望むより、春は遠くに   作:柊 カスミ

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先に言っておきますが基本的に甘い恋愛模様なんて書きません


変化

 

 やぁ、はじめましてだね。

 私は天津神(あまつか) 富由(とみよし)、禪院家の血を少しずつ薄くして禪院を剥奪された家系の家長さ(当主とは言いたくないし妻が許さない)。まぁ、まだパイプは残ってるけどね。

 さて、今は長期の任務から解放されて帰宅しているところだ。

 本当は一週間も家を空けたくなかったんだけどね?流石に上から直々に命令書貰ったら受けない訳にはいかないでしょ?あっはは!

 

 私には娘がいる。あの子には色々と申し訳なく思っている。

 まず一つ、天与呪縛なんかを持って産んでしまった事(産んだのは私じゃないけど)

 二つ、五条の坊と同じ歳に産んでしまったこと。

 そして三つ、五条の坊の『実質お見合いのパーティ』を断れなかった事。

 最後に、そんな時に家にいる事ができず、そばにいてやれなかった事。

 あの子には、今までもそしてこれからも絶大な苦労をかけるだろう。それを私と妻で支えていくことができれば、あの子にとっても私にとってもこれ以上ない位の幸福であろう。

 

 自宅にたどり着き、妻に問いかける。

 「五条の坊との見合いもどきはなんともなかったかい?」

 いつものように、日常会話としてあの子の様子を問いかける。

 しかし、彼女はいつもと違い落ち着かない様子で、私にこう言ってきた。

 「早くあのこの部屋に行ってくださいな」

 一体何があったと言うのか?

 兎にも角にもあの子の部屋に行ってみないことには始まらない。

 そしてあの子の部屋に近づくにつれて、私の肌をかすめる『異質』。その正体も分からぬままに……いや、気づきたくなかっただけなのかもしれない。部屋の前に立ち、それを理解する。

 「これは呪力か?」

 この呪力の出所は、あの娘の部屋だ。

 なぜ?意味がわからない。しかもかなりの濃度だ。こんなの呪霊の温床になる。

 私はなりふり構わず、部屋の襖を開ける。そこにはあの子がうずくまっていた。

 その顔は、恐怖に彩られていた。

 

 私はもちろん知っていた。あの子の天与呪縛が、喜怒哀楽を希薄にさせるものだと。しかしなんだ?この怯えようは。

 一体何があったらここまで怯えるんだ。

 しかも呪力が垂れ流しになってしまっている。このままでは、この子は呪術界の人間兵器になってしまう。そんな役目をこの子に負わせるわけにはいかない。

 「落ち着け、いったいどうしたんだ。何かあったのか?私に話してみなさい」

 この子はこう答えた。

 「五条とは、一体なんですか?あれはほんとに人間ですか?私にはそう見えませんでした。あれは化け物です。同じ人間ではありません。私はあれが、とてつもなく恐ろしい」

 そうか、この子が恐怖している対象は、五条 悟か。この子には理解できたのか、あの五条の坊がどれほど異質な存在か。

 「大丈夫だ、君があれを拒むのならば、私は全力で君からあれを遠ざけよう。お見合い何か知ったこっちゃない。禪院など関係ない。私は君と妻と……この家族が大好きなんだ。だから、落ち着け。大丈夫だ。大丈夫だ」

 その子の顔から恐怖が和らいだ、瞬間決壊。

 彼女の瞳からは、ポロポロと涙がこぼれ出した。

 私はこの子の背中をさすり続けた。その間、この子は私の服を濡らし続けた。

 しばらくして、泣き疲れたのかこの子は眠ってしまった。

 

 なんと言うこともない今日が私がこの子の感情らしい感情を始めて見た記念日となった。




周りの呪術師から見れば、とてもまともに見える富由さんですが、きちんとイカれてます。一応禪院なので。
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