初期案では普通科モブ生徒に近い視点から一連の流れを描く予定でした。
そしたらなんか峰田・上鳴アンチっぽくなっちゃったので一度ポシャリました。
……でも相澤先生の名前まで都合良く使ってる辺り、よく除籍されなかったよなあ、こいつら。
八百万さん始め、女子一同がマジギレで対処してたら絶対ヤバかったと思うんだけども……
うん、ギャグ描写の深堀りイクナイネ。
―――雄英体育祭。
それはかつてのスポーツの祭典に代わる行事である以前に、いち高校の体育祭でもある。
故に、その大会プログラムには、栄えある唯一つの優勝の座を争う競技とは異なる、全員参加のレクリエーション種目も用意されている。
元より参加意欲の薄い者が多かったヒーロー科以外に所属する生徒達の他、敗退する形となった第二種目までの参加者も含め、再びスタジアムに集められた全一年生達。
最終種目の発表と、レクリエーション種目について───それらの通達を聞かされる為とまでは知らずとも、最早自身らとは関係も関心も薄くなった行事に、しかめた顔を隠すこともなく各々の重い足を運んでいた彼らは。
『───ん? アリャ? どーしたA組!!?』
行事の花形、ヒーロー科A組女子生徒達の目に鮮やかな
「峰田さん、上鳴さん!! 騙しましたわね!?」
他クラスは勿論のこと、同じヒーロー科でもB組女子生徒が装いを新たにしている様子は無く。
また実況席に座る教師陣からも戸惑いの声が漏れた以上、そちらの指示でないことも明らか。
事情が分からず唯々困惑する彼らの疑問に応えたのは、渦中のA組女子生徒が一人、八百万百の放った憤懣を込めた叫びであった。
───午後は女子全員、チア服で応援合戦に参加しなければならない。
───信じがたいであろうが、これは担任教師からの言伝である。
今しがた名前を挙げた二人から告げられたこれらの情報を、当の八百万が頭から信じてしまったというのが、この賛辞、もとい惨事の要因であると、その場の誰もが仔細は除けど悟るに至る。
がっくりと肩を落とし、「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私……」と悔恨に沈む彼女を他A組女子達が苦笑と共に慰める姿が、鬱屈した想いを抱える者達の視界を彩るのだった。
「…………ん? オイ! 女子全員って言ったのに、何で
「え……? あ、あぁ、ちょっとボクは所用で席を外してたから……皆にも探してたと言われて、心苦しくは思ってたけど……しかし、キミが文句を言うのはどうなんだい、峰田くん……?」
「……それな。メンタル強過ぎだろ、お前……」
そんな中、唯一他生徒と同様のジャージ姿で立っていたA組女子を見付けた仕掛け人、峰田実が鼻息荒くその人物へと駆け寄り、気炎を上げた。
その実情を知るまでは所在なく同性の級友達を見ていた彼女、空翔胡魄は彼から迸る異様な圧に戸惑いつつも、至極真っ当な意見のもとに己に近寄る彼を半目で見下ろす。
「あぁん!? 普段サラシに秘された空翔ッパイがチア服から覗く様をオイラがどんだけ楽しみにしてたと思ってんだ!! 郷に入っては郷に従えって言うだろう!? 入れよ、郷に!!」
「…………ここまで堂々とされると、一周……いや五周ぐらい回って敬意が湧いてくるよ」
「ほんとブレねぇなー、こいつ……」
「……ひとまず男児に生まれた者の皆が皆、彼らと同じだとは思わないで欲しい」
「…………えっ、オレも一括りにされてる!? 流石に今のは……あ、ハイ、すんませんっした」
方々からの冷たい眼差しも何のその。意気益々軒昂な峰田に遠い目になる空翔。
そんな彼女に男性陣からは堪らず弁明の声が上がり───もう一人の仕掛け人、上鳴電気は異を唱えかけたところで、一同からの突き刺さる視線に沈黙した。
「アホだろアイツら……」
「まァ本戦まで時間空くし張りつめててもシンドイしさ……いいんじゃない!? やったろ!!」
「透ちゃん、好きね」
「……だけど本当にどこに居たのさー、空翔? 結構探したよ?」
「それは、その……
辟易とも言い難い表情で額を押さえていた空翔に、ふと女子側から問いが掛けられる。
純粋な疑問を含んだそれに彼女から返ったのは、何やら歯切れの悪い回答で。
「
「…………あんまり聞かれたくない話があったから、その……尾白くんと」
「…………は? 尾白、お前まさか……お前ェ……!!」
「……いや、違うからな? 彼女とは真面目な内容の話を───」
「マジメな話!? お前、梅雨ちゃんの次は……! そうやって順繰りに『攻略』進めてく気だなこの〇ャルゲ体質男がよおぉ!?」
「……とりあえず、すぐそういう方向に持って行くのやめろよ、峰田お前」
「節操ねぇなー」
「はぁい、そこ!! そろそろ進行させるからお黙りなさい!!」
ピシャンと鞭を一撃ち、ミッドナイトの号令が生徒達の意識を壇上へと戻す。
集まる視線を満足気に受け止めて頷きを一つ、そのまま彼女は実況席へと水を向けた。
『司会進行サンキュー! んじゃ仕切り直して───最終種目は進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!! 一対一のガチバトルだ!!』
「トーナメントか……! 毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ……!」
「去年トーナメントだっけ」
「形式は違ったりするけど例年サシで競ってるよ」
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!」
実況が告げた最終種目の宣言に、勝ち上がった面々から感慨を込めた呟きが溢される。
続けて当該の16名については、レクリエーションへの参加も任意───そう知らされた彼らが、その時間を如何に過ごすかと互いの視線を巡らせて。
「んじゃ1位チームから順に───」
「あの……! すみません」
「手前勝手ながら、聞いていただきたいのですが……」
突如、生徒達の中から挙がった
声には身の置き所ないといった響きを、しかし上げた腕には双方共に確然とした意志を宿して。
第二種目を4位で通過、最終種目参加者の16人に名を連ねたヒーロー科A組、尾白猿夫。
同じく彼と共に騎馬を組み、同等の権利を得て此処に立つ者、空翔胡魄。
俄かに浴びた注目に、二人は一度息を呑み───視線を交わして頷き、声を揃えて宣言した。
「俺、辞退します」
「ボクも、棄権を表明したく思います」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「───本当に良かったのかの?」
「……仕方がありません」
静かな病室の中、開かれたノートパソコンが映すのは、国内最大の祭典を届けるライブ中継。
この日の為にと出された特別な許可の下、画面を前にする少女───御魂咲鳥は目を伏せる。
画面の向こう、彼女の幼馴染を含めた三人の生徒より相次ぐ棄権申告。
実にイイ笑顔で彼らの意思を尊重、承諾する司会のミッドナイト。
その宣言に大いに騒めく観衆の声が、病室用に音量の絞られた機器からも強く鳴り響く。
「確かに在学中には三度あるとはいえ、貴重な機会には違いあるまいに」
「……私も、そう思います。でも……仕方ないんですよ」
心底不思議そうな声音を含んだ
対して少女から返ったのは、
「
「……ふぅむ」
小さく、しかしはっきりと紡がれた呟きに、老人は頷きだけを返す。
その視線に何を感じたか、少女の口は常になく滑らかに言葉を重ねた。
「……殊更、今日この日の舞台に拘る必要もないですから」
「まだ一年生、まだあと三年間。ヒーローになる為の道は、まだ始まったばかりですし」
「まだまだ時間は……それに、私の事だって……」
「だから、
声が途切れた。
「あ…………っ? ち、違っ……わたしは……!?」
「え、あ……お、尾白くんと同じで、ボク……」
「ッ! ご、ごめ、まちがえ……っ、う……!?」
迎えた束の間の静寂を、荒くなる少女の呼気が乱し、破る。
目を閉じ、喉を抑えて。
顔を覆った掌の下から、声を絞り出して。
それはまるで、彼方に居る誰かと話すように。
それはまるで、傍に立つナニカへ語るように。
「さ……さとりちゃんなら、わかって、くれ……ぅ」
「こはくちゃんと……だか、ら……っ」
「ヒーローに……ふたりで、いっしょ、に───」
「……………………ア゛ッ」
「薬を増やしておくかの。
瞬間、ココロ、カサネテ。
雄英体育祭編、完。
今年中にキリの良いところまで書けて良かったです。
ちなみに騎馬戦は原作通り進行しました。改変が及ぶ由がありませんので。残当。
なお4位緑谷チームと5位拳藤チームの最終点数差は僅か15ポイントでした。
……さて、オリキャラは第一種目何位だったのか。お暇な方は計算してみてください。
それでは皆様、良いお年を。