She is here.   作:非単一三角形

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・原作USJ配置(16話扉絵、全景マップ十二時方向から時計回り)

 出入口付近:飯田・麗日・障子・砂藤・瀬呂・芦戸
 倒壊ゾーン:爆豪・切島
 土砂ゾーン:轟・葉隠
 山岳ゾーン:八百万・耳郎・上鳴
 火災ゾーン:尾白
 水難ゾーン:緑谷・峰田・蛙吹
 暴風・大雨ゾーン:常闇・口田


 ……はてさて?



C1-11 驟雨貫く炎禍

 

 

「───死ぃねぇぇぇ!!!」

 

「「「うおおお!?」」」

 

 

 脳裏に浮かべ模倣するは、相手が何者であろうとも殺意を振りまく猛々しき幼馴染。

 沈みゆく船から跳躍した彼───緑谷出久が、その僅かな滞空時間に指を引き絞り、放つ。

 

 腕の一振りでビルを貫く力を、いつかの如く一本の指に。

 デコピンの要領で放たれたそれは、彼の親指と中指を犠牲にしつつ、水面に雄大な穴を穿った。

 

「っそっ……!!! また調整……空翔さん!」

「了解。……良くやったよ、緑谷くん」

 

「水面に強い衝撃を与えたら、広がってまた中心に収束するから……耳郎さん!!」

「わってる! ……ふっ!」

 

 放った一撃の反動で僅かな滞空時間を得た緑谷を、背から抱える形で受け止める空翔。

 その姿を視界の端に映し、沈みゆく船から狙いを付けた耳郎が、コスチューム両脚に仕込まれたスピーカーへと耳先を差し込む。

 

 

「っ、波に、ひきずりこまれ……ぐああ!?」

「み、耳がぁ!? おがぁ!?」

「てめ、ぶつかっ……ぎゃがッ!?」

 

 

 生じた穴へと流れ込む水に、抗えず引き摺られる、船を囲んでいたヴィラン達。

 『力技』により集められた彼らの行く先は、耳郎の作り出した、目には映らぬ爆音地帯。

 

 まともに爆音を受ける形になった者から次々と泡を吹き、白目を剥いた姿で浮かんでいく。

 咄嗟に耳を塞ぐことが叶った者もまた、同じく水流に流される者と衝突、それにより耳から手が外れれば同様に、避けられた者もまた耐え難い頭痛の中で、逃げ出す術も無く悶え苦しむ。

 

 直線軌道かつ範囲攻撃、一度見せれば対策を取られる恐れあり。

 それらの条件からなるべく利を大きくするべく考え出された、即興の一網打尽策。

 目の前に広がる想像以上の戦果に、立役者となった耳郎から感嘆の声が漏れた。

 

 

「うわ……緑谷、あんたやっぱりスゴイよ」

「っ、あ、ありがとう……でもやっぱり、全員は……空翔さん!」

「ああ、取りこぼしぐらいは任せておくれ。しっかり捕まってなよ……はぁっ!」

 

「づ、ぁ……が、ガキ共が……がっ!?」

「て、てめ、それは卑怯……ごっ!?」

 

 気絶は免れど、ただ辛うじて水面に浮かぶだけとなったヴィランを襲うは、空を翔ける生徒から振り下ろされる警棒の一撃。

 モグラ叩きも斯くやと行われる()()に、堪らず飛んだ悪態への返答は無慈悲な一振りであった。

 

 

 

 

「―――あれで全員だったのは運が良かった……すごいバクチをしてしまっていた……普通なら念のため何人かは水中に伏せとくべきだもの空翔さんも僕達二人抱えては逃げられないって言ってたじゃないか二人の信用を背負ってたっていうのに僕はなんてことをそれに結局また調整出来なくて指を……裂けた皮膚を不衛生な水に浸けるのも良くないからって空翔さんにここまで抱えてもらうことになったし冷静に努めようとしていたけど冷静じゃなかった……危ないぞもっと慎重に……」

 

「……緑谷、もうソレ癖なんだね……そんな気にしなくて良いってば」

「無事に切り抜けられたんだから良いじゃないか。反省は悪い事じゃないけど、後に回そうよ」

 

 ヴィランとの初戦闘を終え、水難ゾーン外縁部の浅瀬まで退避した三人。

 猛烈な勢いかつ小声で反省を垂れ流す緑谷に、その全てを聞き取ってしまった耳郎が遠い目を、軽く聞き流した空翔が促す形で話題を切り替えにかかる。

 

「それより、これからどうするかだよ。このままこの辺りに留まって救助を待つか、皆との合流を優先するのか考えないとね」

「外へは御魂が連絡入れてくれてるハズなんだよね? それならすぐ先生が……プロヒーロー達が来てくれるだろうし、下手に動かない方が良いんじゃない?」

「そうだね、先生が……」

 

 

「……緑谷?」

「……緑谷くん、キミ今何を考えてる?」

 

 ふと、言葉を途切れさせた緑谷の顔が、施設中央に位置する広間へと向けられる。

 その視線、瞳に映る熱量に気付いた二人から、咎めるような呟きが零れた。

 

「…………敵が多すぎる。先生はもちろん制圧するつもりだろうけど……やっぱり僕らを守る為、ムリを通して飛び込んだと思うんだ」

「……イヤ、それは分かるけど……」

「緑谷くん……」

 

「邪魔になるようなことは考えてないよ!」

 

 今この時にも多対一の戦場を支え続けているだろう先生への助力。

 緑谷から言外に示された選択肢に、耳郎が目を逸らし、空翔は顔を伏せる。

 

「ただ隙を見て……少しでも先生の負担を減らせればって……」

 

 

「…………そうだね」

「……!」

「っ、空翔!?」

 

 短くない沈黙の後、肯定の言葉を落とした空翔に目を剥く耳郎。

 緑谷を含め、驚きを見せる二人に、彼女は伏せていた顔をゆっくりと上げ―――

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

 薄墨のような微笑みを浮かべた。

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───死ィねぇぇぇ!!!」

 

「「「ぎゃあああっ!!?」」」

 

 

 爆音、絶叫。吹き飛ぶ人影。

 痣と火傷に塗れた身体で、水浸しの地面を這いずる男達。

 

 "個性"『爆破』を遺憾無く振るい、風雨の中に阿鼻叫喚を描くはヒーロー科、爆豪勝己。

 

 

「う、嘘だろ、この人数差で……」

「ガキの癖になんつー強さだよ……」

「つーか『死ね』ってオマエ……ホントにヒーロー目指してんのか!?」

 

「『幽霊女』みてぇなこと言ってんじゃねえッ! とっととくたばれや、ザコが!!」

 

「「「イヤ誰だよソレぎゃあああぁっ!!?」」」

 

 

 怒声と共に一際轟いた爆音が、彼に襲い掛かった男達───()()()()()()()()に待ち構えていたヴィラン達の叫びを呑み込んでいく。

 やがて、巻き上がった爆煙が晴れたそこには、累々と横たわる人影だけが残されていた。

 

 

 

「…………あ、あのー、爆豪くん? 死人、出ちゃってないよね……?」

「……っ、……っ!」

 

気絶させ(伸し)ただけに決まってんだろが!! 黙ってろ雑魚"個性"共!!」

「ざ、ざここせい……」

「……っ」

 

 爆豪の背後、物陰から起き上がる者の気配がなくなった場を恐々と覗くは、同じくヒーロー科、葉隠透および口田甲司。

 苛立ち混じりの応答にビクリと震えた二人へ、彼は更に攻撃的に目を吊り上げる。

 

 

「コノ土砂降りの中じゃ何をやってようが雨粒で居場所丸わかりな『透明』の雑魚に、暴風で声は掻き消えるわ、そもそも呼び掛ける動物も居ねえわの無能雑魚だろがっ!! 分かったら大人しく守られてやがれ雑魚共が!!」

 

「……雑魚って三回言ったぁ……」

「……っ、……」

 

 しょんぼりと肩を落とす二人に、舌打ち一つで背を向ける爆豪。

 そうして、戦闘に火照った身体から一度息を吐き───自身の掌を広げ、呟いた。

 

 

「……気持ち悪ィな」

 

 

「えっ?」

 

 呟きを聞いた葉隠の声には答えず、爆豪は倒れ伏すヴィラン達を一瞥する。

 その肉食獣が如き瞳の奥には、戦いの中で浮かんだ無数の違和感が渦巻いていた。

 

 

 ───ヒーローの学校に乗り込むヴィラン。そんだけなら考え無しに見えるがそうじゃねえ。

 襲撃のタイミング、警報(センサー)類への対策……あの半分野郎()の言った通り、クソほど備えたバカ共だ。

 

 だが、だったら何で───

 

 

「……で、でもスゴイね、爆豪くん! これだけ雨降ってても戦えるんだ!」

「あァ? 毎年平均で百回は雨の日あんだろが。三~四日に一度、役立たずになるヒーローなんざ使い物になりゃしねえ。ンなもん、とっくの昔に克服しとるわ」

 

「う、うわあい、またしても正論……」

「……っ」

 

 塩対応にもめげずに話しかける葉隠に、今度はにべもなく答えた上で、彼は再び思考に沈む。

 

 彼の"個性"『爆破』の要訣は、掌の汗腺から出るニトロに似た性質の液体───即ち手汗だ。

 寒冷な現場、季節および雨に体温を奪われるこの状況において、少なからず支障は出る。

 降りしきる雨の中では爆破爆炎の威力が減衰を受けることもまた、無視はできない事実。

 

 切った啖呵に偽りは無く、されど晴天の下と同様の性能(パフォーマンス)を発揮できるかと問われれば、否と答えざるを得ない。

 当然、それを踏まえた"個性"の使い方、威力の調整など大した苦でもないがと、実力とセンスに裏打ちされた自信の下、的外れな懸念を一蹴した一方で。

 

 

「……チッ、さっさと行くぞ」

「行くって……どこへ?」

 

「決まってンだろ。あのワープゲートぶっ殺しにだ!」

「えぇ……い、いやでもあのヴィランに攻撃は……」

 

「敵の出入り口だぞ。いざって時逃げ出せねぇよう元を締めとくんだよ! モヤの対策もねぇわけじゃねぇ…!」

「で……でもでも! 他の皆も同じように飛ばされてるなら、助けが必要なんじゃ……」

 

「ハッ! 生徒(おれら)に充てられたのが、こんな───!」

 

 

 ───こんな三下ヴィランばかりなら。

 

 出しかけたその言葉が、突如喉奥に引っ掛かる感覚となって彼の身を走る。

 鈍く警鐘を鳴らした自身の勘を訝しみ、答えを探して閉じた瞳は、一瞬の間を経て見開かれた。

 

 

 直感的に、雨風の影響を多大に受けると予想されておかしくない『爆破』。

 

 同じく、隠密行動に大いに支障をきたす『透明化』。

 

 対象が自然の動物である以上、暴風雨の中では碌に機能しない『生き物ボイス』。

 

 

 そんな"個性"を持つ三人が、揃ってこの場所(暴風・大雨ゾーン)に『ワープ』させられているという事実。

 ───はたして()()は、偶然だろうか?

 

 

「……爆豪くん?」

「……っ?」

「…………」

 

 

 ───どこまでだ?

 何が本命(目的)だ?

 

 脳裏を次々と過る疑念に、彼は無言のまま歯を軋らせる。

 

 

 ───ここに三下のザコしか居なかったのは何故だ?

 単なる余興以下だった? ……『ワープ』なんつう鬼札切っといて?

 だとしたら、まるで……イヤ、そんなバカな事が───

 

 

「…………行くぞ」

「えっ、う、うん……どこに?」

 

「だから決まってるっつってンだろ───」

 

 突然押し黙ってしまった爆豪の、これまた唐突な指示に、見えない首を傾げる葉隠。

 パタパタ浮かぶ手袋へと目を動かす爆豪から返ったのは、比較的静かな声と───天を向く眦。

 

 

クソ(ヴィラン)ども全員、ブッ殺しにだッ!!」

「物騒度上がってる!?」

 





 は~ども~ど☆

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