異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第124話 腹の中

「大体、誰なのよこの子たちは! 魔族に亜人……いえ、サークルミラーで君の仲間の中にこの子たちがいたのは見ていたけれど……」

 

 乱入してきたウラとムサシ。

 俺の仲間ではあるものの、それでも異種族である二人に対して身構える姿勢を見せる綾瀬。

 すると、俺が答える前に二人は……

 

 

「我が名はウラ・ヴェスパーダ! ヴェルトのお嫁さんだ!」

 

「拙者は、ムサシ・ガッバーナ! 殿の忠臣にして懐刀でござる!」

 

 

 自分が何者なのかを宣言するウラとムサシ。お嫁さんとか懐刀とか、そんなことまで。

 だが、綾瀬にとっては……

 

「ウラ……ヴェスパーダ!? それって、たしかシャークリュウ・ヴェスパーダの!?」

 

 あっ……そっか……そうだよな……

 

「それに、そちらのムサシって……しかもガッバーナって……宮本くんの……」

 

 綾瀬は二人に今日初めて会った。

 だけど、二人は綾瀬にとって何の因縁もないわけじゃない。

 

「そうだ。私はシャークリュウ・ヴェスパーダの娘だ……」

「ッ……そう……かつて、私の兄さんと一騎打ちし……そしてギャンザが……ああ、そうだったわね。たしか、シャークリュウの一人娘はエルファーシア王国が保護したという話は聞いていたけれど……あなたが……」

「……ギャンザ……だと?」

 

 綾瀬は帝国の姫。そして同時に『少年勇者』と呼ばれた例の勇者の妹でもある。

 さらに……

 

「ほれ、ウラ。落ち着けよ」

「ッ、ヴェルト……」

 

 ギャンザもまた帝国の将軍の一人。だからこそ、俺はウラが何かをする前にその身体を抱きしめて拘束した。

 

「……お前だけじゃなくて、俺だって帝国の……特にギャンザに対しては思うところはあるが……こいつに言っても仕方ねえ」

「……ヴェルト……ちが……わ、私は別に……」

「ああ」

 

 ウラも複雑そうな顔を浮かべるが、抱きしめた俺の手にそっと手を添えて、俯くようにコクンと頷いた。

 

「おいおい、どうなってんだ?」

「姫様……それに、ヴェルト・ジーハくんも」

「ウラたちまで来てゴチャゴチャしちまったけど、大丈夫か?」

「ヴェルト……ウラ……」

 

 そして、ただならぬ雰囲気を察した綾瀬の仲間やバーツとシャウトたちまで慌てたように出てきた。

 確かに、さっきみたいなバカバカしい雰囲気から少し変わっちまったからな。

 

「にしても、そんな大物が君と一緒に旅を……し、しかも何だかすごい親密そうだし……っていうか、お嫁さんって……一体どういうことなの?」

 

 正直、人が集まりすぎてまともな話ができそうにない……が、それでも思った疑問を口にする綾瀬。

 それに対して俺は、少し周りを見ながらも、まぁいいかと……

 

「五年前からウラは俺と……そして先生と一緒に住んでいる」

「え……せ、先生って……小早川先生と? それに、一緒にって……なんで?」

 

 周りに聞かれないようにと思いつつも、正直聞かれたところでこの場にいる連中には、綾瀬以外には俺たちの会話は意味不明。

 だからこそ、隠れてコソコソこいつらが近くにいたと分かっていても、俺たちは話を特に中断しなかった。

 だから俺も構わずに言う。

 それに、綾瀬が相手なら、たった一言で済む。

 

「ウラは、鮫島の娘だ」

「………………………………………………はっ?」

「魔王シャークリュウの正体は、クラスメートの鮫島だった。それが真実だよ」

「う…………そ…………さめ、じま、くん。空手部の……あの、鮫島くんが…………シャークリュウ?」

 

 今の綾瀬の気持ちを考えると、まあ、複雑だよな。

 

 

「そんな……鮫島くんが。それじゃあ……兄さんが、そして、ギャンザが鮫島くんを? そんなことって………」

 

 

 もう、五年も前の話だ。

 だが、知らなかったことと、自分が何も関係していなかったこととはいえ、綾瀬にとってはそれは、簡単に片付けられる問題じゃない。

 

 

「ギャンザは……というよりも帝国はかつて、和睦協定を申し出たヴェスパーダ王国の王妃とその一団に対し、奸計や人類の情報の流布を恐れ、それを拒否。王妃を捕らえ、そして処刑したわ」

 

「ああ。ウラの……母親みたいだな」

 

「ッ、そして、その方は、さ、鮫島くんの………この世界の………奥さんってことよね」

 

 

 ああ。その通りだ。

 俺も、そこは深く聞かなかったし、一緒に暮らしていてもウラに詳しく聞こうとはしなかった。

 勿論、今の綾瀬がそれをどうこうすることが出来ないのは分かっている。

 

「ッ、あさく、ら、くん。朝倉くん。私は……私は……そのことを謝ることは出来ないわ! 償うこともできないわ!」

 

 分かってるよ。それが戦争だって言いたい気持ちは。

 

「常に最悪の事態を想定していたギャンザや軍部の当時の判断を間違っていたなんて言えないわ。仮に今、同じ事が起こったとしても、私も同じ判断をしたかもしれない……ウラ・ヴェスパーダ……姫……あなたにどれほ恨まれていたとしても……」

 

 ああ、だから俺とお前たちは違うんだ。

 そういう世界で過ごしてきたんだからよ。

 

「分かってる。綾瀬。お前の気持ちはイテーほど伝わるよ」

「朝倉くん…………」

「だから、これが俺からの最大の頼みだ。頼む。ウラのことはこれ以上深く追求しないでくれ。それが、魔王シャークリュウじゃなく、鮫島の遺言だと思ってくれ」

「彼女を……」

「ウラはもう魔王の娘としてではなく、普通の女として生きているんだから」

 

 かつてクラスメートだったことに免じて、というカードをここで使わせて欲しい。

 俺は綾瀬にそう願った。

 

「ずるいわ、朝倉くんは。私がどんなに辛いときも助けに来てくれなかったのに……美奈のことは力になりたいとか、鮫島くんにまでそこまで力になろうとして……」

 

 綾瀬の俺への気持ちをさっき聞いたからこそ、俺も見せる顔が無く、思わず俯いてしまった。

 

 

「ヴェルト……ど、どういうことだ? 帝国の姫がお前と親密なのも意味不明だったが……こやつは、父上のことも何か……」

 

「ああ……まあ、色々とあるんだよ、俺たちは」

 

「……ぬぅ……またそれか……」

 

 

 俺の態度にむくれて拗ねたように唇を尖らせるウラは、俺の腕にギュッとしがみついていた。

 そして……

 

「そして、そちらの亜人の彼女は……」

「ああ。宮本の孫だ」

「やっぱり……。でも、どうして?」

「あ~……これは……押し付けられた」

「は? ……何それ……」

 

 ムサシについてはイーサムに押し付けられてしまった。本当にそれだけ。

 しかし、それが不満だったのか、ムサシは食って掛かる。が……

 

 

「ちょ、と、殿おおおおおお! ひどいでござる! そんな一言で済ますのはひどいでござる! 拙者と殿の出会いから、拙者が殿に尊敬を、そして信を抱いてお仕えするに至るまでのあの日々をそれでは酷いでござるぅううう!」

 

「あ~、い、いい子だから、ムサシちょっと落ち着け。ほれ、ナデナデいーこいーこ」

 

「そんなの、う、あ、ふにゃあぁ……」

 

 

 頭を撫でて上げればムサシはフニャフニャになる。これもこの数日の間に知ったこと。

 しばらくこの手は使えそうだな……

 

 

「結局全然訳わかんないんすが……姫様は理解されたんすか? つーか、バーツもシャウトも分かってんのか?」

 

「い、いや、俺らも……」

 

「ヴェルトがウラを引き取った経緯は知っているけど、その背景も……あと、このムサシについても……」

 

 

 一方で、こうして目の前で俺と綾瀬の会話を聞きながら、まったく理解できていない様子で誰もが首を傾げるばかり。

 その中には当然……

 

 

「むぅ……ヴェルト……アルーシャ……むぅ……」

 

 

 フォルナもまたどこか悔しそうに、そして切なそうにしながら暗い表情を浮かべている。

 俺と綾瀬の会話を理解できないのは当たり前のことなのにな……いや、でも……そうだな……

 

「なぁ、ヴェルト……そろそろ私たちにも理解できるように説明してほしい。正直、父上に関することや、ムサシの祖父に関することも、当事者であるはずの私たちですらよく分かっていないところがあるんだ……一体、どういうことなのだ?」

 

 ウラが「いい加減に教えろ」と俺に追及してくる。

 そして、その気持ちは他の連中も同じなようだ。

 だから、俺は……

 

 

「そうだな……ウラ……お前には当然話さなくちゃいけない……」

 

「ヴェルト?」

 

「でも……ごめんな……これには一応順番があるから……お前のことも当然大切だけど……この話をもしするとしたら……」

 

 

 俺はもう腹を決めた。

 暗い顔をしたフォルナに向かって……

 

 

「まずは、俺と最初に出会ったフォルナに、まずは教えたい」

 

「「「「ッッッ!!??」」」」

 

「……え……ヴェルト?」

 

「朝倉くん……君は……」

 

 

 俺の意図に綾瀬は驚いた様子。無理もない。

 きっと綾瀬だって、俺ら元クラスメート意外にこの話はしてないだろうからな。

 だけど、俺は……

 

 

「フォルナ。ちょっと時間かかったが……まずはお前に俺の腹の中を教えておきたい」

 

「ヴェ、ヴェルトの……腹の中……?」

 

「そうだ。これを知ったからって、俺たちの何かが変わるわけでも、世界が変わるわけでもねえ。この世界からすれば、本当にどうでもいい話だ。だが、それでもだ。今日は、お前たちがずっと気になっていたことを全部、まずはお前に話そうと思っている」

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