リンデル様の提案で、当座の資金を稼ぐ事になった。
そして、その方法というのが賭場であった。
なお、リンデル様の指示の元にアリスンさんは何処かに行った。
さて、電車を乗り継いでアリスンさんと私と魔王様は賭場に向かった。
駅を降りると、早速リンデル様から感嘆の声が漏れる。
「素晴らしい、地上に橋があるぞ。高い技術力だ、この世界は魔法に頼らないドワーフでも成し遂げられなかった事を達成しておる。素晴らしい」
「暑い」
「よし、ナスターシャよ。ちょっと小遣い稼ぎしてこい」
えっ?そう顔に出た私を見たリンデル様は、んっと指を差す。
その先には何やら駅前で動物がどうのこうの変な機械で話してるおばさんがいた。
声を大きくする機械だろうか、あんなのもあるんだな。
「見よ、どうやらここは吟遊詩人の類が多いようだ。あそこの若者はリュートのような物を持ってるし」
「混じってこいと」
「ナスターシャ、余は飲み物を所望」
うるさいなぁと千円札を魔王様に握らせたら魔王様は自販機に向かっていった。
適応はえー、もう自分で飲み物買えるのかよ。
で、リンデル様は早くしろよとか急かすから機械を持ったおばさんのところい行くことにした。
「あのぉ……」
「貴方!貴方も話だけでも聞いていって、今も動物実験で傷付く動物達がいて――」
「あ、はい」
すごいどうでもいい話してる。
いつの間にか横にいた魔王様がジュース片手にうんうん頷いてる。
やっぱ適応はえー、なんでそんなに熱心なんだ。
しかも質問しまくってるし、どういうことなの。
「そうか、しかし待機児童の問題はどうする」
「難しい問題ね。いつの世も動物や子供みたいな弱い人達が窮地に立たされてるのよ、国を変えるために私達は活動しなくてはならないの」
「セーフティーネットの拡充の必要性を説いているのだな。だが、個人の自己救済の支援を目的としているならば、なかなか迂遠な手段であると思うし、動物は経済活動を支える上で――」
分かんない!何言ってんだこの人、おばちゃん達も頷いてるけど雰囲気で分かった振りしてるだけだよ。
「ナスターシャ、見ろ!金だ!」
「えっ、どうやって!?」
「馬鹿だな、魔法があるだろ」
そう言われてみると、さっきまで話してた動物のなんたらがと言ってたおばちゃん達が虚空を見つめている。
あっ、これ精神魔法の副作用による一時的な廃人化だ。
両手に持ったリンデル様の大量の財布はおばちゃんの物なのだろう。
「私が間違ってました。最初はママ友の紹介だったんです。現実的でないのも分かってました。でも、正しい事のように思えていたのです」
「うむ、宗教とは発明であり心の拠り所。縋らねば生きられぬ事もあるが、縋るために生きるでない。余は自らで気付く事が出来た貴様を認めよう」
「あぁ……う、うぅ……」
ちょっと待て!見てない間に即オチ2コマみたいに展開早いよ!
何があった、魔王様!あぁ、魔王様困ります!無意識に魔法使ってますよね!
あーもう滅茶苦茶だよ、なんか人がいっぱい集まってるし何でか胴上げ始まった。
すごいなあんた、無表情で胴上げされてて、それ怖いだろ。
「じゃなくて!何やってんだー!」
「おい、私を片手で持ち上げるな。肩に掛けるくらいならば」
「時間か?皆の者、降ろせ。余は行かねばならぬ、止めてくれるな」
わぁぁぁと歓声と共に魔王様が降ろされる。
無意識に民衆の支持を集めるような魔法使わないで、現地民は耐性低いんだから。
さて、そんな二人に振り回されながらも賭場に来た。
競馬場と呼ばれるそこは、馬を使って賭博をする場所だった。
おぉ、黒いビールがある、こっちは串焼きだ!
「おい、軍資金を食べ物に使おうとするな」
「あぁ、ちょっとだけ」
「ええい、離れんか。魔王様も何か言ってくだされ」
「馬、すごい」
レースは15時かららしいのだが、疎らではあるものの人は多い。
マークシートと呼ばれる紙を塗り潰して券を買うようになっている。
時間前になるとパドックと呼ばれる場所で馬を見て、状態を見てから買うようだった。
「結構近いな、馬も貧弱そうだ」
「まぁ、魔法とかないですしドラゴンとか蹴り飛ばして走らなさそうですね」
「外敵がいないと、こう進化するのか」
「馬」
魔王様の姿を見た瞬間、馬達がぞろぞろと寄ってくる。
何なら係の人とか引き摺ってるまであり、周りがざわつく。
間違いない、さっきと同じ無意識に漏れてる魔法のせいだ。
というか、魔力かもしれない。
漏れ出た魔力にカリスマが含まれてて微量な魅了効果があるのかも……とにかくまずい。
「うまぁ……」
「切なげにされても困ります。逆に馬の視線が全部こっち向いてるの怖い!」
「うむ、魔王様は魔力に耐性がない奴の前に出さんほうがいいかもしれんな」
一悶着会った物の、無事レースが始まる。
リンデル様と共に10万で馬券を買いに行くことになった。
魔王様はお留守番である。
席もガラガラだし、座って貰って放置だ。
「良いか、このゲームには必勝法がある」
「そんな馬鹿な賭場なのに?」
「第一レース、8頭立て、ここからまずは5頭。買う種類は三連複という選んだ馬が全部3着以内に入れば順番は問わない馬券を選ぶ」
「なるほど……何通りかいっぱい買うんですね」
「5頭なら10点、つまり10通りだ」
なるほど、それなら当たる確率も上がりそうだ。
それで強そうなのを選んでいくって訳だな。
何か選び方にもしかしたらコツがあんのかもしれない。
「それで必勝法っていうのは」
「オッズの高い奴らに魔法を掛けて確実に勝たせる」
「えぇ……ゴリ押し……」
「魔法対策してないのが悪い」
下から順番に5頭選んで、1点1万円、10万で馬券を買った。
そしてパドックでリンデル様が手元を一瞬光らせて魔法を飛ばす。
簡単な身体能力の強化魔法だ。
見えにくい仕様と倍率は通常のそれではない高度なアレコレがあるけど割愛。
子供でも大人数人相手出来るくらい、1時間難なく走れるようになるレベルとでも考えてほしい。
「最低で103倍、最高で405倍、まぁ5頭の争いになるだろうな」
「1レース目から……荒れる!」
両手にいっぱいの食事を持って魔王様と合流する。
見てくださいよ、串焼きが透明な箱に入ってるんですよ。
あと、さっき見たビールも紙のコップに入ってるのに紙のコップ濡れてグシャグシャにならないんですよ。
「ナスターシャよ、無言で食べるな。余も欲しい」
「良いですよ」
「おい、始まるぞ」
ファンファーレが始まる。
テレビとなんか違う音楽、スタートした。
馬が走る、5頭が抜きん出て走っていく。
魔法を掛けた馬達だ。
それを追いかける他の馬たち、席を立ち上がって客が応援する。
実況からタイムがなんたらハイペースだと聞こえてくる。
そしてゴール、私達の1万円は200万以上になった。
「よし、換金行くぞ」
「すごい叫んでますね」
「未勝利戦というやつで、そんなにレースしたことない馬が走ってるらしいからな。たまにあるようだぞ」
はえー、よく知ってるな。
さて、リンデル様と換金しに行ったら機械が言うことを聞いてくれなくて、窓口まで案内されて封筒をもらうという一幕があったものの無事に200万円が手に入った。
私のバイトの苦労はなんだったんだろうか……悲しい。
次のレースまでの30分の猶予期間の間、残り数分でなんとか馬券を買えた。
次は10点10万円で100万の勝負である。
次は3歳馬戦、100倍から1002倍の勝負。
『来るのか!ハナコマン!ハナコマン!上がってきたユウユウライト!クビ差でパリピーがゴールイン!大混戦の中、誰が予想できたのかぁぁぁ!』
7番人気、6番人気、8番人気、見事に1002倍。
10万が1000万になった。
今度は別室に案内されて名前や銀行口座を聞かれるという事件が発生。
次のレースまでに払い戻し金は貰えなかったのだが、そこはリンデル様。
残していた100万で3レース目の馬券を買ってたらしい。
「やられた出走取消だ!お陰で100万使って30倍だ、300万の払い戻しだ!」
「取消とかあるんですね、あっお金貰えました」
「次だ!」
4レース目、2歳馬戦。
45倍から230倍、7頭立てで3から7番人気の三連複だ。
馬券の購入金額の限界が50万だったのだ、50万馬券が10枚の500万の勝負。
結果は20倍、またしても1000万が発生して別室に呼ばれる。
なんか色々聞かれて不正を疑われ始めた。
「何か知ってますよね!どう考えてもおかしい!貴方方が買った馬ばかりが勝ってる」
「あっ、ハイ」
ごもっとも過ぎる疑惑に私は奥の手を使うのだった。
「記憶消去!記憶よ、なくなれー!」
「……ハッ!こ、ここは……」
金だけ持って私達は逃げ出した。
でも1日で2000万ちょっとギャンブルで儲けた。
後日、謎のミラクルガールとニュースで噂になっていた。
「うわぁ、やべぇ……」