原作で口田くんが他人と会話する様子が初めて描写されるのが期末試験。相手は耳郎さん。
割と細かいニュアンスまで手振りで伝わってるあたり、彼のコミュ力は高いんだか低いんだか。
「―――『生き物ボイス』……なるほど、それがキミの……口田くんの"個性"だったんだね」
雄英高校、入学式当日。
『超常』の到来より多様になった人々の体格に対応すべく巨大な扉が設けられたその場に並ぶ、まさしく今日この日から高校生として、そして国内最高峰のヒーロー養成校に通う生徒となるべく狭き門を乗り越えてきた同輩達の姿。
「それなら"個性"が通じなかったのも無理ないよ。なにせこの子は
時刻は指定された集合時間より少々早く、故に今この場に居るのは余裕を持って、あるいは逸る心を胸に抱いて席に着いた新入生。
これから級友として机を並べる者同士、銘々交流を始めんとする様が視界の内にあって。
「先に言っちゃうと、この子も"個性"なんだ。……ボクの、じゃないけどね」
「"個性"主は今も病室に居るボクの幼馴染だよ。直接登校できない本人の代わりに、その目と耳の役目をしてくれてるんだ。……詳しい原理は知らないよ? "個性"ってそういうものだし……」
「お医者さまが言うには、魂の一部が分離して小鳥の形になってるとか何とか……あ、勿論許可は取ってあるよ? 受験は元より、私有地外でも使えるように病院を通して国から特別に───」
「それは、
そんな中、特別意識しないままに聞いていた目の前の会話に関心を惹かれ。
思わずといった調子で呟きを溢した彼───常闇踏影は、必然として向けられた二人分の視線を甘んじて受け止めた。
「……横からですまない。少々、気になる話が聞こえてきたのでな」
「まあ、それは良いけど……えっと?」
「む、名乗りが先だったか。……常闇踏影だ。以後、宜しく頼む」
「常闇、良い名前だね。ボクは
「…………っ!」
「……こっちは口田甲司くん。見ての通り、とってもシャイな男の子みたい」
「……ああ、そのようだな」
会話を遮った事を詫びつつの名乗りに、銀髪の女子生徒───空翔もまた微笑みと共に応える。
同じく返答せんとするも、生来の口下手が災いしてか言葉が出なかったらしい男子を振り返り、彼女は苦笑を浮かべながらその意を引き継いだ。
「……だけどこう見えて、やるときはやってくれる男でもあるんだよ? ボクは実技試験の時に、それをしっかりと見せて貰ったよ」
「ほう、それは……この目でその雄姿を見届ける刻が楽しみだな」
「っ!? ……!!」
己が言葉に詰まっている隙を突き、天へと投げられたハードルに手をはためかせて慄く口田。
そんな彼を茶目っ気混じりに見遣る二人の前に、舞い降りる小さな影が一つ。
『───ピィ』
「……で、この子はボクの幼馴染の"個性"、であり……
「本人の一部?」
「うん。だからさっきの質問に対する答えは、どちらかと言えばいいえ、になるかな?」
答えながら、小さな羽をパタパタと動かし眼前に降りてきた小鳥を、彼女は掌上に受け止める。
「───"個性"『魂鳥』。小鳥の形を取った魂の一部……なんじゃないかなっていうのが"個性"を研究しているお医者様の見立てだよ。……人間の魂なんて誰にも立証できるものじゃないからね」
「それは……なるほど。すると、その"個性"の主は……」
「
「『本体』……先程の話にあった、直接登校できないというのも……そういうこと、なのか?」
「うん。この子が咲鳥ちゃんの代わりに見て、聞いて、伝えているんだ。病室にいる本人に、ね」
「……そうか」
『ピーィ』
「勿論、その辺りは学校側も了承済みで───どうかしたかい、口田くん?」
得られた答えに沈痛な目を向けた常闇に対し、返ったのはどこか堂々と鳴く小鳥の姿。
そこに言葉を重ねようとした空翔の意識を引いたのは、視界の端に映った物言いたげな手振り。
「……ああ、本人の意識があるなら、
「……どうやらなかなか難儀な"個性"のようだな。……似て非なるもの、だったか」
内気な少年が手話で伝えた疑問への回答は、己の身体以外に意識を割かれる"個性"特有の悩みと思える代物。
初めに抱いた印象とは少々異なるものだったと、常闇は自身の"個性"を想いつつ瞑目する。
「……っ」
「ん? ああ、『ピィちゃん』っていうのは昔飼っていたペットの名前を貰ってるんだ。……実は外見も含めて、なんだけどね」
「……? ……!」
「それがね……その子が寿命を迎えて、お別れしようとした丁度その時に"個性"が発現したんだ。あの時は、ピィちゃんが生き返った!? って一緒にビックリしたっけなあ」
「……!? ……っ!」
「まあ、五年と少し生きてたわけだし、小鳥としては長生きした方だったわけだけど……幼い娘に情操教育として買ったペットがそんな事に繋がるなんて、両親にとっても想定外だったろうね」
(…………しかし何故そこまで問いの内容が的確に分かるんだ、空翔よ?)
その後も続くは、わたわたとした大振りの手話による問いと淀みない返答の応酬。
確かに何となくは伝わってこないこともないが……と、知れず半目で見守る常闇であった。
「―――机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよ! てめーどこ
「……っ!?」
「えっ」
「む……」
そんな彼らの会話(?)を途切れさせたのは、すぐ傍の席より響いた言い争い。
驚きに身を竦ませた口田をはじめ、クラス中の視線がそちらへと向けられる。
片や、見た目発言両方から几帳面さを感じさせる黒髪眼鏡の男子。
此方、言動及び吊り上げた眼差しに粗暴さを滲ませる金髪の男子。
「ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明~~~!? くそエリートじゃねえかブッ殺し甲斐がありそだな」
「ブッコロシガイ!? 君ひどいな本当にヒーロー志望か!?」
「……さながら阿修羅の如し」
「いやまあ、流石に言葉通りの意味で言ってるわけじゃないと思うけど……」
初対面の挨拶としては些か物騒過ぎる発言に、顔を引きつらせながらの呟きが零される。
眼鏡の男子───飯田の言葉に小さく頷く口田を目の端に、空翔は苦笑いで続けた。
「それにほら、彼だってああ見えても、あの試験を越えてきた人間の筈だし……」
「確かにそうだが……む?」
常闇の視線の先で、尚も金髪の男子に対し激しく言い募っていた飯田が、不意に何かに気付いたように視線を背後へと向ける。
釣られて顔を向けた数人が見たのは、丁度教室を覗いていたらしい緑髪の男子の姿。
「……俺は私立聡明中学の───」
「聞いてたよ! あっ……と僕 緑谷。よろしく飯田くん……」
そちらの方が優先度が高かったのか、実の無い口論を切り上げた飯田は、俄かに注目を浴び肩を震わせた彼の元へと歩き去って行く。
後に残された金髪の男子もまた、それを視線で追い───その口から漏れた小さな舌打ちだけを周囲で成り行きを見ていた者達の耳が拾った。
「……入学早々の荒事は防がれたか」
「今日からお互い机を並べる仲間なわけだし、できれば仲良くしたいところだけど……」
囁き合う二人が視界に入れるは、何やら不機嫌な空気を漂わせた横顔。
緑谷と名乗った彼に向けられる視線は、傍目にも先程以上に剣呑なもので。
「……孤高を好むということもあろう。どうあれ他人がとやかく言うべきではあるまい」
「まあ、そうだね。人付き合いなんてそれこそ人それぞれ───」
「うるせェ、聞こえてンだよ、『鳥頭』に『白髪』」
「と……!?」
「しら……っ!?」
三白眼を鋭く吊り上げ、振り返った彼の言葉に目を見開く二人。
聞かれていたか、という思いに加え、口汚くぶつけられた
───確かに自身の頭部は、"個性"に由来してか所謂『鳥人』と呼ばれる異形のソレだ。
今の時代、そう珍しいモノでは無くなったとはいえ、奇異の目を感じる機会は引きも切らない。
首から下にはそうした形質が表れていないこともあり、仮に自分の身体の特徴的な点を挙げよとでも言われれば、真っ先にソレを思考に上らせることは己が内でも否定はしまい。
否定はしないが、しかし…………『鳥頭』は、少々、意味が変わってこないだろうか?
それに女性に対して『白髪』と言うのも……どちらかと言うなら銀髪だろう、彼女の場合。
……いや、図らずも陰口を叩くような構図になっていたこちらにも非はあるとは思うが───
「ボクの、髪が、何だって?」
『ピィイイイ?』
「……っ、空翔?」
「……あ゛ァ?」
───笑顔。
振り返った常闇の目に映ったのは、陶磁器の如く
ほぼ初対面の彼をして、「ああ、笑顔とは本来攻撃的な……」と、脳内で逃避が始まる程の。
瞬間、彼は悟る。
自身も多少なり不快には感じたが、彼女のソレは枠を異にしていると。
何らかの、
「……ハッ、不服かよ『白髪』? 人のことを陰でコソコソと囀るしか能のねぇ端役にはお似合いだろーがよ、なぁ『白髪』?」
(なっ……更に煽るだと!?)
戦々恐々とする常闇を尻目に、件の彼は敢えてとばかりに火を注ぐ。
先の仏頂面から一転、明らかに相手の激昂を悟りながらも口角を好戦的に吊り上げて。
「ふ、ふふ……自分以外はみんな端役かい? まあ、それは別にいいけどね……」
(((いいんだ?)))
対して、青筋の立った笑みを維持した彼女の返答に、周囲で見守る一同の心の声が揃った。
そんな彼ら彼女らの心情を知ってか知らずか、彼女は己の銀髪をこれ見よがしにかき上げつつ、眼前の赤い三白眼を睨み返して口を開く。
「さっきの彼とも被るけど……本当にキミ、ヒーロー志望なのかい? 初めて会った人間の身体的特徴を嘲るだなんて真面な神経とは誰が白髪だ張ったおすぞ」
「情緒!?」
「途中までの諭す的な空気は何処に!?」
「堪忍袋の緒がリアルタイムに切れるとこ初めて見たぞ!?」
「面白ェ……やれるもんならやってみやがれッ!!」
「こっちはこっちで何事もなかったかのように!?」
「イヤ喧嘩買いにかかってるから何事なくはないけども!?」
「つーかやめろよ入学初日から!? どんだけ血の気が多いんだこいつ───」
「朝から元気が良くて大変結構、だが喧嘩がしたいなら余所へ行け。ここは……ヒーロー科だぞ」
教室の席順は五十音順。
しかし常闇くんのアレって、いわゆる高校デビューなんだろうか。
それとも中学二年生以前から貫き通している強者(?)なのだろうか。
……後者な気がするなあ。なんとなく。
麗日=丸顔、切島=クソ髪、芦戸=黒目、瀬呂=しょうゆ顔 etc.
わりと外見からそのままなあだ名が多いですよね、爆豪くん。
原作A組の皆は笑って流してますが、どこかで
※爆豪くん(に限らず特定キャラの)アンチ作品にする予定は全くございません。念のため。
当人視点無しでどこまで設定を描けるかという試みの一環なのです。ごめんね爆豪くん。