異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第133話 圧倒的な力差

 七大魔王。

 随分とまた世界的なVIPなお客さんじゃねえか。

 

「チロタン? そんなフザけた名前した奴が、七大魔王だってのか?」

「ああ。詳しくは知らない。だが、よく父上が言っていた。悪いことをすると、チロタンが来るぞ? という子供向けの童話を」

「怖いのか、怖くねえのか、どっちだよ。つか、聞いたこともねえよ」

 

 天空世界を襲撃している魔族というのが、まさか、七大魔王が率いる軍勢だとは思わなかった。

 正直、俺はまったく聞いたこともない魔王だが、ウラたちの反応は少し表情に不安が見え隠れしていた。

 

「チロタンが有名でない理由は一つ。チロタンは魔王であるのに、魔族大陸に決められた国家を所有していないからだ」

「はあ? 国家を所有していないのに、どうやって王様になるんだよ」

「それは……常に、土地を転々して、気まぐれに他国を侵略して無理やり王になるからだ。常に転々とし、飽きたらまた別のところを狙う。それゆえ、国が発展することも人材が増えることもなく、奴がいつも連れ従う軍勢は数千程度とのことだ」

「えっ、悪いのか、それ。何だか、今まで聞いた中で、もっともナチュラルな魔王っぽいけど」

 

 いかにも、ゲームや漫画で出てきそうな魔王そのものじゃねえかよ。

 政治もクソも何もねえ。吾輩がこの世界の支配者じゃ的な、もっともシンプルで分かりやすいじゃねえか。

 

 

「バカが愚弟。よく考えてみろ。魔法技術や戦闘技術、集団戦術などが発展し、その極みを争う現代の戦国時代において、ただの無計画で力任せに暴れる軍勢が万の軍を滅ぼすんだぞ? それがいかに、『軍』そのものを否定しているか、気づきやがれ」

 

「当然、そんな存在を魔族大陸も認めることができない。でも、それを差し引いても強大な戦闘能力で暴れまわるチロタンが、昔先代の七大魔王の国を滅ぼしたことにより、チロタンを新たな七大魔王として認めるしかなかったのよ」

 

 

 何だか聞けば聞くほどヤバそうな雰囲気が漂ってやがる。

 これで、名前がもっとカッコよければ、本当に世界を震撼させる恐怖の魔王様の誕生なんだが、どうしても微妙な気持ちだった。

 

「だが、ちょっと待てよ。それなら、エルジェラたちはまずいんじゃねえのか?」

「ええ、非常にまずいわ」

「それどころか、世界中の冒険家や天文学者ですら見つけられなかった天空世界を、俺たちの他に、あのチロタンが見つけていたなんて知られたら、それこそ世界がひっくり返る」

「殿、どうするでござる? まあ、今回は殿の奥方様を助けた時のように、我らが参戦する理由もありませぬが」

「そうだな。せいぜい……ヴェルトの命の恩人ということぐらいか?」

 

 命の恩人ね。まあ、確かにそうなんだけどな。

 だが、それはそれで、エルジェラたちも自信満々に飛び出していたし、一体どうなることやら。

 

「ねえねえ、早く早く!」

「ええ、姫様たちの活躍を見逃しちゃうわ!」

 

 その時、街にいた天空族たちが慌ただしく一箇所に向かい始めた。

 それは、雲を溶かして作られた巨大な湖。

 一体何があるんだ? 

 そう思ったとき、湖の表面が光り輝き、そこにはとある風景が映し出されていた。

 

「こ、これは! レッサーデーモン! ガーゴイル族! アンデットのスカルナイト族まで居るぞ!」

 

 それぞれが飛空能力を要するか、飛空可能な魔獣に跨る魔族たちの大軍が空へと向かっている映像だ。

 

「この湖、千里眼能力を有しているのか? これはまた、随分と貴重なものが一般に開放されているもんだ」

「なるほどな。これを見れば、あのお姉ちゃん達の活躍ぶりが覗き見ることができるわけか」

 

 まるで、アイドルのコンサートかミュージカルにでも向かうような、天空族たちのハシャギぶり。

 これは、戦争。それなのに、この意識の違いは何だ?

 それは、天空族が単純に知らないだけか。

 それとも、自分たちの仲間の力に絶対の自信を持っているからなのか。

 

「でも、驚いたわね。チロタンの軍勢。様々な種族を率いているわね」

「ああ。チロタンは国家や領土を持たない代わりに、周辺の部族や民族を支配して、選りすぐったもののみを配下にしているらしいからな」

「なるほど。まあ、選りすぐりなのか、烏合の衆なのかは、今に分かることでござるが」

 

 その通りだ。だから、始めなさい。

 俺たちがどうすべきかの行動は、今から始まる光景を見ないことには始まらない…………

 

 だが、正直な話、俺たちの考えなど杞憂で終わるほどの結末だった。

 

 

「進めえ! 全軍蹴散らせ!」

 

 

 天空戦乙女騎士団の総大将でもある、軍神とも呼ばれたロアールの指揮の下、戦乙女たちの突破力と超天能力を駆使した力は、開戦早々に戦を佳境に迎えようとしていた。

 

「な、なんだ、この女ども、ば、ば!」

「ばけもんだあああ!」

「ギャアアアアアア!」

 

 錐形の陣でお互い突破力に頼った正面衝突だが、戦乙女たちの光源を発した力により、魔族の軍はいとも簡単に切り裂かれてゆく。

 突破力を失い、散り散りになった軍はもはや立て直し不可能なほどに崩壊。

 あとはそれを、天空戦乙女騎士団が刈り取っていくだけだった。

 

「ひいい! レッド部隊壊滅! 隊長は捕獲されました!」

「裏から回ろうとしたスカルナイト族が粉々に!」

「レッサーデーモンたちがあっさり降伏しております!」

「敵軍は本陣すぐそばまで迫っています!」

 

 攻め込みながらもアッサリと狼狽え始める魔族の軍団。

 正直、小規模の軍で戦を挑むぐらいだからどれほどなのかと思ったら、比べるまでもないほどの圧倒的な差だった。

 だが、それでも相手は七大魔王だ。群雄割拠の魔族大陸を力で勝ち抜いてきた猛者だ。

 いかに戦を繰り広げる頭がないとは言え、力任せで戦い抜いてきた魔王軍を、力で押し切っている。

 そう、単純に天空戦乙女騎士団たちが強いのだ。

 

 

「天空の雷雨を見せてやるぜ! 超天能力・天変天異!」

 

 

 それも、圧倒的に。

 

 

「へっへー! よっしゃ、お前ら! 好きなだけ男どもを捕虜にしろ! 二度とこの世界に踏み込めねえぐらい、徹底的に嬲って犯しまくってやれ! 手柄を立てた奴には、好きなだけ男を抱かせてやる! 蹂躙しろ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「さあて、オレの『スカイグレネードアックス』に潰されたい毛むくじゃらどもは、かかってきな!」

 

 

 天空で起こる天変地異を巻き起こすのは、第六皇女のレンザ。

 身の丈の何倍もある超重量の戦斧と能力を駆使し、その圧倒的な力で魔族を次々と蹴散らしていく。

 

「おとなしく降伏なさい、地上人たちよ。これ以上の争いは無益です。あなた方にも帰るべき場所、帰りを待つものが居るのでしたら、これ以上、純白の雲、青い空を血に染めないでください」

 

 聖母のような光に身を包み、相手に降伏するように告げるエルジェラ。

 その姿を見て、勇猛で荒々しかった魔族たちは、涙を流しながら武器を捨てて頭を下げる。

 

 正面からぶつかって、この力。

 

 そして、それほどの力と軍勢が、空をいつも漂っていて、世界が知らない。

 考えただけでもゾッとするようなことだった。

 

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

 そのとき、雲の上で地震かと勘違いしてしまうほど、大気を揺るがす怒号が響いた。

 思わず耳を塞いでビックリして飛び上がってしまった。

 これは一体、誰の怒号だ?

 

 

「ひでーよ、ひでーよ! 雑魚すぎるじゃねえかよ、同胞たちは! しかも、簡単に降伏するし、どうしてだよ! どうしてこの俺様の思った通りにどいつもこいつも動かねええええええええええええええええええ!」

 

 

 それは、魔族の軍隊の最後方に居た魔族。

 筋肉隆々の巨漢。まるで、カブトムシのように巨大な角を額から伸ばし、その肉体も真っ黒い表皮に覆われている。

 ボロボロの赤いマントだけを身にまとい、天に向かって、力の限り叫ぶ魔族。

 いかにもバカっぽそうで、粗暴そうで、しかし一人だけ身にまとう雰囲気が違う。

 

「あれは! チロタン!」

 

 やっぱりそうか。

 魔族軍の総大将にして、七大魔王の一人。

 しかし、今は、味方の不甲斐なさに大いに嘆いている状況だ。

 

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