最近週一更新になっちゃってる現状。前作書いてた頃が懐かしい。
今回はちょっとルート分岐で悩んでました。
プロの活動を一足早く実地で経験すべく行われる、一週間の職場体験。
体育祭の奮闘を理由に指名を受けた者は当然それらの中から、そうでない者は学校側が
それぞれ活動地域や得意なジャンルが異なる故、選ぶ事務所は良く考えるように。
───それらの指示を以て、大いに盛り上がりを見せたヒーロー情報学は幕を閉じる。
授業を終えた教師二人が教室を後にしたところで、何処の事務所を体験先に選ぶかという話題が生徒達の間で自然と持ち上がっていき。
「オイラは
「峰田ちゃんやらしいこと考えてるわね」
「違うし!」
「芦戸もいいとこまで行ったのに指名ないの変だよな」
「最終種目にまで進出したのにね……ボクや尾白くんは仕方ないと思うんだけど」
『ピィ』
「それなー」
「まあ、指名が得られなかったボク達にも、40件もの選択肢が用意されているんだ。ありがたいと思わなきゃね。……もう場所を決めた人は居るかい?」
「私は『セルキー事務所』を第一に希望するつもりよ。私の"個性"なら水難関係の事務所が良いと思ったの。そういう胡魄ちゃんは?」
「ボクの第一希望は『ザ・フライ事務所』だね。理由は……梅雨ちゃんと同じようなところかな? 飛べる"個性"の先達から参考になる話を聞ければと思ってるよ」
「私は『ガンヘッド事務所』! 指名来てた! ……デクくんはもう決めた?」
指名を得た者、得られなかった者の隔てなく、各々に向いた事務所をどのように見出すべきか、活発な意見交換の場が形成されていく中で。
「まずこの40名の受け入れヒーローらの得意な活動条件を調べて系統別に分けた後事件・事故解決件数をデビューから現在までの期間でピックアップして僕が今必要な要素を最も備えてる人を割り出さないといけないな……こんな貴重な経験そうそうないし慎重に決めるぞそもそも事件がないときの過ごし方等も参考にしないといけないなああ忙しくなるぞうひょー」
(((芸かよ最早)))
思索に沈めば忽ち
「───今のままじゃダメなんだ」
緑谷の口から小さく零れた呟きが、誰に届く事もなく放課後の教室に消える。
常にも増して決意の宿る彼の瞳が見据えるのは、過日の『結果』である40の事務所名。
未熟に過ぎるその身に抱えた、余人には決して明かせぬ秘密。
受け継いだ力と、受け継ぎ華々しく世間に知らしめる筈だった期待。
本来目指すべきだったものを、ある種投げ捨ててまで手繰り寄せたもの───閉塞に沈んでいた一人の級友を
なればこそ、彼は殊更に強く想い願う。
大きく
『笑って救けてしまう』あの背中に、一日でも早く追い付くための歩みを。
そんな意気込みを胸に、限りある時間を無駄にしないよう、帰路に付かんと席を立ち───
「あ、そうだ緑谷くん? ちょっと話があるんだけど、良いかい?」
「…………えっ、あ、そ、空翔さん!? は、ハイ、何でしょうか!?」
「……ごめんよ、驚かせたかな? けどずっと考え事をしてた様子だったから仕方なくってね」
思考の最中に掛けられた
距離の近さに泡を食う彼に苦笑しつつ、しかし一転して真に迫る声音で彼女は言葉を続けた。
「……キミ、体育祭でも自分の身体を盛大に破壊してただろう? 現実問題として未だに"個性"の制御が覚束ない状態ってことだ。……職場体験先ではどうする気なんだい?」
「っ!? そ、それは、その……」
問われたのはある意味当たり前の、しかし彼の意識から僅か外れていた懸念点。
掛けられた問い掛けを一拍噛みしめ、卒然と頭に這い上がった『警句』に緑谷の顔が青ざめる。
一度振るえば、忽ち四肢の骨肉を爆散させる"個性"。
僅かながら粉砕を免れた経験はあれど、未だ安定運用には程遠い現状。
それ自体も一刻も早い克服が求められてはいるが……今の問われている
「学外で活動する以上、今までみたいにリカバリーガールに治して貰うわけにもいかないだろう? 受け入れ先の事務所にだって迷惑をかけるだろうし……キミが今、どう考えてるのかと思ってさ」
「…………」
これまでの授業で、何より先日の体育祭で、四肢を破砕しながらでも"個性"を使えていたのは、それが最高峰の治癒系"個性"を持つリカバリーガールを擁する雄英高校の管轄内だったからこそ。
入学前から何度なく享受していた
「……もし、他に案が無いようならだけど……ボクから一つ、伝手を提供しようか?」
「…………えっ」
答えを返せずにいる緑谷の表情から何を読み取ったか、空翔の口から重ねて問いが放たれる。
彼の返した声音と視線に乗った疑問に答えるべく、彼女は目を細めて情報を加えた。
「咲鳥ちゃんの主治医をしてくれている先生がね、咲鳥ちゃんから緑谷くんの『症例』を聞いて、前々からキミに興味を持ってくださっていたらしいんだ」
「御魂さんの、主治医?」
『ピィ、ピィ』
「"個性"研究の権威として、その道ではとても高名な方でもあるんだ。普段は医師の本業もあってお忙しい筈だけど……緑谷くんさえよければ、この週末にでも時間を取ってくださるそうだよ」
「……ッ!!?」
「大変珍しい事例だけど、自分が直接診れば即座の解決とはいかないまでも何かしら取っ掛かりは掴めるんじゃないか……って。行くとなれば話を繋ぐことはできるよ。どうかな、緑谷くん?」
「お、おお……マジか」
「まあ体育祭の緑谷、ムチャクチャだったもんな……」
「そーいう研究やってる人なら、そりゃ気にもなるよな」
「良かったじゃん! おコトバに甘えて行ってきなよ、緑谷!」
「そうやね! デクくんもこれでやっと───デクくん?」
「え、あ…………そ、れは……っ」
再々度、問われた言葉に。
一斉に浴びた、幾つもの視線に。
緑谷は蒼白な顔のまま、喘ぐように息を詰まらせた。
───善意だ。
話を持ち掛けた空翔、やり取りを見守っていた級友達、首を傾げて緑谷の顔を覗き込む麗日。
それぞれの瞳に宿るのは一様に、微塵の疑いも要さず彼に伝わる真っ白な善意。
緑谷の苦悩を、努力を、唯の一度も嘲ることなく、同じ夢を抱く仲間として受け入れる彼らが、心の底から彼の為になると認識している善意の言葉であって。
「そう、いう……その…………!」
「……緑谷?」
故にこそ、彼は答えられない。
否とも、応とも。
空翔からもたらされた彼の人物の、"個性"研究の権威、との為人。
それがどれ程のものか───抱える秘密を暴かれる可能性が、即座に思考にちらついたが為に。
それを理由とするなら尚の事、
「(どう…………答えたら、いい?)」
身体中を流れ落ちる冷や汗を、自身を訝し気に見つめる視線を感じながら、緑谷は今にも役目を放棄したがる脳へと必死の命令を送る。
後遺症が残るギリギリのところまで歪んでしまった両腕を震わせ、限界まで目を見開いて。
「(ヤバイ……やばいやばいやばいやばいぞこの反応はさすがにオカシイじゃないか現状を改善できるならどんな手段にも飛び付いて然るべきなのにイヤこれが根拠の無い怪しい話なら別になるけど空翔さんの話には怪しいところなんか一点もないどころか"個性"研究の権威とまで言われる人ならむしろ願ってもない話の筈ででもそれだけにそんな専門家に診られてしまったらOFAの秘密が露呈する可能性もあるしとにかくオールマイトや事情を知っている人たちに相談してからじゃなきゃ答えるわけにでもこうやって迷う時点で怪しすぎるあぁああああああ黙ってないで何か言えよ僕みんなどんどん訝し気な目になってるじゃないかうわぁ麗日さんまでそんな目で───)
「―――わわ私が独特の姿勢で来た!!」
「オールマイトぉ!!?」
「「「あ、オールマイトだ」」」
「そう、私だ。ちょっと緑谷少年に急ぎの用が───って、どうした緑谷少年んん!?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「───というわけで、オールマイト先生の伝手を頼るので心配要らない……だそうです、よ」
「……ホォ」
「答えに、詰まっていたのも……それを、みだりに口外してはいけない、と……言われていたからとのことで……みんなも、それなら仕方ないなあと……」
「ふむ……なんなら正攻法でもイケるかと思うたが、流石にそこまでは……コホン」
「……殻木、先生?」
「いやいや何でもないわい。……それで、受け入れ先は決まったのかの?」
「はい……第一希望が、通った……みたいで。私も、一緒で、大丈夫……だと」
「ふむ。ならばどんな体験になったかも聞かせて貰おうかの。期待しておるぞい」
「……勿論、です。……私に……でき……ぁら……」
「……ところで
「……必、要です……から。……だって……」
「私と、胡魄ちゃんは…………二人で、一緒に……ヒーローに、なるんだから」
「…………まったく、面白い娘じゃわい」
【速報】緑谷くんデッドエンド回避【首の皮】
さすがはおーるまいとですね()。
モブプロヒーロー『ザ・フライ』。一応、原作に登場した名前です。
この名前で飛べる"個性"じゃないのは嘘だろ、ということでオリキャラの職場体験先に選出。
ただし雄英がオファーを出していた40件に含まれているというのは捏造です。念のため
原作のどの辺で出ていた名前か、即座に分かった方は相当なヒロアカマニアだと思います。