異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第98話 パクリ

 マジでぶっ殺したいと思ったのは、生まれて二度目かもしれねえ。

 

「いや~、すごいな~。空を飛んでいけるなんてね~」

「ああ、すごいな。これなら、帝国までひとっ飛びだ」

「やるでござるな」

「ああ、クソ見直した」

 

 俺たちは今、空を移動している。

 まともに陸路を行けばどんなに急いでも帝国まで数日はかかる。

 だが、空を飛んでこの速度ならかなり早くに辿り着く。

 見渡す限りの山々や森や大平原すら地上の景色としてすぐに変わる。

 俺たちはこの広い大空を、雲を突き抜けてまっすぐ進路を帝国へと向けていた。

 だが、空と違って、今の俺の心はまったく晴れていない。

 

「兄さ~ん、マジすんませんっす! オイラ、まさか……巨大化できるなんて知らなかったんす!」

 

 俺たちは、巨大なドラゴンの背に乗っていた。

 そのドラゴンとは、クレランが生み出したドラゴンではない。

 陸路じゃ時間かかると気づいた俺は、ふざけて「よし、ドラ、巨大化して俺たちを背中に乗せろ」と冗談のつもりで言ったのに、こいつは「あっ、分かったっす」とかホザいて、本当に巨大化しやがった。

 

「テメェ、この野郎ッ! デカくなれるんだったら、最初にクレランに食われそうになったとき、デカくなりゃ良かったじゃねえかよ!」

「うわあああああん、ほんとすんませんす! なんか出来ちゃったんすよ~!」

「ざけんじゃねえ! 俺が、俺がどんだけお前を助けるためにクレランと戦ったと思ってるんだよ! 骨なんか滅茶苦茶に折れまくったんだぞ! 正に文字通りの骨折り損じゃねえか!」

「あっ、兄さん、うまいっす!」

「あ゛あ゛? テメェ、俺のふわふわ時間で地獄見せてやろうか?」

「いやああああ、勘弁してくださいっす!」

 

 泣きながら飛行する巨大ドラだが、まさか巨大化できるとは思わなかった。

 もはや、誰もが呆れて物も言えねえぐらいの衝撃だった。

 

 

「でも、冗談抜きでドラちゃんはすごいわよ。これって、単純に巨大化したんじゃない。『無』から、それとも空気中に存在する物からなのかは分からないけど、体が大きくなったっていうより、体を作り出したって表現の方が正しいわ」

 

「だろうな。何もないところから鋼鉄を生み出すことのできる生物。そんなもんが存在すれば、鉄屋もクソ商売上がったりだ」

 

「まあ、もともとドラはよくわからん生物だからな。カラクリドラゴンとは奥が深い」

 

「うむ。そして、ドラを生み出したご主人様という者は、やはり只者ではないようでござるな」

 

 

 あのさー、お前ら、マジメに分析すんなよな。俺がどんだけこいつを助けるのに苦労したと思ってやがる。

 つーか、俺の方が常識人なのか? 

 ほら、エリートのチェットが完全にポカンと口あけて固まってるよ。

 

「おい、チェット、大丈夫か?」

「あ、あのあのあのあのあのあのあのあの、ヴェヴェヴェヴェ、ヴェルトくん、きききき君に何があったんだい?」

「いや、その、まー、色々だ」

「ファルガ王子はまだいいし、ウラさんは昔一度だけ会ったことがあるからいいよ? でもさ、何であの有名なモンスターマスター・クレランに、今、帝国でも噂になっている亜人の特殊戦闘部隊のシンセン組の亜人に、伝説のカラクリドラゴンまで一緒に居るの?」

「ま~、もう考えるだけアホらしいからやめようぜ。それより、話を変えようぜ」

 

 何があった? か。まあ、話せば長くなるし、むしろ何があったかよりも、何でこうなった感の方が俺には疑問だった。

 それよりも、問題なのは今、何が起きてるかだ。

 

「なあ、チェット。ラブ・アンド・マニーが、マカーイ魔王国を手引きしたってどういうことだ? あいつら、人間なんだろ?」

 

 こんな形でまた、ラブ・アンド・マニーの名前を聞くとは思わなかった。

 正直、宮本の話を聞いてから、加賀美とは関わる気なんてなかった。

 だが、この様子だと、いつまでもシカトで通せる状況じゃ無さそうだった。

 

「それは……実は、本当によく分からないんだ。ただ、急報によると、『ラブ・アンド・マニー』のボスである、『マッキーラビット』が、サイクロプス族の王子と共に帝国の港街を強襲して壊滅させたという情報が……」

 

 いやいやいやいやいやいやいや、ちょっと待て。

 

「待て待て待て待て待て待て。なんだ、そのフザけた名前は……」

「えっ、名前って?」

「ラブ・アンド・マニーのボスの名前だよ! なんだよ、そのふざけた名前は!」

「あ、ああ、そうか、ヴェルトくんは知らないよね。ラブ・アンド・マニーっていうのは、シロム国の競売組織なんだけど、色々と裏で怪しい動きを見せていたから、帝国にもマークされていたんだ」

「いや、そんなのより、問題はマッキーラビットだよ。何だよそのどこかのテーマパークのキャラみてーな名前は……」

「テーマパーク? えっと、それは、謎に包まれていたラブ・アンド・マニーのボスの名前で…………」

「いや、教えておいてやるけど、その名前は百パー偽名だぞ。多分、お前らはからかわれてんだよ」

「えっ、なんで、ヴェルトくんに分かるの!」

 

 分かるというか、知ってるというか、あれだろ? 懐かしいな。  

 マッキーラビットって、デートスポットのキャラにあったやつだ?

 いくら異世界とはいえ、偶然では片付けられない名前だ。

 だが、それだけで相手の心が読み取れる。

 

「多分、大した理由もねえだろうな。恐らく、ふざけてんだよ、そのマッキーさんは」

「ふざけて……何を言ってるの、ヴェルトくん! ふざけて魔族を連れてきて帝国を強襲するなんて考えられないよ!」

「そうだな。普通ならな。だが、普通じゃねーんだろ、多分な」

 

 俺は、正直『あの男』とはそれほど親しかったわけじゃねえ。

 だが、それでもあの男が軽口のチャラ男だったというのは覚えている。

 鮫島はあの男のことを友達思いだったと言ってるが、本当だったかどうかはもはや微妙だ。

 少なくともあの男は、ギャグの名前でこの世界を生きて、競売もテロも道楽感覚でやってるんじゃねえのか?

 

「宮本があの男は変わったって言ってたが……変な変わり方をしたんじゃねえのか?」

 

 だが、正直、テロとか競売とか、道楽感覚で出来るようになるもんなんだろうか?

 一体どれほどの人生を歩めばそんな領域になる?

 それは俺には分からねえ。

 

「……ん? な、なに?!」

 

 だが、加賀美が道楽感覚でこの世界を滅茶苦茶にしようとしていることだけは、すぐに知ることになった。

 それは…………

 

「ヴェルト! ちょっと見てみろ!」

「殿ォ! 上を!」

 

 上? いきなりなんだ? てか、空を飛んでる俺たちの上って、他に何が……

 

「えっ、は?」

 

 そう思ったとき、まだ昼頃だというのに、世界が一瞬薄暗くなったように感じた。

 暗いというより、陽の光が弱まったというべきだろうか?

 一体何が? そう思って上を見上げると、燦々と輝いているはずの太陽に異変が起こっていた。

 

「クソが。どうなってやがる?」

「ええ? 太陽が、鏡みたいに?」

 

 太陽の表面がガラス張りのようになっているように見えた。

 普段は肉眼で直視できないのに、この瞬間だけは太陽の形をくっきりと見ることができた。

 これは一体? そう思ったとき、鏡になった太陽から? いや、この世界中の至るところから軽快な音楽が流れだした。

 

 

――――チャンチャーチャン♪ チャンチャーチャン♪ チャンチャーチャン♪

 

 

 シンバルや太鼓やラッパなど、なんか鼓笛隊が演奏しているような音楽が流れ…………

 

 

『はい、良い子のみんな~、おっはよーございまーす! さあ、今日も元気よく、マッキーマーチの始まりだよ~♪』

 

 

 完全に人を小馬鹿にしたような歌が聞こえてきた。

 そして、ガラス張りになった太陽に、影が映し出された。

 その影は…………

 

「な、なんだアレは!」

「か、かわい…………ッ、ごほん、なんとけしからん格好でござる!」

「クソ馬鹿にしたような奴だ」

「あれって、……着ぐるみ? しかも、マッキーって……」

「あれは、伝説のマジックアイテム! 月や太陽を媒体にして映像や音声を伝える、『サークルミラー』だよ!」

「で、伝説のマジックアイテムを、なんちゅう使い方してんだよ、あのバカは」

 

 太陽に、ウサギの着ぐるみを来た謎のキャラクターが歌と踊りを披露していた。

 さすがにこれは戸惑う。

 だが、俺はそれよりも何よりも、真っ先に思ったのはこれだ。

 

「つーか、パクリじゃねーか!」

 

 だが、それでも軽快な音楽は鳴り止まなかった。

 つーか、恐らく世界中がキョトン顔だろうけど、とりあえずその歌と音楽はフルコーラスだった。

 そして、数分後。音楽が鳴りやんだと思ったら、いきなり着ぐるみ野郎は両手を広げて自己紹介始めやがった。

 

『みんなー、よろしくねー! 俺は、夢の国からやって来た、良い子の友達、そしてラブ・アンド・マニー社長のマッキーラビットだよ!』

 

 ハッキリ言って、世界中が思っただろう。「………………ハッ?」って。

 だが、呆れるのはまだまだこれからだった。

 

『マッキー、待ってよー』

『あっ、遅いじゃん遅いじゃん、マニー。さっ、自己紹介して!』

 

 なんか、もう一匹、デカイウサギの頭の着ぐるみをかぶった奴が出てきた。

 マッキーとの違いは、頭にデカイピンクのリボンをつけているところ。

 

『こんにちは~、私が、ラブ・アンド・マニーの副社長の、マニーラビットだよ!』

 

 可愛らしく、スカートの両端の裾をちょこんと摘んで挨拶をする、マニー。

 ………………ハッ?

 

『もー、マニーマジ可愛いし~、つうか、マジパねー』

『マッキーもカッコイイよ~、うん、パな~い』

『マジで、マジで? つうか、俺たち最高じゃん! うん、マジアゲアゲじゃん!』

 

 チャ……………チャレえ…………

 

『それより~、マニ~、今日はみんなに重大発表があるんじゃね?』

『あっ、うんうん! そうだよ~、今日は、世界中の友達に教えることがあるんだよね!』

『そう、なんと俺たち!』

『私たちは!』

『『今日、アークライン帝国を滅ぼしまーす!』』

 

―――パフパフパフー♪

 

 

「つか………………パ、パネエなあいつら!」

 

 

 もう、色々と予想外過ぎて、ツッこむのもスゲーアホらしくなってきた。

 

 

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