She is here.   作:非単一三角形

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 ご安心ください。

 こちらは本作「She is here.」Chapter-3の第二話に間違いありません。



C3-2 ふたり

 

 

「―――煌めく眼でロックオン!」

「猫の手、手助けやって来る!」

「どこからともなくやってくる」

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

 

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!(オフver.)」」」」

 

 

「プッシーキャッツ! お久し振りです!」

「元気そうねキティたち!」

 

 社会が激震を受けた夏、余波に屋台骨の揺れた秋を過ぎ、時は11月下旬。

 この日、雄英高校1年A組専用学生寮『ハイツアライアンス』に、その住人(学生)達にとって縁浅からぬ来賓の姿があった。

 

 

「あの時は守りきってやれずすまなんだ」

「ほじくり返すんじゃねェ」

 

「病院での事、聞いたにゃん。……その後、大丈夫にゃ?」

「……ええ、まあ『視て』の通り……っと、すいません」

 

「ウチら大丈夫っスよ、ね」

「にくきゅーまんじゅー」

「にくきゅーまんじゅー!」

 

「洸太くん!! 久し振り!! 手紙! ありがとうね! 宝物だよ」

「別に……うん」

 

 件の『悪夢』以降、活動を見合わせていたヒーローチーム『プッシーキャッツ』、及び彼女達の保護を受ける少年、出水洸太。

 惨劇に近い幕引きだった合宿以来となる和やかな顔合わせに、生徒達は安堵と喜色に満ちた顔でこれを迎え入れるのだった。

 

 

「しかしまた何で雄英に?」

「メインは復帰のご挨拶よ。あとは……ちょっとした()()()の解消に、だよね?」

「にゃ」

 

「復帰!!? おめでとうございます!!」

 

 指導する側として事を為しきれなかった謝罪に始まり、季節を跨ぐ再会に盛り上がること暫し。

 人数分のお茶を乗せた盆を手にした砂藤から、ふとした調子で零れた問いに返ったのは、復帰の一言を含んだ答え。

 それを耳にした生徒達が慌てたように言祝ぐ声にはしかし、驚きの感情が大きく含まれていた。

 

 

「ラグドール、戻ったんですか!? "個性"を奪われての活動見合わせだったんじゃ」

「戻ってないよ! アチキは事務仕事で3人をサポートしていくの! OLキャッツ!」

 

 驚愕の理由は『悪夢』の詳細と共に報道にも乗せられた『"個性"が使えない不調』の真実。

 ラグドールこと知床知子が受けたのが、一時的な不調などではない『"個性"の強奪』なのだと、知らない者はこの場に居ない。

 

 

「……タルタロスから報告は頂くんだけどね。どんな・どれだけの"個性"を内に秘めているか未だ追及してる状況。現状"何もさせない"事が奴をおさえる唯一の方法らしくてね」

 

 疑問と苦渋を滲ませる生徒達にも飄々と答えた当人に代わって、ピクシーボブの口から監獄より届けられた事情が語られる。

 事実上の『泣き寝入り』を示唆する内容を話し、悔し気に目を伏せた彼女に、最悪のヴィランのもたらした『理不尽』を改めて実感した生徒達が固唾を飲み込んだ。

 

 

「……では何故このタイミングで復帰を?」

「今度発表されるんだけど、ヒーロービルボートチャートJP下半期、私たち411位だったんだ」

 

「前回は32位でした」

「なる程、急落したからか!! ファイトっす!!」

 

 

「違うにゃん。全く活動してなかったにも拘わらず3桁ってどゆ事ってこと!!」

 

 

 八百万から気を遣うように為された再度の問いに、マンダレイが答える形で話題が切り替わる。

 凡そ半年前の情報を当意即妙に答えてみせた緑谷の『いつも通り』具合を尻目に、頷いた切島の見解は、先刻までの空気を反転させたような笑みを浮かべるラグドールにより明るく否定された。

 

 

 ヒーロービルボートチャート、その順位を決める主軸となるのは三つの要素。

 期間内の事件解決数、社会貢献度、そして国民の支持率である。

 

 そもそも活動できていなかった以上、前者二項目は自然当然の零評価。

 にも拘わらず万を超えるヒーローの中で、3桁順位に留まれたという異常事態。

 それ即ち最後の項目、チームに掛かった支持率が如実に表れた何よりの証拠で。

 

 

「支持率の項目が我々突出していた」

「待ってくれてる人がいる」

「立ち止まってなんかいられにゃい!!」

 

 

「そういう事かよ漢だワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」

 

 諸手を挙げ力強く宣言するラグドールに、傍らに立つ三人の顔にも影が落ちる気配は最早無く。

 眩しい『先達』の姿に漢泣きする切島を筆頭に、他の生徒達もまた直前の憂いを振り払うように笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

「……さて! その為にも解消するにゃん、心残り! 内緒話のお時間にゃよ、空翔キティ!」

「っ、ボクですか?」

「え? あ、そういえばさっきも……」

 

 仕切り直すように姿勢を戻したラグドールから、集団の中にいた空翔へと視線が飛ぶ。

 戸惑いと納得を見せた周囲の生徒達に頷いた後で、虚を突かれた様子で自身を指差した彼女を、招き猫さながらの手振りが誘い出した。

 

「ええ、どうも彼女の"個性"について合宿の時に伝えきれてなかったことがあるらしいの」

「些かデリケートな話になる故、詳細は我らにも秘密、だったな?」

 

「にゃ」

「……成程、分かりました。ちょっと行ってくるよ、皆」

「お、おう」

「いってらー」

 

 二言三言、言葉を交わし、場所を定めたらしく女子棟へと歩き出す二人。

 その行きがけに、ちらとラグドールから『目配せ』を送られた耳郎と障子(聴覚個性組)が、込められた意図を察して苦笑いと共に逆側へ寄っていった。

 

 

「……この後、B組にも行かなきゃだし、あんまり長話にならないようにね、ラグドール」

「にゃ」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───元気かにゃ? ()()()()()()()

 

 

 この学生寮にて生徒一人ひとりに一室ずつ与えられた部屋の一つ、空翔胡魄の部屋の中。

 遡ること数ヶ月前、二人目の最小限主義者(ミニマリスト)かよ、と軽い揶揄が為されたその場所に、二人。

 腰を下ろす間もなく掛けられた唐突な一言に、降りた沈黙は長いものではなかった。

 

 

「……ご存じでしょう?」

「にゃ」

 

 陶磁器の如くつるりとした無表情から、溢されたのは素気無い呟き。

 対して目の前の少女の、()()()()()()()()()に目を向けたラグドールが、淡々と言葉を紡ぐ。

 

 

「あの後、お葬式をしたことなら知ってるにゃん」

 

「今はもう『視えない』けど、一度『視た』モノを忘れるハズもないにゃんね」

 

「勿論、あれからも誰にも言ってない。その上で……もう一回聞くにゃんよ?」

 

 

 

()()()()()()? 御魂咲鳥ちゃん」

 

「…………()()()()見ての通りですので、どうか───お構いなく」

 

 

 

 音も無く、少女の身体が泡立つように蠢き出す。

 

 腕のあるべき場所、肩のあるべき場所から、沸き立ち、形を作るのは小鳥の輪郭(シルエット)

 

 薄墨のような笑みを()()()少女を、ラグドールは依然として気負いなく見つめ、呟く。

 

 

 

 

「───"個性"『割魂(さきみたま)』」

 

 

 

 

「……っ」

 

 訝しげに頬を歪めた少女に、「伝え損ねって言ったにゃん?」と返して、彼女は続けた。

 

 

 

「自らの魂を任意の配分で分割、知覚を共有する『分け身』を作成する」

 

「『分け身』の姿は()()()()()()()()()。その力については魂の配分次第にゃ」

 

「『割く』のが魂なだけに、あんまり大きく『分ける』と、それだけ本体に負荷が掛かるにゃん。()()()()()()()()()()()()()()だけど、無理は禁物にゃよ?」

 

 

 

「…………」

 

 それは正しく"個性"鍛錬を目的とした、あの合宿での『伝え損ね』。

 少女の纏う空気から、次第に険がとれていく様を視界に映し、尚も彼女はそれを口にする。

 

 

 

「最初の形が小鳥になったのは、そうイメージしたからにゃね。揺らがない想像力が必要なぶん、自由な形にするのは難しいにゃん。まずは一部を変形させる訓練から入るのがオススメにゃ」

 

「鍛えれば鍛えただけ『分け身』の数を増やせるはずにゃん。一体が出せる力の方は、ある程度のところで上限があるけど……ま、そこは普通に筋肉と同じような感じにゃ」

 

「特筆すべきは物体への干渉・非干渉を選べるところね。これは既に気付いてたみたいにゃけど、壁や床を抜けて行動させられるのは活躍の場を広げられる大きな長所にゃん」

 

 

 

 一区切り喋り終え、息を吐いたラグドールが少女の顔を見遣った。

 その真意を測るように見つめ返される視線を受け止め、今度は少しばかり重たげに口を開く。

 

 

「魂、だったから。……身体に残してた分より、ずっと多く外に出していたから、だろうね」

「……!」

 

「1%にも満たない魂が残ってた身体よりも、9()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の方が、いつの間にか()()()()()()()()。だからあなたは、こうして……()()()()()

「…………」

 

「だけど……あなたは本当に、それで良いの? これじゃあ───」

 

 

 

わたし(ボク)は」

 

 

 

 ラグドールの問い掛けを、少女の言葉が切り払う。

 大きく見張られた瞳に相対する表情に、迷いなど一分たりとも浮かべずに。

 

 

「約束したんです」

 

「絶対に……何があっても、諦めないって」

 

「だから、わたし(ボク)は……わたし(ボク)たちは」

 

 

 

 

「『ふたりでいっしょに、ヒーローになる』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───見たくないもの、汚いものも、この目で沢山見てきたにゃん」

 

「その過程でアチキも、ちょーっとだけ……公安と、関わったことがあってにゃ」

 

「……居なくなった保護者の代わり。アレって……うん、分かってる。何も言わにゃい。……もう何も『視え』ないし、見てない」

 

 

 

「…………『視』なくても良くなったこと、ほん~のちょっとだけ……なんてにゃ」

 





5% 95%

5% 94% 1%

5% 5% 5% 84% 1%





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※C1-5 まえがき

 今作のオリ主は

  ヒーロー向きな心根の人間を

 イメージしています。

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