俺とGANTZとさしす組   作:GANTZサイコー!呪術廻戦サイコー!!

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ごめん

 

 

 

「「ッ!!」」

 

 両面宿儺の指。その特級呪物が、呪霊の生得領域から脱した事を、謎の男と釘崎野薔薇は感じた。

 

「(宿儺の指が解放されましたね......)」

 

「(だとしても持ち主は相当な傷負ってるハズ......!時間かけてらんねーな!)」

 

 

 すると、トントンと後ろっ飛びでその場を離れる謎の男。

 

「失礼。失言でした。忘れてください」

 

「待てやコラ!!舐めた走り方しやがって!」

 

「私、背中がコンプレックスでして......警告です。背中を見たら殺しますよ」

 

 そういう謎の男の背後の壁が黒く染まり、中から異形の呪霊と虎杖悠仁が現れる。

 

「あっ!兄者!」

 

「釘崎!」

 

 謎の男の背後......つまり、背中側に。

それを確認した謎の男は、わなわなと震え始めた。

 

「みっ......みっ......みっ......!!!見たなぁあぁぁぁあぁ!?!?

 

「ごっ、ごごごごめん兄者!!そんなつもりはないんだ!!」

 

「えぇぇ!?!?なんかごめんなんかごめん!!」

 

 この時ばかりは同じ気持ちで、まるで兄弟かのように首を振る異形の呪霊と虎杖悠仁。兄者と呼ばれた謎の男は、弟である異形の呪霊はともかく、虎杖悠仁を許すつもりは毛頭ないらしい。

謎の男の背中は、顔のように化膿した目と口があり、その中から腐った血が吹き出していた。

 

「殺すっっ!!!」

 

 しかし、その隙に接近した釘崎野薔薇の金槌が謎の男の頭を叩く。

 

「見られたくねーならなんでんな服着てんだよ」

 

 至極正論を吐きながら、釘崎野薔薇の攻撃が炸裂した。

 

「ムレるんだよ」

 

 そりゃそうか。

 

 蝕爛腐術(しょくらんふじゅつ) 極の番

 

 翅王(しおう)

 

「バチ・殺・し!!」

 

 謎の男の背中から、羽のように腐った血が伸びる。

ポタッと石に落ちた血液が、ジュウジュウと音を鳴らして溶ける。

 

「釘崎!あの血触んなよ!!」

 

「分からいでか!!」

 

 凝固した血液を足のように使い、宙に浮かんでいる。

 

「走りなさい。背を向けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(あぁ?人だなぁ。一般人かなぁ)」

 

 弟の異形の呪霊......血塗(けちず)は、先に走って、翅王から逃げる虎杖悠仁と釘崎野薔薇を待ち伏せしようとしていた。その為に着いた道路には、制服姿の男児が1人立っていた。

 

「(あの服......コウセン?の制服だなぁ。ってことは術師かぁ。殺すかぁ)」

 

「うわっ!さっきの!」

 

 血塗は覚えていなかったが、吉野順平は血塗の事を覚えていた。血塗がすかさず血液を吐くが、海月のようなものがガードして吉野順平に血はつかなかった。

 

「(この血......毒かな)」

 

 海月......澱月に染み込むようになくなる血液を見て、自分と同じ毒使いかと当たりを付ける。別に澱月に毒は効かないし、本体にダメージがフィードバックされることも無いので、ダメージはない。

 

「おらぁ!」

 

「くっ!」

 

 血塗の物理攻撃を、澱月で防ぐ。見た目に反して中々フィジカルがあるようで、貧弱な吉野順平は数メートルは飛ばされた。すると、吉野順平と血塗の間に、弾丸のように人が飛んできて、ガードレールにぶつかる。

 

「虎杖くんに釘崎さん!?」

 

「ってて......大丈夫か?釘崎。あ、よう順平。無事か?」

 

「よくやった。誉めてつかわす」

 

 そう言って虎杖悠仁に抱えられていた釘崎野薔薇が虎杖悠仁から離れる。血塗に気付いた様子はない。

 

「ッ!釘崎さん!危ない!」

 

 プクッと口を膨らませた血塗が、血液を口から射出する。咄嗟に釘崎野薔薇を庇った虎杖悠仁が、全身に血液を浴びてしまう。

 

「虎杖!」

 

 そういう釘崎野薔薇の左腕に、追い付いた謎の男......壊相(えそう)の翅王が突き刺さる。ジュウジュウと音を立てて皮と制服が溶ける。

 

「2人とも!」

 

 追撃で来る翅王を澱月で防ぎながら、2人の元に駆け寄る吉野順平。

 

「心配しなくとも、弟の血に私のような特性はありませんよ。私のだって全身に血を浴びない限り死にはしません。私()の術式はここからです」

 

 蝕爛腐術【(きゅう)

 

 血を浴びた虎杖悠仁と、翅王を食らった釘崎野薔薇の左腕に、薔薇のような絵柄が浮かぶ。

 

「粘膜、傷口。私達兄弟のどちらかの血を取り込み、私達どちらかが術式を発動すれば、侵入箇所から()()が始まります。そちらの少年は15分、お嬢さんはもって10分といった所でしょう。朝には骨しか残りませんよ」

 

「毒か!」

 

「結果有毒なだけであって、私達の術式はあくまでも【分解】です」

 

 唯一無事の吉野順平は歯噛みした。術式開示は恐らく本当だろう。先程血塗から澱月にかけられた血を解析・分析し終えたが、毒ではなかった。毒ならば、反対の効果の毒を作り出し、2人に注入すれば止まったのだが、()()は毒等によって起こる自然現象であり、必ずしも毒が由来になっている訳では無い。

だから、吉野順平に分解を止める術はない。

しかし、術式開示が本当なら、術式を解除させてしまえばいい。

 

「さて、どうします?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明治の始め、呪霊の子を孕む特異体質の娘が居た。呪霊と人間の混血。異形の子。身に覚えのない懐妊に始まり、親類縁者からの風当たりは常軌を逸し、彼女は子の亡骸を抱え山向こうの寺へと駆け込む。その寺は呪術師が開いたものだったが、その時点で彼女の運は尽きてしまう。

 

 加茂憲倫(かものりとし)

 

 多くの呪術文化財と共に史上最悪の術師として名を残す御三家の内が1つ、加茂家の汚点。

彼の知的好奇心は呪霊と人間の間に生まれた子の虜となる。

9度の懐妊。

9度の堕胎。

それらがどのように行われ、その後彼女はどうしたのか。一切の記録は削除されなくなっている。

それが、受胎九相図(じゅたいくそうず)の出自。盗まれた1番〜3番の内、2番と3番の血塗と壊相である。特級に分類される程の呪物。その呪力の起源は母の恨みか、それとも――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 受胎九相図達に母の記憶はない。

人間にも術師にも、特段恨みがあるわけじゃない。

150年もの間、お互いの存在だけを頼りに封印を保ってきた。

受胎九相図の1番、つまり長男が弟達に告げる。

 

呪霊側(アイツら)につくぞ」

 

「大丈夫かな。兄さん。アイツら胡散臭いよ」

 

「呪霊が描く未来の方が俺達にとって都合がいい。ただそれだけの事だ。受肉の恩は忘れろ。いいか、弟達よ。

 

壊相は血塗の為に。

 

血塗は俺の為に。

 

俺は壊相の為に生きる。

 

俺達は3人で1つだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 兄弟の為。

 兄弟が望むのであれば、(壊相)はそれに殉ずるのみ。

 

「辛い様でしたら、今すぐ殺して差し上げましょうか?」

 

「クックックッ。当たれば勝ちの術式。強いなぁお前ら?でも、私との相性最悪だよ!」

 

 芻霊呪法【共鳴り】

 

 自身の左腕に釘を刺し、共鳴りを発動する。

以前釘崎野薔薇の祖母と合同任務をした事がある願田環がこの場に入れば、タネはすぐに分かっただろう。過去、釘崎野薔薇の祖母が使った共鳴りの使い方と全く同じなのだ。

芻霊呪法【共鳴り】。対象から欠損した1部に人形を通して呪力を打ち込むことで、対象本体にダメージを与える術式。術式範囲の制限は緩く、対象との実力差、欠損部位の希少価値によって効果が変わる。以前も話したが、共鳴りに置いて血液はそれ程希少価値は高くない。だが現在釘崎野薔薇の左腕に流れる血液は、蝕爛腐術を通して使い手である壊相・血塗兄弟と強く繋がっている!

 

 ドクン!!

 

「「ッッ!!」」

 

「我慢比べしよっか♡

痛いのは嫌だろ?ならさっさと泣きながら術式解けよ」

 

 壊相と血塗はあまりの苦しみに膝をつき、滝のような汗を流す。

 

「(呪詛返しの術式!我慢比べ.......こちらの術式を解かなければ、コレ(共鳴り)が続くという訳か.......!中々に強烈.......だが何度やっても苦しいだけ。命には届かない!我慢さえすれば死ぬのは貴方達の方だ!しかも朽の発動中は痛みでまともに動けない!相手するのは海月のような式神を使役する術師のみ――)」

 

 血塗の元に、拳を振りかぶった虎杖悠仁が迫る。

 

「(――何故、そこまで動ける?)」

 

 芻霊呪法【共鳴り】

 

「「ッッ!!!!!」」

 

 虎杖悠仁は猛毒、両面宿儺の器。故にあらゆる毒に耐性がある。分解の痛みはあれど、その果ての毒は虎杖悠仁には効かない。だが分解の痛みだけでは――

 

「ぶご!!べっ!!!」

 

 虎杖悠仁は止まらない!!!

 

「血ッ塗ゥゥゥウウゥゥウゥ!!!!!!!」

 

 その間にも、じゃんじゃか打ち込まれる共鳴り。

 

 吉野順平は肉弾戦が得意では無い。体術訓練は途中だし、元々筋肉がそれ程ある訳でもない。呪力操作も習い途中なのでおざなりだし、頼りにはできない。

しかし、彼の真骨頂は肉弾戦ではない。

 

「貴様ァ!!」

 

 壊相に接近してきた吉野順平を対処する。

澱月の触手もなんのその。

触手に包まれても、すぐに脱出する。

蝕爛腐術【朽】と極の番【翅王】の同時展開は出来ない。なので、翅王で吉野順平を攻撃することは出来ない。

 

「(この海月の式神は大したものじゃない!呪力もザル!身体能力も高くない!この男(吉野順平)は大した敵じゃない!!)」

 

 しかし、共鳴りとはまた別の痛みが壊相の体を駆け巡る。

 

「(痛い!なんだ.......この痛みは!?)」

 

 吉野順平が壊相から距離をとる。

 

「僕の術式は【毒】だ。この世に存在する毒なら、ありとあらゆる毒を生成・分泌する事が出来る。()()()()()()()()()()でも、僕が解析して知ってれば分泌する事が出来る。今貴方に注入した毒は、蝕爛腐術 極の番【翅王】の毒.......貴方の血液に含まれている()の部分()()です。本来なら毒の持ち主である貴方には効きません。フグは自分の毒で死にませんから。」

 

「ならば何故.......!」

 

 受肉した肉体の内蔵が溶けるような感覚を壊相は感じていた。

 

「貴方が自分で言っていたじゃないですか。()()ですよ。その痛みは毒の痛みではありません。腐蝕の痛みです。僕の術式【澱月】は毒をコピーするだけじゃなく、他の毒と混ぜるなりして、より強い毒として進化させることが出来ます。呪術的な毒である翅王にテトロドトキシンのような普通の毒を混ぜても意味はありませんが、貴方の毒の毒性()()をより強く進化させました。【朝には骨】どころか、今夜中に骨すら残りませんよ」

 

「(一体いつ毒を注入された!?尖端には触れていない!いや、この際そんな事はどうでもいい。この男の術式開示が本当ならば、今すぐ逃げなければマズイ!!私の受肉体がどんどんと腐蝕して行っている!しかし、術式開示を済ませたのは私の方もだ。先程は15分、10分と言ったが、本当はもっと早く済むはず。毒を食らった男と女よりも優先して叩くべきは.......この無傷の男!!術式()を解いて翅王でこの男を叩くか!?)」

 

 背後で血塗をボコっていた虎杖悠仁が、釘崎野薔薇とスイッチしてこちらに向かってくる。

 

「(毒を食らった男が女とスイッチした!?2体1でこちらの相手をするか!!どうする.......朽と翅王の同時展開は出来ない。このままでは弟を助けに行けない!.......いや、毒使いの男は兎も角、毒を食らった男と女は弟が死ぬより先に死ぬ!この戦いの果て、例え私が腐蝕で死のうと、少なくとも毒を食らった男と女は死に、血塗は助かる!!

絶対に!術式は解かない!!)」

 

 そう決めた壊相だったが、遠くにいるハズの血塗の、消え入るような、蚊のような声を、何故かクリアに耳が拾った。

 

兄者ぁ.......

 

 その時、壊相の頭によぎった兄の言葉。

 

 

「俺達は、3人で1つだ」

 

 

 ブワッ!!と、術式()が解かれる。

 

 壊相は、気付いた時には術式を解いていた。

弟を守る為、無意識の決断だった。

すかさず極の番【翅王】を発動し、虎杖悠仁、吉野順平と距離を取り、釘崎野薔薇の背中に翅王を向かわせた。

 

 釘崎野薔薇は背後からの攻撃に気付いていなかった。だが術式が解け、晴れた痛みでより深く意識は研ぎ澄まされていく。

その先で爆ぜる1/1000000の火花。

 

「順平!」

 

「虎杖くん!」

 

 虎杖悠仁の呼び掛けに答え、吉野順平は虎杖悠仁に迫る翅王を澱月で尽く防いで、道を作った。

釘崎野薔薇に翅王が当たる前に眼前の敵を仕留める。【誠心】虎杖悠仁の本領。禪院真希を凌ぐ身体能力、格闘センス。そこに与えられた呪いの力。

 

 虎杖悠仁は、黒い火花に愛されている。

 

黒閃

 

 2()()の黒閃が光る。

 

 壊相の右腕が弾け飛ぶ。

 

「(なんだ。今の.......黒い光は!?私は確かに呪力で強化した腕で拳を受けた!だが気付けば肩ごと吹き飛ばされていた!.......嗚呼、弟よ。死ぬな!弟よ!!)」

 

 釘崎野薔薇の()()を受け、血に伏せている弟.......血塗を見やる。

 

「.......あ゛っ.......兄者あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

 

 明らかな死に体。しかし、血塗は諦めていなかった。兄弟の為。兄者の為、痛みと苦しみを跳ね除けて立ち上がり、釘崎野薔薇に攻撃を仕掛ける。

 

「そういえば、まだこっちは見せてなかったわね.......」

 

 ズズズ.......と、血塗に先程打ち込んだ釘が血塗に刺し込まれていく。

 

 芻霊呪法【簪】

 

 血塗の顔面が吹き飛び、完全に死に絶える。

 

「安心しなさい。すぐに貴方も弟と同じ場所に送ってあげるわ」

 

 

「俺達は、3人で1つだ」

 

 

「(ごめん、兄さん。俺がついていながら.......弟を守れなかった)」

 

 血塗の、弟の死に、腐蝕の痛みと苦しみを忘れ涙を流す壊相。そして、その慈愛の涙を見て思わず追撃の手を止めてしまう虎杖悠仁。

 

「!?(コイツ、なんで消えない!?.......呪霊じゃ、ない!?肉体がある!!)」

 

 同時に、釘崎野薔薇の手も止まる。

キキキ。という音と共に、背後から車の走る音がする。咄嗟に避けると、軽トラが通過していく。

 

「危ねぇなァ!」

 

 軽トラの助手席に座る男が、身を乗り出しながらそう言う。その男の襟首を誰かが掴み、荷台に連れ込む。

 

「スビードを上げろ。ブレーキを踏めば殺す。お前もこいつも」

 

 そう言う男.......壊相に、運転手の男はコクコクコクと頷くしか無かった。

 

「(この3人。特にあの女は必ず殺す。傷を癒したら、確実に。

すまん血塗。弔ってやれなくて.......仇は必ず.......)」

 

 自身が車に乗った地点を見やる。走って軽トラに追随する虎杖悠仁のスピードは驚くものがある。人質の首に、治しかけの右腕を当てる。

 

「あ゛ああああああ!!!!」

 

「追うなよ、呪術師」

 

 虎杖悠仁の背後、血塗の死体を見る。

 

「順平!早く()()渡しなさい!」

 

「はい!」

 

「(なんだ?あの女、何をしている?)」

 

 自身のちぎれた右腕に藁人形を当て、今にも釘を差し込もうとしている釘崎野薔薇を見る。

 

 芻霊呪法【共鳴り】

 

 黒閃発動直後、ゾーンに入った釘崎野薔薇渾身の【共鳴り】が発動する。

 

「クッソがァ.......!(呪詛返しの術式ではなかったのか!)」

 

 心臓から針のようなものが飛び出す。

 

「(だが、まだ!.......ッ!?)」

 

 ガクン、と足を踏み外す。

自分の足を見ると、腐蝕で足が溶けていた。

 

「(腐蝕がここまで進んでいたのか!.......腐蝕のスピードが翅王よりも早い!)」

 

 思わず空中に身を投げてしまう。

それに、軽トラと同じかそれ以上のスピードで走っていた虎杖悠仁が迫る。

虎杖悠仁の拳と共に、壊相は自身の死を感じていた。

 

「(兄さん.......血塗.......不甲斐ない兄弟で、本当に.......)」

 

 

「「ごめん」」

 

 

 

 虎杖悠仁と壊相の言葉が、奇しくも重なった。

虎杖悠仁の拳が、壊相の胴体を貫く。

 

 元々あった腐蝕のダメージに加え、釘崎野薔薇渾身の共鳴り、そして胴体を貫き損傷したダメージに壊相は耐えきれず、息を引き取った。

そんな壊相の死体と、自身の壊相を貫いた拳を見ながら、虎杖悠仁が呟いた。

 

「.......いってぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザアアア。カラン。

 

 同日、別の場所にて。

呪詛師氷川と、特級呪霊真人、そして受胎九相図が1番、脹相(ちょうそう)が人生ゲームをして遊んでいた。

 

「氷川、株券」

 

 パキッと、脹相が人生ゲームの駒を指先で潰した。

 

「どうした?脹相」

 

「弟達が死んだ」

 

 脹相は術式と産まれから、離れていても弟達の生死がわかる。そんな弟達が、今、死したことを感じた。

 

「あーー!!駒壊すなよ!!」

 

「そういうの分かんのか。」

 

「どういう事だ。受肉体ならまだしも、2人が指1本分の呪霊にやられる訳が無い。」

 

「待ってろ」

 

 壊された駒の代わりを探す真人と、携帯を取り出して壊相と血塗を確認する氷川。ポカンとした顔になり、フッと笑う。

 

「ハッ。脹相。報告だ。壊相と血塗を殺したのは、呪術高専1年、虎杖悠仁とその一派だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰路につく虎杖悠仁と釘崎野薔薇と吉野順平。

 

「釘崎、大丈夫か?」

 

「あー.......まぁね。跡は残るかも。毒は順平が解毒してくれたし.......何モジモジしてんのよ虎杖」

 

「初めてなんじゃねぇかと思って。祓ったんじゃなくて、殺したの」

 

「.......」

 

「そういうアンタは?」

 

「俺は、前に、1度.......いや、アレを1度っていうのはズルか。3人だ」

 

「僕のせいでもあるよね。ごめん.......」

 

「アレは真人のせいだ。順平のせいじゃない」

 

「.......私より、虎杖の方が大丈夫じゃなさそうだけど?私はぶっちゃけなんともない。術師やってればこういうこともある。ってお婆ちゃんに習ったし。伏黒じゃないけど、結局助けられる人間なんて限りがあんのよ。私の人生の席.......椅子?まぁそこに座ってない奴に、私の心をどうこうされたくないのよね。アンタとか順平とか、勝手に椅子持ってくる奴も居るけどさ。」

 

「仕方ないよ。虎杖くん。フォローする訳じゃないけど、呪霊なのか呪詛師なのか、そんな事気にしてる暇無かったし、僕はどっちにしろ殺すつもりで戦ってた。普通の人間なら、とっくに死ぬ程の毒も流したし。それに、呪詛師(人間)だとしても、あのレベルのを長時間拘束する術はないんじゃないかな.......?」

 

「.......でも、アイツ。泣いてたんだよ。目の前で弟が死んで。」

 

「.......そっか」

 

「.......」

 

「俺は自分が、釘崎が、順平が助かって嬉しい。生きてて嬉しい。ホッとしてる。それでも俺が殺した命の中に涙はあったんだなって.......それだけ」

 

「そっか。じゃあ、共犯だね。私達3人とも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、伏黒くん!?」

 

 倒れふす伏黒恵を見て驚く吉野順平。咄嗟に声には出さなかったが、虎杖悠仁と釘崎野薔薇も心配した。

しかし、すぐに目を覚ます。

 

「おっ、3人とも、無事だったか.......」

 

「「「ビッ、ビビったー!!!」」」

 

「声量落としてくれ。頭痛いんだ.......」

 

「宿儺の指持って寝こけるなよ。危ねぇなぁ」

 

「釘崎、なんで知ってんだ」

 

「それ今聞く余裕ある?」

 

「ねぇな」

 

 とりあえず担当補助監督の新田明に連絡して、この両面宿儺の指は保護、封印して貰わなければ。

 

「俺、食おうか!?」

 

「残飯じゃねーんだよ。お前の許容量(キャパ)わかってねーんだから、食うなよ。とりあえず1番元気な順平に渡しとくぞ」

 

「あ、うん。」

 

 しっかりと両面宿儺の指を受け取る吉野順平。

 

「クラァ!!!餓鬼共ォ!!!」

 

「あっ。新田さん!」

 

「ブチギレてるわね」

 

 八十八橋の上から叱責を飛ばす新田明。

 

「ま、帰りますか」

 

 虎杖悠仁と吉野順平の手を借りて、なんとか立ち上がる伏黒恵。4人は仲良く八十八橋を後にした。

 

 

 2日後。

紅茶に有り得ないほど角砂糖を入れながら、五条悟が電話をしている。

 

「いやー宿儺の指を取り込んだ呪霊に加えて、死体を調べてビックリ!なんとあのブツの受肉体だったの!特級相当を各個撃破!今年はGTG(グレートティーチャーゴジョー)のお陰か、豊作だねぇ。」

 

《オフの日にアンタと話したくないんだけど。飲み会の幹事の件でしょ?》

 

「どう?()()()()()()?」

 

()()。私含め皆忙しいの。どうする?()()()()声かけてみる?》

 

「僕下戸だからノンアルでも構わないよ。()()()()よろしく!」

 

 そして、庵歌姫との電話を切る。

もちろんだが、飲み会の話では無い。以前話した内通者についてだ。庵歌姫の周りは何が聞いているかわかったものでは無い。

しかし、学生の中に内通者が居るとは考えたくないことだ。

 

「後は頼むよ、冥さん」

 

 そのスマホには、「入金完了」の文字が浮かんでいた。

同日、都内某所の銀行にて、1000万円の振込を見て高笑いする女が居たとか.......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虎杖に共振の話はするな」

 

「それって確定なの?」

 

 高専の水飲み場で話す伏黒恵、釘崎野薔薇、吉野順平の3人。

 

「ほぼな。もう終わった案件だ。気づく可能性があれば、俺達か新田さんくらいだ」

 

「僕は気付いたかな.......」

 

「順平はまだ日は浅いが恐ろしく勘がいいから一応な」

 

「買い被りすぎだと思うけど.......」

 

 照れたように頭をかく吉野順平。

 

「宿儺の受肉はきっかけに過ぎない。八十八橋の呪殺はいつ始まってもおかしくなかった。そもそもあの時、指を飲み込んだのは俺を助ける為だ。でもアイツ(虎杖)はそれで納得しねぇだろ。だから、言うな」

 

「言わねぇよ。レディの気遣い舐めんな」

 

「わかった。言わないよ」

 

 

 

 

 廊下を1人で歩く虎杖悠仁。

 

『オマエのせいだ!オマエが俺を取り込んだ!目覚めたんだよ。切り分けた俺の魂達が!!大勢の!!ケヒッ、ヒヒッ!!人間を助けるか!?小僧!お前が居るから人が死ぬんだよ!!』

 

 【共振】に気付いたのは、なにも伏黒恵だけではない。両面宿儺もそうだ。共振の事を知られまいとする伏黒恵達だったが、そんな気遣い等両面宿儺は持っていない。むしろ、虎杖悠仁を苦しめる良い要因になるとすら思っていた。

 

「おい。それ、伏黒の前で言うなよ」

 

『!』

 

 虎杖悠仁は、少年院で伏黒恵に言われた事を思い出す。

 

 

「お前は、自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする!」

 

 

「言うなよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「特級は術師の格付けの中でも斜め上に外れた位置付けじゃ。1級術師こそ、他の術師、延いては呪術界を牽引していく存在だと儂は考えておる。危険・機密・俸給、どれも準1級以下とは比べ物にならん。それを踏まえて、今、なんと?」

 

「禪院真希、パンダ、吉野順平。」

 

「伏黒恵、釘崎野薔薇、そして超親友(マイブラザー)虎杖悠仁。」

 

「「以上6名を、東堂葵、冥冥の名の元に、1級術師に推薦する」」




〜みんなのお悩み相談室〜

Q.順平はいつ壊相に毒を注入したの?
A.いつから海月の毒の注入は触手の尖端からのみだと錯覚していた?

Q.順平いつ翅王吸収した?
A.朽発動直前で澱月に受けてます。

Q.順平は黒閃打たなかったの?
A.打てませんでした。
そんな黒閃のバーゲンセールじゃないんだからさ.......

Q.あっ、指.......
A.なんて??


〜じゅじゅさんぽ〜

 テーブルテニスをする東堂葵と冥冥。

東堂「2名以上の1級術師から推薦された者は現役の1級、又は1級相当の術師と共に任務を幾度かこなす。そこで適正ありと判断されれば準1級へと昇格し、続いて単独での1級任務へ指名(アサイン)される。その任務の結果如何によって、正式に1級術師に成るか否か決まるわけだ。ブラザーは絶対に推薦を受ける。宿儺が協力的でない以上、宿儺の指との遭遇率を上げるため任務の危険度も上げなければ行けないからな。これが何を意味するか分かるかな?Ms.冥。」

冥冥「意味も何も、それが全てじゃないか。Mr.東堂」

東堂「青い未来.......つまりは東堂葵と虎杖悠仁が!共に任務へと立ち向かう青い未来が存在しているということ!」

冥冥「.......?」

東堂「皆まで言うな。同行する1級術師が俺とは限らない。そう言いたいんだろう。だがこれは確信だ!もげたリンゴが地に落ちるが如く!俺達は惹かれ合う!そう!!正に!!.......運命(ディスティニー)。」

冥冥「???いや、だから。被推薦者が同行するのは、推薦者以外の術師だよ。虎杖君達を推薦したのは私達だから、彼が同行するのは私達以外の術師だよ。お疲れ様。先に上がるよ、Mr.東堂」

 先程までは勝ち越していた東堂葵だが、最後の冥冥の言葉を聞いてから一気に逆転された東堂葵だった。

じゅじゅさんぽどう?大丈夫そ?いや、結果で辞めるとか消すとか無いけど。

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