She is here.   作:非単一三角形

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※前話に関して、投稿直後に少々修正を加えています。


 今作のオリ主には、あまり前面に立たせて活躍させる予定はありません。
 原作で言えば、切島くん、耳郎さん、障子くん辺りの立ち位置に落ち着かせる予定です。
 もしかしたら、瀬呂くん、尾白くん、砂藤くん辺りの扱いに収まる可能性もあるかも。


 ……そもそも青山くんポジションじゃないのかって?
 んまあ、それはそう。



C1-15 本質

 

 

「───だから言っただろう? 真っ先に体を張るのはボクの役目だって」

 

 

 

「"個性"『魄化』……と銘打っているけど、本質は()()()()()()()()()()()()()()()に近いんだ。()()()()()()()だって形成しなおせば元通りに()()()。……とはいえ、こうも形が無くなってると流石に時間かかるなあ」

 

「この物質(身体)、凡そ物理的な衝撃では()()()()()らしいんだ。……変形はするけど。それを活かして炎上する事故車の中から人ひとり抱えて抜け出した経験だってあるよ」

 

「だから、これに関しては貸し借り無し……そもそも、ボクが不意を突いたあの一手で倒せてれば良かった話なわけだし、これで名誉挽回……って、つもりだったんだけど」

 

 

 

「……『貸し』ということにしないと逆にうるさそうかなー。そこんとこどうだろ、緑谷くん?」

「あ、うん……かっちゃんならそうかなって、思います、ハイ」

 

 崩れたスライム。とろけた石膏像。

 見る者の頭にそんな形容を浮かばせる『腕』を蠢かせた彼女───空翔胡魄は朗々と語った。

 

 

 場所は()()()()()()()()()、静かとなった訓練施設、USJ。

 開かれた黒靄のゲートに消えていった主犯格───死柄木、黒霧、そして()()が、つい先刻まで立っていた広間を見遣り、彼女はどこか遠くを見るように顔を上げる。

 

 

「他の先生方が来られる直前だったね。……あとほんの少し彼らを足止め出来ていたらと思うと、正直ボクも忸怩たるものがあるよ」

「で、でもそれは……」

 

「分かってる。ボクが庇って稼げた時間も一瞬だ。あれ以上、黒霧とやらの拘束に臨んでいたら、間違いなく死人が出ていた。……だからこそ爆豪くんも、ああして黙ってるんだろうからね」

 

 

 校舎から隔離された施設より抜け出し、救助を求めた飯田天哉および御魂咲鳥の"個性"。

 先行したオールマイトに遅れること数分、二人と共に現着した教師陣(プロヒーロー達)が、施設各地に残されたヴィランの確保や散らされていた生徒の保護等、後始末に奔走する姿が彼らの周囲にあった。

 

 重傷を負ったイレイザーヘッドおよび13号の搬送、撤退した死柄木達に置き去りにされる形となったヴィランの対処等、緊急性の高い案件から手際良く進められていく。

 広間に集まった面々は、数日振りにすら思える弛緩した気分の中で、その様子を眺めていた。

 

 

「……何も、できなかった」

「緑谷くん?」

 

 不意に溢されたのは、悔恨の呟き。

 戦いの痕跡残る広間を視界に、折れた己の指と脚を抱えながら、緑谷は絞り出すように呻く。

 

「何も、分かってなかった。ちょっと成功したぐらいで、敵に自分の力が通じると思い込んで……僕はまだ、何にもなれちゃいなかったのに……!」

「……そんなに自分を卑下することはないんじゃないかい? あいつらだって当初の目的は一つも果たせないまま逃げるしかなかったんだ。その一助には、少なからずキミの力も……」

 

 

「───そうだよ。あんたが何もできなかったってんなら、ウチらはどうなるのさ、緑谷?」

 

 

 その会話を耳にしてか、呆れたような苦笑いを浮かべた耳郎が二人の元へと歩み寄る。

 腕の再生を待ちつつ座る空翔を、うつ伏せに倒れた姿勢の緑谷を、そしてそんな二人から距離を取り立ち尽くす爆豪をそれぞれ一瞥し、彼女もまた二人の傍に腰を下ろした。

 

「……ウチに葉隠、あと口田も、あんた達と同じ場所でアレを見てたのに……動けなかったしさ。先生が……オールマイトがやられそうになるなんて、なんか怖いとかいう前に現実じゃないみたいだったっていうか……いや、本当にスゴいよ、あんた達三人とも」

「っ、耳郎さん……」

「……ありがとう。まあ、正直あの場で戦力になってたのは爆豪くんだけだった気もするけどね」

 

「…………チッ」

 

 耳郎からの掛け値の無い称賛に、緑谷は震え、空翔が頬を掻きながら謙遜し、爆豪からは小さく舌打ちだけが返る。

 三者三様の反応に苦笑を深めつつ、彼女は暫し迷いを見せた後で、再び口を開いた。

 

 

「それから…………ねえ、空翔?」

「? なんだか随分聞きにくそうだけど、どうかしたかい、耳郎さん」

 

「イヤ、えっと……あんたの身体って、ひょっとして……()()なってる部分以外も、その……」

「……! ああ、成程。えっと、まあ……そうだよ」

 

 妙に口籠りながらの耳郎の質問に、空翔が一瞬の沈黙を見せる。

 そうしている間にも、虚空からハッキリと目には映らない塵のようなものが集まる『腕』に目を遣り、言葉を探すように視線を彷徨わせた後で……やがて観念したように頷いた。

 

 

「…………どっちが()()()()()()()()、って聞かれるとね。その……わざわざ話す必要があることでもないかなって思ってたんだ。……本当だよ?」

「そう……そっか。……そういうこと、だったんだ」

 

「う、うん……ちなみに、耳郎さんはどうして?」

「イヤ、だってあんた……()()()()()()()()()()()()()()()()()から……」

 

 

「…………は?」

「……音が!?」

 

 何やら納得した様子で───大いに安堵も混ぜて───頷いた耳郎の傍ら、驚愕したのは緑谷。

 会話は聞いていたらしい爆豪もまた、顔だけ向けて目を瞠り───気付いた空翔が肩を竦める。

 

 

「……昔は、空が()べる"個性"ってだけだと思ってたんだけどね。身体の中まで変質してたことを知ったのには切っ掛けが……いや、それを境に"個性"の本質が現れたんだろうって、お医者様には言われたよ」

「……切っ掛け?」

 

「うん。……五年と少し前の夏休み、になるかな。高速道路で───」

 

 

 

『訓練場内に残留したヴィランの確保完了! 生徒諸君は施設入り口に集合だ!』

 

 

 

 USJ内にプレゼントマイクの声による連絡と指示が響き渡った。

 次いで、『動けねー奴には搬送用ロボ手配してっから安心しな!』という補足がそこに加わる。

 

 広間に居た面々が駆動音に気付いて振り返れば、指と脚を折った緑谷の為だろう二体のロボが、どこからともなく駆け付けてくる光景があった。

 

 

「……長い話になるし、またの機会で良いかな?」

「ん、まあ……その前に聞くけどソレ、聞いて大丈夫なやつ?」

「出だしから何だか不穏だったような……?」

 

 

「あー…………先に言うと、咲鳥ちゃんが今の身体になった原因、だね」

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「―――以上が、私から見た事件の顛末です」

「…………ふむ、そうか……」

 

 

「それにしても、まさかあの雄英高校に襲撃を掛けるヴィランが現れるなんて……皆、命に関わる怪我が無くて本当に良かったです」

「……そう、じゃのお……」

 

「……殻木先生?」

「む、いや、何でもないわい。……取り返しのつかん事態は避けられたようで何よりじゃの」

 

「はい……不幸中の幸い、でしょうね。今回のヴィラン達には他に類のない計画性が見られたとのことでしたし……直接戦った皆の話を聞いても、無事だったのが奇跡としか思えませんでした」

「ああ…………ヒーロー達の初動が想定……っ、ヴィラン達の予想外に早かったお陰じゃろうな」

 

「ええ。……私も、()()()()()()()()()()良かった……」

「…………」

 

 

 

「……さあ! お前さんも、()()()()()()なんじゃ。お友達が心配じゃろうが、まだ暫くは安静にしとらんとイカンぞい?」

「はい、分かってます。……あの、先生?」

 

「む、どうかしたかの?」

「私……また胡魄ちゃんと一緒に、学校に行けるようになるでしょうか」

 

「…………不可能と言う気はないわい。少なくともワシはな」

「……ありがとうございます。おやすみなさい、殻木先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………まさか、いつの間にか『()()』が()()()()()()()()()()()になっとるとはのお」

 

 

 

「タイミングを合わせて()()()()()()()()()()、完全に隔離された状況に追い込むハズが……これも"個性"の習熟の賜物か……いやはや、そう何もかも都合良くはいかんもんじゃの」

 

「まあ、ええわい。脳無の試運転は完了。十分に戦力足り得ることも確認できた。捕縛されたのも適当に集めた木っ端ヴィランのみ。こちらの()()()()()()()じゃ」

 

「……また『話が違う』と文句を言われそうじゃが……何か埋め合わせを考えるかのう」

 

 

 

「しかし、オールマイトも悠長なもんじゃのー。後継者がそんな調子で大丈夫なのか? ワシらが心配してやるのも妙な話じゃが」

 

「……ああ、そうか。あやつは既に『先生』を倒したものだと思っとるのか。それなら、ノンビリ育成することになるのもしょうがないのう」

 

「ならば、今回の事で危機感を抱き、より有望な者に再『譲渡』を……イヤ、出来んな。出来ん。あの男に限ってそういうことは出来んじゃろうの」

 

 

 

「次の機会は……ああ、死柄木に『雄英体育祭』を見せると言っておったか」

 

「仮想敵の見本市、今年も確り『予習』させて貰わんとの。ホホッ、人気商売も大変なことじゃ」

 

「……そういえば、あの娘の扱いはどうするんじゃろうか? 競技の内容は毎年変わるとはいえ、あの『小鳥』を放り込むのは無理があるじゃろ。『本体』が動けん以上はどうしようも……」

 

 

 

「…………」

 

「……『本体』?」

 

 

「あの"個性"の()()を思うに……今の『本体』とは、()()()()()?」

 





※前話没案集

・案1:戦域に倒れている相澤先生を、葉隠さんが透明を活かしてコッソリ救助

  葉隠さん「おらー! 私、活躍! もう雑魚とは呼ばせないぞー、爆豪くーん!」

 没理由:ちょっと流れが無理矢理過ぎた。


・案2:死柄木から脳無への指示を耳郎さんがピンポイント爆音で遮断

  緑谷くん「思った通りだ……! 指示が聞けなきゃ、そいつは動かない……!」
  耳郎さん「……あんた、どんな分析力してんのさ」

 没理由:もうちょっと脳無の挙動が融通効かない感じじゃないと、狙う流れに説得力が無い。


・案3:どうにかして口田くんも活躍させる

  口田くん「……っ」

 没理由:無理ゲー過ぎた。……いや、だってUSJ内に動物居そうに無いし……

 折角配置変更したのに見せ場を作ってあげられませんでした。ごめんね葉隠さん&口田くん。
 USJで活躍する口田くん二次ってどこかにあったかなあ。葉隠さんは見た覚えがあるんだけど。



 次回から新章開始。
 なお諸事情につき、ちょっと更新まで時間空きます。

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