皆、西暦2000年最後の日に何が起きたか知っているか?
その年にはノストラダムスの大予言ってのがあって、曰く2000年最後の日に恐怖の大王が降臨してこの世界を終わらせるってやつだ。
だけど、当然そんな眉唾な出来事が現実に起きるわけはない。
確かに恐怖の大王とやらは降臨しなかったんだけど、その代わり2000年最後の日午後11時59分渋谷
その中心地に地獄の門と今では言われる空間の穴が開いた。
そこから現れたのは恐怖の大王ではなく、怪人。
その日日付が変わるまでの10分間でニューイヤーを楽しもうとして路上に出ていた多くの人がその怪人たちに殺された。
その未曾有の被害からのちに教科書にはこう書き残された、終末の年明け。
その日から渋谷は第一種の禁足地に指定された。
政府はこの事態を重く見て防衛省と警察庁の合同の組織を結成することになり、同時に発生した怪人については専門家等が招集されることになったんだ。
そして怪人たちは2023年現在、なぜかこの日本でのみ発生が確認されていることから怪人殲滅に諸外国からの圧が日に日に強まっている。
組織の名は警察庁公安部敵性生命体対策課 通称ELC(エルク)とされた。
現在2023年3月15日、埼玉県某所の防寒村から物語は始まる。
埼玉県警 戦部警察署狐玉駐在所
埼玉県のとある山間部に所在の狐玉村の駐在所の正式名称だ。
そこの駐在所員は若い変わり者だ。
「かったりい。」
そう言って自転車を漕いでいるのが狐鷹空翔(こだかあきと)巡査長、一応のこのめんどくさそうな態度で地域の見回りを行っている。
黒髪の目にかかりそうな27歳の彼は気崩さないギリギリの制服の着こなしをしていた。
それを見て畑作業中の住民が笑いながら話しかけてくる。
「あきちゃん、また徹夜で映画でも見てたのかい?」
それに先ほどまでのめんどくささをしまい快活な笑顔で返す。
「源さん、おざっす。
そんなんじゃないっすよ、なんでかまだ春の異動内示が降りてこないってんで気になって寝れないんすよ。」
「大丈夫よ、あきちゃんにはこの村で嫁もらってずっといてもらわないとならないからね。
あんたに転勤はないよ、また事務所に野菜持って行ってやっから元気だしな。」
この田舎の村で飾らない空翔の人柄は気に入られている。
そして村人に手を挙げ事務所への帰路へ急ぐ。
この村に居着いて2年、大した事件もなくゆっくりと時間の流れるこの村の居心地は悪くない。
そして事務所に帰ってきた瞬間固定電話の内線がなる。
「はい狐玉駐在所、って署長さん。
わざわざ果ての村のうちに電話なんて何用ですかい?」
『そう言わんでくれ、仕事のことだから。
異動の関係でちょっと話に行きたいんだが午後は事務所におるかね?』
わざわざ署長クラスがこの駐在に?
自分の異動のことなのか俺の異動のことなのか読めねーな。
「りょーかい、とりあえずお待ちしてますよ。」
午後2時、事務所前に署長用の高級車が停まる。
「お待ちしてましたよ、神崎署長。」
神崎と呼ばれた署長はもう直ぐ還暦の人格者であり、何かと空翔のことを目にかけてくれていた。
「いや悪いね、仕事中に。
本題に入りたいんだけど、私も呼び出された身でね。
っと、やっと来られたようだ。」
更なる高級車が停まる。
そして降りてきた人物を見て空翔は固まる。
「署長⁉︎
県警本部長が来るなんて聞いてませんけど⁉︎」
「言わないように頼んだからね。
初めまして、狐鷹巡査長。
私も頼まれて案内役としてきただけだからそんなに構えなくてもいいよ。」
おいおい、いよいよ本部長を案内のためだけに出させるやつがここに用事ってなんなんだよ。
本部長に招かれるように一人の女性がアタッシュケースを持って降りてくる。
ぱんつスーツ姿の腰まで伸びた銀髪の若く美しい女性だった。
その立ち振る舞いや本部長達がかしこまる様子から年にあわない立場の高い人物であることがわかった。
だけどこの女を俺は知っている。
「…5年ぶりか、嵐。」
その言葉にじっと嵐とよばれた女性はじっと空翔を見つめて、花の咲いたように笑った。
「会いたかったです、先輩❕
この時をどれほど待ったことか…」
「何言ってんだよ。
もう俺の中の因子は当時の10分の一以下、変身できないから俺は今ここにいるんだ。
もうお前がサポートしてくれてた頃の俺じゃない。」
突然の会話についていけない本部長と署長。
しかし、二人の理解が追いつかないままに話は進んでいく。
「いいえ、今日は迎えにきたんですよ先輩。
いや、葛葉九重(かずらばここのえ)特殊捜査官。
もう一度ELCの仮面ライダーとして戦ってください。」
この言葉で馬が沈黙に支配される。
しばらくしてようやく神崎署長が口を開いた。
「ちょっと待ってください、嵐さんとおっしゃいましたかな?
私は彼の上司の神崎警視正ですが、話が飲み込めない。
何より彼の名は葛葉ではないはずですし、彼が警察官になりたての頃から面倒を見てきていますが彼がELCにいたなんて経歴は知らない。
何かの間違えでは?」
本部長も困惑しながらも同様に首を振る。
なるほど、と嵐は一つ頷く。
「申し遅れました。
私は嵐司、警察庁公安部通称ELCの特殊諜報員の警部補です。
そして彼、今は狐鷹と名乗っているその男は5年前までELC第15部隊世界樹に所属する特殊捜査官であり、5年前にとある理由から変身する力を失ったため経歴と名を変えて警察官として第2の人生を始めたと言うことです。」
そしてバツの悪そうな空翔、いや九重が口をひらく。
「そうなります。
そんで嵐、今言った通りの俺に今更変身できないし、あの時何も守れなかった俺にできることはねーよ。」
「っあれは❕
あの時先輩は誰よりも正しかったです…
それに先輩のために新しいドライバーを持ってきたんです。
このドライバーは先輩の中のライダー因子を活性化させ、追加のデバイスで補強しながら変身できるので拡張性の高い新型ドライバーです。
だから…」
その瞬間無線機がけたたましい吹鳴音を鳴らす。
『緊急指令、狐玉村内において怪人出現。
種別はタイプ15インベス、そして未確認種の2体を確認。
至急住民の避難誘導にあたれ。』
うちの村かよ…
「とにかく、俺は避難誘導に行きますので皆さんはここに。
嵐、未確認種って把握してんのか⁈」
「いえ、ですがもしかしたらタイプ23のジャマトかもしれません。
奴らは武器を使いますので。って聞いといてもう出てるし❕」
言い終わるまでにサイレンを鳴らし現場へ向かうパトカー。
ふざけんな、うちの村で犠牲者なんか出させねーぞ。
そしてたどり着いたのは源さんの畑、すでに作物は荒らされており、そこに三人ほど倒れていた。
悲鳴を上げる声に気付きそちらの方に目をやると、源さんが尻餅をつきながら後ずさっている。
そこへ迫るのは頭部に頭蓋骨を模した部分をもち幼虫のような姿で鋭い爪を持つインベス、そして
「ジャジャジャ」
そう言いながら植物のような頭を持つ人型が剣を持っている。
こいつがジャマトってやつか。
2体に向かって飛び蹴りで吹っ飛ばす。
「無事が源さん?
早く逃げろ」
「あきちゃん、うちの母ちゃんが…」
「…すまねえ
早く逃げてくれ、時間は俺が稼ぐから。」
そう言って源さんが逃げた後貸与された拳銃を続け様に放つが足止め程度にしか役に立たない。
くそ、そう思った途端足元にアタッシュケースが転がってくる。
「先輩、これを❕」
見ると嵐がケースを投げた姿勢のまま叫んでいる、ってことはこれドライバーか⁈
ケースを開けると中央にくぼみらしきものがあるドライバーと思わしきものと赤いペットボトルのキャップみたいな丸いものもある。
それとリボルバーの弾倉とグリップみたいなのが合体したものがついている。
「ドライバーをつけて中央にその赤い丸いのを‼︎
その銃型のバックルは、ロックシードみたいなもんだと思ってください。
右側にセットして変身を。」
ドライバーを手に取り思う。
こいつをつけたら俺はもう一度…
変身ほんとにできるのか、俺が?
様々な思いが交錯するが迷いを振り切るようにドライバーを腰に当てると、銀色のベルトが腰に巻き付く。
そして赤い丸を装填すると
entry
と短い電子音がなり、そこから白字で何かの模様を描き出すがよくは見えない。
そんなことは後回しだ。
銃型のバックルを右側に装填する。
SET
待機音が鳴るのも懐かしい、これで準備は整った。
あとは俺が覚悟を決めるだけだ。
そして5年ぶりに俺は力を手にする。
「変身‼︎」
銃型のバックルの引き金をひく。
そして白い上半身のアーマーと右手に銃が形成される。
赤いきつねの顔をした新たなライダーが産声を上げる。
その時嵐の端末にメッセージが送られてきた。
「げ、先輩のお祝いメール。
てか本部で登録されるの早いな。」
そこにはこう記されていた。
『祝え‼︎
葛葉九重の新たな姿を、その名も仮面ライダーコークス。
新たな伝説の開幕である」