前作でも書いた原作通りのシーンをどう描くか割と悩み中。
同じ文章は使いたくないけどカット多用してダイジェストみたいになるのもなんだかなあ。
「「「―――"個性"把握……テストォ!?」」」
「入学式は!? ガイダンスは!?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」
小汚い寝袋姿で現れた不審者───もとい、クラス担任教師、相澤消太。
教室で巻き起こりかけていた諍いも、また先ほど出てきた真っ当な問い掛けをも彼はにべもなく切り捨て、"自由な校風"を題目に独演は続く。
現時点での『最大限』を知るべく、中小学生から馴染み深い体力テストを"個性"有りで行う。
必然的に叩き出された
「―――よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
「最下位除籍って……! 入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても……理不尽過ぎる!!」
そんな抗議の声に返るは、そういう理不尽を覆していくのがヒーローだ、との答え。
雄英は今後も諸君らに苦難を与え続ける。『Plus Ultra』さ。乗り越えてこい、と校訓を交えた言葉で説明は締められた。
「さてデモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」
残されたのは、目の前に出された酷薄な試練に口元を引き締める生徒達。
自分が、はたまた隣の彼が、彼女が今日で姿を消すことに───そんな緊張に身を固める中で。
「あの、先生? 最下位除籍というのは……
『ピィ……?』
「……いや、流石に
「「「……えっ?」」」
女子生徒が差し出した手の平の上で小首を傾げる小鳥を前に、ポリポリと頭を掻く教師。
数秒前の重圧はどこへやら、どこか牧歌的ですらある様に、幾つもの気の抜けた声が重なった。
「え、待ってその小鳥……除籍って……テスト受けるの?」
「誰かのペットか、紛れ込んだ野鳥とかじゃなく?」
「彼女の"個性"関連の何かかと……」
「……そうだな。こればかりは先に説明した方が合理的か。……おい、空翔」
「ええ。……ピィちゃん?」
『ピッ!』
極一部を除き口々に戸惑いを示す生徒達を見渡し、相澤は一度溜息を吐く。
そうして彼が送る目配せに頷いた空翔が級友達に腕を向ければ、その手の上で心得たとばかりに片羽を上げる小鳥の姿が一同の目に映った。
「か……カワイイ!」
「めちゃくちゃ人に慣れてる……ってワケでもないんですよね? 流れ的に」
「まァ……色々省いて一言に纏めれば、コイツも諸君らのクラスメイトだ」
「「「……へっ?」」」
『ピィ♪』
簡潔過ぎる説明に瞠目する生徒達に「
つい先日入試の映像を前に教師陣の間で行われた議論の内容を掻い摘みつつ……今年の1年A組が変則的な21人
「───本人が学校来れねーから、代わりに"個性"が……」
「そんなこともあるのね……」
「"個性"の持ち主から遠く離れつつ五感を伝達できる"個性"? しかも見た目が完全に普通の小鳥と変わらないだなんてすごいな諜報や偵察に物凄く向いてる"個性"じゃないか。おまけにあの実技試験で仮想敵を倒せるぐらいには力もあるとくれば普通の鳥と見せかけて不意打ちすることだって出来るし対策になるのは普通の小鳥でも警戒して近寄らせないことだけどそんなことしてたら何か後ろめたいことがありますって思いっきり周りに喧伝するようなものだしそんなヒーローが居るって情報だけでその地域のヴィランは活動しにくくなるぞ。問題はあの小鳥が攻撃を受けた場合に本人がどうなるかだけど体当たりで戦って問題無いぐらいなら衝撃のフィードバックに関しては殆どあるいは全く無いタイプなんだろうしそれだけでもめちゃくちゃ有用な───」
「ンの不気味なブツブツやめねーか、デクぁ!! 鬱陶しいんだよッ!!」
「……今回ばっかりはちょっと同意したわ」
「大人しく見えて唐突にスイッチ入るタイプなのね」
「……そういうわけで御魂については流石に別枠だ。だが当然お前に関して忖度は無いぞ、空翔。見込み無しと判断すれば容赦無く除籍にするから肝に銘じておけ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『───3秒04!』
計測第一種目、50メートル走。
そこでたった今、高校1年男子平均を彼方に突き放す記録を叩き出したは、両脚ふくらはぎから重厚なエンジン音を鳴らす男子生徒、飯田天哉。
まさに『水を得た魚』とばかりの大記録、されど『競う相手』として認識せざるを得なくなった級友達から先のような歓声は上がらず。
『───5秒58!』
「ケロ……」
彼に遅れること約二秒。並走した女子生徒、蛙吹梅雨が感情を読ませない呟きを溢す。
比較対象が対象だけに地味に見えるが、しかしこちらも女子平均に大きく水をあけた大記録。
それから先も次々と、各々の"個性"を様々に活用する姿が披露されていた傍らで。
(う、ウエェェイ、どーすりゃ良いんだ、俺……?)
順番待ちの列に紛れて並ぶ彼───上鳴電気は眼前の受難に人知れず頬を引きつらせていた。
彼が生まれ持った"個性"『帯電』。
その名の通り身体に電気を纏わせた状態で活動可能な他、高出力の放電や電流の誘導、蓄電をも可能にする、自他共に認められた強"個性"。
(握力計に放電……壊しちまうだけよな? 立ち幅、ボール投げ……どれも全然関係ねえぞ!?)
しかして彼は迫る出番と、この先に予定される各計測種目を頭に浮かべて思い悩む。
ヒーローとしては勿論、様々に活用される電気系"個性"……それが生かせる種目が果たしてこの体力テストに存在しただろうか、と。
(……やっべぇ、何も思いつかねえ……けど、初日で除籍とか冗談じゃねえし……つかあの先生、マジで除籍すんの? ウソだろ? いやでもあの目は絶対マジのやつだったし───)
「んー……どうしようかな?」
『ピィィ……』
「……っ! 空翔、だったよな? 何か考え事か?」
そんな重い思考に沈んでいた筈の上鳴の耳に、すぐ隣から悩ましげな呟きが滑り込む。
瞬間、自身の憂いも忘れたかのように、彼の口は相手を慮る言葉を躍り出させていた。
その迷いの無さは彼の心根に深く根差した善性故か……はたまたそれが女子の声だったが故に、健全な男子高校生たる彼の脳が何らかの忖度を働かせたのか。真実は本人にも分からない。
「……ん? ああ、各種目に"個性"をどう使おうかなって、ちょっとね」
「っ、だよな! だよなあ!? 今まで思いっきり使える機会なんてあんま無かったし、いきなり上手い使い方考えろって言われても難しいよな!?」
「あはは……まあね。えっと……」
「……あ、ワリ。俺、上鳴電気。よろしくな!」
やや強張った相手の表情に、名乗りが前後してしまったと苦笑いしつつ彼は答える。
毒気を感じさせないその態度が功を奏したか、彼女もまた少なからず相好を崩した。
(───教室じゃアレだったけど、話してみりゃ割と普通……ていうか相手のせいだよな、あれ。そもそも女の子に『白髪』はねーだろ、『白髪』は)
灰色よりは白に近い銀髪にチラリと視線を向けつつ、垣間見た憤怒に満ちる姿と眼前の女子とを脳裏で比較し、上鳴は心中で頷きを落とす。
同時に視界の端に映った
「俺もさ、入試ん時みたいなヴィラン相手ならともかく体力テストにどう"個性"使ったら良いのか分かんねえんだよ。空翔もそういう感じか?」
「あ、いや、ボクの場合は
「……えっ?」
が、しかし。
親切心と仲間意識と他諸々を込めた優越感を、彼が抱けていたのはごく数秒。
「え、あ、じゃあ…………普通に記録出せる系?」
「まあ……うん」
言外に『的外れ』との宣告をした空翔の顔が、僅かの沈黙を経て気まずげに逸らされる。
また、テスト向きではない"個性"だと自己申告した彼への視線も、少なからず注がれており。
「その…………頑張って?」
「励ましが雑い!?」
「ああ、えっと、じゃあ……並走、しよっか? もう残りはボク達だけみたいだし……」
「気遣いが痛い! けどお願いしやぁっす!!」
『ピィ!』
「あ、ピィちゃんも一緒で良いかな?」
「好きにしちゃってください!!」
斯くして最終組となった二人と一匹、もとい
そこに
前作では出席番号順に走らせたけど、改めて原作読み返すと飯田蛙吹麗日の後に青山芦戸の順で走ってるし、そんなにガッチリ順番決められてたわけではなかった可能性。
原作における上鳴くんの体力テスト順位は16位。
これより下位の男子は峰田・緑谷のみであることを見るに、やはり素の身体能力で挑んだ気配。
彼や葉隠さん辺りは体力テストに活かせる"個性"の使い方があんまり思い浮かばないですよね。
今回参考にしたのは、よく部屋飼いされるセキセイインコの巡航速度、時速約30km。
50m走タイムにすれば約6.2秒。対して令和4年高1男子上位2%のタイムが6.22秒とのこと。
……上鳴くんがガチアスリート系男子だったらワンチャン勝てたかな?