She is here.   作:非単一三角形

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 こういう受験生いたらどうなるんだろうなあ。



C1-2 交わした約束

 

 

「───あれは想定範囲内の挙動なのか?」

「くけけ……ああ、0P仮想敵(ヴィラン)想定設計(コンセプト)は巨体、或いは巨大化"個性"を持った(ヴィラン)だからな」

 

 

 大型モニターに映された、実技試験の()()()()

 各会場にて繰り広げられた受験生達の奮闘模様を前に批評を行うは、彼ら彼女らが入学を夢見た学び舎、国内最高のヒーロー養成校たる雄英高校教師陣。

 

「そういう連中でも人体である以上、頭部が弱点なのは間違いない。頭に向かって飛び付いてくる人間(ヒーロー)がいれば、そっちへの対処を優先するように組んであるんだよ」

「成程。つまりああやって『足止め』を成立させるのも想定解の一つなのか」

 

 試験に使われた各種機械(ギミック)の設計開発に携わった者の補足を背景に、彼らの注目は()()と対峙した受験生達へと注がれていく。

 盛大に暴れ回るはずだった脅威を、結果的にごく小さな範囲へと抑えてみせた()()()()に。

 

 

「……と、言っても『脅威になり得ない』と判断すれば、無視して動き出すようにもなってるさ。()()()()()()()()()()殴り倒せるような力の持ち主じゃなかったようだし、一人……と一匹が頭の周りを飛んでるだけなら、ぼちぼち判断を切り替える筈……だったんだけどな」

 

「ここで()()()()()()()()()()()()()()()()によって足止めが継続されたってわけだ」

()()()()()()が巨大敵に向かって飛び出した時に、近くに居たこっちの受験生の"個性"だな! 逃げる訳でもなく走り回ってると思ったら、会場中から鳥を掻き集めてやがった!」

「振動に驚いて逃げる鳥を呼び止められるとなると、動物に対してはかなり強力な"個性"だな」

 

 画面の向こう、剛腕を振るっていた巨大仮想敵が顔にあたる部分を集まってきた鳥に埋められ、慌てたように蹈鞴を踏む姿が映し出される。

 「視界を塞がれた時の挙動がアレだ」、「後は時間切れまでこの光景が続くのさ」という呟きがそれに続き、これを合図に一同の視線は各々の手元へと向けられた。

 

 

「……というわけで、この会場の0P敵足止めの功績は、中心になった()()()()()()()救助活動(レスキュー)Pとして分配する、という形にしようと思うのさ!」

「「「異議なし」」」

 

「では各々ポイントの査定を───ふむ、では三人それぞれに30Pずつ加点なのさ」

「「「異議なし」」」

 

 試験実施前に受験生へと説明されていた、仮想敵の撃破捕縛とは別項目の審査基準。

 その大きな判断基準として用意されていたのが、目に見えた圧倒的脅威かつ()しんば撃破に至ろうとも得にはならないとされたお邪魔虫(0P)

 

 だからこそ、対する行動に色濃く浮かぶがヒーローを目指す上での大前提、自己犠牲の精神。

 それは『試験』という現場において、如何にヒーローらしい行動がとれていたかと、ヒーローを志す受験生達に問い掛けるべく設定されていた加点要素であった。

 

 

「……まあしかし当然っちゃ当然だが、同じ中学の出身か。いつもなら、なるべく試験場は別々にするとこなんだけどな」

「そこはしょうがないですよ。この"個性"である以上……ある程度の配慮は必要ですし」

「そもそも一つの中学校から試験場の数以上の受験生が来ることもある。学区を隔てた交友関係も考えられるんだ。知人友人で『組む』受験生が居たとしても、組み合わせの妙でしかないさ」

 

「……この分なら、この三人はほぼ()()だな」

「まだ全会場の集計が済んだわけじゃないけど……例年の合格ラインを考えれば確かにそうね」

「ううむ……こういった"個性"は()()()()()()()()な。どういった指導をすれば───」

 

 

「…………校長」

 

 

 手元の数字を見ながら頷き合う教師達の中から静かな、しかし決然とした一言が放たれる。

 シンと静まり返った部屋の中、声に応じ顔を上げたのは、一人の……否、()()()()()()()

 

 

 

 

「本当にこいつを……()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

「……お、オイ、イレイザー? お前なに言って───」

「採点にどこか異議があったのかい、相澤君?」

「いえ、そちらには。ですが……」

 

 

 手元に引き寄せた資料、受験生それぞれの情報をまとめた書類を手に握り。

 同僚から、また友人からも少なからず驚愕の視線を向けられながら、しかし彼は淡々と続ける。

 

 

「これが他の学科の受験生だったなら、何も言うことはありません」

 

「実技は勿論、筆記も……()()()()()()()()()だったとはいえ、十分な成績を出している」

 

「ですがヒーロー科は……その存在意義は『ヒーローの養成』にあるはずです。決して多くはないその席の一つを()()()()()()()()()()()()占有させるのは非合理では?」

 

 

「それは……」

「しかし……」

「…………」

 

 

 

 

「……その言い方は正確ではないね! 正しくは()()()()()()()()()()()()()()()()()()生徒さ」

 

 

 顔を顰めつつ、しかし反論は出来ずに閉口していた教師達に、殊更明るい一言が浴びせられる。

 先とは逆の理由で目を剥いた彼らに、その見解は続けられた。

 

 

「確かに懸念は尤もさ。何をどう言い繕おうとも現状の彼女が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことは事実だからね」

 

「しかし医療技術とは常に日進月歩。彼女が明日にでも自ら教室を訪れられる容態になる……その可能性を否定することなど誰にもできやしないのさ」

 

「何より、真っ当に合格ラインを越えてきた彼女から学びの機会を切り捨てることこそ、非合理の極みだと思わないかい?」

 

 

「…………ですが」

「勿論、『ゼロではなくとも限りなく低い可能性』に席を奪われる形になる受験生を偲ぶ気持ちも理解できるさ! どうしたって、同じ教育課程(カリキュラム)を受けさせるわけにもいかないことも含めてね」

 

「そこで提案なんだが、相澤君───」

 

 

 

 

「例年1(クラス)20人のところを、今年は君の(クラス)に限り21人にしようと思うんだが構わないかな?」

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

『───と、まあ色々あったことは敢えて明かしてしまったわけだけど、安心するといいのさ! ()()は間違いなく君への合格通知だよ』

 

『勿論、君の"個性"についても心配は要らないのさ! 病院を通じて国への申請により、私有地に限らない"個性"使用を例外的に認められていることも把握しているとも』

 

『受験の日と同じように、()()()()()()()()()登校してくれれば問題無いのさ! ……ああ、勿論そちらにも同じく合格の通知が届いてる筈だけど、もう知っていたかな?」

 

 

『そんなわけで───来なよ、御魂(みたま) 咲鳥(さとり)君! ここが君達のヒーローアカデミアさ!』

 

 

 

 

「…………本当に、合格しちゃったの……?」

 

 映像の投射を終えた装置が沈黙して、暫し。

 静寂に包まれた病室の中、呆然と呟いたのは一人の女性看護師。

 

 

「……あの」

「…………あっ!? ご、ごめんね!? 今、身体戻すわね!」

 

 

 するべき仕事の手が止まっているのはいただけないが、こればかりは然もあろう。

 なにせ()()()()()()()()()()()が潜り抜けたは、倍率300倍を誇る異常なまでの『狭き門』。

 何より今、自分の手を借りねば映像を見るべく起こした身体を戻すことすらも叶わない少女が、()()()ヒーローへの登竜門に手を掛けてみせるなど想像できるはずもなかったのだから。

 

 

「ん……」

 

 そんな女性の感情の動きを探るように見上げながら、されるがままに頭を下ろす白髪の少女。

 たった今、夢への階段を登り始めた高揚は奥底に秘めているのか、彼女は数分前までと変わらぬ無表情のまま、言葉少なに応答する。

 

 

「え、ええっと、それじゃ……お友達に連絡する?」

「……携帯、取ってください」

 

「あ、はい、どうぞ……」

「…………」

 

「えっと…………そ、それじゃ、何かあったらすぐに呼んで(ナースコール)くださいね?」

「……ん」

 

 

 後ろめたい様子を隠すこともなく去っていく背中を無感動に見つめて。

 視線を手元に移した少女は、起動の明滅を放つ画面を瞳に映し、小さく、小さく、呟いた。

 

 

 

 

「───これで、やっと…………ううん、ここからが始まりなんだ」

 

 

 

 

 引きつるように動く血の気の薄い唇から、()()は溢される。

 

 

「……諦めないよ、絶対に」

 

 緩慢に動く指先で数字盤を撫でつつ、誰に聞かせるでもない声で。

 

 

「何が……どんなことがあっても、私は…………私達は……」

 

 微かに動いた頬に薄く微笑みを浮かべ、ゆっくりと文字を打ちながら。

 

 

 

 

「一緒にヒーローになるって、約束したんだもん」

 

 

 

 

 一文字、一語、指に込めた力の数だけ時間を重ね。

 音量を絞られた電子音を、滴る雨垂れのように響かせて。

 

「…………っ」

 

 やがて、長く吐かれた息と共に、少女の腕が寝具の上に横たえられたとき。

 打ち込まれた彼女の想い、たった一行の文字列が、点灯する液晶に佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 " \(>ヮ<)/ "

 

 





 一文字打つにも身を削らんばかりの容態。
 なるべく文字数を抑えて感情を表現する合理的手段と言えば?

 そうだね、AA(アスキーアート)だね。


 タグ:「A組21人?」
 ……ありえない? 本作世界線ではこうなったんよ。


Q. 合否通知の映像に別の受験生の合否情報が入っちゃってるけど?
A. 原作緑谷くんの通知にも麗日さんの得点情報入ってるし、多少はね?

Q. 病室で携帯電話?
A. 昨今、患者及び来院者の利便性を図るべく院内で携帯電話の使用可能な場所が制定されている病院もあるそうで。一人部屋の病室(個室)なら通話まで許可されている病院も実在しています。



※以下、本作と関係があるような無いような余談。

 最近原作本編にて劇場版キャラが登場、これにより各劇場版が正史に含まれることが確定した、との情報を耳にしました。
 そこで作者は今まで目を向けていなかった劇場版限定キャラについても情報収集を開始。

 そうして目に留まったのが劇場版第三弾のキャラ、ロディ・ソウル君の"個性"『(ソウル)』でした。
 挙動は小鳥だけど『生き物ボイス』効くんだろうか。でも人間の魂の一部的なアレだし(ry

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