やっと、修行回ラストです。
ここまで細く描写する必要あったのかしら……
貴様〜。見ているなっ!
初めての登山を終えて温泉に入り、旅館で泥の様に眠った次の日の朝。
私は五日前と同じ道路を走っていた。
というか、もう五日も経ったんだね……
ずっと山に上にいたからなのか、時間の感覚が少し狂っている気がする。
閑話休題
おばちゃん曰く、登山とトレーニングによってスタミナがどれだけ付いたのか試そうという事らしい。
そんなこんなで、私はまたおばちゃんの待つ約6km先のゴールを目指して走っていた。
しかし、走り始めて十数分。既にその成果を実感できていた。
こんなにも早く走ってるのに、全然息が上がらない!
しかも、カーブや坂道もあまりキツくなくなってる。
まさか、本当に1回の登山でここまでのスタミナが付くなんて……
「これなら、行ける!」
私はペースを少し上げながら走り続ける。
流石に息がキツくなってくるが、前と比べればまだまだ余裕がある。
そうして、私は前回の半分程度でおばちゃんのいるゴールまでたどり着くことができたのだった。
「すぅ、はぁ〜っ…すぅ、はぁ〜っ……やっぱりキッツい……」
「ふむ、前のタイムよりは早くなったねぇ。それに少しは余裕もありそうだ」
「まあ…少し…は……」
本音を言うと、わりとギリギリだけどね!
しかしそれでも、前回の様に座り込んでしまう程息も上がってないし、脚もそこまで疲れてはいない。
す、すごい。これがあのキツかったトレーニングの成果!!
「まあ、今回やったのは脚腰と体力を鍛えつつ、正しい呼吸方法を身に付けさせる事だからね。どうだい? 呼吸のやり方一つでここまで変わるんだよ」
なるほど、今まで私が走る時はいつも口から吸ってそのまま吐く呼吸をしていた。
しかし、今回は登山の時にやっていた腹式呼吸を半ば無意識に使っていた為、そこまで疲れなかったということらしい。
……もしかしてスタミナの方はあんまり変わってなかったりする?
「さて、次も前回と同じ様にウッドチップのコース2つと砂のコースも走るよ。ほら、早く来な!」
「は、は〜い……」
ということで、今回もウッドチップコースを走る。
…………そんな、脚が前よりも断然軽い!
うさぎ跳びもキツイはキツイんだけど、前回ほどじゃないんだよね。
なるほど、慣れない足場を何度も登ったり、ぐるぐる走ったりしてたからウッドチップのコースでも走りやすく感じてるんだ。
本当に脚の方も鍛えられてたみたい。
続く砂のクロスカントリーコースも、高低差があった賽の河原よりも走りやすくて難なくこなす事ができている。
あと、頭が軽いのでめちゃくちゃ楽に走れました。
⏱
今日のトレーニングが全部終わった。
そして、前回の様に倒れ伏しそうなぐらい疲れてはいない。
「たった一回の登山でここまで成長するなんて……」
「まあ、そんだけアンタの吸収が早かったってだけさね」
「つまり、来年も登ればもっと成長する可能性も?」
「まあ、それはアンタ次第だよ。良かったね、約束を果たせる大義名分ができたじゃないか」
なんだか、おばちゃんに上手く乗せされている気がしないでもないけど……
まあ、いっか! 強くなれるならそれはそれで嬉しいし。
「というか、結局おばちゃんって何者なの?」
「ふん、ただの養護施設の園長さ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
いやいや、絶対嘘でしょ……
そもそも、あの養護施設自体ちょっとおかしい。
昔は幼稚園・保育園だったという事から、100mのトラックを作れる広さのグラウンドがあるのはまだ分かる。
でも、施設の別室にジムの様な設備が揃っているのはどう考えてもおかしい気がするんだけど?
チラッと見た程度だけど、ランニングマシンやサンドバッグ等色々な機材があったのを覚えている。
あと、来客用の園長室にもなんか賞状とかトロフィーっぽいのが飾ってある様にも見えた。
それに、やたらこういうトレーニングとか競走ウマ娘の事とかについて詳しいんだよね……
昔、笠松とかでトレーナーでもやってたのかなぁ?
なんて、そんな疑問を抱えつつ私は今日もぐっすり眠りについたのでした。
◇◇◇◇◇
「今日はここを走ってもらうよ!」
最初のトレーニングからついに1週間が経った七日目。
早朝から車で向かった先はゴルフ場だった。
「えっ、ここ走っていいの?」
「とりあえずは8時までだよ。その後は旅館に戻ったり昼食を取ったりして、15時から18時までもう一度走らせる」
ふむふむ、なるほど。
どうやら、ゴルフをしていない時間はランニングコースとして芝の上を走ることができるってことなんだって。
「今回のトレーニングはここを走ったらおしまい。今日はもう家に帰るからね」
「は~い」
ということで、まずは午前の部。
芝に慣れる為に時間一杯までランニングをする。
おお〜、芝生の上を走るのってこんな感じなんだ!
ウッドチップや砂のコースと違ってめちゃくちゃ走りやすい気がする。脚への負担もそんなに感じない。
ただ、柔らかい芝生の上は滑りやすいので注意が必要だね。
実際、朝露のせいもあってかランニング中に何度か滑りそうになったよ……
そんな感じで、午前中のランニングは終了。
ず〜っと走り続けてたけど、そんなに疲れなかった。
やっぱり、スタミナの方も増えてはいるっぽい?
まあ、まだ全速力で走ってはいないしね〜
⏱
旅館に戻って汗を流した後、朝食を食べてチェックアウト。
施設の職員さんへのお土産とかを買ったりしながら、昼食を取る。
そうして、私達はゴルフ場へと戻ってきました。
「それじゃ、今から18時まで朝と同じコースを全力で走ってきな。ただし、絶対無理だけはするんじゃないよ? あと、小まめに水分補給もしな。ほら、行っておいで」
「行ってきま〜す」
はい、ということで私は芝生のゴルフ場を全速力で走って行く。
脚が軽い。息もそこまで苦しくない。
風を切って走る感覚がとても気持ちいい!
なるほど、世のウマ娘達が全力でターフを駆け抜けたがる理由が良くわかる。
こんなの覚えたら、そりゃみんな競走ウマ娘目指すよね……
しかし、ずっと走り続けていると流石に足が重くなってくる。
だか、それでも私は走り続けた。
息の方はまだ上がってない。
腕を振り、身体が捻るのももどかしい。
背負っているリュックサックが邪魔だ。
もっと脚を早く動かせ! 姿勢をもっと低くしろ!
ほら、ほら、ほら、ほら、まだまだ行けるよ!
「あはははははは、たっ――のしい!」
ランナーズハイという奴だろうか?
なんだか、めちゃくちゃ気分が良い。
思考がぼんやりとしてきているのに、意識ははっきりとしている。
いつまでも、どこまでも走れそう!
ああ、それでもやっぱり息が荒くなってくる……
体力の限界。スタミナ不足。呼吸が続かず、少し息が詰まる。
どれだけ走ったのか、どこまで走ったのかももうわからないけれど、今回はここまでみたい。
でも、それでも……もう少し。あと少しだけ!
刹那、プツンッと一瞬意識が途切れる。
無意識に足は減速をしはじめ、ゆっくりゆっくりと私は芝生の上に倒れこんだ。
あっ………あっぶなかった〜!?
あれ、あのまま完全に意識飛んでたら私大怪我してたんじゃない!?
もしかしたら、最悪の場合が死んでいたかもしれない……
前世の競走馬とかもそれで亡くなってる事多いみたいだし。
いや、ホント無理は禁物ってこういう事だよね。
幸い、芝生の上だったので倒れ込んでも擦り傷すら付かなかったけどさ。
私はゆっくりと起き上がってその場に座り込む。
まだ少し頭がボーっとしているが、深く深く深呼吸をすることで無理やり覚醒させた。
リュックから水筒を出して水を飲む。塩分補給用に持たされためちゃくちゃしょっぱい塩おにぎりを食べる。
タオルで吹き出た汗を拭い、今度はその場で大の字になって寝転んだ。
あ~、風が心地良い。
どうやら、いつの間にか大分遠くまで走ってきたみたいだ。
朝走ったコースなんてとっくの昔に超えていた。
しかし、まだまだ時間はあるから今からゆっくり戻っても全然間に合うとは思う。
流石にもう一度全速力で走るのは無理そうだけどね……
まあ、もうちょっと休憩と脚のマッサージをしてから戻ろうかなぁ。
⏱
はい、オーバーワークで走った事がバレて叱られました。
……やっぱりおばちゃん、トレーナーやってたでしょ
私の脚を見ただけで違和感を覚えて、触っただけで確信するとか完全に本職のソレじゃん。
まあ、叱られはしたけど気持ちよく走れたのでヨシッということで。
「何も良くないよ、このバカ娘」
「ハイ、ゴメンナサイ」
そんなこんなで、私のトレーニング週間は終わりを告げたのだった。
どっちかと言うと早めの夏合宿だった気もしなくもないけど。
因みに帰りは車で爆睡してました。
あと、職員さんにもちゃんとお土産渡したよ。
さてと、明日からはどんなトレーニングしようかなぁ〜
はい、これにて9歳編終了です。
序章が長くなったのは多分これのせい。
やっと半分ってマ?
次回は幕間にて、養護施設での様子を少しだけお送りいたします。
来週もお楽しみに〜
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