツイ。

 それでもおばちゃんは昨日と同じぐらいのペースで登っていくのでしっかりと後ろを着いていく。

 ……はっ! これはまさか、あの伝説の『ついてく、ついてく』!?

 そっか、私いつの間にかライスシャワーになってたんだ!

 そう考えると、この登山をもっと楽しめそう!

 ついてく、ついてく……ついてく、ついてく……

 

 

 そんな感じで、私は勝手に気を取り直して摩利支天山を超え、避難小屋まで来ることができた。

 先の景色を見てみると、開けた砂利道がある。そしてその先には昨日薄っすらと見えていた頂上の山が確認できた。

 

「ここまで丁度1時間か。良いペースだね。とりあえず一旦ここで休憩するよ」

「は〜い」

 

 15分ほど休憩をして、下の砂利道へと降りていく。

 因みにおばちゃんに聞いた所、ここは『賽の河原』という名称らしい。

 …………それって、死んだ子供が石積んでる所じゃ無かったけ?

 あっ、だから石を積んだ塔みたいなのが沢山あるんだ。

 

 その賽の河原を超えて、また岩の多い砂利道を登っていく。

 しかし、今までに比べれば歩きやすい場所なので、ペースを落とすことなく登る事ができた。

 この3日間でスタミナがついたのか、今は息苦しさもあまり感じない。

 これ、既にトレーニング成功なのでは?

 そうこうしている内に、大きい小屋と枯れた池のある場所へとたどり着いた。

 というか、御嶽山って池多いんだね。昨日泊まった所も"五"の池だったし……

 因みにここは二の池らしいです。

 

「今日はこの山荘に泊まるよ。まあ、先に山頂まで行くんだけどね」

 

 なるほど! ここをキャンプ地とするんですね!

 いや、別に車中泊でもテントでもないんだけどね。でもなんか、前世の知識的に一度言ってみたかったんだよね〜

 

「さて、この先は二手に分かれてるんだけど、今回は池を左の方からぐるっと回って登っていくよ」

「えっ、それって遠回りなんじゃ?」

「ふん、これがトレーニングだってことをもう忘れたのかい? ちょっとぐらい遠回りするぐらいが丁度良いだろう? 帰りは近い方を通るから安心しな」

 

 何を安心すれば良いのでしょうか……?

 

 おばちゃんは宣言通り池の上を通るルートではなく、左側の迂回ルートから登り始めた。

 まあ、結局私はついてく事しかできないんだけどね。

 この道は今までと同じように、砂利と時々岩がある。

 しかし、流石の私も同じ様な道には慣れてきたみたいで、この程度ではあまり疲れなくなってきた。

 ただ、標高が上がったからなのか息苦しさだけは健在なんだよね。むしろ、前よりキツくなってる気がする……

 

 あと、途中で見えた景色は正に絶景でした。

 

 

 元ルートと合流したら、ついに頂上を目指す。

 そしてなんとここで朗報!

 この先の登山道は砂利道なんだけど、石と木で作られた階段が点在していて割りと登りやすくなっているみたい!

 ということで、相も変わらず私はおばちゃんについてく、ついてくしながら意気揚々とラストスパートを掛けました。

 

 

 はい、もうバッテバテです。

 

 

 いや、体力的にはまだまだ余裕があるんだけど、酸素が薄くてどうしても呼吸が浅く荒くなる。

 

「一旦止まって深呼吸しな!」

 

 おばちゃんに言われて私は直ぐに鼻から大きく息を吸って口からゆっくり息を吐く。所謂『腹式呼吸』である。

 実はこれ、登山初日におばちゃんから教えられていた事だったりする。

 

『いいかい、息が苦しくなったら深呼吸をするんだよ。鼻から大きく息を吸って、口からゆっくりと吐くんだ。そうすれば直ぐに楽になってくるからね』

 

 本来は息を吸った後に2秒程息を止めたりするみたいなんだけど、今回はやりやすい方が選ばれたらしい。

 実際、数分程深呼吸を続けると息苦しさが弱まっていた。

 

 そんなこんなで、私達は辛く厳しい山道を登りきり、御嶽山頂上へと到着したのであった!

 

 

 

 

 

 

「ゼーッ…ハーッ……もぉ〜……むぅ…り〜……」

「なんだい、まだ10往復しかしてないじゃないかい」

 

 もう10往復もしたんですが!?

 ただでさえ空気薄いのにこれはキツすぎるよ〜!

 

 

 頂上に到着した余韻に浸る間もなく、次のトレーニングが始まった。

 その内容は、避難シェルターから頂上にある奥社までを結ぶ石段を全速力で往復するというものだった。

 酸素が薄い上にそこそこの長さがある為、めちゃくちゃキツイ。いや、確かにスタミナと根性は付くと思うけどさぁ……

 因みに、他の登山者がほとんど居ないからこそできるトレーニングだったりもする。

 

「まあ、酸欠とかになられても困るからね。とりあえずは息を整えて休憩だよ。ほら、水飲みな?」

 

 はい、ここに来て持ってきた4リットルのペットボトルが大活躍です。

 といっても、そのままだと一気に全部飲み干しそうだから、おばちゃんが私の水筒に少しずつ入れてくれてるんだけどね。

 

「今日はこれを15時半ぐらいまで続けるよ!」

「ひへぇ〜、もう本当にキッツい」

 

 まあ、体力付ける為にはやるしかないんですけどね!

 

 そんな感じで、休憩や昼食を挟みつつ時間一杯まで階段ダッシュを繰り返し、ガックガクの脚で40分程かけて二の池の山荘まで戻った。チェックインが16時半までだったんだってさ。

 和室の部屋に通され、私は倒れる様に大の字で畳の上に寝転がる。

 

「ほらほら、そんな所で寝てないでコレで体を拭きな!」

「わっぷ!」

 

 そう言いながら、おばちゃんが私に濡らしたバスタオルを渡してくる。

 顔にバサリと乗っかり、あわや溺死させられるのかと思った。

 体を拭いて着替え、17時半に夕食を取る。足りなかったので親子丼と山菜うどんをおばちゃんにおねだりして注文しました。

 

「いいかい、脚のマッサージはこうやるんだ。ただ揉んだり伸ばしたりするだけじゃダメだよ!」

「は〜い」

 

 その後、おばちゃんに脚のマッサージをしてもらいながらやり方を教えてもらう。

 なんかすごく脚が楽になった。おばちゃんマジで何者?

 そんな疑問を他所に、私達は20時頃に就寝。

 明日の朝ごはんは早朝5時半らしいです! 早っ!?

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 はい、やってきました三日目!

 朝食を5時半に取り、現在は6時半。

 本日は少し下って賽の河原でトレーニングをする。

 といっても、ぐるぐる周ったりジグザグに移動しながら軽く走るだけだけど。

 ペースはジョギングよりも早くランニングよりも少し遅いスピードでと指定されました。

 これをお昼頃まで続けて、また山頂で階段ダッシュをするみたいです。

 因みにおばちゃんは、無茶だけはするなと言って山荘の方に戻りました。

 

 それで良いのか保護者……

 

 私は柔軟を終えて走り始める。

 昨夜、丁寧にマッサージをしてもらったおかげで、昨日よりも脚は軽かった。

 あれだけ階段往復したのに、ウマ娘の身体って不思議だね?

 それに、息も全然上がらなくなっている。

 これは既にトレーニングの効果が出ているのでは!?

 よ〜し、お昼まで頑張って走ろ〜

 

 

 そんな感じで賽の河原を適当に走り回ること約1時間。

 突然、()()()は現れた。

 

 

 体の半分が黒っぽい毛で覆われ顎の辺りが白く、もう半分は白い毛で脚まで覆われた一羽の鳥さん。

 その太めの足は毛で覆われてモフモフしており、目の上には赤い眉の様な物がある。

 

 いつからそこに居たのかは分からないが、その鳥さんはなぜかコチラをジッと見つめていた。

 私も脚を止めて、その鳥さんを見入ってしまう。

 なんだろうあの子……可愛いんだけど、なんかすごく神秘的な感じがする。 

 じ〜っとお互い見つめ合っていると、鳥さんがトコトコとこちらに歩いてきた。

 えっ、なに? もしかして、すごい人懐っこいとか? いやでも、私餌とか持ってないしなぁ。

 なんて呑気に考えていると、もう足下までその鳥さんが来ていた。

 

「え〜っと、おはようございます?」

「グワーゥ」

 

 おお〜、私の挨拶に反応したのか鳴いてくれた。

 可愛いな〜でも触ったりはできないんだよなぁなんて思っていると、鳥さんはバサッと翼を広げて飛び上がる。

 そしてそのまま……

 

「えっ!? ちょっと待って、これどういう状態!?」

「グァ」

 

 なんと私の頭の上に乗ってしまいました。

 いや、なんでやねん。

 

「えっと、鳥さん退いてくださいませんかね?」

「…………」

 

 あ、はい。退いてくれないんですね……

 私はその場に立ち尽くしたままどうすれば良いのかを考える。

 多分、こういう山の上にいる鳥さんとかって絶滅危惧種だったり貴重な鳥だったりするだろうから、無理矢理頭から退かすのも憚られる。

 かといってこのままにするのも…………まあ、いっか!

 走ってれば、そのうち振り落とされるか飛んでどこかに行くだろうしね。

 ということで、私は鳥さんを無視してトレーニングを再開したのだった。

 …………頭重い。

 

 

 

 

 

「アンタ、なんてもん頭に乗せてんだい……」

「なんか、懐かれた?みたいです。もしくは見下されてるか」

「グァ」

 

 あれから約4時間が経ち、おばちゃんが私を迎えに来る。

 はい、鳥さんは全く退いてくれませんでした!

 走ってるからかなり揺れているはずなのに、なんか地味にバランス取るのが上手くて、私の頭の上でリラックスしてたみたいです。

 ついでに、頭が重いので変に体力を持っていかれました。

 あ、あと珍しいからか道行く登山者に写真を撮られまくったよ。

 一部の人にはなんか拝まれたりとかもされました。

 

「珍しいねぇ。ライチョウは人懐っこい方ではあるけれど、誰かの頭の上に乗ったりとかはしない筈なんだけどね」

 

 まさかの事実。この鳥さん特別天然記念物でした。

 へ〜、ライチョウって初めて見たけどこんな感じなんだ。

 それはそうと、いい加減頭から降りて貰えませんかね?

 

「ググ、グワーゥ」

「あ、やっと降りてくれた」

 

 そして、そのまま翼を広げて綺麗に岩の上に着地するライチョウさん。

 

「さて、それじゃあ今から昼食を取って頂上に戻るよ!」

 

 そう言っておばちゃんは私に塩おにぎりとお水をくれました。

 どうやらお米と飯盒を持ってきていて、それで作ったみたいです。めちゃくちゃ美味しかった。

 

 おにぎりを食べた後、頂上に戻り昨日と同じく階段ダッシュを繰り返して、日が暮れる前に山荘で夕食を取りました。

 ただ、なぜか山荘と頂上を行き来する時にライチョウさんが付いて来たりした。

 なぜ?

 

「本格的に懐かれたんじゃないかいアンタ」

 

 おばちゃんはそんな事を言っていた。

 でも、私がハイマツの実を渡そうとしても無視されたよ?

 やっぱり見下されてるんじゃ……

 因みに赤い眉みたいなのは肉冠というもので、その大きさと毛の色で雄雌が違うみたい。彼はオスらしいです。

 

 そんな感じで三日目も終了した。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 四日目の朝。

 今日、私達はついに下山する。

 

「帰りは下りだからね。登りよりは楽だけど、気を付けて降りるんだよ!」

「は〜い」

 

 私達は二日間お世話になった山荘を後にし、山を降りる。

 とりあえず五の池小屋まで行ったら休憩するみたい。

 そんな感じで昨日走り回った賽の河原で降りると……

 

「グワーゥ」

「あ、ライチョウさんだ」

 

 おそらく、昨日と同じライチョウさんに出会う。

 

「私達今日帰るんだぁ。バイバイ!」

 

 私が彼に挨拶をして踵を返すと、不意に引っ張られる感覚を覚える。

 振り向くと、ライチョウさんがクチバシで私の服を掴んでいた。

 

「え、えっと、離してくれると嬉しいんだけど……」

「…………」

 

 え、そこで無視ですか? 困ります、お客様ぁ……

 ライチョウさんは私の服を掴んだまま、昨日と同じくこちらをジ〜と見てきた。

 

「わ、わかったよ。来年っ! 来年また会いに来るから。だから離して!」

「……グァ」

 

 なんか、渋々といった感じで服を離してくれました。

 でも、他にもライチョウは生息してるみたいだし、来年また来た時にこの子と判るだろうか?

 いや、なんとなく分かりそうではあるけどさ……

 う〜ん。あ、そうだ!

 

「はい、目印も兼ねてこのハンカチ首に巻いておくね。まあ、失くしちゃっても大丈夫だとは思うけど」

 

 私はカバンに入れておいた白いハンカチを折って、ライチョウさんの首の辺りに巻く。結び目は解けないようにしっかりと結んだ。

 

「じゃあ、またねライチョウさん」

「グワーゥ!」

 

 ライチョウさんは翼を片方だけ上げて、私に挨拶を返してくれた。

 …………えっ、賢すぎない!?

 

「良いのかい、あんな約束して」

「まあ、キツかったけどなんだかんだ楽しかったし、来年もトレーニングをしに来れば良いかなって」

「そうかい」

 

 そうして、私の初めての登山は終わりを迎えたのであった。

 

 

 因みに、下山して直ぐに入った温泉はめちゃくちゃ気持ちが良かったです!

 





 9歳中編。
 ぶっちゃけ、雷鳥を出したかっただけの登山回でした。

 因みに作者は登山にわかなので、ザレ場とかガレ場とか良くわかりません。だからそのへんの描写は砂利道で統一してます。

 次回はまたトレーニングをして、どれだけスタミナがついたのかを確かめさせます!
 来週もお楽しみに〜




ぱかぱか裏話
☆元々は御嶽山じゃなくて白山に登らせる予定でしたが、雷鳥がほぼ絶滅してる状態らしいので断念しました。
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