She is here.   作:非単一三角形

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 彼(?)も改変の影響を受けたキャラの一人です。
 覚えていました?



C2-15 『眼』在りて

 

 

 ―――今、俺は、何を見ている?

 

 ()の思考を埋めたのは、そんな想い。

 

 奪われた友を取り戻す為、痛みと疲労、それらを越える焦燥と危機感を押して飛び込んだ先で。

 ()()()()()に、その光景を叩き付けられて。

 

 

 

「積極的に探して回る気なんざ無かったんだが……優先殺害リストなんてもんまで渡されてんだ。向かって来られたからには、仕方ないよなあ?」

 

 

 

 ―――やめろ。

 

 頭に沸いた言葉は喉を通らず、伸ばした手の奥に落ちていく。

 視界の先、()()()から漏れ落ちるのは、耳目を背けたくなる()()()()()

 

 

 

「安心しな。今頃あの世はお友達で賑わってる。一人ぼっちにはならねえよ」

 

 

 

 ―――やめてくれ。

 

 拳の下で揺れる脚が、苦悶を示すように虚空を掻く。

 もう片方の黒腕に握られた()()()()までもが、辛苦に震えたようにさえ見えて。

 

 人より強靭に生まれた身体に鞭打ち、黒の巨体へと駆け出そうとした彼───障子目蔵は。

 

 

 

 

「潰せ、脳無」

 

 

 

 

 夜の森に生々しく響いた音を。

 

 黒の指から飛び散った白い物体を。

 

 紙屑のように力無く地に落ちた級友の身体を、ただ呆然と眼に映していた。

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ───油断や驕りなど、あった筈が無かった。

 

 合宿地に襲来したヴィラン集団、自称『(ヴィラン)連合開闢行動隊』。

 その内の一人、眼前に現れたヴィランを辛くも撃退し、散り散りになっていた級友達とも合流が進んでいた状況にあったとしても。

 

 敵の目的がその場に居た友の一人、爆豪の身にあると知り、しかし揃った戦力を鑑みれば対抗は容易───そんな緑谷の見立てに対し、彼の中に否が無かった事を加えて省みても、なお。

 

 

 ───索敵に優れた自身の"個性"を掻い潜り、爆豪に加えて常闇をも持ち去った相手をそれでも侮っていた? ……否だ。

 

 ───即座に敵を追うと判断し、その為の策を立てた緑谷は間違っていたか? ……少なくとも自分は否と答えよう。

 

 何より、自分達に浅慮があったとして───()()()()に、それらは何ら関わってはいない。

 

 

 

「……U()S()J()()()()()()()……ッ!」

「っ、あれが……か」

 

 蛙吹と麗日、二人の"個性"を以て空を飛び、爆豪達を持ち去ろうとしていた男を宙で捕える。

 そうして辿り着いた先はヴィラン達にとっての集合地点。捕えた男を組み敷いていた障子の耳が拾ったのは、周囲を見渡した緑谷と轟の呟きだった。

 

 彼自身は間近に目にしてはいなかった、先の襲撃事件における最大の危険人物。

 あのオールマイトに対し、力で拮抗して見せたという信じ難い存在。

 それは、今回の襲撃者が『(ヴィラン)連合』と名乗った以上、想定するべきだった最悪の脅威。

 

 

「……? オイ、あいつ、手に何か握って……!!?」

「なっ……あれ、は……!!」

 

 されどその威容に恐怖するよりも早く、彼らの意識を縫い付けたのは、その黒き両腕それぞれに握られた『物体』。

 凡そ()()()()()()()()()()を作られた、見知った人間の身体とその両腕であった。

 

 

「(俺達より先にこの場所に来てしまっていたのか、空翔……っ!)」

 

 脳無の右手に頭を、左手に千切られた両腕を握られ、残った脚を微かに揺らす級友の姿。

 最早抵抗する気力も碌に残っていないのだろうその様に、障子はマスクの下で歯を食いしばる。

 

 

 

「知ってるぜこのガキ共!! 誰だ!?」

Mr.(ミスター) 避けろ」

「! 了解(ラジャ)

 

「うあ゛!!!」

「ぐっ……」

 

 少なからず意識を他に取られている彼らに、ヴィランが時間を与えてくれる筈も無く。

 仲間への指示は一言、眼前に立っていた男の手より放たれた『蒼炎』が、生徒達を襲う。

 

 

「(馬鹿な、ヴィランと言えど仲間ごと……いや、違う……!」

 

 迫る炎に飛び退かんとした障子が感じたのは、手の下に抑えていた男の背が消える感覚。

 爆豪達にも使った『物体をビー玉サイズに圧縮し閉じ込める』"個性"により自身を『圧縮』して拘束から逃れたのだと、彼は初動の遅れた腕を炙られる痛みの中で悟った。

 

 

「いってて……飛んで追ってくるとは! 発想がトんでる。……しっかしまたえらく悪趣味なことやってるじゃないの、荼毘?」

「……必要()()()やってねえよ。こうしなきゃ止まらねえんだ、あのガキ」

 

 自身の『圧縮』を解き、姿を現した男がチラリと、まるで幼子に人形を渡したかのような光景に目を向け、どこか非難染みた声を掛ける。

 対して荼毘と呼ばれた男は微かに眉をしかめ、ややわざとらしく肩を竦めた。

 

 

「……『崩した』腕が体育祭(テレビ)に映ってたとは聞いてたが……ここまでの再生力とはな」

 

 

 

「───死柄木の殺せリストにあった顔だ! そこの地味ボロくんとおまえ! なかったけどな!」

「チッ!!!」

 

「───トガです出久くん! さっき思ったんですけどもっと血出てたほうがもっとカッコイイよ出久くん!!」

「はあ!!?」

 

 

「っ、轟! 緑谷!!」

「あぅ!? 邪魔しないでください!」

 

 全身タイツの男に襲い掛かられ、距離を作るように氷壁を繰り出した轟が。

 刃物を振り被る少女(トガ)に抑え込まれ、痛みに顔を歪めた緑谷が、障子の『眼』それぞれに映る。

 咄嗟に満身創痍という言葉すら生温い状態である後者を重く見た彼は、身体ごとぶつかる勢いで少女へと向かい、その凶刃を遠ざけた。

 

 

「だがまあ……()()()()()()()()()即再生は出来ないと割れた時点で、()()なるのは当然だろ?」

「……ワォ。容赦ねーなぁ」

 

 

「……わっ!? その腕の眼も全部見えてるんですね!? すごいです、障子くん!」

「……ヴィランに称賛を受ける筋合いは無い」

 

 真正面に対峙していながら、ともすれば()()()()()から消え、緑谷へと向かわんとするトガを、障子は()()()()()()に捉えて遮るように腕を振るう。

 そうして()()()で背後の男達を見ながら、彼は()()()()()()()()()に意識を向けた。

 

 

「(……まだ確証は持てない! だが、アレが奴の"個性"であるならば、()()が常闇と爆豪であるはず、だが……っ!)」

 

 その手の中にあるのは、空中で男から掏り取った二つの球。

 仲間の炎を避けるべく見せた一瞬の光景を合わせ、当初の目的達成を半ば確信していた障子は、しかし両の眼と切り落とされたものを除いた複製の『腕』先、計五つの眼を見開いて逡巡する。

 

 "個性"『複製腕』。耳や眼といった感覚器官をも増やせる彼は、人より広く保てる視野を以て、他のヴィラン(トガ)と対峙しながらも、()()を見ることが出来た。……出来てしまった。

 

 

 

「積極的に探して回る気なんざ無かったんだが……優先殺害リストなんてもんまで渡されてんだ。向かって来られたからには、仕方ないよなあ?」

 

「安心しな。今頃あの世はお友達で賑わってる。一人ぼっちにはならねえよ」

 

 

「(……なっ!? まさか、やめ───)」

 

 背に走った悍ましい悪寒に、知れず振り向き、手を伸ばしてしまった先で。

 自身のその姿に、ニヤリと口角を上げた荼毘の視線をどこかで感じながら。

 

 

 

 

「潰せ、脳無」

 

 

 

 

 

 

 

 

「───合図から5分経ちました。行きますよ、荼毘」

 

「ごめんね出久くんまたね」

「ああ……お前もゲートに入れ、脳無。……そういやMr.(ミスター)、爆豪は?」

「そりゃもちろん……おっと?」

 

 

「(…………っ、あれは、やはり……! だが……っ)」

 

 何処かから響いた声と、辺りを囲むように浮かんだ黒の靄。

 先の件でも目にした敵連合の移動手段、ワープゲートに飛び込んでいくヴィラン達を見ながら、障子は固まりそうになる思考を必死に動かしていた。

 

 ───如何な再生可能な"個性"、再構築可能な肉体を持っていたとして。

 果たして彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()を再構築出来るのだろうか?

 

 

「……オイ、Mr.(ミスター)?」

「そう睨むなって冗談───」

 

 

「(…………分からん。だがこうなっては……()()ほか、ない……ッ!)」

 

 地面に打ち棄てられ、ピクリとも動かない首の無い身体。

 そこから目を背けそうになる己を心の内で叱咤し、彼は震える身体で声を張り上げる。

 

 

「二人とも逃げるぞ!! 今の行為でハッキリした! "個性"は分からんが、さっきおまえが散々見せびらかした、右ポケットに入っていた()()が常闇・爆豪だなエンターテイナー!!」

 

 

「っ、障子……!」

「障子くん!! ……でも!?」

「緑谷!!」

 

 障子の手に握られた二つの球を、彼が叫んだ言葉の意味を理解した緑谷の表情が、一瞬の喜色を浮かべた後で悲痛に歪んだ。

 その感情の動きを、一瞬向けられた視線を察して、しかし障子は言外の意図を乗せて首を振る。

 

 

「(奴らの中で『終わった事』にするんだ、緑谷……! 少なくともヴィラン達が、空翔の傍から立ち去るまでは……!)」

 

 

 自分達が空翔の『遺体』に意識を割かれていることは隠し切れる筈もない。

 しかし万が一、彼女の蘇生───再構築の可能性を考えていることを、またはその『兆し』でも見られてしまえば、今度こそ粉々に『損壊』させられる恐れも否定できない。

 

 既に退避に移り始めた敵が、奪い返された『目的』に対し、どのような行動を取るかも不鮮明。

 最悪は、その二つを天秤に掛け、選択を迫られる事───ここまでが彼の頭にあった答えで。

 

 

「……チッ。オイ黒霧───」

「まあ待て待て、荼毘。あれはプレゼントするとしよう。……悪い癖だよ。マジックの基本でね。モノを見せびらかす時ってのは―――」

 

「(な……っ!?)」

 

 

 されど、覆されたのは()()()()

 手の中に確保した()()が、互いの求める『目的』であるという()()で。

 

 

見せたくないもの(トリック)がある時───だッ!?」

 

 

「えっ」

「なっ」

「ハァ?」

 

 

 これ見よがしに開かれた口、舌の上に乗った二つの球。

 それらがその場の面々の目に映るや否や、集まった視線を断ち切ったのは一本の()()()

 

 

「…………そこは流石に死んどけよ、人として」

 

 

 それは、ヴィランの頬を()()()()()()綿()()()()()()()()()

 誰ともなく一斉に、その出元を確認した彼らの視界に飛び込んできたモノは。

 

 

 

 

『───』

 

 

 

 首のあるべき場所にボコリと佇む、唯一個の、()()だった。

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「……っ、ぁ……がら、き……せんせぇ……!」

「うーむ。これはイカンのぉ。緊急手術の要アリじゃ。全身麻酔の準備を」

 

「みん、な……雄英の、合宿に……ヴィラン、が……っ!」

「ふむ、分かったわい。ワシから学校に連絡しておくから安心するんじゃ」

 

「……っ、が……」

「すぐに薬が効いてくるでの。あと少し、あと少しだけ頑張るんじゃぞ」

 

「…………ぇす、か……?」

「ム? どうしたんじゃ? さっきから何を見て───」

 

 

 

「さっき、まで……()()()、で……ぁにをしてた……ぇすか?」

 

 

 

「…………ホッ」

「何日かに……ぃち、ど……霊安室に……今日も、何時間も……先生、いったい……ぁに、を?」

 

「ホ、ホホッ……! そうかそうか……こりゃまたなんとも……」

「せん、せ……?」

 

 

 

 

「ちょいとばかし、遅かったのお」

 





 初期案ではコンプレス氏の役割でしたが、特に恨みも無い学生にそこまでする人じゃないか、と思い直し代打を用意しました次第。
 C1-15:ドクターの台詞、「損害実質ゼロ」とはそういうことです。


 原作の当該シーンにて、コマの隅っこでサラっと行われている障子vsトガ。
 実はトガちゃんにとって天敵となる感知+近接戦闘に長けた人材なんですよね、障子くん。
 割と有利に戦えてたっぽいのもむべなるかなと、ずっと後になって判明するやーつ。

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