それは、10歳の誕生日に突然訪れた。
早朝、激しい頭痛と共に目が覚める。
声を出して叫ぶ程の痛みではないけど、めちゃくちゃ辛い。
布団を被りながらう〜う〜唸っていると、不意に脳内で何かが弾ける様な感覚を覚えた。
えっ、もしかして脳の血管切れた!?
そう思ったのも束の間、スッと頭痛が収まっていく。
うえぇ〜? マジで何だったの?
そんな突然の事態を不思議に思いつつも、まだ時刻は日の出前。
私は襲い来る睡魔に身を任せて、再び眠りについたのでした。
⏱
さて。
いつも通りにトレーニングをしながら私は考える。
今朝から脳内に浮かんでいる
はい、どう見てもスキル欄です。
ホントウニアリガトウゴザイマシタ。
うん。とりあえず中身を見てみない事には始まらない。
という事で、私は4つある項目の中からパッシブと書かれた欄を選択してみる。脳内なのに選択するとはこれいかに……
すると、緑アイコンの付いたスキル名が縦にズラッと並びはじめた。
いやいやいやいや、アホかな?
これ、パッシブだけとはいえかなりの数があるんだけど!?
…………もしかして私の脳内にウマ娘の全スキルがインプットされてるって事!?
そりゃ、あれ全部を頭の中に詰め込んだのなら酷い頭痛が起きるのも当たり前だよ……
というかこれ、先ずは何があるのか確認しないとだよね。
うわ〜、時間かかりそう。
……ジョギングしながら確認していくか〜
⏱
一通りスキルを見てはみたけど、パッシブ・位置取り・回復・デバフといった四系統のスキルが色々あるみたい。
そういえばこんなのだったな〜とちょっとだけ懐かしくなってくる。
でも、固有スキルや進化スキルといったウマ娘毎の特殊スキルは流石に存在しなかった。
あと、金スキルとか◎スキル、シナリオ限定で貰えるスキルとかもまだ無い様です。
『鋼の意志』、ありませんでした。
この辺は今後開放されたりするのかなぁ?
とりあえず、【良バ場○】と【道悪○】を取ってみたよ!
いつ手に入れたのかは不明だけど、ヒントレベルがほぼマックスだった。
因みに、この2つを取得したら両方とも◎のスキルが開放されました。
まあ、こっちは後回しでいいと思う。
そしてなんと、現在私が持っているスキルポイントは驚異の5000Pt超え!!――――流石に多すぎない?
はっ、なるほど。つまりこれはチート! まさに転生チートってやつだね!
……いや、正直これ微妙なのでは?
アプリのゲームみたいにステータスも脚質も見れないこの現実において、スキルだけ貰った所で……なんて思うんだけど?
あと、こういうのって他のウマ娘もなんだかんだ持ってる子とかいそうだしね。
まあ、スキルポイントを払えばほとんど努力しないで取得できるのはわりとチートと言えるのかなぁ?
ということで、私は早速いつものトラックを走ってみる。
昨日は少し雨が降っていたから、おそらくバ場状態は稍重か重といった感じ。
ちゃんと【道悪○】は発動するのか否か……
よ〜し、行ってみよ〜
⏱
う〜ん、結果としてはちょっと走りやすくなったって程度かな?
いやまあ、○スキルだから効果が薄く感じるんだとは思うんだけどね。
これが◎になるとどうなるのか……
よし、善は急げ。さっそく試してみよう!
私は意を決して【道悪◎】のスキルを取得してみる。
5000Ptもあるんだからこの程度の出費は痛くないしね。
なお、◎スキルを取ったら金スキル【道悪の鬼】が開放されました! ただ、なんらかの条件を満たしていないという事で、今は取得出来ないみたいです。
まあいいや。
よし、もう一回走ってみよう!
…………おお〜?
なんか、さっきよりも走りやすい気がする!
数値的には20程度しか変わらない筈なのに、○と◎でこんなにも差があるんだね。
というか、スキル一つ取るだけでここまで走りやすさが変わるとか……
こ、、これはもしかしなくても大当たりなチートなのでは!?
はい、掌ぐるんぐるんですね。
そんなこんなで、超つよつよチートを手に入れた私は取得するスキルを吟味し始める。
傍から見たら、座ってうんうん唸り続けている10歳児の出来上がり。
さ〜て、良さげなスキルは色々あるんだけど、ここで困った問題が発生した。
……私、自分の適正とか一切分からないんだよね!
つまり、距離とか脚質に影響されるスキルを一切取得する事ができません!
いや、全部取れば良いじゃんと言われればそれはそうなんだけど。
でも、前世の私はラストエリクサータイプだっだからこういうのは慎重に行きたいんだよね〜
前世、ウマ娘のゲームをプレイしてた時も、スキルポイントをある程度温存しつつ距離別スキルとかは一切取らないというスタイルだったみたいだし。
まあ、この辺は後々考える事にします。
当分の間は汎用スキルを取っていこうかな〜?
てなわけで、また色々と考えることが増えた誕生日なのでした。
◇◇◇◇◇
「アンタ、今年度はどうするつもりなんだい?」
おばちゃんと職員のお姉さんに誕生日を祝ってもらっていると、突然おばちゃんがそんな事を聞いてきた。
どうしたの急に?
「学校だよ、学校。まさか忘れてたわけじゃないだろうね?」
「えっ、今まで通りテストとかがある時だけ別室登校するつもりだけど?」
まあ、内申点とかは低くなるだろうけど、成績的には問題ないと思うし。
一応、テストはケアレスミスさえ無ければ毎回満点だしね〜
伊達に転生者じゃないのですよ! 空いた時間に復習もしてるし。
まあ、そのおかげで学習ドリルが毎年めちゃくちゃ早く終わっちゃうんだけどね。
「そうかい……もうアンタも高学年なんだけどねぇ。まあいいさね。それなら、今年から1つ習い事でもしてもらうよ」
「習い事〜?」
そう言って、おばちゃんはいくつかのパンフレットを私に見せてくる。
内容は、空手・柔道・合気道・剣道・薙刀といった武道系の物ばかりだった。
「えっ」
「アンタにはこの中からどれか1つを習ってもらうからね」
「な、なんで!? 今まで通りトレーニングしてるだけじゃダメなの?」
「いや、まだ小学生なんだから普通はダメだよ……」
お姉さんがツッコミを入れてくる。
普通なんて知らないもん! 私は転生者だから異常だし。
今日なんか、ついにチートすら手に入れたんだからね!
「とにかく、この中から1つ選んで通いな。それが嫌なら明日から毎日学校に行かせるからね」
「ぐぬぬ……」
鬼! 悪魔! みどり!
私は絶対屈しないもんに〜!
◇◇◇◇◇
はい、結局屈しましたとさ。
まあ、学校に行って時間を無駄にするぐらいなら、習い事をしていた方が何倍もマシだと思っただけなんだけどね。
ということであれから二日後、私は近所のとある空手道場にやって来ました。
もう高学年になったからなのか、今日は私1人です。
私は自由を手に入れたぞ〜!……習い事させられてる時点で全然自由じゃなかったね。
さて、それじゃあ行きますか!
「たのも~」
「…………」
あれ? なんか間違えた?
道場に入る時ってこう言うんじゃないの?
「……ああ、お前さんが今日からここに通うウマ娘か。話は聞いておるよ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
私に声をかけてくれたのは一人のお爺さんでした。
パッと見は細いんだけど、よく見るとすごくガッシリしてそうなのが分かる。
ふむふむ、細マッチョで元気そうなお爺さんだね。
「では、先ずは柔軟からだ。一つ一つ教えていくから見て覚えなさい」
「は〜い!」
そんな感じで、今年度も私の新しい生活が始まります!
ついにチートを手に入れた主人公。あとなぜか空手に通い出す。
それが今後どう活かされるのか……
次回は弱点の修正と事件発生。
来週もどうぞお楽しみに〜
ぱかぱか裏話
☆スキルポイントが1万Pt超えたので、半分払ってスキルチートを手に入れた模様(自動強制)
頭痛を伴うとか嫌な誕生日プレゼントですよね。