モテモテの実食べちゃった笑 作:ワンピースにわか
「ゲッコーモリア……」
俺の呟きに、目の前の男がこちらを向く。
「ああ? なんだお前は」
俺は反射で、モリアに目を合わせ──能力を発動させていた。
──主要キャラには使いたくなかったが……背に腹は変えられない!
「モリアさん、いえモリア様! 王下七武海であるあなたにお願いがあります!」
目を合わせたことを確認すると、俺はモリアに向かって平伏した。
こうなったら再びの予定変更だ。モリアと出会えたこの状況を、最大限利用する。
「お前は……」
強者に向かって能力をかけたことはない。仮にこの能力が精神力によって抵抗が可能ならば、かけること自体が危険だ。モリアは原作でも、新世界で名を挙げていたり、単騎で黒髭海賊団を襲撃したりと、器のデカさは示唆されていた。精神力がある者に、この能力がどこまで通じるのか。その不安と共に、モリアの反応を待つ。
「おいよせガキ。まずは顔を上げろ」
顔を上げた際に、再び目を合わせる。
モリアの表情は困惑しているものだった。
「おれが誰だか知ってて聞いているのか」
「……はい」
「知った上での言葉か。いい度胸しているな、お前」
困った表情を浮かべるモリアに、密かに胸を撫で下ろす。
「とりあえず、お前の名前は?」
「……シロと呼ばれています」
「敬語はいい。望みは何だ? 聞くだけなら聞いてやる」
モリアの態度が柔らかい。
これは、能力が効いているのか?
「俺を、この島から逃がしてほしい……です」
「この島から……か」
モリアは眉間に皺を寄せて何かを考えている。
そして──
「その前に一つ聞いておく。シロ、お前……何かの能力者か?」
※ ※ ※
「帰ったぞ、お前ら!」
”魔の三角地帯”フロリアン・トライアングル。その中に存在する巨大船スリラーバークは、王下七武海ゲッコーモリアの拠点だ。
「モリア様!」
モリアの帰還を出迎えたのは、船医であるドクトル・ホグバックだった。
「お早い帰りですね……七武海の召集があったんじゃ」
「ああそれだが……やめた」
つまらなそうに答えたモリアに、ホグバックがエネル顔を披露する。
「ええー!? 行かなかったと!?」
「そうだ。おれは疲れたから寝る」
「ちょっと、モリア様! ちょっ……ああ、もう! 珍しく外に出たと思ったのに……まあ、モリア様だからしょうがないか……」
ため息をつくホグバック。
王下七武海相手に、普通に悪口とも取れる発言をしている。うっすら原作でも描かれていたが、モリアとの仲は良好らしい。
「ああ、そうだ。ガキを一人、しばらくここに置くことにした。いろいろ教えてやれ」
「え、ガキ……?」
モリアの言葉に、ホグバックが首を傾げる。
「ここだよ」
こちらに気づいていないようなので、前へ出てやる。
「うわ! 本当にガキだ! ちっちゃくて見えなかった!」
「うるせえ。チビで悪かったな」
どうやらモリアを見上げていたせいで、俺のことが視界に入っていなかったらしい。
「ずいぶんと生意気だな……お前、名前はなんだ?」
「……シロ」
「そうか。おれはホグバック。天才、ドクトル・ホグバックだ」
ニヤリと胸を張るホグバック。俺の態度に少しムッとしていたが……原作通り切り替えが早い男だ。
「よし、城に案内してやる。ついてこい」
「……ありがとう」
「ところで──」
ホグバックがこちらを振り向く。
「その変なサングラスはなんだ? 趣味か?」
一から説明するのが面倒臭い。かといって趣味だと思われるのも……いや、もうこの際しょうがない。
「……そうだよ」
「お前、変わってるんだな」
かわいそうな人を憐れむような目でこちらを見るホグバックに、俺はちいさく舌打ちする。
そして落ちかけていた
※ ※ ※
「何かの能力者か?」
「……はい」
「やっぱり能力者だったか」
モリアに能力者が尋ねられた際、俺は正直に答えた。
モリアは何か確信があるようだった。そんなモリアに嘘をついてもしょうがないと判断したのだ。
「……昔、似たような能力のやつに会ったことがある」
俺が黙っていると、モリアは感情の読めない声で、昔の話を聞かせてくれた。
モリアが新世界にいた頃、初対面にも関わらずやたら親密に感じる人間と会ったことがあるらしい。その当時は気づかなかったが、後にその親しみが能力によるものだとわかった時は驚いたという。
「まあそいつも、すぐに名を聞くこともなくなったが……」
そう語るモリアの視線は遠いところを見ている。
新世界の頃は、モリアも仲間たちと強豪扱いされていたはず。……仲間のことを思い出しているのだろうか。
「まあそういうことがあったからな。お前に対する違和感はすぐに確信に変わった」
しかし、とモリアは続ける。
「なぜおれを頼った? 能力を使えば、ほとんどのやつはお前の言うことを聞くだろ」
「それは……偶然、出会ってしまったから」
「キシシシシ! そうか、それはしょうがないな」
モリアはひとしきり笑った後、ついてこい、と歩き出した。
断る理由もない。俺は首肯してモリアの背中を追った。
「相手に気づかれずに能力にかけることができるってのは、使いようによっては格上を喰うことができる」
俺がついてきているのを確認したモリアは、俺に向かってそう語り始めた。
「お前の能力とおれの能力があれば、大抵のやつはしてやれる」
モリアの言葉に、思わずモリアの方を見る。
モリアの瞳は野心に満ちていた。
「シロ、俺に協力しろ。どうせおれには能力をかけたんだろう? 悪いようにはしねえ」
モリアが、俺を勧誘している。その事実に、鳥肌が立つ。
目的がない。夢もない。そんな俺だが、初めてこの世界を認識した日は違った。
──海賊になってみたい。
純粋に憧れていたことを、思い出す。
──自由になれたんだ。やってみても、いいんじゃねえのか?
「……はは、マジか」
王下七武海に協力を求められている。断る理由はなかった。
どうだ、と尋ねるモリアに、俺は深く頷いた。
「俺の能力は、目を合わせることで発動するみたいです」
モリアが乗ってきたという小舟へ向かう途中、俺はモリアに能力の詳細を伝えた。助けてもらう立場である俺の誠意のつもりだった。
聴き終えたモリアは、俺に一つの質問をした。
「その能力は、かけないようにはできないのか?」
「……いまのところ、できません」
それを聞いたモリアは、路にあった店に立ち寄り──
「こんなものしかなかったが、無いよりはマシだろうよ」
「……なんです、これ」
どでかいハートのサングラス。デザインからして、パーティ用か。ファッション用ではないだろう、多分。
いや、デザインではなく。
「なんで……?」
「目を合わせなければいいんだろ? かなり見えにくいだろうが、我慢しろ」
「いや、そうじゃなくてですね。なんで俺にこれを?」
「ん? だって面倒だろう?」
モリアは俺の質問に困惑しつつも、サングラスを俺の手に持たせた。
「おれが昔会ったやつは前髪で目を隠していた。そいつが目を隠していたことは気にしていなかったが……能力の制御が効かないなら納得だ。お前も、常に能力が発動してたら面倒だろう?」
──ああ、そうか。これが、モリアか。
モリアが原作で部下から慕われる理由がわかった。なるほど、これは慕われるはずだ。
「落ち着いたら、好きなのを買えばいいさ。金ならやる」
「ありがとう、ございます」
「気にするな」
能力の影響もあるのだろう。しかしそれでも、久しぶりの
※ ※ ※
「とりあえず、ここがお前の部屋だな」
「ありがとう、ドクトル・ホグバック」
「いいさ、シロ。何かあれば、言ってくれ」
ホグバックが手を振って部屋を後にする。それを確認した俺は、部屋にあったベッドに腰掛けた。
「ふう……目が疲れた」
ハートのサングラスを外し、息を吐く。
フロリアン・トライアングルにあるスリラーバークは、薄暗い。それもあって、サングラスをしていた俺の目はかなり疲労していたらしい。
「ホグバック、陽気な人だったな」
ホグバックには能力をかけていない。俺はサングラスによって目を合わせることを防げていた。ホグバックもサングラスをしているため、なくてもよかったかもしれないが……念には念を入れるべきだろう。
一応、モリアと出会った島で一般人に確認したところ、サングラスをかけている間は能力が発動しないようだった。
「これからどうするか、だな」
モリアに連れられてあの島から脱出できたのはよかった。スリラーバークへ向かう途中、海軍の軍艦とすれ違ったが、モリアを見るなり何事もなかったかのように通り過ぎていった。
あれから数日が経っている。
シャルリアがどうなったのかはわからないが……あまり興味はなかった。
この身体に刻まれている奴隷の証がある限り、政府的には俺はシャルリアの奴隷だ。しかしもう戻るつもりはない。
「まだ来たばっかりだけど、こっちの方が全然過ごし易そうだ」
とりあえず、しばらくシャルリアのことは考えなくて良いだろう。
シャルリアも天竜人だ。俺に依存気味だったが……すぐに別の奴隷を見繕うに違いない。
問題は……モリアの方だ。
俺はこの世界に大きな影響を与えていない。つまり、このまま原作通りに進むと、モリアは麦わらの一味とぶつかることになる。
「まだまだ先の話だろうけど……どうするかなあ」
モリアには恩がある。できれば負けてほしくはないけど……。
ベッドに横になり、そんなふうに考えていた時だった。
「「あ」」
天井から、幼い子供の顔が飛び出した。そして、そのまんまるな瞳と
「わー!!」
「っ! お前は……!」
自分から飛び出してきておいて、驚いている。そんな間抜けな姿を見せる少女。
「しまった……目を……」
俺は彼女を知っている。
「おどろかせんじゃねえよ! このバカ!」
口が悪い少女──ゴーストプリンセス・ペローナは、俺に対して、理不尽に怒っていた。
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