今週は幕間のみなので2話投稿。
閲覧注意とまでは言いませんが、少し暗いお話です。
【7歳:7月上旬】イジメ
「アンタ、見てるだけで気持ち悪いのよ!」
「そうだそうだ、ちょっとは嬉しそうにしたり悲しそうにしたりしてみろよ!」
「だいたい、なんでいつも無表情なんだよ! 髪の毛も変な色だしさ!」
既に帰りの会は終わり、放課後を迎えていた。
にも関わらず、何故か私はクラスメイトに囲まれている。
というか、言いたい放題だね本当に……
低学年は早めに授業が終わる。だから、放課後はわりと時間に余裕はあるんだけど……
私に構っている暇があるならさっさと帰るなり校庭で遊ぶなりすれば良いのに、何が楽しくてこんな事をするかなぁ?
私としては無視して先に帰っても良いんだけど、逃さないぞとでも言うように前を塞がれ、あーだこーだと言われ続ける。
くっ、こんな時に『垂れウマ回避』さえあれば……
すると、パンパンッと手を叩く音が鳴り、一人のウマ娘が私の方へとやってくる。
「皆さん、そこまでにしませんか? 」
「だけど、アークちゃん!」
彼女の名前は、クサノギアーク。
この辺ではそこそこ有名なクサノギ家という家系のウマ娘で、このクラスのまとめ役みたいな事をしている子だ。
……まあ、有名とは言っても笠松の方でちょこちょこ成績を残している程度。
メジロやシンボリみたいに、名門とか名家とか言われてる中央のウマ娘とは比べ物にもならないんだけどね〜
「良いですか、皆さん。彼女は親も居ない可哀想なウマ娘なのですよ? 少し見た目や雰囲気が不気味だからって、そう邪険にすることもないでしょう? だって彼女は恵まれない不幸なウマ娘なのですから〜」
「そっか、それもそうだよね〜」
「というか、こんな奴に構ってたらこっちまで不幸になるんじゃない? うわ〜、不幸菌が感染る〜!」
一人がそう言うと、全員蜘蛛の子を散らす様に離れていった。
……小学生って〇〇菌とか付けるの好きだよね〜
「あらあら、ゴメンナサイ。まさかこんな事になるなんて〜」
「ああ、いいのいいの。おかげで早く帰れそうだし。それじゃあね」
私は彼女にそう言って下校する。
いやはや、まだ小一なのになんというか面倒くさいね〜
◆◆◆◆◆
【7歳:9月中旬】限界なのです!
バッシャーンと勢い良く水が降ってくる。
「アッハハハハ! ざまぁみなさい!」
「アンタみたいな気持ち悪いのが調子乗ってるからこうなるのよ!」
「そうよそうよ!」
そんな風に、好き勝手言いたい事を言って少女達は去っていった。
うへ〜、まさかここまでするとは私の目を持ってしても読めなかった!
と、ギャグっぽく考えてはみたものの、さてどうしようかなぁ
今の私は全身びしょ濡れの状態だった。
まあ、昼休みにトイレの個室で頭の上からバケツの水を落とされればこうもなる。
それにしても、やり方が古典的すぎるというかなんというか……
靴を隠された上で下駄箱にねずみかなんかの死骸が入っていた事もあるし、文房具やノートをゴミ箱に捨てられたり、画鋲を椅子に仕掛けられた事もある。怖すぎてコッソリ上履き持ち帰るようになったよ……
給食の量が私だけ極端に減らされているのなんて日常茶飯事だ。
まあ、まだ暴力だけは受けた事ないんだけどね。
流石に、ウマ娘である私相手にそれをする気は起きなかったらしい。
まあ、私が正当防衛とかで手を出しちゃった場合、同調圧力とかで一方的にこっちが悪者にされそうだからその辺は助かるんだけどさ……
ああ、でも……流石にもういいかなぁ
正直な話、ここまでされてこの学校に通い続ける必要性を一切感じない。
授業は前世の知識があるせいか退屈で仕方がなく、テストはほぼ毎回100点。ケアレスミス等があっても90点台は余裕で取れている。
人間関係は言わずもがな最悪。友達なんて一人もいないどころか、クラスメイトは全員敵。
なんなら、担任の先生すら完全に見て見ぬふりを決め込んでいる。一度相談をしてみたりもしたんだけど、お決まりの「イジメられる方にもどこか悪いところがあるんじゃないのか?」的な事を言われて終了。
そして、それら全部の糸を裏で引いているのが
幸い、私の手元にはイジメの証拠もある。
施設から勝手に借りてきたボイスレコーダー。これに全部バッチリ録音してある。担任に相談した時のなんかも含めてね。
だけど、肝心の黒幕に関する証拠だけはほとんど無い。
まあ、そっちは別にいいや。
発言の方だけでも名誉毀損とかにできそうなものはあるんだし…………まあ、握りつぶされそうではあるけどさ。
ということで、私は職員室へ向うのであった!
⏱
はい、という事で。
職員室にて、ウチの担任が吊るし上げられて真っ青になっております。
トイレからそのまま職員室に入るなり、先生達全員がギョッとして私に声をかけてきた。
すぐさま私は担任の先生に近付き、「もう私、この学校に通いませんのでよろしくお願いします」というと更に職員室は騒然。
校長先生が飛んできて理由を聞いてきたので、イジメらている事、担任が役に立たない事、そもそも授業のペースが遅くてつまらないという一部方便を伝える。
そして、ボイスレコーダーをズボンのポケットから取り出し、証拠として再生した。
すると、担任の顔がみるみる青ざめていき、私が相談をした場面でついには真っ青になってしまったのだ。
そうして、つい先程のトイレで水を掛けられた場面まで再生しきったのである。
という事で、とりあえず今日はもう帰る事と明日からは学校に通わない事を伝え、職員室を後にしました。
先生達は今から緊急の職員会議を行うみたいです。
まあ、私にはもう関係ないからどうでもいいけど。
教室に入るとクラスメイト達も一瞬ギョッとした感じでこちらを見てくる。
まあ、実行犯の女子数名はクスクス笑ってるんだけどね。
今の内に思う存分笑うといいよ。
「まあまあ、そんなにビショビショで一体どうされたの?」
クサノギアークが私の方に来てそう聞いてきた。
はぁ……なんとも白々しい。
そう、私のイジメの黒幕は彼女である。
中央の名家に比べれば弱いとはいえ、彼女の家もこの辺ではそれなりの権力を持っている。
クラスの人気者でもある彼女が煽動すれば、私一人をイジメるなんて造作も無いことだったみたい。
だって、彼/彼女等には心強い後ろ盾が居ることになって、安心して私をイジメる事ができるもんね。
私は彼女を無視してランドセルを背負う。
どうせ捨てられたり破かれたりするので机の中には何も入れず、ランドセルにわざわざ鍵まで取り付けて毎回そこから出すようにしていた。
だから、特に支度をしなくてもそのまま帰る事ができる。
……一回、ランドセルごと窓の外に放り投げられてた時はマジでどうしようかと思ったけどね。
「おい、なにアークちゃんの事無視してんだよ!」
「そうよそうよ、アンタいい加減身の程を知りなさいよ!」
クラスメイトが騒ぎ立てるが、私はそれを無視してクサノギアークを見据える。
彼女は穏やかそうな表情を浮かべてはいるものの、その目は笑っておらず少し釣り上がっている様にも見える。
「私の何がそんなに気にくわなかったのか良くわからないんだけどさ。お望み通り、消えてあげるよ」
「一体なにをおっしゃっておられるのやら」
「はぁ……あなたは私の事を親が居なくて可哀想だとか言ってたよね? でも、私からすればあなたみたいな娘を持った御両親の方が可哀想に思えるよ」
「……はぁ?」
おっと、怖い怖い。
さて、それじゃあ帰ろっと!
「じゃ、さようなら」
いつもの様に私の前を何人かで塞ごうとして来るけれど、今回はそれを無視して突っ切った。
こっちとら天下のウマ娘様なんだから、人間の子供が力で勝てると思わないことだね!
そんなこんなで、私明日から不登校になります!
毎日トレーニングができるよ! やったね私!
…………服が濡れたまま帰ったせいでおばちゃんとお姉さんにめちゃくちゃ心配されました。
◆◆◆◆◆
【7歳:9月下旬】無事、不登校児になりました?
あの職員室爆撃から数日が経った。
私がびしょ濡れで早退した為、おばちゃんとお姉さんか珍しく大慌てだったよ!
そして、当然の事ながら学校から連絡があり、わたしがイジメられてた事やボイスレコーダーの件とかについて知らされたらしいです。
勝手に持ち出した事については叱られましたが、二人共終始私の心配をしてました。
まあ、私があっけらかんとしてるもんだから拍子抜けしてたけどね。
今では段々気にしなくなってきたみたい。
で、私が不登校になって本格的にトレーニング始めます宣言を二人にして、話はめでたしめでたし……
とは、流石になりませんでした。
まず、担任の教師は既に減給されて年度末で退任となるらしい。
そして、私の元クラスメイト達はというと……
「ウチの子がそんな事するはず無いでしょう!」
「ですが、ちゃんとここに証拠がですね……」
「恥ずかしい。あんな子産むんじゃなかった……」
「そもそも、そのウマ娘の生徒がでっち上げたという可能性は無いのか!」
「いえ、ですから……」
といった感じで、先生方を巻き込んでてんやわんやらしいです。保健医の先生に聞きました。
なんというか、モンスターペアレントって怖いね。
あ、因みに件の黒幕ウマ娘、クサノギアークさんはほとんどお咎め無しらしいですよ?
まあ、証拠らしい証拠も無かったしね〜
でも流石に、私に対して嫌味な悪口を言っていた事だけは注意をされたらしい。
それで、肝心の私への対応はというと……
「はい、これ来月までの宿題ね。せっかく許可が降りたんだから、ちゃんとやってくるんだぞ〜?」
「は〜い!」
はい、という事で月に1〜2回登校する事になりました。
所謂、保健室登校ってやつだね!
流石に完全不登校は色々とマズイ上に、おばちゃんが許してくれなかったのでこの形となった。
是非もないよね。
登校してやる事としては主に毎月用意される学力テストを受けるのと、宿題として出された各教科のプリント等を提出するだけだったりする。
あとはまあ、相談とかがしやすい様に養護教諭の先生が色々と相手をしてくれるみたい。私は保健医の先生って呼んでるけど。
今もわざわざ施設までプリントを持ってきてくれたし、良い先生だよね。
一応、転校とかって話もあったんだけど、ここから一番近い小学校があそこなので却下されました。
そもそも、なんで私が折れてやらねばならぬのじゃ〜
そんなこんなで、完全不登校は流石に無理だったけど、トレーニングできる時間がめちゃくちゃ増えたので万々歳です!
◆◆◆◆◆
【9歳:4月下旬】不登校生活問題無し?
「みんなと同じ教室で授業を受けない?」
「無いです!」
私は、今年から私の所属するクラスの担任となったらしい新しい先生に、満面の笑みで答えた。
今の充実した生活を手放す訳がない。
「でもね? やっぱりこのままずっと月に数回しか登校しないっていうのもどうかと思うんだけど……」
「保護者の園長先生と校長先生には一応許可は貰ってるので」
「それはそうなんだけどね? でもねぇ、みんなは普通にやってる事なんだし」
「みんなって誰ですか? 親とかに物をねだる時のみんなですか? 友達なんていないどころか施設育ちなんで、そんな言い訳使ったこと無いですね。あと、先生の言う普通ってそれは先生の価値観での普通であって、私には当てはまらないんじゃないかなって思うんですけど?」
私が一度言ってみたかったセリフを言うと、先生は困った様な表情を浮かべつつも青筋を立てていた。
「だけどね? 学校としても、テストも運動もできる優秀な子をこのままにしておく訳にはいかなくてね?」
「それは学校側の都合ですよね? あと、さっきも言ったけど校長先生からの許可は貰ってるんです。それに、普段から学校に登校してもいないのに優秀なんだったら、それはそれで手間がかからなくて良いんじゃないんですか?」
「いや、それは……」
そうして押し黙ってしまう先生。
ふむ、今年も私の勝ちだね♪
「チッ……これだからウマ娘は……」
うっわ〜、そう来るんだ……
本人はボソッと呟いた程度のつもりなんだろうけど、私には丸聞こえだった。このウマ耳は飾りじゃないんだよ?
キーンコーンカーンコーン
そうこうしていると、昼休み終了のチャイムが鳴る。
「ん、今回はここまでですね。先生も次の授業があるんですから、早く教室に向かわないと!」
半ば私の担当にされているせいで、この問答に立ち会う羽目になっていた保健医の先生がそう声をかける。
「あのですね、そもそもあなたが!……いえ、そうですね。失礼します」
保健医の先生に八つ当たりしようとしたのか、一瞬声を荒げるが思い直したみたい。
そうして、担任の先生は私の方を一瞬だけ少し睨みつける様に見てから去っていった……
「あ〜、息が詰まりそうだった〜」
「……なんというか、君は本当に自分を曲げないよね? 下手な大人よりも弁が立つし」
「ふっ、自由と平穏を勝ち取る為には努力を惜しまない性格なので」
「それをもっと学業とかコミュニケーションの面において活かしてくれると、私としても嬉しいんだけど……」
「充分に活かしてますよ? だから私は、文武両道で担任を言い負かせる程の弁舌を持った天才美少女ウマ娘なんですよ!」
「…………自分で言う?」
言っちゃいます。なんたってウマ娘は例外なく容姿端麗ですからね〜
「それにしても、私あの先生あんまり好きじゃないな〜。典型的な価値観押し付けおばさんなんだもん。しかもウマ娘差別主義者っぽかったし」
「あ〜、まああの人はねぇ……」
おっとぉ? これはなんかある感じです?
「なんか昔、ウマ娘と色々あったみたいなのよね。だから、感情的には仕方ない部分もあるの。とはいえ、教育者としてはどうかと思うけど」
あ〜、なるほど。原因がトラウマか嫉妬かは解らないけど、とにかく面倒くさいパターンっぽい。
でも、それなら態々共学のウチじゃなくて、ウマ娘の居ないヒト小学校に勤めれば良かったのに。
いや、元々はそこに居たけど転勤させられたとか?
「まっ、私には関係ないからいいや〜」
「はぁ……仮にも担任を関係ないって……」
「だって、私の担任ってもう先生みたいな所あるじゃん」
「私はただの養護教諭なんだけど……」
そう言いながら先生は自分の仕事に戻って行きました。
⏱
「ですからね、園長さんからもここは一つ……」
「だから、そんな事言われてもね。本人が行きたくないって言ってるし、成績的にもあまり問題がないとなるとどうにもねぇ……」
はい、まさかの施設にまで押し掛けて来ました。
マジでなんなんだこの人……
ウマ娘が嫌いなら、態々私を通わせようとしない方が得な筈なのに。
「ですが、このままでは世間に馴染めず辛い思いをするのは彼女なんですよ!?」
うん、それこそ余計なお世話だ。
これでも私は前世持ち。一応、就職して社会に出たという知識だけはある。
今は色々と面倒くさいから、トレーニング優先にして馴染む気が無いだけです!
まあ、いざという時にちゃんとそれを活かせるかどうかちょっと不安ではあるけどさ……
「あの子はそんなタマじゃないさね。なんだかんだ、のらりくらりと生きていくだろうよ」
うん、おばちゃんの評価は最もだとは思うけどさ、それはそれで複雑……
「だからってですね!」
「とにかく、ウチの方針を変える気は無いよ。あの子が行きたいといえば積極的に行かせるし、行きたくないというならしっかりとウチで勉強させるだけさ」
おばちゃんはほらほら帰った帰ったと言いながら、半ば追い出す様に担任を帰らせたのでした。
「おばちゃん、ありがとう!」
「はぁ~、今年の担任は面倒くさいねぇ」
「でもあの先生、ウマ娘が嫌いみたいなのになんで態々こんな事するんだろう?」
「ふん、そんなもん簡単さね。あの先生は自分の評価を気にしてるんだよ。自分のクラスに不登校児が居るとなると、必然的に評価は伸び悩む。それどころか下がる可能性もあるだろうね。だけど反対に、アンタが毎日登校する様になれば評価は極端に上がる。なんせ、テストの成績だけは優秀だからね」
ああ、なるほど。そっかそっか、そういう評価とかも気にするタイプだったんだ。
確かに、赴任して来たばっかりで必然的には評価が上がり難いっていうのはキツイのかもね〜
まあ、私のせいとはいえ、私が一応所属してるクラスの担任にされた時点で御愁傷様でした。運が悪かったと思って諦めてね!
……なんか自分が悪い奴になったみたいに錯覚する。
「ほら、突っ立てないで夕飯の準備手伝いな!」
「は~い!」
まあ、色々面倒くさい人は居るみたいだけど、私の生活は充実してます!
主人公より先に名前が登場するモブ娘がいるらしいですよ?
そして、前世の知識があるせいか周りと致命的にズレていってしまってる主人公……
是非もないね。
次回、遂に主人公がチートを手に入れる!?
その内容とはいったい……
来週もお楽しみに〜
ぱかぱか裏話
☆主人公の名前が一向に出ないのは、最初にタイミングを見失ったからだったりします。当分出ません……