港町ウェラポリからエルシーを追い、僕は聖地レイラインまで帰ってきた。
次の汽車は明日まで無いと言われてしまったため、駅員に頭を下げ貨物線に便乗させて貰ったのだが……。
通常の汽車よりも貨物がある分、遅く……聖地レイラインへの到着は日が沈んでからとなった。
そして、閉まる直前に任務の窓口へ到着した。
港町ウェラポリでの任務報告を、エルシーがしていると思って来たのだけれど──
「もう別の任務に向かっているって……本当ですか!?」
「え、えぇ、はい。そうですが……知らされていないのですか?」
受付の方に聞き直してしまう程の衝撃があった。
彼女は僕を突き放す為に、聖地レイラインへの帰還後すぐに任務に出発したというのだ。
思わず頭を抱える。
エルシー、疲れているだろうに。
そんなに僕に会いたくないのか。
「その任務は?何処に行ったんですか?」
「これですけど……」
渡された紙を読む。
場所は、商業都市ジュネス。
ここから汽車で半日掛かる場所だ。
港町と違って、商業都市だから遅くまで汽車が動いていたのか……。
納得しつつも、焦る。
「汽車は……?そのっ、今からもありますか?」
「む、無理ですよ……?本日の最終汽車は五時間前に出ましたから」
夜間の運行は危険だ。
理由は分かるが……今、この時だけは運行して欲しかった。
「な、何とか向かう方法はないですか!?出来るだけ早くエルシーと合流しないと──
「ユーリ、何をしているんだ」
冷水を浴びせられたような気持ちになり、振り返る。
そこにはエルシーの師匠であり、親代わりであり……僕を指導してくれている上位
「フロイラさん、これは、その……」
「彼女はただの受付だ。そんな事を要求しても仕方ないだろう?」
「それはっ、そう……です、ね……すみません」
僕は受付の方へ頭を下げた。
焦っていた所為で、混乱してしまっていた。
「いえ、お気持ちは分かりますから」
「それでも……すみません、自分勝手でした」
気にしていないという素振りの受付嬢に頭を下げて、受付から離れてフロイラさんの側に寄る。
「それで……ユーリ、何があった?」
僕の肩に腕が置かれる。
重い。
「それは、その……エルシーが──
僕は語った。
港町ウェラポリであった事を。
彼女を庇って、その結果、絶縁された事を、
彼女が泣いていた事を。
そして、今……一人で任務の地へ向かっている事を。
「……そうか、エルシーが──
フロイラさんは顎に手を当てて、目を細めた。
その目線の先は遠く、ここではない何処かを見ているようだった。
「あの馬鹿……」
彼女は悪態を吐いて、ため息を吐いた。
そして、僕の頭を乱暴に撫でた。
「ユーリ、お前がエルシーを大切に想う気持ちは分かる。今すぐ、追いたいだろう」
「……はい」
「だが、諦めろ」
「……え?」
その言葉に思わず視線を上げる。
フロイラさんは苦笑していた。
「あぁ、違う違う。エルシーを追うことを、ではない。今から追うのは諦めろ、という事だ」
「あ、あぁ……そういう、事ですか」
「当然だ。私も……他に何もなければ、エルシーを引き摺ってでも連れ帰りたいさ」
「……フロイラさんは、追わないんですか?」
フロイラさんがまた、ため息を吐いて俯いた。
「私は明日、別地で任務がある。ヘマをした下位
「そうですか……」
心細くなる。
フロイラさんは頼りになる。
その強さも、大人としての判断力も……エルシーに対する扱い方も。
そんな彼女が──
「だから、エルシーの事は……ユーリ、お前に任せる」
僕に『任せる』と言った事に驚いた。
「僕に任せて、いいんですか?」
「いい。お前が適任だ、ユーリ」
目を瞬く僕へ、フロイラさんが自嘲した。
「恥ずかしい話だが……私は、今まで勘違いし続けていた。本音で話された事もなかった」
「本音で……?」
目を伏せて、少し羨ましそうな顔で僕を見た。
「あぁ。エルシーは私の前では大人の仮面を被っていた。素顔を見せた事もない。だから……お前には期待しているんだ、ユーリ」
「僕に期待を……?でも、エルシーは──
「エルシーはお前の事を『特別』だと思っている。お前の事をどうでもいいと思っているのなら、本音で話はしないさ」
僕は少し涙腺が緩むのを感じながら、悩んで……ゆっくりと、頷いた。
「エルシーと話し合います。絶対に何とかして、みせます……」
「……それでいい。お前なら何とか出来そうだ」
僕が決意を語れば、フロイラさんも頷いた。
彼女は普段よりも優しげな表情をしていた。
◇◆◇
翌朝、早朝。
商業都市ジュネス行きの始発汽車に乗った。
そして、エルシーが受注した依頼を改めて読む。
商業都市ジュネス内の司祭からの定期連絡が途絶えた。
生死は不明……『悪魔』による街への襲撃と推定されたが、商業都市ジュネス全体に異常はなかった。
貨物の輸送も平時と同じであり、司祭からの連絡のみが途絶えた状態。
派遣した『中位』の
恐らく死亡していると思われるが、街に変わった様子はない。
『悪魔』に対する危険度の判定を推定『中位』から『上位』に修正された。
……これが、商業都市ジュネスの現状。
『悪魔』の正体も不明……いや、そもそも『悪魔』が犯人なのかは分かっていないが。
一般人では
兎に角、不明瞭。
被害者は出ている筈なのに街に異常がないのも変だ。
何かが起きている事だけは分かる。
……背筋が冷たくなる。
冷や汗が流れた。
「……エルシー」
そんな場所へ一人で向かった
もし、万が一にも……彼女が、死んでしまった……としたら、僕の所為だ。
仲違いしてしまったのが原因だから。
早く、彼女に会わなければ──
僕は胸元のロザリオに触れた。
深呼吸して、強く握る。
瞬間、うつら、うつらと……強烈な眠気がきた。
寝ている場合じゃないと思いながらも、早朝だからという理由もあり──
一瞬だけ、気を失ってしまっていたようで……気付けば、汽車は目的地へと到着していた。
巨大が外壁が街を囲う、堅牢な都市。
商業都市ジュネスだ。
外壁には獣だけではなく、『悪魔』を寄せ付けないようにする意図があるのだろう。
巨大な門を汽車が潜り……駅へと停車した。
昼前だからか、街には人が溢れていた。
人、人、人……活気がある。
「……本当に『悪魔』が居るのかな」
何かしら危機が迫っているような状況には見えない。
だが、それでも……この街の司祭も、派遣された
気を引き締めつつ、汽車を降りた。
……何か、花のような香りがした。
確かに駅前で薄紅色の花を売っている少女がいた。
それを横目で見ながら、駅から離れる。
まずはエルシーを見つけないと……。
石で組まれた床を踏み締めて、煉瓦を積んで作られた建物を横目にする。
この街は港町ウェラポリよりも栄えてるらしい。
……取り敢えず、手掛かりが欲しい。
目撃者を探そう。
活気のある大通りを歩き、屋台を出している商人に目を付けた。
串に刺さった肉を焼いている男だ。
「すみません、少し話を訊きたいんですけど──
「おう、にいちゃん。俺は客以外と話すつもりはねぇぜ?」
彼の言い分はもっともだ。
僕は財布を取り出し、開いた。
「すみません、では串を二つ……」
「あんがとよ……で?訊きたい事ってなんだ?」
男が肉を焼きながら、問いかけてきた。
「その……僕と似た服装で、えっと『小豆色』の修道服を着た女の子を見ませんでしたか?」
「小豆色?……ん?あぁ……それなら、アレだな。さっき見たぜ……薄紅色の髪の女の子だろ?」
「えっ!?本当ですか!?」
幸先が良い。
自身の運の良さに感謝しながら、続きを促す。
「あぁ、あっちの奥へ向かったな……おっと、肉が焼けたぜ。二つで──
金を払って肉串を受け取り、僕は彼の指し示した方へ向かう。
紙袋に入れられた肉を脇に持ち、人ごみをすり抜けて……奥へ、奥へ。
そうして進んで広場へ到着した。
中央に大きな噴水がある広場だ。
……周りを見渡して、エルシーを探す。
だけど、居ない。
またどこかへ移動したのだろうか。
ここから道が幾つも分かれている……追いかけるのは難しそうだ。
僕は息を吐いて、噴水前のベンチへ座った。
……鼻を擦る。
また花の匂いがしている。
見渡すと、噴水前の花壇に花が植えられていた。
この花は、この街の名産品なのだろうか。
至る所に植えられている気がする。
僕は紙袋へ視線を落とした。
……折角、買ったんだから食べないと。
串に刺さった焼けた肉を口に含み──
「っ、んぐ!?」
噛みちぎった肉片を、地面へ吐き捨てた。
異臭がした。
酸っぱい味がした。
舌の上が痛い。
……これ、何の肉だ?
僕は何を買わされたんだ?
地面に落ちた肉片を注視しようとして──
「何してんの?ユーリ」
声を掛けられた。
「……えっ、エルシー?」
探していたエルシーが、呆れた顔で立っていた。
腕を組んでため息を吐いていた。
思わず僕はベンチから立ち上がった。
「何って……それはっ、僕は君を追ってきて──
「あ、そう。悪かったわね」
僕の言葉に彼女は少し申し訳なさそうな顔をした。
素直な様子に、僕は強張る顔を緩めた。
「……っ、でも良かった。合流できて……」
「必死すぎなんですけど?何かあったの?」
「何かって……!この街は──
僕は、あれ?
「この街がどうかした?」
「え、いや……何もない、けど」
何で、エルシーを追ってきたんだっけ?
「変なの。ボケたの?」
「い、いや……ボケてはないけど……あれ?」
「……まぁ、良いんですけど。折角来たんだし、少し観光していく?」
「あ……うん、そうしようかな?」
頭に霧がかかったような感覚。
違和感。
何かがおかしい気がする。
だけど、何がおかしいかは分からない。
違和感。
何かを忘れている気がする。
だけど、何を忘れているかは分からない。
違和感。
「……ユーリ?行くなら早くして欲しいんですけど?」
「あっ、ごめん!すぐ行くよ!エルシー」
違和感。
甘ったるい花の香りが、僕の鼻を擽る。
薄紅色の花が、鮮やかに……毒々しい程に、咲いていた。
◇◆◇
「エルシーさん、どうかしました?」
シェリが振り返った。
私を見て、長いまつ毛が揺れた。
私は首を横に振る。
「え?いや、何も……?」
私は呆けていたのだろう。
何故か、誰かに呼ばれた気がしたが……気の所為だ。
この街に私の知り合いは居ないはずだ。
「その……疲れているなら宿に帰りますか?」
シェリに心配するように顔を覗き込まれて、また首を横に振った。
「だ、大丈夫だから!気にしなくて良いんですけど?」
「ですけど?」
シェリが訝しむような表情をした。
……気が動転して、変な口調で喋ってしまったからだ。
「本当に気にしなくていいから!ほら、行こう!」
「何だか隠してるみたいで……変なエルシーさんですねぇ」
私は無理矢理、シェリの手を引っぱった。
青い空には雲が千切れている。
薄く、細く、不恰好な雲が流れる。
私とシェリは大通りを歩く。
行商が出している露店を渡り歩き、冷やかしながら進む。
「へぇ、面白いですね」
そうしていればシェリの不信感も薄れたようで、いつものように少しミーハーな部分が出てきた。
「エルシーさん、見てくださいよ。これっ!折ったら光る棒です!」
「……買うつもりなの?」
「はいっ!」
「で?何に使うつもりなの?」
「それは考えてませんけど……」
シェリは短く切り揃えた髪を撫でて、愛想笑いを浮かべた。
そんな彼女に呆れて、私はため息を吐いた。
「無駄遣いは良くないんじゃないの?」
「えー!?そんな、無駄じゃないですよ!見てください!ほらっ、光るんですよ?」
「光ったからって、何に使えるのよ。それ……」
呆れる私にシェリは頬を膨らませた。
「エルシーさんには分からないみたいですね」
「え、何が?」
「ロマンですよ!ロマン!キラキラ光って綺麗じゃないですか?」
「別に分からなくていいけど」
シェリの子供っぽい一面を笑い、笑われた彼女がまた憤る。
いつも通りの光景だ。
「しかし、ジュネスには面白い物が沢山ありますね!」
「そうね……ま、商業都市だから色々あるんだろうね」
そんな会話をしながら、また別の露店を見る。
商業都市ジュネスは大きな街だ。
聖地レイラインよりは規模は小さいが、様々な物品が集う街だ。
珍しい品物も多い。
観光するならうってつけで、シェリとも来たかった──
「あれ?」
シェリはここに居るじゃないか。
来れたのだから良いじゃないか。
何を考えているのだろうか。
何か変じゃないか。
何か忘れているんじゃないか。
「エルシーさん?」
いいや、何も異常はない。
「あ、いや……大丈夫」
シェリに不審がられないよう、思考を隅へ追いやる。
今はこの現実を見ないと。
「もう本当に大丈夫なんですか?疲れているなら、宿屋に戻りましょうか?私は心配ですっ」
「……う、うん。そうしようかな」
「そうしましょう!大丈夫ですよ、また明日来れば良いですから!」
シェリが私に笑いかける。
そうだ、また明日に来れば良いじゃないか。
大丈夫。
時間は沢山ある。
息を深く吸う。
花の香りがした。
視線を景色へと向ける。
賑わっている商店街だ。
シェリが私へ笑いかけている。
子供が蜻蛉を追って走っている。
小鳥が囀っている。
水溜りに景色が反射している。
空の青さを映している。
花壇の花が私へ笑いかけている。
赤黒い腐った肉が地面に転がっている。
誰かが私へ手を振っている。
あぁ、シェリだ。
彼女は死んだ筈では?
いいや生きているじゃないか。
それで良いだろう。
暗闇の中で八つの目が並んでいる。
私は彼女を追うように、歩き出した。
◇◆◇
エルシーと並んで、商業都市ジュネスを歩く。
歩くたびに彼女の薄紅色の髪が跳ねる。
それを目で追いながら、僕は少し悩んでいた。
思考に霧がかかったような感触がある。
絶対に何かがおかしいのに、それが分からない。
何とか思い出そうと──
「ユーリ、宿は取った?」
エルシーの言葉に思考を中断する。
「え?あ、いや……まだ取ってないけど」
「なら私と同じ所にすれば?二人用の部屋にすれば少しは費用も浮くし」
「えっ?いや別に別室で、えっと……」
「嫌なの?」
エルシーが少し眉尻を下げた。
僕は慌てて首を横に振った。
「ち、違うよっ」
「じゃあ何で?普段から同室なんて事はあったでしょ?ほら、ウェラポリでも」
「それはそうだけど──
ウェラポリ……?
何で同室で……あ、教会で寝泊まりしたからだ。
でも何で分かれて……喧嘩したから……。
この街に来た理由は──
「っ、エルシー!」
「な、何よ?急に大きな声出さないで欲しいんですけど……」
「この街の『悪魔』は……?」
「『悪魔』?何の話?ここには息抜きに来たんでしょ?」
「あ、え?」
頭に中がぐるぐると回る。
黒いモヤのようなものが渦巻く。
甘い匂いが嗅覚を支配する。
視界がボヤける。
うるさい程に心臓が動悸する。
「ユーリ、アンタ……やっぱり今日、ちょっと変じゃない?」
違和感……無視した方がいい気がする違和感。
だけど、無視してはならない。
「……エルシー、この街に『悪魔』が居る筈なんだ」
「え?何を根拠にしてんの?」
「だって……あ、く……え?いや、だけど…──
頭の中が渦巻く。
思考が不明瞭になる。
ぐるぐると、ぐるぐると、ぐるぐると。
混ざり、甘い何かが差し込まれる。
首を振って、無理矢理払う。
あぁ、そうだ。
「だって、僕達がこの街に来たのは、この街の異常を……『悪魔』を討伐するためじゃないか!?」
「そんな事ないと思うけど?」
「いや、絶対にそうなんだ……何か、何かがおかしい……!」
僕の声に周りの人間の目が集まる。
それでも恥ずかしさよりも、この異常に対する警戒心が勝る。
甘い匂いがする。
甘い臭いがする。
甘い腐臭がする。
頭に甘い何かが割り込んでくる。
それはまるで本に挟まる栞のように、僕の思考を中断させる。
「ユーリ……?」
エルシーが心配するような表情を僕へ向ける。
……だめだ、彼女を心配させたらダメだ。
そんな事をしたい訳じゃない。
だって、僕は……。
まだ、彼女と仲直りをしていないのに。
「……エルシー?」
「よかった。戻っ──
「お前は、誰なんだ……?」
そうだ。
まだ仲直りはしていない。
この言動は彼女らしくない。
あまりにも僕の『こうだったらいいな』に寄り添い過ぎている。
違う。
彼女はいつも僕の想定から外れて、振り回してくるような人だ。
こんなのっ──
「エルシーじゃない……」
「な、何を言ってるの?ユーリ?変になっちゃった?」
鼻につんと甘い臭いがした。
……この臭いは花の匂いなんかじゃない。
焦げたような臭いだ。
僕は胸元のロザリオを握る。
「ユ、ユーリ、何を──
強く、強く握る。
「僕はエルシーと仲直りするためにここに来たんだ……お前と、じゃない」
ロザリオが手に食い込んで、血が流れる。
そうして全力で
『悪魔』を討ち払う為の、聖なる力へと──
傷付いた手のひら。
流れる血。
そこから体内へと循環させる。
ロザリオを、『聖銀器』を体の一部として
身体が、血管が、血が、焼けるように熱い。
いいや、本当に焼けている。
何か、僕の身体に入っていた不純物が燃えているんだ。
「…………」
目を閉じて、集中する。
エルシーのような声はもう聞こえない。
体内で脈打つ音に集中する。
身体の中を
「……っ、はぁ」
目を開けた。
そこにはエルシーは居なかった。
先程までの煌びやかな景色もなかった。
薄暗く、黒いヘドロがあちこちに付着した街並みが見えた。
空を見上げれば、青空は無く……黒い雲が空を覆っていた。
日光を遮って、代わりに赤い光が落ちてきている。
視線を落とす。
街に生えていた花は……綺麗な花なんかじゃない。
薄紅色の花弁は内臓を裏返したような見た目をしていて、柱頭には牙のような物が並んでいる。
「……これが、ジュネスの本当の姿……?」
街中で確かに人が歩いている。
だが、虚空に向かって話している人も多く……恐らく、僕と同じように幻覚を見せられているのだろう。
明らかな異常だ。
甘ったるい毒のような異臭が鼻に来る。
明らかに『悪魔』の仕業だ。
僕は思わず口元を覆いながら、露天へ目を向けた。
……ガラクタが並べられている。
この街の人間は、まともな思考能力を損失しているのだろう。
だから──
手元の紙袋。
串に刺さった肉を捨てた。
色は変色していて、粘り気がある。
……腐っていた。
気分が悪くなるが吐き気を抑える。
今ここで体力を無駄に消費する訳にはいかない。
「……っ、エルシーを……探さないと……!」
『悪魔』が思考力を奪うのならば、自衛は困難だろう。
どんなに強い
僕は手元のロザリオを