She is here.   作:非単一三角形

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 Q. どうしてこんなに時間空いたの?
 A. 視点に選んだキャラが難易度高過ぎた(自業自得)。口調とか諸々わっがんね。



C2-2 柔軟なる者

 

 

『―――どうせてめーらアレだろこいつらだろ!? (ヴィラン)の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!! ヒーロー科! 一年! A組だろぉぉ!?』

 

 

 スタジアムへと響き渡る、プレゼント・マイクの実況の声。

 呼応する大歓声に押されるが如く、スタジアムに繰り出していく生徒達。

 その姿を認めた観客席から、より一層の熱気と喝采が放たれる。

 

 場所は雄英高校、1年生ステージ。

 人間の規格が変化したこの『超人社会』において、かつての『スポーツの祭典』に代わるものとされる、年に一度の大行事───『雄英体育祭』。

 

 

 詰めかけた観衆の中には、未来の相棒(サイドキック)を見出さんと全国から集まったプロの姿も少なからず。

 それは学生、とりわけヒーローを目指す者にとって、彼らに自身の実力や有用性をアピールし、一足飛びに将来を拓くことができる最高の機会ということであって。

 

 

「選手宣誓!!」

 

「せんせー―――俺が一位になる」

 

 

「絶対やると思った!!」

「調子のんなよA組オラァ」

「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」

 

 

 壇上に立った教師、ミッドナイトの指示の下、宣誓を述べたのは今年の首席合格者、爆豪勝己。

 その傲慢の極みとも取れる宣言に、居並ぶ生徒達からは同級、別科を問わぬ罵倒(ブーイング)が注がれる。

 

 

「―――さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう。いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!! さて運命の第一種目!! 今年は……コレ!!!」

 

 されどそこは平生より『自由な校風』を謳う雄英教師陣。

 開始の前から殺伐とする空気すら斯く在れかしと笑い飛ばし、行事進行もまた恙なく。

 

 微かな機械音と共に宙に投影された白画面。踊る文字列に鳴り響くドラムロール。

 ミッドナイトの声に合わせ、演出を終えた画面に残されるは『障害物競走』の一文。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km!」

 

「我が校は自由さが売り文句! ウフフフ……コースさえ守れば()()()()()()構わないわ!」

 

 簡素なルール説明を経て、スタジアム外へと通じるゲートが仰々しく開いていく。

 いよいよ間近に迫った大舞台の始まりに、感情の糸を限界まで張り詰めた生徒達の中で。

 

 

 

「(───さて、物間の奴はああ言ってたが……俺はどうしようかね)」

 

 

 全1年生が同時に通るには狭すぎる門を見上げた彼───骨抜柔造は、同じく1年B組に所属する級友が語った大会進行の見立てを思い起こしつつ、静かに思考を巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

『───スターーーーート!!』

 

 

「……って、スタートゲート狭すぎだろ!?」

「ギッチギチじゃねえか!? 動けねえ!」

「……!!」

 

 開始の合図から間を持つことなく、必然として作り出された競争者達の大混雑。

 骨抜もまた、頭の上より届く教師達の寸劇を耳に流しつつ、ゲート内を抜けるまでは他に採れる術も無いかと、揉まれるまま人波の中で泥河が如き流れに乗れるよう足を動かす。

 

 ヒーロー科が2クラス、普通科サポート科経営科が3クラスずつ、計11クラス。

 優に二百人を超える人間が、我こそ先にと一箇所に集うのだから、然もあらむと。

 

 

「(無理に押し退けようとするのは消耗以前に危険……全てはスタジアム外に出れてから───と、()()()()()()よな、そりゃあ)」

 

 そんな骨抜が目を向けた先は、じきにゲートを抜けるだろう集団の先頭。

 巡らせた見立て通りに何某かの『動き』を感じた彼は、起きる事態への対処を考え身構える。

 

 

「───ってぇー!! 何だ凍った!! 動けん!!」

「寒みー!!」

「んのヤロォオオ!!」

 

「(……うっわ、容赦ねぇ)」

 

 瞬間、足元を滑るように広がった冷気。生徒達の足を巻き込み凍り付いていく地面。

 レース開始の直後に他選手の脚を固める───実に合理的かつ無慈悲な『洗礼』を浴び、口々に悪態と嘆きを漏らす生徒達。

 

 事の起こりを感じた直後、宙へと跳ぶことで辛くも逃れた骨抜は、競技開始直後に実質脱落した彼らを横目で同情しつつ───その視界に影を落とす、()()()()()()を見上げた。

 

 

「甘いわ轟さん!」

「A組に同じ轍を踏む人間は居ないさ、轟くん!」

「そう上手くいかせねえよ、半分野郎!!」

 

「(……で、なんというか……流石だな、A組)」

 

 苛烈な()()()()()()を逃れ、先んじる背中は成程どれも同じヒーロー科、別クラスA組生徒。

 彼らを殊更ライバル視する級友に感化される、とは言わないまでも、同じ舞台で競う相手としてこれは注目せざるを得ないと、骨抜は心中で意気を改める。

 

 

 ───競技内容は毎年異なるが、最終種目に限り1体1のトーナメントが恒例。

 また、どの年でも最初に行われていたのは大雑把な足切り……すなわち無理に上位を狙わずとも予選通過に支障をきたす恐れはない。

 

 故に最初の競技ではある程度の順位に抑えて自身の手札を秘匿、及び上位になる面々の"個性"や実力を観察、以降の競技に活かすべき───

 

 

「(……と、言ってた物間の意見にも一理あるんだけどな)」

 

 まだそれほど付き合いも長くはないB組の中、早くも中心人物となりつつある級友、物間寧人。

 その彼が級友達の前で演説した(ぶち上げた)『クラス全員が上位に名を連ねるための作戦』を思い起こしつつ骨抜は薄く氷の張った大地を走り抜ける。

 

 これを聞かされたその日、骨抜は異を唱えようとはしなかった。

 その提言には一定の利があると認識し、また()()()B()()()()がこれに同調していたことも事実。

 

 今はまだレース開始直後とあって表出していないが、競技が進めば()()がクラス単位で実行した『戦略』であると、誰の眼にも分かる形で表されることになるだろう。

 その思慮の部分を評価してくれる『目』も、今のスタジアムの中には間違いなく存在するだろう───といった思考にまで至った上で。

 

 

「(まァそれはそれとして……なにも全員が縛られなくたっていい)」

 

 否定はしない、しかしそれはそれ。

 絶対に足並みを揃えなければならない場面は存在するが……少なくとも今じゃない。

 氷に足を取られた集団の中を駆け抜けた骨抜は、その意向に乗るならば緩めるべきだった足を、なお力強く踏み出していく。

 

 言葉で、態度で、あるいは表情で。

 打ち出された指針に反発を示していた一部のクラスメイトを思い浮かべながら。

 

 

「───っ、骨抜さん?」

「あ、塩崎さん」

 

 そうして駆け抜けた先で横合いから掛けられた声に、骨抜は駆ける脚をそのまま視線を向けた。

 そこに居たのは、偶然にも彼が頭に思い浮かべていた人物の級友の一人。

 

 ……否、あの場の反応を鑑みれば、()()が同様の判断を下すのは自明の理。

 同じ目的で同じ方向を目指す以上、この邂逅はむしろ必然か。

 そんな彼の視線に気付いたか、茨のようなツルの髪を持つ彼女───B組イチ『お堅い』淑女、塩崎茨が言外に込められた意思に囁くように答える。

 

「……私は、あのような謀には頷けません」

「いやそこまで言われるような事じゃ……ま、いっか」

 

 様々な意味で『潔癖』な彼女に軽口を返しつつ、骨抜は気分を新たに前方へと意識を戻す。

 理由はどうあれ、意志を同じくする仲間が居るなら気が軽い……とまでは考えられずに。

 

 何故なら競技は『障害物競走』───随所に破天荒な所を見せるこの学校が用意した『障害』がこの先に待ち受けて───いや、既に()()()()()が進路上に立ち上がりつつあるのだから、と。

 

 

 

『───さーて実況してくぜ! 解説アー(Are)ユー(you)レディ(ready)!? ミイラマン&キューティ(cutie)バード(bird)!!」

 

『ピ!? ピィ……』

『無理矢理呼んだんだろが……俺はともかく御魂にまで無茶振りするな』

 

Hey(ヘイ)、頭の上に小鳥乗っけた姿で睨んでもメルヘンなだけだぜ、イレイザー! それに()()()は御魂じゃなく、ピィちゃんだろ! リピート(Repeat)アフタ(after)ミー(me)! ピィ(Piy)ちゃん(- Chan)!!』

『…………うるせェよ』

 

『さぁ、いきなり障害物だ!! まずは手始め……』

『おい』

 

『第一関門【ロボ・インフェルノ】!!』

『俺ら要らないだろ』

『ピィ』

 

 

 

「(……楽しそうだなぁ、実況席)」

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

『さァさァ、序盤の展開から誰が予想出来た!? 今一番にスタジアムへ還ってきたその男―――緑谷出久の存在を!!』

 

 

 

「……マジか、あいつ」

 

 実況が告げる競走を征した者の名を耳に、そしてその者が採った『手段』を目に収めた骨抜は、自身が今もレースの中にあることも半ば忘れて呆然と呟いた。

 

 競走の最後の関門に用意されていたのは、まさかの地雷原。……安全面は考慮済みとは言うが。

 つい先程も、脚から『エンジン』音を響かせながら吶喊した生徒が、無数の爆音を上げて盛大に転倒する様を眼前にした直後。

 

 ああまで吹き飛ばされてしまえば、時間のロスは相当なもの。

 "個性"が速力に直結するものなら巻き返しもきくだろうが……自分はそれに含まれない。

 だからこそ何らかの手段で関門自体を回避出来ないか―――そう考えていた矢先の大番狂わせ。

 

 

 ……堅実に地雷の位置を見極め、このまま避けるように歩いていけば、突破は可能だろう。

 動揺冷めやらぬ意識を足元に戻しつつ、彼はどこか冷静に『それ』を考える。

 

 一位は既に、また状況から三位までは確定している。

 とはいえ、背後の集団が追いついてくるには、まだ時間が残されている。

 今、焦って奇手を講じる必要など、どこにもないのだ、と。

 

 それこそ───『予選通過』を目的にするならば。

 

 

「…………塩崎!! ちょっと協力してくれないか!?」

「ッ、骨抜さん!? 何を───」

 

 猛る骨抜が顔を向けたのは、今度ばかりは真に偶然として彼のすぐ背後に、また同様に地雷原に苦慮しつつの足取りにあった彼女、塩崎茨。

 常にない表情の彼に驚いた彼女は、しかし何かに思い当たったらしく額に皺を寄せる。

 

「……後ろを走る皆様を私の"個性"で妨害、ということならお断りします。そのような穢らわしい手段で勝利の栄冠を掴んだとしても───」

「違う。そういうのはそう言うと分かってるから頼まない。ただ、一つ聞きたいんだけど……」

 

 彼女の"個性"ならば確かに可能だろう手段をキッパリと否定しつつ、彼は重ねて問いかける。

 

 

「塩崎さん的に誰かの妨害はアウトとして……()()はセーフかい?」

 

 

 

 

 

 

『―――さて、上位三名は既に決まったが、予選通過人数はまだまだ秘密だぜ!! 次に地雷原を抜けてくるのは一体誰に───アリャ? 何してんだアノ二人?』

『B組の塩崎に、同じく骨抜か。塩崎のツルを地面に……成程な』

 

『納得がハエーよ、イレイザー!? 解説(ソノ)席に座ってんだから解説をプリーズ(Please)!!』

『勝手に座らせただけだろ……お前こそ実況するなら目ェ離すな、ほら───』

 

Huh(ハァン)? ……()()()()ゥ!? いや地面に刺したツルでブン投げたのか!! B組塩崎&骨抜、自分達の身体を投石器の弾に見立て、一位通過緑谷の軌跡をなぞるかのような大ジャーーンプ(Juuump)!! ……つか着地大丈夫なのかコレェ!?』

『その為の骨抜だろ。着地の瞬間に注目だな』

 

『ン……()()()!? アリャ骨抜の"個性"か! たしか───』

『触れた物体を()()()()()()。あの一瞬で地面をクッションに出来るレベルまで柔化させたんだ。なかなか魅せ方を心得てる』

 

『OK解説サンキュー(Thank-you)!! ゴール前に着地、立ち上がった二人が今ゴールイン!! 四位通過は塩崎茨!! 続いて五位に骨抜柔造……っとォ!? ここでひたすら爆破転倒を繰り返しながらも根性で地雷原を抜けてきた男、A組飯田天哉が六位通過だ!! さァまだまだ順位は分からねえ! 手足動かせボーイズ(Boys)ガールズ(Girls)!!』

 

 

 

 

「…………私が四位で良かったのですか?」

「そりゃ協力求めたのは俺だし。持ちつ持たれつってことで」

 





 前作前書き:
 しかし塩崎さん(原作4位)や骨抜くん(原作5位)が飯田くん(原作6位)より早くゴールインしてるのは一体何があったんだろうか。


 …………OK、書こう。


 というわけで今作では、柔軟な思考を持つ骨抜くんが柔軟な判断の下、お堅い塩崎さんに協力を持ちかけ、緑谷くんの手段を柔軟に真似て地雷原突破という解釈で描いてみることに。
 これなら"個性"が速度に寄与しない+性格的に他走者を妨害しそうにない塩崎さんが飯田くんを抑えての4位、という結果に説明が付けられるかなと思いました。どっとはらい

 しかし大体のB組生徒が22位以下に固まっているあたり、それより上の順位にいて騎馬も組んだ塩崎・骨抜・鉄哲・泡瀬の四名が物間メソッドに同調しなかった面子、ということで良いのかな?
 そうなると拳藤さん(原作28位)がちょっと意外だけども……面倒見良いからなあ。




 ……オリキャラの影が薄い?
 彼女は、そっと「ここにいる」タイプですからね。

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