異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第123話 前言撤回

 狂気のような雰囲気を漂わせて詰め寄ってくる綾瀬。

 その禍々しさに偽りは通用しない……というか、圧されて思わず俺は言ってしまった。

 

「なんだよ……神乃にまだ未練があって、わ、悪いかよ」

「悪いに決まってるわ!」

 

 秒でぶん殴られて、俺はベンチを飛び越えてぶっ飛ばされた。

 

「な、何しやがる!」

「ちょっと、どういうことよ、朝倉くん! 君はフォルナの恋人なんでしょ?」

「あ~、もう、それは説明するのもめんどくさい理由が色々色々あってだな……」

「あのねえ、君はヴェルト・ジーハでしょ! もう、朝倉リューマの過去と決別してるんじゃないの? なんで、まだ美奈のことを想ってるのよ!」

「決別とか勝手なこと言ってんじゃねえよ! 大体、俺が今、旅しているのだっ……て……」

 

 あっ……なんか、これ言われるとまた怒られる気がした。

 いや、俺の人生なんだから綾瀬には関係ねえし、怒られる筋合いもないんだが、俺は反射的に言葉を止めてしまった。

 だが、それだけで綾瀬は全てを悟ったようだ。

 ジト目から、スゲー氷のように冷え切った目で俺を見下ろしていた。

 

 

「そういえば、戦争に参加しないでエルファーシア王国に住んでいるはずの君が、どうして帝国に助っ人に来れたの? 普通に一ヶ月ぐらいかかる距離なのに」

 

「そ、それは……旅でたまたま近くまで居て……」

 

「旅? そもそも何のための旅? ……ねえ? 朝倉くん」

 

 

 その瞬間、綾瀬は氷のような冷たい表情から、もの凄い威圧感のこもったニコニコ顔で小首を傾げた。

 

 

「うふふふ、まさか、朝倉くん。ま・さ・か、この世界のどこかに美奈が居るかもしれないと思って……美奈を探す旅をしていたんじゃないでしょうね?」

 

 

 すげーな、こいつ。やっぱ、フォルナと並んで称えられるだけの英雄だ。

 つか、俺は何も答えてないのに、もうすでに回答を理解したようだ。

 

 

「ふ~~~~~~~~~~~ん」

 

「……………………なんだよ、悪いかよ」

 

 

 だが、怒られる筋合いはないはずだ。

俺がそう開き直った。 

 すると、綾瀬は俺の胸ぐらを強く掴みながら、クールなツラなど微塵も見せずに、感情のままに俺にソレをぶつけた。

 

 

「ふざけないでよ! どうし……、どうしてそんなことをするのよ! 加賀美くんのことを言えないじゃない! 君だって、朝倉リューマをずっと引きずってるじゃない!」

 

「いや、だ、だけど、俺は別に人に迷惑をかけてねーだろうが!」

 

「フォルナはどうするのよ! 君は、フォルナの気持ちを知りながら、フォルナと思わせぶりに接しながら、フォルナが命がけで世界のために戦っていると知りながら、その裏で自分は美奈を探すために旅してるって言うの? そんなの、許さないわ!」

 

 

 うわ~お、耳が痛い。ああ、そうだよ。お前の言うとおりだよ。

 そうさ。俺はみんなが世界や人類のために戦っている間、女を探しているというクソ野郎だよ。

 でもな、

 

「勿論、フォルナは大切だ。だが、これも俺の譲れねえもんなんだから、仕方ねえだろうが」

「ねえ、こら、このひねくれツンデレ倉くん、開き直ったわね」

「開き直るも何も、俺はいつでもオープンだよ。でもな、俺がヴェルトだろうと、朝倉だろうと、今の俺にはそれが人生の目標なんだよ」

「ッ、な、なんですって?」

 

 綾瀬の拳が震えている。あまりにもくだらないと、俺に怒りをあらわにしている。

 まあ、こいつにはそれを言われる筋合いはねえが、資格はあるんだよな。

 

 

「綾瀬。お前は元々俺がどんなクソ野郎か知ってたはずだ。毎日毎日くだらねえことの繰り返しで、生きる価値もねえ男だった」

 

「そんなことは……」

 

「でもな、イザ死んでみると、やっぱり後悔した。それは、俺の人生はまだ生きたいと思えるほど楽しかったからだ。それを俺に教えてくれたのが……俺をそんな風に思わせたのが……神乃だったんだ」

 

「だからって……」

 

「俺は、あいつにまだ何も言ってねえ。何も返してねえ。だからどうしても伝えてえ。俺はお前に救われたって。楽しかったって。ありがとうって。そして、もしあいつがこの世界で何かを抱えてるんだったら、俺は力になってやりてえ。それが俺の前世とのケジメの付け方だ」

 

 

 そう。これは、未練というよりはケジメだ。

 そして、俺が心からそうしたいと思っていることだ。

 

「じゃあ………なによ。会って告白するとかじゃないの?」

「十歳の頃はそれも考えてた。だが、もうそういうレベルじゃねえよ。ただ、あいつに恩返しがしたいだけなのかもな」

「じゃあ、君は結婚だけはフォルナとするの?」

 

 結婚……そういえば、フォルナと再会するまでは「まぁ、あいつももういつまでもガキの頃のようには……」と思っていたが、実際は全然変わってなかった。今でも俺とそうなる気満々だったし、むしろ前よりも強くなっているかもしれねえ。

 なら、俺はそれに対してどう応えるか? 

ウラのこともあるしな。

 ただ……

 

「そんなのどうなるか……まあ、あいつには色々と世話になったし、あいつには感謝してる。ヴェルト・ジーハの残りの人生は、あいつにくれてやってもいいと、最近は思ってるよ」

 

 それは、何だか俺も自然に言うことができた。

 だけど、そんな俺の言葉に対して綾瀬は……

 

 

「そう……じゃあ、もし美奈に再会して……もし美奈も君のことが好きだったとしても! もし美奈が君に告白しても断るのね♪」

 

「な、何? 神乃が俺に? はは、そんなの……そんなの……」

 

 

 いや、つか、それはありえねえだろ。

 まあ、それはありえないだろ。

 ああ、ありえない。

 うん………ありえない?

 いやいやいやいや、ありえねえって。

 あいつも俺のことを好きだったとかそんなの……でも、万が一か……万が一……あいつも俺のことを好きだった場合? んで、俺に告白してきた場合? うん……うん……おお……

 

「って、何をまんざらでもない顔しているのよ!」

「ぐほっ!」

 

 ビンタされた。

 

 

「あー、そう。君って本当に最低! もう許さないわ! 本当に怒った!」

 

「ツッ、い、いいじゃねえかよ! お前には何も迷惑をかけてねーし!」

 

「フォルナを想って身を引いて、私はもう綾瀬じゃないからって自分に言い聞かせて、前世のこととかカッコつけて決着をつけようと思った私の気持ちはどうなるのよ!」

 

「知るか、そんなもん!」

 

「ずるいわよ! ずるい! 君は私になんて偶然会えた程度のことで、大して気にもしないで、それなのに美奈だけは探して力になりたいとか、ずるいわよ!」

 

「別にいいじゃねえかよ! 大体、お前はツエー味方が何人も居るんだから!」

 

「いやよ! 私だって……私だってずっとずっと朝倉くんを見てたんだもん! ずっと、ずっと、君のことが好きだったんだから! あー、もうそうなのね! はっ、そうなのね! 分かったわよ! ええ、分かったわ! 君がそういう態度で来るのなら、もう私だって前世と決着なんてつけないで、遠慮なく君を私のモノにしてやるわよ! 前言撤回完全消滅よ!」

 

 

 あ…………泣きながら…………こいつ、言っちゃったよ……。 

 いや、うん。鮫島が昔教えてくれたから知ってたけどさ、それをこのタイミングで言うかよ。

 

 

「覚悟するのね、朝倉くん! 転生したくらいで私から逃げられないんだから、大人しく私と結ばれなさい!」

 

 

 しかも、なんかさっきまでとは手のひら返して……さっきの英雄アルーシャはどこへ?!

 

「ギイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「ゴワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「ホギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「アルウウウウウシャヒメエエエエエエエエエエエエ!」

「hdfp23iurfdj2@lp3m;es,aaaaaaaamo3@0irfj2pl3;wm!!!」

 

――――――!!!!

 

 朝倉だ、綾瀬だ、会話の内容がどうとかへの理解は別にして、物陰に隠れていたイエローイェーガーズだ、人類大連合軍だ、人類の英雄たちがこぞって絶叫を上げてぶっ倒れた。

 

「私のことも……見なさいよぉ……君のこと、絶対に幸せにしてあげるから……」

「あ、綾瀬……」

 

 そして、俺は、もはや泣きじゃくるお姫様に馬乗りで押し倒されたまま…………

 

 

「ヴェルウトオオ~~~!!!!」

 

 

 ユラユラとゾンビのように立ち上がって近づいてくるフォルナと…………

 

 

「魔極神空手・神空カカト落とし!」

 

「ッッ!!?? うお、アブねええええ!」

 

 

 思わず横に転がって回避した。

 だが、そうしなければ、危なかった。完全にヤられていた。

 突如、上空から俺たちをぶち殺すつもりでカカト落としして、地面に大穴を開ける暗黒のオーラを纏った……

 

 

「ふふ、ふふふふふ、フォルナとのデートの帰りが遅いと思い、探しに来たら……なにをしている、ヴェルトオオオ!」

 

「殿オ! 殿オ! 拙者は、拙者は、誰を奥方様とお呼びすればよろしいでござるか~~~?」

 

 

 思わず魔王様と呼びたくなるほど真っ赤な目を光らせるウラと、オロオロして叫ぶムサシ。

 

「ウラ、ムサシ。お前ら、留守番してるんじゃなかったのかよ」

 

 帰りの遅い俺を捜しに来たんだろうが…………まいった…………

 

 

「ぐすっ。な、なによ、この子たち、って、魔族!」

 

「アルーシャアアアアア! 会話の内容はよく分かりませんでしたが、ずっと好きだったというのは聞こえましたわ! どういうことですの!」

 

「お前ら人の男を勝手に好きだの何だの、ふざけるな! この泥棒猫どもが!」

 

「うおおおん、誰が、誰が我が殿の奥方様でござるか~!」

 

 

 嗚呼……もうメンドクセー……

 

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