作者は原作からの改変を考える際、状況が変わると原作キャラがどう行動するか、を主に置いて構想を練っています。
導きたい結果から遡って状況を変化させることもありますが、先に変化を与えてから各キャラにひとまず行動させてみる、という形で着地点を探ることも少なくありません。
その結果、書いてる当人にも予想外の変化が発生することもあったりするのです。
※[2023/12/6/8:32 追記] 上げた後でマズイ箇所を発見、急ぎ修正を行いました。
修正前をご覧になった方には申し訳ありません。
「あれが……!! 生で見るの初めてだぜ……!!」
「迫力すげえ……」
「バカヤロウ尻込みすんなよアレを殺って俺たちが……」
「───死柄木弔」
「来たか黒霧、ようやくラスボスさんのお出ましだぜ」
訓練場に駆け付けたオールマイトの姿に、ヴィラン達が見せた動きは大別して二つ。
その威風に腰を引かせながらも害意を向けるか、泰然と彼の人物を見上げるかの択一であった。
襲撃者の大多数、とある男子生徒が居れば三下と言い捨てただろう者達は須く前者に分類され。
後者にあたる存在は、施設中央広間に群がるヴィラン達の中に、三名。
凡百のヴィランを震え上がらせるオールマイトの襲来にも、むしろ待っていたとばかりに口角を上げる推定主犯格、死柄木弔。
その名を呼びつつ、黒い靄のような"個性"によって彼の傍らに現れた、生徒達を訓練場各地へと転移させたヴィラン、黒霧。
「……ああ、そうだ。お前がこっちに来たなら、13号はやったのか」
「いえ、行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおりまして……一名逃げられました」
「あ゛? ……チッ、なら他のプロが来るまでの
そして、最後の一人。
状況の変化にもまるで頓着する様子を見せず、その剛腕で
「
「ッ、そうはさせん!!」
ニタリと嗤った死柄木の指示に、彼の者の黒腕が組み敷いた人間を圧し潰さんと動き出す。
対して否を叫んだ声を置き去りに、施設入り口に立っていたオールマイトの姿が掻き消えた。
「……へっ───?」
「なっ、早───」
「……っ」
何が起きた。何かが通った。
周囲に群がるヴィラン達が抱けた認識は、たったそれだけ。
巨体が通過した直後の風だけを残し、振るわれた拳が彼らの意識を断っていく。
数多のヴィランを、降りかかる災禍を尽く打ち砕き、捻じ伏せ、覆してきたオールマイトの拳。
それは事この場においても損なわれることなく、今にも命を摘み取らんとする剛腕へと、目にも止まらぬ速さで叩き込まれ───
「な……っ!?」
「ははっ! だよなあ、そう来るしかない。けど効かないぜ、『ショック吸収』だからな」
轟いた肉を打つ重低音とは裏腹に、姿勢はそのまま僅か仰け反るのみに留めて見せた脳無。
打ち込まれた拳をぎょろりと睨み返すその姿に、オールマイトの口から驚愕の声が漏れる。
「脳無にダメージを与えたいなら、ゆうっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね……まあ───
「ぐぁ……っ」
「っ、わざわざサンキュー、そういうことな……っら!!」
押さえつけられた後頭部がミシリと鳴る程の荷重をかけられ、堪らず苦悶の声を漏らす相澤に、死柄木から喜色を隠さない
それを聞くが早いか、一瞬の歯軋りをしつつも脳無の背後へと回ったオールマイトは、その腕を離させるべく羽交い絞めを試みる。
―――"個性"により打撃が通じないというならば、組み技で引き剥がす。
そんな考えの下、彼は万理を覆してきた己が膂力を注ぎ込み───それでも僅かに拮抗を見せる剛力に目を見開きながら───抵抗を続ける黒い巨躯を力任せに持ち上げた。
背後からガッチリと脇を固め、そのまま移行するはブリッジの姿勢。
所在無く天に伸ばされる両腕および剥き出しの脳天を、地に叩き付ける軌道に乗せる。
それはまさしく、人理を越えた威力で放たれた渾身の『一投げ』。
コンクリートを穿つ轟音と共に、巻き上げられた粉塵が一帯を包み込み───
「っ~~!! そういう感じか……!!」
「……踊るなあ、
苦々しく唸るオールマイトへ、
粉塵が晴れた其処にあったのは、投げを放った彼の脇腹を掴む、地面から伸びた黒の双腕。
そこに繋がる筈の脳無の身体はと言えば、投げられた体勢のまま両の脚を宙に浮かせている。
一見不可解なその様を成立させた要因は、脳無の肩から先を呑み込むように広がる
「仲間の救助に焦ったか? いいね黒霧、期せずしてチャンス到来だ」
「私の中に血や臓物が溢れるので嫌なのですが……あなた程の者ならば喜んで受け入れる」
靄の正体は、生徒達の分散および襲撃に現れたヴィラン達を施設内へと導いた黒霧の"個性"。
空間的に離れた二地点を繋ぐ『ワープ』により、地に投げ込まれ埋められる筈だった脳無の腕をオールマイトの背中側へと転移させたというのが事の次第であった。
「君ら初犯でコレは……っ覚悟しろよ!!」
「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。そしてあなたの身体が半端に留まった状態でゲートを閉じ───引きちぎるのが私の役目」
たとえ肉体への『ショック』は吸収されようとも、首から上を地面に埋めてしまえば行動は不能───そんな考えから打たれた一手への、合理的かつ
反り返らせた身体を引き込まんとする黒腕に、歯を食いしばり抗うオールマイト。
淡々と、少しずつ
最早笑い出す寸前とばかりに愉悦に見開いた瞳で、組み合う姿を見下ろす死柄木。
それは、誰の眼から見ても明らかな、不撓の英雄の窮地───
「───オールマイトォ!!!!」
(緑谷少年!?)
悲痛な叫び声を上げ、拳を振りかぶった姿勢で
その目的はオールマイトの手助けか、はたまた矢も盾もたまらず飛び出しただけか。
「浅はか」
踏み切った勢いで宙を泳ぎ、身動きもとれないだろう彼に、そう言い捨てた黒霧が対処に動く。
またどこか遠方へと転移させる腹積もりか、広げた黒靄を待ち構えるように伸ばし───
「調子乗ってんじゃねえぞ、モヤモブがぁ!!」
「なっ……ぐぁ!?」
緑谷の迎撃に向かった黒霧を、突如現れた『爆破』が横合いから殴り付けた。
起きた事態に惑う彼の襟首を掴み、そのまま地面へと抑え込むは、ヒーロー科、爆豪勝己。
「ふっ! ……うわっ!?」
「っ、黒ぎ……あ?」
乱入者に目を見開いた死柄木が、その隙を突くように振り下ろされた一撃を反射的に『掴む』。
忽ち手に握る警棒が『崩れる』様に、驚愕の声を上げ退避するは同じくヒーロー科、空翔胡魄。
膠着していた『舞台』に、大外から駆け上ってきた三人の生徒達。
折れた脚を押さえて蹲る緑谷に、崩れた得物を苦く手放す空翔に、標的を手の下に敷いた爆豪が眦を吊り上げた。
「……オイこのクソデクぁ!! 何を一人で勝手に飛び出しとんだ、ア゛ァ!!?」
「あー、こればっかりはボクも同感だよ、緑谷くん?
「ご、ごごごゴメン、かっちゃん、空翔さん! その、オールマイトが危ないと思って気付いたら身体が動いてたというか……」
「テメェもだ『白女』!! 隙突いたクセに防がれてんじゃねェか雑魚が!」
「う、それを言われると辛い……いや、ボクの
「掴まれた武器が崩れて塵に……生物にも適用できるとしたら、殺傷力が高過ぎる……!」
「緑谷少年、爆豪少年に空翔少女まで……」
飛び込んできた生徒達を、もたらされた『戦果』を目にしたオールマイトから、やや呆然とした呟きが漏れる。
しかし次の瞬間、気を取り直した彼は未だ背中を掴む脳無の力に抗いつつ全力で警句を叫んだ。
「っ! ダメだ、逃げなさい!! 君達が立ち向かっていい相手ではない!」
「で、でもっ、オールマイト、血……! それに時間だってないはずじゃ……、ぁ……」
「その状態で何を言うんですか、オールマイト先生」
「出入口は抑えた。後は、あの
「ぬぅっ、死柄木……!」
「っと、動くな!! 『怪しい動きをした』と俺が判断したらすぐ爆破する!!」
「…………散らした生徒達か。攻略された上に全員ほぼ無傷……すごいなぁ、最近の子供は」
先の喜色から一転、瞬く間に覆された盤面に、死柄木が辟易を込めて呟く。
爆豪に組み伏せられ呻く黒霧を、オールマイトの背を掴むと同時に肩を固められたままの脳無を見遣り、また彼は浅く溜め息を吐いた。
「……ああ、分かってるさ、黒霧。さすがにもうプロが来る。何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ、あーあ……今回はゲームオーバーだ」
溢された言葉に滲むのは、微かな苛立ちと諦念。
まさか事ここに至って観念したのか───そんな心地が一瞬、ヒーローの卵達の思考を掠めて。
「まあ、出入口の奪還と……平和の象徴の矜持を少しでも───へし折って帰ろう!」
「……かっちゃん!?」
「っ、んの……!!」
油断は一瞬。
されど気付けば視界に迫る『手』が、込められたドス黒い殺意が、爆豪の身体に硬直を強いた。
彼の脳裏に過るは、つい先刻の無残に『崩れ』落ちた警棒の末路。
あるいは今、足元に捕えている、敵の生命線を解放してはならないという戦略眼の誤作動。
それは才こそあれど、死地における経験浅い肉体が起こしてしまった思考の
(避け……、死……!)
一瞬にして永き空白を越え、ようやく動いた身体はもどかしい程に鈍く。
長閑なまでに引き延ばされた感覚の中、再起動した直感が訪れる未来を過たず描き出して。
「───これで挽回と願えるかな?」
(…………は?)
そんな彼の眼前で。
差し込まれた白い腕が、
・緑谷くん:峰田くん不在につき、一息に一網打尽にできなかったことで戦闘時間ちょい伸び。
・爆豪くん:生徒側に向けられたヴィランに不気味な作為を感じ、優先順位が傾く。
・切島くん:相方変更によりクラスメイトの救助を優先。
・轟くん:ガンメタ配置により消耗、こちらも戦闘長期化。
・オールマイト:『誰かさん』からの連絡により初動微早期化。
→ オールマイト到着の時点で広間付近に来ている生徒が居ない。
→ 相澤先生が脳無に押さえつけられた体勢のまま接敵。
→ バックドロップ(腰投げ)がドラゴンスープレックス(腕固め投げ)に。何故だ。