俺とGANTZとさしす組   作:GANTZサイコー!呪術廻戦サイコー!!

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長いです。
1万文字超えました。


ドブカス家ツアー

「やぁ、待ってたよ。伏黒恵くん、だよね」

 

「......あんたら誰」

 

 手までぴっちりスーツを下に着込んだ学生服の男と、同じスーツらしいものを着た大柄の男の2人組が、伏黒恵の家の前で待っていた。

 

「俺は呪術高専2年の願田環。よろしくちびっ子。

そんでまぁ、いきなりなんだけど、君、呪力あるね。レーダービンビン反応してるよ。見えるし、恐らく使える側でもある。

そんで君の親父ね、禪院っていい所の呪術師の家系で、そいつがまーーろくでなしのクズ野郎で。」

 

「............」

 

「痛いよ甚爾。次小突くならぶん殴るよ。んでまぁ話の続きね。その君の親父さん、君を作った後、禪院家に売ろうって考えてたワケ。術式の知覚は4歳から6歳にかけて。君来年小学生だよね?5歳?良い年齢だよね〜。つまるところ、君という存在は親父さんにとって最高のカードだったんだよ。どう?ムカつかない?で、その親父なんだけど......」

 

「別に」

 

 願田環の言葉を遮るように伏黒恵が口を挟む。先程から伏黒恵の家の2階の窓からこちらをチラチラと覗く女児を見ながら、

 

「アイツがどこでどうしてようが俺達には関係ない。もう何年も会ってないから顔も覚えてない。津美紀の母親も暫く帰ってない。要は、もう俺達は用済みで、後は2人でよろしくやってるって事だろ」

 

「ちげぇよガキンチョ。」

 

「あ?」

 

「お前の親父な?コイツなの。」

 

 後ろにいる禪院甚爾......否、()()甚爾を親指で指す。絶句する伏黒恵。同じく2階で話を聞いていた伏黒津美紀も絶句する。

 

「............親父?」

 

「......あー............なんつったらいいのか......」

 

 謝るべきか?しかし謝るのはなんだかプライドが許さない。ならなんて言葉をかければいい?そう思い、ポリポリと頭の後ろをかく伏黒甚爾。

 

「そう。君の親父。ちなみに伏黒甚爾って名前ね。生まれは禪院だけど、もう禪院甚爾は公式書類、戸籍上【死んだ】から、ここに居るのは純粋100%の伏黒甚爾。」

 

「......なんで、今更」

 

 伏黒甚爾と同じく、伏黒恵も言葉を失っていた。唐突に現れた自分の父親。嘘だとも思ったが、体に流れる血が、目の前の存在が血縁なのを理解する。

自分を、伏黒津美紀を、自分の母親が死に、伏黒津美紀の母親を捨て、蒸発した父親。

恨む程知っているわけじゃない。だからこそ、「この野郎!」だとか、「よくも捨てやがって!」だとか、そんな陳腐な言葉は出てこなかった。ただ伏黒恵は、

 

「なんで今更、俺達の前に現れたんだよ」

 

 見た感じ健康、口元に傷跡こそあるが、顔色も悪くない。バツが悪そうな顔をしているが。自分達を捨てそこそこな暮らしをしていたのだろうと思うと、怒りより疑問が浮かんだ。

 

「......最初に惚れた女がメンヘラでな。俺の頭から出ていってくれねぇ。だから来た。それに......コイツのせいでいらねぇもん(人としての感情)拾っちまったからな。」

 

 ゲシッとヤンキー座りの願田環の背中を蹴る伏黒甚爾。願田環は即座に蹴った足の呪力を消滅させる。

いきなりバランスを崩された伏黒甚爾だが、天性のバランス感覚により多少よろける程度になる。

 

「お前次やったら殴るつったよな。よし殴る今すぐ殴るめらっと殴る」

 

「オイオイ。こちとらダルマ状態だぜ。勘弁しろよ」

 

「ダルマ?」

 

「おーいいこと言った甚爾。息子と娘の前で恥晒せ」

 

 ガンツスーツに込められた呪力を完全に消滅させる。すると、両手両足の張っていたスーツ部分がふにゃりとなり、伏黒甚爾はその場に倒れ込む。

 

「テメェ!反則だろ!」

 

「うるせぇ!少し反省しろ!!」

 

 ガンツスーツの力で伏黒甚爾の頬をぶん殴る願田環。しかし流石は覚醒したフィジカルギフテッド。血の一滴も垂らさない。

 

「......は?」

 

「ほらほら恵くんが君の事をゴミみたいな目で見てるよォ?やだねぇ芋虫だよ芋虫。手足のあった頃といい芋虫が好きなのかなぁ?」

 

「早く戻せ環ゴルァ!」

 

 哀れなり伏黒甚爾。いくら覚醒フィジギフだとしても踏み込む足が無ければ歩けず、握る拳がなければ殴れない。その場でジタバタするしかないのである。

 

「ま、ご覧の通り君の親父さんはダルマ状態。四肢は僕がぶっ飛ばした。理由聞きたい?」

 

「......いや、いい」

 

「そう。ちなみにサポートしてるのも僕。流石にここら辺の理由は追々説明するよ。そんで要件だけど、」

 

「戻せェ!」

 

 未だに路地で腹ばいになりながらぴょんぴょん跳ねるしかない伏黒甚爾を無視して、話を続ける。

 

「この君の親父さんのおかげ......せいかな?まぁどっちでもいいか。親父さんの要望で、君は呪術高専が、もっと言えば呪術界御三家が1つ、五条家が保護するよ。と言っても別に学校変えろとかここに住めとか言うわけじゃない。あくまでも資金提供するだけ。要は君のこれからの生活費やらなんやらを親父さんが出してくれる。あ、高校はうちと同じ呪術高専入ってもらうけどね!」

 

「俺かよ!!」

 

「給料天引きな。恵くん。親父さんを苦しめたければ、ロエベでもポールスミスでも買いな。なんでも買ってくれるよ」

 

「はぁ......」

 

 状況が呑み込めない伏黒恵に、未だに絶句してる伏黒津美紀。芋虫のように這いずる伏黒甚爾に、ペラペラと【これから】について語る願田環。

 

「覚えとけよ願田環ィ!!」

 

 混沌(カオス)ここに極まれり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレ。久しぶり。なにやってんの理子ちゃん。黒井さん」

 

 伏黒甚爾を仲間に引き込んでから数ヶ月が経った。

相も変わらず体術訓練で無双しては競馬場、競輪場、ボートレースとギャンブルをハシゴしている伏黒甚爾は一旦置いておいて、願田環は任務終わり、七海健人と灰原雄と共に昼食を取ろうと高専食堂に赴いていた。

その食堂のキッチンに彼女らは居た。

 

「お久しぶりです。環さん」

 

「久しいのう!環!」

 

「いや、だからなにやってんのって」

 

 白い割烹着を着た天内理子と、黒井美里が料理をしていた。黒井美里は天内理子の幼少期から世話をしていた関係上、料理の腕は確かだが、天内理子は怪しい。

 

「武者修行中じゃ!」

 

「あのまま女学院に戻っても良かったのですが、何分【盤星教 時の器の会】の残党がまだ残っておりまして......暫くの間は五条様の家で厄介になるつもりだったのですが、理子様が癇癪を起こし......」

 

 【盤星教 時の器の会】。天内理子の命を狙い、伏黒甚爾にブローカーを介して殺害を依頼した組織でもある。

()()()()の初仕事として、【盤星教 時の器の会】本部を伏黒甚爾が単独で襲撃。その9割の信者・及び教祖を殺害した。

盤星教は非術師で構成された組織であり、呪術界も手が出し辛い立場だったが、同じくらい立場があやふやな伏黒甚爾を宛てがう事により解決。非術師からは【謎の大量殺人事件】と処理され、呪術界はだんまりを決め込んでいる。

 

「癇癪など起こしておらん!!暇だったのじゃ!!」

 

「それを癇癪というんだよ理子ちゃん......」

 

「あの......」

 

 願田環、天内理子、黒井美里の3人で話していると、後ろから七海健人が話しかけてくる。

 

「こちらの方々は?」

 

「あぁ。紹介が遅れたね。元星漿体の天内理子ちゃんと、世話係の黒井美里さんだ。何故かは俺も知らないけど、高専の食堂で働き始めたらしい」

 

「はぁ......」

 

「自分から働こうとするなんて凄いですね!!!僕達より年下に見えるけど!!」

 

 ハキハキとしたナチュラルな煽りが天内理子の心に突き刺さる。

 

「子供扱いするでない!」

 

「うん!ごめん!!」

 

 ちゃんと謝れる人間。灰原雄の美徳である。

 

「それで?お主ら何が食べたい?」

 

「生姜焼き定食を」

 

「私はカスクートを」

 

「僕はカレーライスを頼むよ!!」

 

「了解じゃ!ヨシ!黒井!教えてくれ!」

 

「理子様......」

 

 結局他力本願になる天内理子に、4人は白い目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外と美味しかったですね!!」

 

「灰原のそのナチュラルに煽る癖は一向に治りませんね」

 

「アレェ!?褒めたんだよ!?」

 

 後輩2人の仲良しトークを見ながら、暖かいお茶をズズズと飲む願田環。最近は寒くなってきた。

さて、何故願田環は後輩ちゃんs’とご飯を食べているのか。さしす組は何処に行った?じゃんけん組の絆は?

そんな事願田環()が知りたい。

願田環は最近の3人は何故か自分を避けているように感じていた。授業は同じクラスだが、終われば3人とも声をかける前にそそくさと居なくなる。すれ違う時早足になるのを始め、夏油傑と勉強しようと部屋を訪ねてもいつも居らず、家入硝子に反転術式のアウトプットを習おうと喫煙所に行くもすぐに火を消し立ち去り、保健室で仮病でサボっていた五条悟に出くわした時は窓から逃げられる始末。

必然、最近の願田環の周りには後輩組と鍛錬の時の伏黒甚爾しか居なくなる。後輩組に相談しても「知りません」の一点張りで、苦渋を飲む勢いで伏黒甚爾に相談しても馬鹿にされる。アイツ(伏黒甚爾)に四肢は無く、歩くのも食べるのもクソするのもそもそも生きているのも、それもこれも全部願田環()のおかげなのを忘れていないだろうかと思っていた。

 兎も角、最近のさしす組は徹底的と言っていいまでに願田環を避けていた。

 

「なぁナナミン〜なんで俺避けられてんの〜?」

 

「だから知りませんよ......」

 

「何か後ろめたい事でもあるんじゃないですか!?」

 

 暗躍ですね!と笑う灰原雄を見て、案外そうかもしれないと思ってしまう願田環。後ろめたい事、後ろめたい事......

 

「あ〜分からん!!ったくもう。ナナミンも灰ちゃんもまともに相談乗ってくれねーし。夜蛾先生も何も言わねーし。甚爾には馬鹿にされるし!俺この後も仕事だし!!」

 

「任務ですか?」

 

 缶コーヒーを飲みながら七海健人が聞く。

 

「違うよ。甚爾と一緒に禪院家(クズの巣窟)ツアー。まだ2回ぐらいしか行ったことないけど、マジで空気がゲロマズ。当主は気さくでいいジジイだけど、それ以外はクソを下水で煮込んだみたいなモン。マジ行きたくねー。」

 

「何の為に行くんですか!?」

 

「灰ちゃんも甚爾の件は聞いたろ。【禪院甚爾】は死んだ。けどそれにあたっていろーーーーんな不都合が禪院家に発生した。でもそれ全部俺と悟が特級って名前と五条って名前で上からBOMB(ボン)!としちゃったからさ。それの説明。後当主のジジイ(禪院直毘人)が甚爾に会いたがってる。」

 

「親心ですかね!!」

 

「んな柄じゃねぇし、そもそも甚爾の親じゃなくて叔父な。」

 

 んじゃ行ってくるわー。と言って七海健人と灰原雄に手を振る願田環。その後角でバッタリ五条悟と出会したが、顔を合わせた瞬間逃げられた。解せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でけぇな。流石に御三家か」

 

 禪院家総本山。莫大な敷地と財力と力を持った呪術界を担う御三家の内の1つ、【禪院家】の無駄にデカイ門の前に、伏黒甚爾と願田環は居た。ちなみに徒歩である。元々場所を知っている伏黒甚爾が先行して走り、その後ろを願田環が走って追随した形である。本来なら補助監督と車や新幹線で向かうが、元より場所を知っているという事、車や新幹線よりこの2人なら走った方が何倍も早いことを考慮し、徒歩で来た。ちなみに高専のある東京から禪院家のある京都までの凡そ500kmを1時間で走ってきた。秒速換算すれば130m/sになる。

 その大きな門の横にある小さな扉の、インターホンを押す。

 

《はい》

 

「13時からそちらの当主さんにアポ取ってる特級術師の願田環と、高専教師の伏黒甚爾です。」

 

《......少々お待ちください。すぐに使用人を向かわせます。》

 

 インターホン先の女中らしき女性の声を聞き、願田環はインターホンから顔を離す。

 

「甚爾いつぶり?」

 

「......さぁな」

 

 いつものように素っ気ない伏黒甚爾に、肩をすくめる願田環。扉が開かれ、女中と思わしき女性が現れる。

 

「この度はどうも......」

 

「前置きはいい。さっさとジジイに会わせろ」

 

 願田環を押し退け、女中の前に出る伏黒甚爾。威圧感が半端ないが、女中がうろたえた様子はない。

 

「甚爾くんさぁ......」

 

「......こちらでございます」

 

 肝の座った女中である。

伏黒甚爾と願田環は女中に連れられ、禪院直毘人の居る当主室に案内される。度々人とすれ違うが、伏黒甚爾を見た瞬間顔を背ける。それだけ禁忌(タブー)。それか厄ネタなのだろう。

 やがて、だだっ広い襖の前に案内される。

 

「ご当主様、及び(へい)の皆様がお待ちです。どうぞ」

 

「炳?」

 

 願田環が疑問を口にするも、伏黒甚爾は知ったことかと言わんばかりに襖を蹴破った。

いきなりの暴行に流石の願田環も驚き、中にいた炳の部隊構成員はもっと驚いていた。

 

「ちょっと甚爾くん!?」

 

「貴様!」

 

 呪具らしき物を構える炳達に臆さず、ズカズカと進み、2つの座布団の内片方に座る伏黒甚爾。

 

「黙れお前ら!!」

 

 逸早く復活した禪院直毘人の一喝により、炳は渋々といった様子で元の位置に戻る。

願田環は「入りたくねー」と思いながら、ボロボロの襖の上を歩いて伏黒甚爾の横に座る。

 

「で?何が聞きたい」

 

「(必要最低限俺は喋らんとこ......)」

 

 何事も(自身の子供以外)ド直球な伏黒甚爾が、胡座をかいて頬杖をつきながら、禪院直毘人の目を射抜いて問う。

 

「久しぶりだな。甚爾」

 

「何が聞きてぇんだって聞いてんだよ。俺がこんな所(禪院家)に居たくねぇのも分かんだろ」

 

「ふむ。確かにな。何、俺はただお前の顔が見たかっただけだ。」

 

 しっかりした場のはずなのに、日本酒のような物を呷る禪院直毘人を見ても、禪院家に対する認識は変わらない願田環。元々信頼は地の底である。

 

「今回話があるのは環。お前だ」

 

「俺ッスか?」

 

「ハッハッハ!白々しいの。お前と五条の坊のお陰でワシらは従兄弟(禪院甚爾)を亡くしとる。納得の説明を聞かせてもらいたい」

 

「長くなるのか?」

 

「どうした甚爾。トイレか?」

 

「ちげぇよタコ助。こんなホームグラウンドに1秒も居たくねぇって言ったろ。俺に用がねぇなら俺は出ていくぞ」

 

「儂は構わんぞ」

 

「あー......一応、禪院家の中に【エリア】絞らせて貰うぞ。」

 

 【エリア機能】。ガンツスーツに備えられた機能の1つであり、何かしらの要因でガンツスーツを鹵獲、超科呪法使用者の意図ではなく使用されたガンツスーツ用の機能で、簡単に言えば【自爆】機能である。

超科呪法使用者の定めた【エリア】から出た者は、ガンツスーツと共に木っ端微塵に吹き飛ぶ。これは覚醒フィジギフの身体を持った伏黒甚爾も例外ではなく、あの五条悟ですら例外ではない。

前に語ったが、ガンツスーツはただの身体能力向上スーツではない。ガンツスーツの着用者は使用時、五感の全てが強化される。即ち、肉体の内側にも作用する事が出来る。それを利用し、頭を起点に、腹、丹田と爆発し、血の一滴も残らない。願田環曰く「なんでこんな機能が着いているのか分からない」らしく、この自爆機能、エリア機能を搭載して作った初代GANTZのみぞ知ると言った所である。

 

「チッ......わぁったよ」

 

 頭の中で【ピッ】という電子音が鳴るのを感じ、禪院直毘人と願田環と炳達の居る部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ......居心地悪ぃ」

 

 外に出ようとしたら頭の中でピッピピッピ煩い電子音が鳴り、本能が警告を鳴らす。そのせいで先程から舌打ちが止まらず、幼少期見慣れた無駄に広い家の中を歩く。

 

「うっ......ぁっ......」

 

「あ?なんだ?」

 

 生来から備わった超聴覚に加えガンツスーツの底上げもあり、誰か子供の......女児の鳴き声を聞く。

やることも無いし、津美紀()を持つ父親でもある伏黒甚爾は、なんだかその声を放っておけず、その声の方角に歩き始めた。

昔の......術師殺しの【伏黒甚爾】なら、こんな事万が一......いや億が一あっても行かなかっただろうが、今の彼はただの呪術高専体育教師であり2児の親。メンヘラ女(伏黒恵の母)の声も止まねぇし、暇だからと向かった。

ちなみに助けるかはケースバイケースだと思っている。

 

「ここは......」

 

 禪院家懲罰部屋。

2級以下の呪霊が生け捕りにされており、訓練や、その名の通り懲罰に使われたりする。その中から、2人分の女児の声が聞こえる。

 

「なんだお前は!」

 

 懲罰部屋の前にいた男が伏黒甚爾を止めに入るが、

 

「どけ」

 

 その一言で男は何も言えず、全身から玉のように汗を吹き出す。そんな男を後目に、懲罰部屋を開けると、案の定2人の女児が居た。

 

「(4〜6〜8〜......前より増えてるな)」

 

 懲罰部屋の中にいる呪霊は、今にも2人の女児......恐らく双子であろう2人に襲いかかろうとしていたが、伏黒甚爾が部屋に入った瞬間呪霊は隙間に隠れてしまった。

 

「えっ......?」

 

 そんな呪霊群がいきなり居なくなったことに困惑する双子の前に歩き、座り込む。

 

「テメェら。名前は」

 

「ま、真依(まい)

 

真希(まき)......」

 

 そんな双子の顔をじっと見つめる伏黒甚爾。

呪霊は恐れを成して隙間からチラチラと覗くのみ。双子はいきなり目の前に現れた男にビビり、伏黒甚爾は考え込む。

 

「(この真希とかいう女......俺と【同じ】か?)」

 

 何度も言うが、伏黒甚爾は天与呪縛のフィジカルギフテッドである。一切の呪力を持たない代わりに、天から唯一無二の頑丈で屈強な肉体を与えられた。

そんな呪力を持たない伏黒甚爾は、当然呪力感知なんて出来ない。しかし、目の前にいる【真希】と名乗った女を見て、考え込む。

 

「(昔の俺と同じ顔してやがる)」

 

 顔が似ているわけじゃない。

ましてや、力の使い方を知った【禪院甚爾】の事でもない。

まだ【禪院甚爾】が【禪院】と名乗る事すら許されなかった頃。力の使い方、存在すら分からなかった自分を重ねていた。

 

「......おじさん、誰、ですか?」

 

 真希と名乗った女が、真依を庇うように抱きしめながらそう聞いてくる。伏黒甚爾は、懲罰部屋に入ってからたっぷり1分は双子の顔を無言で凝視していた事に気付き、過去の面影を振り払う。

 

「俺は伏黒甚爾だ。当主のジジイに呼ばれてきた、ただの伏黒だ」

 

 【禪院甚爾】はもう死んだ。この双子達に、自分も同じ【禪院】だったと伝えるのは容易いが、自ら進んで名乗る事なぞ絶対にしたくなかった。

 

「ここじゃなんだ。来い。」

 

 伏黒甚爾が立ち上がり、懲罰部屋の出口の階段を上る。

しかし、双子は動かない。

 

「なにしてる。早く来い」

 

「で、でも。私達、此処に居ろって......」

 

「............」

 

 弱ぇヤツは嫌いだ。弱ぇヤツはどいつもこいつも【意思】だとか【自我】だとか、そんなもんが希薄だ。

 

「お前ら、そのままで良いのか」

 

「......え?」

 

 懲罰部屋の階段の上で、双子を見下ろしながら、伏黒甚爾は言う。

 

「弱ぇままでいいのか。真希。真依。」

 

「「......ッ」」

 

 下を向く双子。

やっぱり弱いヤツは嫌いだ。そう思った。

 

「今ここで立たなきゃ、お前らはずっとそこにいるままだぞ。立て。立って抗え。」

 

 願田環と戦った時の事を思い出す。

澄み渡った思考回路。1秒1秒、あらゆる意味で加速し続ける自分の肉体(フィジカル)。そして、拾い上げた【過去の遺物(感情)】達。

 

「お前らはまだ、俺みてぇに()()()()()()()()。まだ間に合う。」

 

「............」

 

 ゆっくりと、だがしっかりと、2人でお互いを杖にして立ち上がる双子達。

 

「その意気だ」

 

 ニヤリ。と伏黒甚爾は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(甚爾くんや!)」

 

 禪院直哉(なおや)は、禪院家の縁を歩く伏黒甚爾を発見する。以前「呪力のない落ちこぼれがおるって」「どんなショボくれた顔しとんのやろ」「どんな惨めな顔しとんのやろ」とウキウキで伏黒甚爾に会い、余りの力の差におしっこをチビりそうになると同時に、今までの人生で会ったこともない強者(つわもの)に震え、憧れた少年である。

 

「甚爾くん!」

 

「あ?」

 

 以前は怖くて話しかけられなかったが、周りには誰もいない、またとないチャンスに思わず声をかけてしまう禪院直哉少年(15歳)。

 

「......誰だ?テメェ」

 

「禪院直哉や。父ちゃん(当主)の息子の。」

 

「あのジジイの......」

 

 そこで初めて、禪院直哉は伏黒甚爾の背後に2つの人影があるのを見付ける。

 

「アレ?真希ちゃんに真依ちゃんやないの。懲罰部屋に居るんとちゃうんか?」

 

「「ひっ」」

 

 禪院直哉を見て恐怖の顔を浮かべる禪院真希と禪院真依。それを見て愉悦顔になる禪院直哉は、更に言葉で責める。

 

「勝手に出てきてええんかなぁ〜?また遊んだろか〜?」

 

「おい」

 

 伏黒甚爾の横を通り、双子に詰め寄ろうとする禪院直哉の首根っこをつかみ、持ち上げる伏黒甚爾。

 

「な、なんやねん!」

 

「テメェ。雑魚のクセして一丁前にベラベラ喋りながら俺の前通るんじゃねぇよ」

 

「雑魚!?」

 

 繰り返すが、禪院直哉はもう15歳。来年から高校生になる年齢である。呪術師としては、まだまだ伸び代はあるが、ある程度地は固まった頃である。その筈なのに、雑魚呼ばわりされたことに一瞬キレそうになるが、相手を思い出し冷静になる。

 

「まぁ、確かに甚爾くんからしたら僕は雑魚やな。堪忍してや」

 

「チッ」

 

 本日何度目か。数え切れないほどついた舌打ちと共に、禪院直哉を目の前に下ろす伏黒甚爾。

 

「......なんや」

 

 目の前に、下ろされた。

自分は後ろに行こうとしたのに。

 

甚爾くん(強者)の影に隠れるしか脳ないんか?」

 

「............」

 

 目の前で背後の2人を罵られる伏黒甚爾は、特になんとも思っていなかった。

特には。

ただ少し、なんだか気に入らなかった。

理由はそれだけだ。

 

「おい真希。お前コイツと遊んでやれ」

 

「えっ!?」

 

「はぁ!?!?」

 

 驚く禪院真希と、それを更に上回る程驚く禪院直哉。

禪院真希は4歳。まだ小学生にもなっていない子供だ。それに対し相手は15歳。年齢差は11歳もある。

しかもこの男(伏黒甚爾)。さっきの「遊んだろか〜」を「虐めたろか〜」という暗喩だと見抜いた上での言葉である。

 

「な、何言うとんの甚爾くん」

 

「さっきから甚爾クン甚爾クンうるせぇんだよ。アイツ(願田環)思い出すからやめろ。伏黒さんって呼べ。」

 

 成長した禪院直哉の更に上を行く身長で見(くだ)す伏黒甚爾と、汗をかく禪院直哉。

 

「あ、あの......」

 

「お姉ちゃん......」

 

 そして困惑の双子。

補足するが、禪院直哉は別に、何か焦っている訳では無い。11コも下の、しかも散々嬲ってきた女に負けるつもりは毛頭ない。しかし、発言した者(伏黒甚爾)が問題だ。

 

「ほら。さっさとしろ。真希。禪院のガキ。」

 

「ッ」

 

 廊下の縁から庭へ出て、砂利の上を歩く伏黒甚爾に困惑が隠せない禪院直哉と禪院真希と禪院真依の3人。

しかし、ついて行かないと何をされるか分からない。この時ばかりは3人はそう同じ意見を持っていた。禪院直哉は仕方なく、禪院真希と禪院真依は怯えながら後ろを歩く。

 

「5m離れて、先に1発入れた方が勝ち。判断は俺がする。別にどっちかを優遇したりしねぇから安心しろ」

 

 5m。

禪院直哉の術式は投射呪法(とうしゃじゅほう)。1秒を24分割し、予め決めた動きをトレースして動く術式。ある程度なら物理法則を無視した動きも出来るし、この術式は単純にとにかく【速い】。5mなんぞ、ないも等しい距離だ。

 

「......本気なん?とう......伏黒サン。」

 

「黙れ。【遊び】に誘ったのはテメェだろ?」

 

 何か気に食わない。伏黒甚爾は禪院直哉に対しそう思っていた。何かは分からないが、何かが、決定的に気に食わない。

伏黒甚爾の程近くに歩いてくる禪院直哉に対し、禪院真希は動かない。双子で抱き着きあっている。

 

「真希。何してる。早く来い」

 

「真希ちゃん何しとんの?はよきぃや。【いつも通り】遊んだる。」

 

 【いつも通り】という言葉にビクビクしながら、禪院真希は歩き出す。

 

「お姉ちゃん......!」

 

「だまってろまい......!」

 

 妹の言葉を振り切り、禪院直哉の5m前に立つ禪院真希。

 

「次期当主サマの術式は知らねーが、使うか使わねーかは好きにしろ」

 

 伏黒甚爾は禪院直哉に一言それだけ言って、禪院真希に近付き、耳元で何かを囁く。

それを聞いた禪院真希はクエスチョンマークを浮かべるが、「とりあえず言う通りにしろ。わかったな。」と言う伏黒甚爾(怖いおじさん)に首を縦に振るしかなかった。

 

「俺が手を叩いたらスタートだ。分かったな」

 

「ええで」

 

「............」

 

 余裕綽々な禪院直哉と、目を瞑り右手を振りかぶる禪院真希。

 

「(なんや......?)」

 

 少しばかりの違和感を感じながら、余裕の表情と態度は崩さない。

 

「よーい......」

 

 パンッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「環。」

 

「甚爾。なにやってたんよ」

 

 当主室に戻ると、ちょうど話しを終えたのか自分が蹴破った襖から歩いて出てくる願田環を見つける。

 

「何。ちょっと未来への投資をな」

 

「賭け事弱っちぃ癖に何言ってんだか。」

 

 伏黒甚爾が部屋の中を覗くと、ゲラゲラと今にも笑い死にそうな禪院直毘人(禪院家当主)とボロボロの格好でのされている炳の部隊の人々。

 

「......環、お前、何したんだ?」

 

「別に。ほら、帰るよ。じゃーなジジイ」

 

「ぶわっはっはっは!!!!!はーっはっはっはっ!!!はーー!!!」

 

「(ついにイカれたか?あのジジイ......)」

 

 伏黒甚爾は当主室の謎の惨劇を疑問に思いながら、来た道を歩く願田環の背中を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何したの?お姉ちゃん......」

 

 ブクブクと泡を吹いて倒れる禪院直哉と、禪院直哉の足の裾で右拳をゴシゴシ拭いている禪院真希。

 

「別に。あのおじさんが「目ェ瞑って全力で地面を蹴って、拳を突き出せ」って言ってたから、その通りにしたら、コイツ(禪院直哉)のチ〇コにぶち当たっただけだ」




匿名投稿のくせにFAが欲しいと思ってるので、ガンツスーツ着た呪術組の絵を【#俺とGANTZとさしす組】でポストしてください(傲慢)


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Q.甚爾くんはなんで環くんを蹴った時自動的に呪力が消えなかったの?攻撃行為はご法度では?
A.そこら辺の裁量は【GANTZ】が直々に行っています。
そう。あの【GANTZ】です。
いつもうちの空間に来ては自分の上に上がられ不機嫌なあの【GANTZ】ちゃんです。
流石に命が危ない威力だったら消しますが、あの程度は【じゃれつき】と判断し消えません。

Q.甚爾くん人変わった?
A.変わりました(内面)
自分の息子と娘を見て何か心境の変化でもあったのでしょう。

Q.流石に4歳の真希ちゃんと15歳の直哉くんで戦って真希ちゃんが勝つなんて有り得ないんじゃ......
A.4歳の平均身長は大体100cmらしいです。
15歳の平均身長は約160〜170cm。
そして日本人の股下の長さ平均は大体70〜80cm。
さて問題です。
覚醒もして無ければ完成もしていないが、一応は伏黒甚爾と同じ天与呪縛のフィジカルギフテッドの聴覚と、一般15歳中学生の直哉くんの聴覚ではどっちの方が上でしょう。まぁ恐らくですが、そんな差はないでしょう。殆ど同じくらいです。
そして5mなんて未完成フィジギフにとっても投射呪法使用者にとっても無いに等しい距離です。
さて決着は?

Q.いや普通に考えて投射呪法の勝ちでしょ。11コ上だし。
A.直哉は投射呪法使ってないし、相手は11コ下の散々嬲ってきた女です。男尊女卑を地で行く直哉くんに、しかも甚爾くん(憧れの人)の前で、11コ下の女の子に術式使って本気で殺りに行ったらどう思われるでしょう。
彼の無駄に高いプライドは【投射呪法を使う】という選択肢を選ぶでしょうか。

Q.結局甚爾は直哉の何が気に入らなかったの?
A.Q.同族嫌悪って知ってる?(質問を質問で返す。)

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