She is here.   作:非単一三角形

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 前話後書きの答え:9位。

 空は飛べるが(前作と違って)然程高速ではないということで、
 第三関門(地雷原)は無視できるが第二関門(大穴)は苦戦しそうな切島くん(9位)や、
 第二関門は高速で越えてそうだが第三関門は苦戦しそうな瀬呂くん(8位)辺りと並ぶ結果に。

 オリキャラを青山ポジションに置いて騎馬戦を原作通りにした場合、主に影響するのは最終的に心操チームのハチマキを持っていた拳藤さんチームの保持ポイント。
 特に5位以内だと騎馬戦の順位が変化し、緑谷くんが最終種目に出られなくなってしまいます。

 だから、その辺りの着順を(C2-2話にて)原作通りだと示す必要が、あったんですね。



C2-5 貼り付けた笑み

 

 

「───超声掛けられたよ来る途中!!」

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

「俺も!」

 

 

 波乱に次ぐ波乱により、大いにお茶の間を騒がせた雄英体育祭より、休日を挟んだ登校日。

 その日のヒーロー科A組教室には、数日振りに顔を合わせた生徒達が各々登校中に起きた体験を喜色満面に語る姿があった。

 

「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ」

「ドンマイ」

「ボクも何だか妙に気を遣われてしまったよ……()()()()()? ってどういう質問なんだか」

「あー……あの時、()()()()()上に()()()()()()もんね。オバケイメージ付いちゃったかー」

「たった一日で一気に注目の的になっちまったよ」

「やっぱ雄英すげえな……」

 

 

 

「おはよう」

 

 

 盛り上がっていた一同の喧噪が、その簡素な一言でピタリと消える。

 その一瞬にして空気の切り替えを行った声の主、担任教師相澤は規律正しく席に着いた生徒達に一瞥のみを───負傷を覆っていた包帯の取れた双眸より───送り、淡々と教壇に立った。

 

「相澤先生包帯取れたのね、良かったわ」

「婆さんの処置が大ゲサなんだよ。んなもんより今日の"ヒーロー情報学"ちょっと特別だぞ」

 

(((……特別?)))

 

 にべもなく続けられた一言に、無言のまま緊張を走らせる生徒達。

 何となれば、彼らにとって目の前にいる担任は入学初日にてガイダンスよりも身体能力の計測を優先させた驚異の教師。

 ひとたび自身が"良し"と判断すれば、常識も手段も問わない合理性の権化であるわけで。

 

 その彼をして『ちょっと特別』と呼称する授業。それも大行事明け最初の時間割に。

 よもや抜き打ちテストの類かと、誰が言い出すでもなく各々警戒に顔をしかめ───

 

 

「『コードネーム』、ヒーロー名の考案だ」

 

「「「夢ふくらむヤツきたああああ!!」」」

 

 

 そんな彼らの懸念は、続いた次の一言で盛大に霧散した。

 示し合わせたような起立喝采(スタンディングオベーション)に返ったのは、剣呑な眼差しと髪を逆立てた『一瞥』。

 再びスンと静まった生徒達に向け、これまた淡々と説明は続けられた。

 

 その中で提示されたのは、『プロからのドラフト指名』および個々人への『指名数』という形で目に見える数字となった体育祭の結果(リザルト)

 それはまさしく、過日の奮闘が先達(プロヒーロー)から如何に評価されたのかを如実に表すもので。

 

 

「例年はもっとバラけるんだが、二人に注目が偏った」

 

 

「だーーー白黒ついた!」

「1位2位逆転してんじゃん」

「だから以前から言ってるだろう? もう少しキミはヒーローらしい言動を心掛けるべきだって」

「表彰台で拘束された奴とかビビるもんな……」

 

「ビビってんじゃねーよプロが!!」

 

 

 最終的には優勝の栄冠に輝いたにも関わらず、準優勝に終わった轟に得票数で劣るという結果を目にした爆豪の憤慨を皮切りに、クラスの約半数の名が並んだ表へと悲喜交々な声が上がる。

 

 上位に比べれば小さな数字ながら、プロの『期待』を受けられた事実に興奮を露わにする者。

 何度探してもそこに自身の名前が見当たらないことに気付き、少なからず肩を落とす者。

 

 そんな彼らの───主に後者の───意識を引き上げたのは、相澤の口から続いた言葉で。

 

 

「これを踏まえ……指名の有無関係無く、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」

 

 

「それでヒーロー名か!」

「俄然楽しみになってきたァ!」

 

「まァ仮ではあるが適当なもんは……」

 

 

「―――付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

 

 

 対照的なテンションと共に、その言葉を引き継いだミッドナイトが教室に現れる。

 突然の登場に浮足立つ生徒達を尻目に、相澤は自身のセンスの有無を理由に場の仕切りを彼女に移譲すると、ゴソゴソと取り出した寝袋と共に教室の隅に転がった。

 

 ……はて、合理性とは如何なる意味だっただろうか、と数人が心に抱いた疑問はしかし、一同に渡されたフリップと水性ペン及びヒーロー名考案の為に与えられた15分という時間に流される。

 仮にとはいえ、今日決めた名が世に周知され、そのままヒーロー名になるケースも数多い───そんな追加情報を胸に、一層真剣に悩み始めた生徒達の中に。

 

 

 

「(……いざ考えると、()()()()名前しか浮かばねーなー……どうすっか)」

 

 『セロファン』なる第一案を早くもフリップに書き込んだ彼───瀬呂範太は、自身の"個性"と苗字から取ったソレに、後一歩の捻りを加えることの是非を思い、頭を掻いた。

 

 

 

 

 ───優先すべきは分かり易さ、呼び易さ、語感の良さ。

 それが体を表す名であるか。また現代のヒーローが人気商売という側面を持つ以上、聞いた者の記憶に残るかどうかも無視できない要素の一つであるだろう。

 

 

「『リドリーヒーロー エイリアンクイーン』!」

「2!! 血が強酸性のアレを目指してるの!? やめときな!!」

 

 

 ……ネガティブな意味が含まれていないかも重要らしい。

 意気揚々と一番乗りで壇上に立った芦戸が、ミッドナイトのダメ出しを貰って渋々席に戻る様を苦笑いで見送った瀬呂は、そりゃそうだろ、と心中で納得を落とした。

 ……というかそれ言うならリドリーってよりキャメロンじゃないのか。*1……イヤ没にされたしどうでもいいんだけども。

 

 

 翻って、自身が考案したこの名は、さてどうだろうか?

 そちらの観点から見ても特に問題は見当たらない、筈であると、彼はまた一つ頷いた。

 己の"個性"『テープ』を合わせて鑑みても、身近な日用品を想起させるというのは些か地味だが悪くはないだろう。……地味だが。

 

 

「小学生の時から決めてたの。『梅雨入りヒーロー FROPPY(フロッピー)』」

「カワイイ! 親しみやすくて良いわ!」

 

 続いて発表した蛙吹の案は、お手本のようなヒーロネームだと絶賛される。

 それを契機に空気は一転、少しずつ壇上に上がろうとする流れが生まれていく。

 

 

 

『───ピィ、ピィ』

「んー……そうは言ってもねえ」

 

『ピィ……』

「う……でもほら、一度はボクが譲ったわけだしさ……」

 

 

「(……ん?)」

 

 そんな中、未だ少しばかり逡巡を続けていた瀬呂は、背後の席から聞こえた声に意識を傾けた。

 何故となれば、それらの声が()()()()()()()()ような様が、殊更に彼の気を引いた故であって。

 

 五十音順で『瀬呂(せろ)』の直ぐ後ろになる級友、『空翔(そらかけ)』。

 その彼女の肩か頭の上を基本的に定位置にしている御魂、もとい、『ピィちゃん』。

 

 普段から背中越しに聞こえてくる異様なまでの以心伝心振りには彼も流石に慣れてきたものの、このような言い争い(?)を耳にするのは初の経験であった。

 勿論、大きな声ではないので気付いているとしても自分を含めた隣席の数人だけであろうが……

 

 

「……どーしたよ、お二人さん? 珍しいじゃねぇの」

『ピっ』

「おっと、うるさかったかい? ごめんよ、瀬呂くん」

 

「いーや? けどお前らの意見合わない感じのやり取りなんて初めて聞いたと思ってよ」

「ああ、まあ、それは…………折角だ。良ければ()()()()意見というヤツをくれないかな?」

 

「お、勿論良いぜ? どれどれ……」

 

 

 結果、好奇心を理由に振り返った瀬呂を迎えたのは、少しばかり苦い顔を浮かべる空翔だった。

 やや後ろめたそうに数回頬を掻いた彼女は、肩に乗る小鳥に視線を送った後で───手元にある書きかけのフリップを、彼に見せるようにくるりと回した。

 

 

 ───"飛翔ヒーロー ソアライブ"

 

 

 由来は『飛翔』と『到着』を意味する二つの英単語を絡めた名付けであると、フリップの余白に書かれたメモ書きが物語っていた。

 それらを含めて理解に数秒、口元に指を当てた瀬呂は「ん?」と首を傾げて『小鳥』を見る。

 

 

「…………俺は良い名前だと思うけどな? 何が引っかかってんだ?」

『ピィ……ピッ!』

 

「……通訳頼むわ」

「……それがね?」

 

 向けた顔に対して憮然と胸を張る……的な仕草をとる小鳥から、瀬呂が視線をスライドさせる。

 再び苦笑いを深めた空翔が、今一度肩の上に見つめて、一拍。

 

 

「『胡魄ちゃんには和風な名前の方が似合う!』……って言って譲ってくれないんだ」

「……ぅおい、そーいうアレかよ!? そこは本人の自由だろ!」

『ピイ……』

 

「先にコスチュームに関して期待に応えたんだしヒーロー名は、って言ってるんだけどねえ……」

「ああ、そういえば……ってアレもかよ! つーか御魂に甘くねえか、空翔?」

 

 

「そこは、ほら……なるべく、さ」

「あっ…………まあ、そっか……いやそれでもよ……」

 

 今も自身は教室に来られない級友の事情を思い出し、瀬呂は上げかけた気炎を喉奥に落とす。

 空翔もまた苦笑を僅かに陰らせ、しかし首を小さく横に振って言葉を続けた。

 

「……何もかも口にする前から諦めてしまうよりは、多少我儘でも言ってくれた方が助かると常々伝えてるからね。勿論、その上で聞くかどうかはちゃんと線引きしてるよ」

「ああ……成程。そういうもんか」

 

「そういうものさ。今回だって、ちょっとお茶目に引っ張ってみてるだけだよ。……そうだろう、咲鳥ちゃん?」

 

 

『…………ピッ』

「……おい今だいぶ空白あったぞ?」

「……『勿論だよ、胡魄ちゃん。我儘言ってゴメンネ』」

 

「オイ本当か? さりげなく言論封殺してねーか、空翔おい?」

 

 

 わざとらしく明後日の方向を見たまま通訳(?)する空翔に、冗談混じりに問い詰める瀬呂。

 周囲の迷惑にならない程度に一頻り笑った後で、ふと彼の口から呟きが溢される。

 

「……けどアレだな。なんつーか……ぶつかる時はぶつかる時であるんだよな、お前ら」

「当たり前さ。どれだけ仲が良くったって、意見を異にする機会が無い方がおかしいだろう?」

 

 

 瀬呂の言葉に、薄墨のように微笑んで、彼女は囁く。

 

 

 

「ボク達は、二人の、違う人間なんだから」

 

 

 

*1
原作6巻幕間にて訂正が入ってます。





 soar:飛翔
 arrive:到着

 どんな場所へもひとっ飛び、飛翔ヒーロー Soarrive(ソアライブ)




 so alive:だから 現存する = ここにいる

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