現代に来たサキュバスさん   作:nyasu

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冷やし中華とつけ麺もあるのか、全マシマシアレで

一番近場のラーメンで、評価の良いところを目指して進む。

あっ、こら、やめて!高いんですから、スマホ壊れちゃう!

ぴょんぴょん跳ねるチビっ子みたいな上司を躱しながら、黄色い店構えのラーメン屋に辿り着いた。

 

「すごいな、異世界は人口が多いのか」

「戦場並みに怨恨が漂ってますけどねぇ〜」

「おぉ、並んでますね」

 

すごい人だかり、これには期待出来るぞと一番後ろに並ぶ。

チラチラと此方を見てくる前を並ぶ人達、目立ってる。

血だらけの白衣は目立ってしまったか。

 

「白衣脱ぎましょうか、汚いし」

「おぉ、替えのがあるよ」

 

そう言ってそこらに白衣を脱ぎ捨てるリンデル様。

駄目でしょうに、マズいでしょうに、無茶苦茶でしょうに!

あぁ、変なのを見る目で見られてる。

拾わなきゃ、汚い。

 

「よし、ちょっと魔法陣書くね。3時間くらい」

「並んでる意味無いですねぇ……まぁ食べれない私が並ぶのも意味ないですけど」

「二人して種族ジョークが酷すぎる」

 

あのねぇ、エルフのちょっとはちょっとじゃないんだよ!

レイスのブラックジョークはマジでブラック過ぎるし!

あぁ、もう既に振り回されてる。

助けて、もう既に辛いよ。

 

「何だよ、半袖で過ごせと言うのか」

「寒そう……贅沢な悩みだ。死ねばいいのに」

 

アリスンさん、シンプル悪口過ぎる。

怖くて上司に言えないよ、もう死なないからって無敵かな。

 

「あっ、なんか腹が」

「今日、寒くね?」

「コスプレイヤーかな……」

 

アリスンさんの魔力に当てられたのか、並んでる人の一部が体調不良になってた。

やった!速くご飯にありつけるぞ!

 

「おっ、なんか我々の番のようだよ」

 

強烈な匂いが、ドアを開けた瞬間に顔面に突き刺さる。

ニンニクの臭いがすごい!これは嗅覚が鋭い系のタイプにはキツそう。

ほぉ、これで食券を買うのか。

 

「何書いてあるか絵で分かっても意味分からん」

「何事もスタンダードがいいんじゃないんですか?」

「小さいのにしようかと思ったが、大きいのにしとくか」

 

食券を購入……どういう事だ?

ミニラーメン、分かる。

ミニ豚、分からない。

ミニ豚ダブル、もっと分からない。

どこから来たの、豚って……小さい豚が食べれるんだろうか。

 

「すごいな、このパスタ。ラーメンと言うんだっけか?」

「あっ、私誰かに取り憑きますね」

 

まぁいい、番号の順に並んでみるか。

何かみんな呪文を唱えてる……アレ、カラメマシ、全マシマシ、マシニンニク、ヤサイ少なめ、野菜マシ、全部違うぞ。

 

「おい見ろ、ここに説明書があるぞ……読めん!」

「……なるほど、マシマシとやらは量が増えるようです」

「クソ、どうして文字が読めないんだ!」

 

会話している私達の番がやって来て、1番さんはこちらと言われて案内される。

何!?バラバラに案内されるのか、いやまぁ良いけど。

 

「おい、お前が先とかズルいぞ」

「いやぁ、ルールなので……あっちの席空いてますよ」

「後で、覚えとけ!」

 

何か興奮していつもの落ち着いた感じがなくなった上司を見送って、前の人に倣って麺硬めで注文する。

 

「大豚ダブルのお客さん、ニンニクは?」

「全マシマシのアレで」

「全マシマシアレェェェ!」

 

店員さんが発狂した、いや、これが注文なんだ。

同じような質問を他の人にしている。

 

「ニンニクマシマシ野菜少なめアブラマシマシカラカラ」

「ニンニクアブラ両方マシマシのカラカラ野菜少なでェェェ!4番さん、ニンニク入れますか?」

「よく分からないから全部普通で」

「デフォでェェェ!」

 

リンデル様も無事注文出来たのを確認していたら、眼の前にゆっくりと器が置かれる。

 

「麺固め大豚ダブル全マシマシアレです。ごゆっくりどうぞ~」

 

それは、ラーメンと言うには余りにも大きかった。

掌のような太さのチャーシューが8枚、器の倍のキャベツともやし、側面にはドロっとした脂肪がある。

横には巨大なニンニクの塊、紅生姜だ。

 

「ヌフッ!」

 

隣の人が箸を使って野菜を退けていく。

そして、箸を差してゆっくりと麺を掻き出した。

今度はチャーシューを上から押して外から真ん中に、真ん中から外に麺を掻き出す。

それを繰り返し、チャーシューは完全に沈み、麺が野菜の上に乗った。

 

「ハフハフッ!ブフォッ!?」

 

そして一気に掻き込み、噎せていた。

ニンニクの匂いが広がる、混ざりきってなかったか。

しかし、なるほど、よく見ればみんな麺を下から上に出してる。

いや、出してない人もいるし大体太った人が出してるようだ。

まぁ、面倒だしそのまま食べればいいか。

 

「おぉ……美味い」

「これは胡椒か?ビネガーに香辛料もある、無料提供とは……これは何だ、魚醤か?」

「トッピング、そういうのもあるのか」

 

何やらガチャガチャ周りの人に質問しながらトッピングしてるリンデル様を横目に、少しだけ胡椒を入れた。

これ、アレだな、途中で味を変えれるようにしてるんだ。

それにしても、香辛料を無料提供とは豊かすぎる。

富豪が慈善事業でやってるんだろうか、ラーメン屋なのにやるかな?

 

「ラーメンのタレ、なるほど」

 

野菜を食べるシャキシャキして、滅茶苦茶熱い。

味は……水っぽくて美味しくない。

スープを掛けると味がついて美味いが、しかし薄味だ。

ラーメンのタレをこれでもかと掛ける、するとどうだろうか。

甘辛い味がガツンと殴って来たかと思えば、噛むたびに野菜の水分が出てきてちょうど良くなる。

シャキシャキと野菜が鳴り、たまにモチモチとした麺の触感、ドロっと柔らかく臭みと脂っこさが口に広がる。

スープを飲むとニンニクの濃い味が口に広がる。

 

「おぉ……チャーシュー」

 

トロトロのチャーシューは脂っこくてすぐ崩れる。

崩れないところは肉厚で、噛み切れない肉の塊だ。

こういうの、こういう肉で良いんだよ。

それが8枚しかない、もっと欲しい。

だが、肉も良いがモチモチした麺もいい。

添え物だと思ってた野菜は、肉や脂、スープを飲んだ時にリセットするように口直ししてくれる。

ジューシーな肉、濃いめのスープ、口直しの野菜、よく考えられてる。

 

「これは……辛い奴か」

 

赤い香辛料を入れると、ピリリとした辛味が効く。

口の中に広がった脂を振り払うような味覚だ。

辛いのもいいな、こっちの酢も試してみたいな。

ドロっとした口の中に、程よい酸味が効いてくる。

野菜が、いやチャーシューが進む。

ちょっと酸味があると食欲が増してる……気がする。

あぁ、ちょっとスープが冷めてきたら溶けていた脂が固まってきた。

もっとトロみが出てきた。

きっつい匂い、油臭さの中にツンとしたニンニク、濃いめの醤油ベースだと思われるタレも美味い!

辛い、甘辛い、喉が渇く!なのに、脂はネットリと口の中に残る。

モチモチした麺とシャキシャキした野菜、最後にはトロトロのチャーシュー。

デカいだけじゃなくて、ちゃんとクオリティ……良い!

あっ、ニンニク来た!口の中から殴ってくる!

ぐあぁぁぁって味が広がる、肉の脂と中和して甘味を感じる。

 

「あっ……あっ……」

 

麺が、汁気を吸って少し柔らかくなってる!

モチモチ度が増してる、なのにもうちょっとしか具がない!

汁はある、野菜とチャーシューが殆どない!

おいおい、隣のお前!米をぶち込むなんて、嘘だろ!

 

「すいません、ライス下さい。食券なしでもいけますか?」

「ライスですか?うーん……特別ですよ、現金いただければ」

「大ライス下さい」

「えっ?大?」

「大ライス、この肉アブラ、あとチーズも下さい」

「えっ、えっ、大ライス!肉アブラ!チーズ入りまぁぁす!」

 

来た!ご飯の上に細切れ肉と脂身、そして蕩けるチーズがある!

やはり、この組み合わせが正解か。

半分くらい食べて、器にドーン!

すごいぞ!スープを吸って雑炊だ!

美味すぎる!でも、量が少ないな。

 

「ねぇ、食べ終わったなら食べてよ。量が多いよ」

「半分も食べてないじゃないですか!全くもう!食べますよ!」

「なんていうか、ナスターシャって食べるっていうか、飲んでるよね……うん」

 

うるさいなぁ!

 

 

 

 

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