今作のオリ主はヒーロー向きな心根の人間をイメージしています。
……まあ、言うて15歳の女の子なんで多少はね?
「───540キロて!! あんたゴリラ!? タコか!!」
「タコって……エロイよね」
「……ふっ!」
「うおっ! 80キロ!? 女子の記録とは思えね……って、オイなんか身体透けてねーか!?」
「はは……ちょっと腕に配分集中させたからね。すぐ戻るから心配いらな……どうかした?」
「……あんた、実は幽霊とかじゃないよね?」
「先生、立ち幅跳びと言われても、ボク達飛べるんですけど……」
『ピィ』
「……滞空時間に制限は?」
「無いです」
『ピッ』
「じゃ、記録
「「「
「セイ!!」
(((…………ボール落ちてこねえ)))
「……
「「「またしても!?」」」
恙無く進んでいた体力テスト。事が起きたのは第五種目、ソフトボール投げの進行中。
計測種目も折り返しを過ぎ、しかし未だに抜きん出た記録の無い生徒───最下位、除籍という言葉が一同の意識に否が応にも上り始めた頃であった。
「緑谷くんはこのままだとマズいぞ……?」
「ったりめーだ! "無個性"のザコだぞ!」
───緑谷出久。
これまでの種目の中で、その身に有る筈の『超常』を振るう素振りは無く、されど時が経つ毎に焦燥ばかりを表情に浮かべていた
そんな彼が決意に満ちた眼差しで一投目を放った時、これまで沈黙を保っていた
凡庸極まる結果に呆然とする緑谷と、冷めた眼差しを向ける相澤───視線により他者の"個性"発動を封じる"個性"、『抹消』を持つヒーロー、『イレイザーヘッド』とのやり取りにより、他の生徒達にも朧気ながら事態の輪郭は見え始めていた。
たった一度の行使で行動不能に陥る"個性"───それが緑谷が見せていた焦りの正体なのだと。
「先生……! まだ……動けます」
「こいつ……!」
結論のみを見れば、彼はこの土壇場で
今は互いに除籍を逃れるべく競い合う相手だとしても、それはそれ。
苦難を撥ね退け爽快な記録を叩き出した彼に、少なくない生徒が快哉の意を示した。
「───どーいうことだこらワケを言えデクてめえ!!」
「うわああ!!!」
それだけに、怒気に満ちた表情で緑谷に吶喊せんとした彼───爆豪勝己の姿は異様に映った。
彼の手からは攻撃性の高い彼の"個性"、『爆破』を使う素振りまで見えたのだから尚更である。
「ちょっ、と! 待ちなよ! 何をそんなに猛ってるんだい?」
「ッ、てめ、邪魔すんじゃねえ! 今すぐコイツにハッキリさせなきゃなんねぇ事があんだよ!」
蛮行……の予兆と見えたソレを押し留めたのは、白……銀髪の女子生徒、空翔胡魄。
偶々彼らの間に立っていた───否、教室の一件も合わせ、粗野な言動を度々見せていた爆豪に多少なり気を向けていた事が繋がったか、誰より早くその腕を掴む形で制止に至っていた。
「ならまずそれを言葉にしなよ。何でいきなり暴力に走ろうとしてるんだい」
「~~っ! アイツは"無個性"のザコだったんだよ! "個性"の発現はもれなく四歳までだぞ! ありえねぇだろうが!」
「……ザコ呼ばわりはともかく、"個性"に関してはそうとも限らないだろう?」
やたら棘のある発言を諫めつつ、肩に乗る小鳥にチラと視線を向けて曰く。
「発現はそうでも、
『ピッ!』
「ッ! …………」
「本人も周囲も……"無個性"だと思っていて、だけど必要な条件が揃うまで発覚してなかった……彼もそういうタイプだったってだけじゃないのかい?」
「……っなわけ……! デクは……!」
掴まれた腕はそのまま、されど思うところはあったか、掌に飛び散る火花が勢いを失っていく。
それでも眼光鋭く睨み返して来る彼に、空翔はやや呆れ混じりの声音で言葉を続けた。
「……というかさっきから気になってたんだけどキミ、やけに彼に対して当たりが強くないかい? どうやら元から知り合い同士のようだけど、いったいどういう関係───」
「ッ、うるっせェ!! いいから離せや『白髪』ッ!!」
「あ゛?」
『ピ?』
「沸点が低い!?」
「絶妙に仲立ちに向いてねえな!?」
「止めに入ってくれたのは有難いんだけども!?」
「…………時間がもったいない。次準備しろ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「―――今日の内容は、大体こんなところ」
「うん、初日から波乱万丈過ぎない?」
其処は学び舎から遠く離れた病室。
白髪の少女から語られた濃密過ぎる『入学初日』に、知れず遠い目になる女性看護師。
「流石は最高峰……で良いの? 教師まで破天荒というかなんというか……」
「ん……でも、あの先生の言いたい事……私達に教えたかった事は、分かる気がする」
「えっ?」
しかして病床にある彼女───御魂咲鳥は、看護師の言葉に緩く首を振る。
「理不尽を乗り越えるのがヒーロー……その通りだと、私も思う」
「……っ」
己の"個性"を通して見聞きした教師の言葉を引き合いに。
自身の身体、手足、どこか遠くへと視線を飛ばして、ただ静かに。
「世界は、理不尽なものだから」
見る影もなく色味の消えた、
身動ぎ一つ、腕の振り上げ一つに息の切れる身体を見下ろして。
無窮の『理不尽』を今以て呑み下さんと抗い続ける少女は、瞬きを一つ。
「……まあ、結局最下位除籍は私達生徒から最大限を引き出す合理的虚偽だった、らしいけど」
「…………それもそれでどうなの……教師として、とか……」
空気を変えてくれた
そうして「あっ」と声を上げた彼女は、話の中で関心の向いた事物を話題に挙げた。
「結局、その……緑谷くん、だった? 彼の"個性"についてはその後で聞いたの?」
「? まあ……大体予想通りの答え、だった。ギリギリにでも"個性"に耐えられるまで、本能的に身体が抑えてたんじゃないかって……」
「そうよねえ。たった一度の発動で指が紫色に腫れあがるって……高校生になった今でもそんなになるのに、四歳の時に発動しちゃってたら大惨事よね」
「……気になるの?」
「そりゃ、これでも医療従事者ですから?」
ややおどけた様子で宣う看護師に、表情の変化は薄くも興味が向いたように視線を上げる少女。
その変化に少し得意気な様子を見せつつ……一転、彼女は声を潜めて呟いた。
「……幾ら雄英には『リカバリーガール』が……国内最高峰の治癒系"個性"の使い手が常駐してるからって言われても、そんな風に身を削りながらヒーローになろうとしてる子がいるって聞かされたら……医療に携わる人間としては複雑なのよ」
「…………」
「そこまでして……今ある健康な体を危険に晒してまでヒーローにならなきゃいけないのかって。選んだのはその子自身なわけだし、赤の他人が口出すようなことじゃないんだけど───」
「私達と同じ、なのかも」
看護師の言葉を遮り、少女は囁く。
「こんな"個性"があるから、こんな身体だから、じゃないの」
「
「私達は、約束。二人で、だから……」
「
「…………そ、そっかぁ」
瞳をギラギラと輝かせる少女に、関わって何度目かになる畏怖に身を竦めて。
再び静寂を強いる空気に包まれた彼女は、今度こそ無心で仕事の手を進めることを選ぶ。
定期の検温、点滴の確認、他諸々。
ここ数年は大きく数値を変えた覚えのないそれらを、彼女は機械的に進め―――
「……あ、でも、その意見は分かる」
「っ、え……っ?」
心なしか声から力を緩めた呼びかけが、突如として少女の口から放たれた。
動揺に手を揺らした彼女に掛けられたのは、「携帯を取ってください」という普段通りの一言。
「……誰かに、自分と同じような目に遭って欲しいなんて、私は思わないから」
いつしか、当人から意思の半分も受け取らなくなった四肢。
渡された携帯電話をその内一つに握って、一拍。
「彼を……緑谷くんの事、気に掛けるように……胡魄ちゃんに頼んでおくね」
飛べる"個性"持ちなら立ち幅跳びは∞だよね(前作ネタ)。
初期案段階ではやたら冷めた性格のオリキャラが出来てしまい、原作キャラに絡んでくれないぞこの子、と頭を悩ませたりもしてました。
そこで採用したのが第一話から何度か描いた原作キャラ視点に近い三人称。
これなら画面に入れる=原作キャラと絡む、になって自然に肉付けできるかなと思いました。
……でもなんか予想外の立ち位置を形成し始めてる気がします。なんでや。