・前話没案
「世○樹Ⅱのブシドーみたいだね」
「うん、参考にしてるんだ」
二行。
これを一話分の文章量にまで膨らませてくれた峰田くんよ。
「───よし、これでそう簡単に核には近付けねえし触れねえはずだぜ」
「おう、おつかれ! サンキューな、瀬呂!」
ビルの一室、ヒーロー側の目標となる核のハリボテ前のヴィランチーム。
訓練開始までの五分間を使って彼らが行ったのは、"個性"を活用した徹底防御の構築だった。
部屋の隅に置いた核の周囲に、蜘蛛の巣の如く『貼り』巡らせた『テープ』の壁。
目標に向けて飛び込めば、或いは踏み込んでしまえば、忽ち見た目以上に粘着力を持つそれらに絡めとられ、行動不能に陥るは必然。
ヒーローチームが核確保による勝利を狙うのならば、先に何らかの手段でこれらを取り除くより他は無いだろう。
「コレを越えて核に触ろうってんなら当然俺らが邪魔をする。これでどっちみち俺らとバトるのは避けらんねえって寸法だな」
「正面対決ってわけだな! それこそ望むとこだぜ!」
「……つっても『テープ』の容量的にだいぶギリギリだかんなー。向こうが攻めてきたらそん時は頼りにさせてもらうぜ、切島」
「おうよ! 任せとけ! 守りなら俺の本領だ!!」
"個性"の全力使用による疲労感から、『テープ』の隙間から覗く核を気怠げに見上げる瀬呂に、こちらも"個性"で『硬化』させた拳を打ち鳴らしつつ、気炎万丈応答する切島。
「……後はあっちチームがどう攻めて来るかだなー。二戦目の轟みてぇに建物丸ごと制圧! とか出来る"個性"じゃねーハズだけど」
「設置にも結構時間かかったしな。そろそろ乗り込んできてもおかしくは───」
「あら、見つかっちゃったわ」
「……切島ァ! 窓だ!!」
「は? ……うおぉっ!?」
「ケロっ」
瀬呂が
部屋唯一の入り口───と認識していた扉を注視していた切島に対し、彼は自ら作り上げた罠に不足が無いかと視線を巡らせており、そこで僅かながら『窓の外』も視界の隅を掠めていたのだ。
そんな彼の咄嗟の叫びに振り向いた切島を、
ギリギリのところで防御こそ間に合ったものの、踏ん張りを利かせられなかった彼は盛大に弾き飛ばされ、めり込む勢いで壁に背をついた。
「……っ、ビルの外壁伝って来たのか!? 凄ぇな、蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで。ケロケロ」
「~ッ、効いたぜ! やるじゃねえか、梅雨ちゃん!!」
ベロリと舌を伸ばし、ケロケロと笑う蛙吹に、崩された体勢を立て直しつつ好戦的に笑う切島。
一方の瀬呂は、今しがた目の当たりにした彼女の機動性を脳裏に、残りの『テープ』で果たして捕えられるだろうかと、やや諦め気味に"個性"の射出部である腕を構える。
「……今の一撃もやっべぇなあ……切島じゃなくて俺狙ってたら倒せたんじゃね?」
「ケロ。初めはそのつもりだったけど、軌道上に『テープ』があったの。どのぐらいの粘着力かも分からないし、剥がせなかったらそのまま捕えられちゃうもの」
「うっわマジか九死に一生……」
瀬呂の問い掛けに答えつつ、次なる一撃の為か軽やかなひと跳ねで部屋の柱に張り付く蛙吹。
成程、こうして窓の外から入って来たのかと、二人は彼女を見上げながら納得する。
「それに、不意打ちで切島ちゃんを倒せたならその方が……そう上手くは行かなかったけどね」
「ああ! そう簡単に俺は倒れねぇぜ!!」
「……ま、驚いたけど結果的には予定通りの構図になったしな。さて、こっからが本番───」
『───ヒーローチーム……
「「…………へっ?」」
「ケロケロっ」
いざ此処からと意気込んだその瞬間、突如として耳朶を叩いた決着の号令。
聞こえたソレが信じられずに硬直する二人に対し、向けられた朗らかな笑みは、それが彼女にとって
「……いやあ、ゴメンよ」
尚も呆然とする男子達の耳に入ったのは、ヒーローチーム側にいた
いったい何処から、と視線を彷徨わせること十数秒。彼らが見付けた彼女の居場所は、幾重にも備えた筈の『テープ』の内側。
言葉は苦笑気味に、されどしっかりと核のハリボテに添えられている色白の手。
続けて目に入るは───
「ルール的に有利過ぎたね……ボクの"個性"」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「───私は跳躍と、壁に張りつけるのと、舌を伸ばせるわ。最長で20m程ね。ビルの中みたいな閉所でなら、ある程度三次元機動も可能よ。あとは胃袋を……これはあまり関係なさそうかしら? とにかく蛙っぽいことが色々出来るわ。一番"個性"が活きるのは水場の活動なのだけどね」
「成程……ボクの方は、まず飛べる。速度は先日見せた通りだね。少しは力も出せるけど瞬間的なもので、使った後は機動力とか諸々ちょっと落ちる……緑谷くんみたいになったりはしないけど。後は……少しだけど身体の形を変えられるよ」
それは訓練開始の五分前、潜入を控えたヒーローチーム。
ビル前に立った二人が真っ先に行ったのは、互いが持つ『手札』の確認だった。
「……形を変える?」
「うん、こんな感じにね」
そう言って差し出された空翔の白い手が、突如
瞬間、カメラの向こうで数名が上げた悲鳴は聞こえるはずもなかったが……表情の変化が非常に乏しい彼女───蛙吹梅雨もまた丸い瞳を更に見開き、一度だけビクリと身体を震わせた。
「……開始まで時間も無いし悪いとは思うのだけど……どういう"個性"か聞いても良いかしら?」
「あー……個性届は『魄化』で出してあるよ。イメージは難しいと思うけど……やたらと大きくてハッキリ見える人魂、みたいなものだと捉えてくれるかな」
「人魂……」
言われた蛙吹が頭に思い浮かべたのは、墓場に浮かんだ青白い火の玉、あるいは糸に吊るされたお化け屋敷の大道具。
そうして改めて目を向ければ成程、この変形した腕は創作に描かれる幽霊の『脚部』のようだと彼女は思い至る。
「変形させた部分は実体と非実体の合いの子みたいになってて……ボクにも説明し辛いんだけど、『魄』を身体の一部に集中させて瞬間的に力を上げたり、非実体状態で物体を通り抜けることも出来たりするよ。……服はそうもいかないけどね」
「……それでそんなに露出の多いコスチュームだったのね」
「うん……でも全裸になる前提なら壁抜けも……覚悟が足りなかったかなあ……」
「…………透ちゃんは参考にしない方が良いと思うわ」
"個性"のおかげで『見えない』から大丈夫だと、
僅かの沈黙の後、今は時が迫っているからと、二人はどちらからともなく頷き合った。
「結局、お互い索敵は不得手ってことだね。どうする? 二人とも戦闘可能な"個性"ってことなら時間内に核を見付けることを重視して別れて行動するか、ヴィランチームが遊撃に出てくることを考えて迎撃に重きを置くかを選べるんじゃないかと思うんだけど」
「……そうね、どちらも有りだと思うわ。でも、あの二人の性格と"個性"を考えるなら───」
「───二人とも核の前に固まって防衛に構えていると予想したの。そこで胡魄ちゃんの"個性"で壁や天井越しに部屋の中を覗いていって場所を特定、見付けた部屋に私だけで乗り込んで、二人の意識を核や床から離した隙に、
「ちょっとヒドイかなと思いはしたんだけど……卑怯だ何だと言われるような場じゃないからね。ヒーローなら何を置いても目的を果たさなきゃだし」
「……まあ、そうだよな。正面切って戦ってくれるヴィランの方が少ないだろうし……」
「入ってきたのが一人ってんなら、もう一人の動向をしっかり考えるべきだったか……」
「……でも壁や床から顔だけ出して部屋覗いていくの、部屋側カメラだと割とホラーだったよな」
「特に切島の足元から空翔の顔が出てきた瞬間な。……二人とも気付いてなかったけど」
「「マジかよ!?」」
「ああ……後さ、空翔? あん時、多分だけど『
「え? あ、うん、核をね、見付けたって……声は出してないよ?」
「イヤ怖えよ!? 足元でソレは!!」
「安心しろよ、切島。モニター組もだいぶ悲鳴上げてたから」
「ケロ……」
『ピィ……』
「……なんかゴメンよ」
「オールマイト先生ぇ……今日の授業って、録画はされてるんすか……?」
「ム? ああ、勿論だが……」
「なら後で見返すことって出来ますよね……? 今日の反省と、今後の、参考の為に……!」
「フム、おそらく大丈夫だろう。向上心に溢れているようで何よりだ、峰田少年!」
「…………ヒーロー科、最高……!」
一般的なビルの床厚+天井厚は凡そ50cm。
日本人の頭部の平均長は22~23cm。
さて、そこから
また『幽霊(?)』書いてるよ
原作で判明している三戦目以降のペアは、
峰田・八百万、上鳴・耳郎、口田・砂藤、芦戸・青山、瀬呂・切島、常闇・蛙吹。
後の展開の為に梅雨ちゃんと組ませたかったんだ。ごめんね常闇くん。
この中で核を守っている描写からヴィランチームと判断出来るのが瀬呂切島組。
逆に探索に出ているらしきコマから、上鳴耳郎、芦戸青山、常闇蛙吹の三組はヒーローチームと推測できます。前作ではシレッとヴィランチームにしたけど。
スピンオフ等々の媒体で組み合わせも描写されているのかもしれませんが、作者は単行本以外は基本未履修ですので……