この時点だとNo.7なのかNo.8なのか不明なのですよね。
まあ下半期の結果を見るに、こっちだろうということで。
『───では先程行われた、雄英高校謝罪会見の一部をご覧下さい』
備え付けの液晶画面から流れたニュースキャスターの一言が、人々に顔を上げさせた。
『この度───我々の不備からヒーロー科1年生28名に被害が及んでしまった事。ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り───』
画面に映るのは、スーツに身を包んだ
通り一遍の口上を経て、下げられた三つの頭をカメラは真正面に捉えていた。
『今回 生徒に被害が出るまで各ご家庭にはどのような説明をされていたのか。又 具体的にどのような対策を行っていたのかお聞かせ下さい』
『周辺地域の警備強化、校内の防犯システム再検討。"強い姿勢"で生徒の安全を保証する……と説明しておりました』
「……守れてないじゃん」
「何言ってんだこいつ」
記者の質問に対する学校の答えに、誰ともなく呟かれるは着せる衣すら持たぬ
傍から聞こえたそれらに極数名、眉をしかめた者の存在に、声の主達こそが気付かぬもので。
『生徒の安全……と仰りましたが、イレイザーヘッドさん。事件の最中、生徒に戦うよう促したそうですね。意図をお聞かせください』
「うわ、マジか」
「子供に任せんなよ。仕事しろヒーロー」
現場に存在した奮闘や葛藤を、『報道』は伝える術を持たない。
あるのは唯一つ、"
"正義"は"悪"に勝つモノだ。
"悪"は"正義"によって打ち砕かれねばならない。
それを為せなかった"正義"など"正義"足り得ない。
"正義"足り得ぬ"
「(───なんて考えが浸透してるとしたら、それはあんまりじゃないか?)」
頭の上に向いた幾つもの視線を、そこに滲んだ薄暗い不信感を眺め。
堪らず吐きかけた溜息を、吐き出す寸前で喉奥に留めて。
『───不幸中の幸いだとでも?』
『未来を侵されることが"最悪"だと考えております』
『攫われた爆豪くんについても同じ事が言えますか?』
「(……奪われた側から、その身内の方にしてみれば『力及ばず』等と謝られたところで気持ちの置き所が無いのは理解できる。だが……
機器を通して聞こえてくる記者の追及に、淡々と答えていく教師達の声。
傍から聞くだけでもひどく攻撃的に思える前者に、眼前から時折聞こえてくる後者への変わらぬ野次に、彼は淀んでいく気分を抑えて顔を取り繕う。
『───我々も手を拱いてるワケではありません。現在 警察と共に調査を進めております。我が校の生徒は必ず取り戻します』
「(…………必ず、か)」
会見を結んだ校長の一言に、彼は眩しい物を見るように顔を上げた。
自分が知る『現場』において、『必ず』というものは存在しない。
ヒーロー達が生きる『現場』でも、そこに大きな違いなど無いだろう。
つまり今の言葉は、それだけの覚悟を持って使われた一言───音に聞こえた雄英高校校長が、考え無しに『必勝』を口にする筈など無いのだから、と。
「ケーサツ……『ヴィラン受け取り係』が今更なに出来るんだか」
「やりますーって言うだけなら簡単、だよ、な……?」
「(……?)」
ざわり、と。
聞き流す姿勢にあった野次の中に、突如混じった戸惑いが彼の耳朶を叩く。
正面に見える人々を、
人々の視線が、いつの間にか背後に───
特にその先頭、場違いに思える偉丈夫の来訪に、長年勤めてきた彼をして混乱は避けられず。
徐々に近付いてくるその姿に呆けたまま、やがて彼の人物の影が自身を包む頃になって、初めて彼は掠れる様な声で喉を揺らした。
「…………
「あまり期待はしないが、答えてもらえれば助かる」
国内No.2、フレイムヒーロー エンデヴァー。
獄炎を思わせるコスチュームも、髭のように顔を覆う炎もそのまま、明らかな臨戦態勢を保ったその姿に、やっとの思いで紡がれた言葉に返ったのは、にべもない誰何の声。
「ここ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「(───何で俺が雄英の尻拭いを……こちらも忙しいのだがな)」
突然の避難要請に戸惑う病院職員達を、誘導および患者の移送に駆け回る警官達を横目に。
院内を見渡す彼、エンデヴァーは獄炎の下で未だ渋面を作っていた。
襲撃を受けた生徒による、敵拠点およびそれに類すると思しき地点の判明。
国内トップ級のヒーローを集められるだけ集めたとばかりの陣容に、果たしてここまでの人員が必要なのかと抱いた疑問は彼の記憶に新しく。
「(……こうして見る限り、不審な動きをする者など見当たらんが……むう)」
口々に困惑を叫びながら『護送』されていく職員達には、想定された『抵抗』の兆しすら無く。
正しく『拍子抜け』をくらわされた彼は、知れず額に刻んだ皺を一層深くしていった。
第一目標は拉致被害者の現在地。ヴィランの拠点と思われる家屋。
故にNo.1ヒーロー、オールマイトを此処に投入───まあ、異存は無い。
第二目標は奴らの
No.4ヒーロー、ベストジーニストを中心に制圧───これもいいだろう。
そして、
必然的に脳無複数体との戦闘が想定されるこの場所に、保須市にて彼らを相手取った経験を持つ
「(
打ち合わせに現れた警官、塚内と名乗った男の顔を脳裏に浮かべつつ、その場でも使われていた
「(少なくとも後ろめたいものがある者のソレでは無かったが……何より
『見っけたぞ、エンデヴァー! 地下室だ!』
「…………
無線に届いた声の主はNo.7、ラビットヒーロー ミルコの声がエンデヴァーの鼓膜を叩く。
彼が苦言を呑み込んだことを察したのか、彼女はカラカラと笑って連絡を続けた。
『ああ、霊安室の奥……絶対要らねえスペースに階段隠してやがった。随分下まで続いてんぞ』
「……警戒は怠るなよ。保須に現れた個体は大した代物では無かったが、話にあった突出した力を持つ個体が現れる可能性もあるのだからな」
『力だけならオールマイトとカチ合ったって奴だろ! こっちに居ると良いなあ!』
「……貴様、まさか先行役を希望した理由は……目的を忘れていないだろうな?」
『あ? あー……何とかいうジジイをふん縛れば良いんだろ? 楽勝だ!』
「…………殻木球大、だ。全く……」
戦闘狂じみたきらいのある
今回の作戦は三地点を同時に襲撃する電撃作戦。この場所だけが制圧に成功していても勝利とは呼べないのだから。
「おい、他の場所はどうなっている? 連絡は入っているか?」
「っ、そ、それが……」
傍らに居た警官に尋ねたそれは、一応という意図を込めた念押しのようなもの。
されど尋ねられた警官の顔に浮かんだのは焦燥に近い動揺の表情。
怪訝に思ったエンデヴァーは促せば、その威容に身を縮めた男は泣きそうな声で答える。
「そ、その……第一目標では、捕縛した筈のヴィラン達が何者かによって『転送』されたと……」
「……は?」
「加えて、あちらでは脳無も現れたとのことで……ベストジーニストとも連絡が取れず、おそらくそちらが失敗───」
「グダグダじゃないか全く!!!!」
想像を遥か地中まで下回った体たらくに、叫んだ彼の全身から怒涛のような炎が噴き上がる。
今すぐ耄碌した
「(……いったい何をやっているのだ、あの男は……! ええい、俺が向かおうにもここからでは距離があり過ぎる! だから戦力の分配が過剰だと……!!)」
『───おい、エンデヴァー?』
「ミルコか!! 何だ!?」
『……急にどうした? 更年期か?』
「誰がだ!!」
『まあいっか、こっちの地下だけどな』
『
「…………は?」
気炎の途切れた彼に、無線の向こうから言葉を探すような唸り声が届く。
「…………もぬけの殻、だったとでも言うのか?」
『あー……悪ぃ。言い方マズった。機械やらなんやらゴチャゴチャある。けど……生きてるヤツは一個も無えな、これは』
辟易の籠った『つまんねえな……』という呟きと共に無線が拾うのは、ジャリ、ベチャ、という細かな何かや水気のある物を踏みしめる足音。
『それと
「……分かった。もうそこは良い。すぐに上がってこい、ミルコ」
地下より届いた情報から像を結んだのは、放棄された研究所。
これが
『んで、多分だけどな? 隅っこでくたばって腐ってるコレ……殻木とかいうジジイだな』
「……………………はぁ!?」
今話冒頭は原作で描かれた神野市内の路上……と思わせての蛇腔病院受付。
視点の軸は誰でもないモブ病院受付事務さん。
似た導入を繰り返し使用してきた本作ならではのミスリードでありました。
病院の受付事務という仕事には医師や看護師などの国家資格は必要とされないものの、とりわけ大きな総合病院では来院者の状態からどの医療部門の診察を受けるかなどについて説明する必要があるため、当然ながら医療に関する情報や知見を求められる職種となります。
即ち、モブの民度がヤバイ事で有名なヒロアカ世界において貴重な例外である医療従事者の方にカテゴライズできるというわけですね。
……万を超える暴徒を前に無手無言で立ち塞がるモブ医師さん達しゅごい。
今話前書きはビルボードチャート上半期時点でのミルコさんに関して。
実はヨロイムシャと並んで、どちらが7位でどちらが8位だったのか不明なのです。
下半期にはミルコ5位、ヨロイムシャ9位となってますし多分7位だっただろうという事で一つ。
フードちゃんにより
この時点の彼が強さを理解してる脳無ってステインのおまけ扱いされた個体だけですからねー。