異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第六章 ギャルとロックとカオスな大戦争(15歳)
第147話 ギョギョギョ


 亜人大陸と聞くと、どうしても親父とおふくろが殺されたことを思い出し、複雑な気分になる。

 もちろん、ムサシと出会ってから、前ほど亜人に対して敬遠することはなくなった。

 亜人にだって人間にだって魔族にだって、それぞれイイ奴、ムカつくやつがいることぐらいは十分わかっている。

 しかし、できることならこの大陸には来たくなかった。

 人一人見えない海岸線で佇みながら、俺は本来帰るべきか行くべきだった方角を見ていた。

 

「とにかくさ、人類大陸でも神族大陸でも、行くなら船で行くしかないわけでしょ?」

「そうだな。さすがにドラも何日も海の上を飛行することも、船に変化することもできないだろう」

「クソ面倒だな。さすがに、亜人大陸だと、どこに海底トンネルがあるかも分からねえからな」

「あの、私はよく分かりませんが、長旅をするのでしたら相応の準備が必要ですよね」

 

 エルジェラの言うとおりだ。正直、食料や旅の道具は地上で買えばいいと思って、天空世界では特に仕入れは行わなかった。

 だが、不運とはいえ、亜人大陸に来てしまった以上、別の大陸へ行くなら、この亜人の世界で必要物資を手に入れる必要があるわけだ。

 贅沢を言えば、コスモス用のオムツとかも含めてな。

 つまり、最低限の亜人との関わりは避けられない。

 

「けっこ~、ビビってきたな。つか、ウラもムサシも、よく異種族なのに人類大陸で怯えずに過ごせたな」

「何を言ってる。私はヴェルトが居たから平気だったんだ。………今の、私なりに可愛いことを言ったと思わないか? 抱いていいぞ?」

「拙者も同じでござる。一人では決して心を保てなかったでござる。しかし、今は殿がおりますゆえ!」

 

 そうかもな。そう考えると、一人で放り出されるよりは、今の俺はよっぽどついている。

 仲間も頼もしいし、それに一応、亜人のムサシもついてるしな。

 

「で~もさ、正直どうする? 人類大陸、神族大陸、どっちに行くにも船か海底トンネルは不可欠だよ? ムサシちゃんは何かいいアイデアはない?」

「う~む、拙者もこの地方には、とんと知り合いもおりませぬゆえ」

 

 船かトンネルか。

 船の場合は手に入れなければならない。

 トンネルの場合は探し出さなきゃならない。

 

「その二つを選ぶとしたら、船だな。トンネルは自力で探すのはクソ不可能だ。だが、船ならばそこまで贅沢しなければ、金次第で手に入れられそうだ」

 

 まあ、ここはファルガの言うとおりだな。

 大陸のどこにあるかも分からないトンネル探すぐらいなら、その辺から船買い取ったほうがよっぽど早く済みそうだ。

 もっとも、海岸線でありながら、砂浜には人もいないし、船も停泊していない。目の前には生い茂った密林があるだけで、正直本当にここが亜人大陸かどうかも分からない。

 

「とにかく誰かを探そう。もし船を持っている奴がいたら、交渉はムサシがやってくれ」

「はは! おまかせあれ、殿! 最終手段としては、拙者が手作りをしてでも殿に巨大豪華客船を献上するでござる!」

「お前の手作りはやめろ。うっかりミスが多そうで怖くて乗れねえ」

 

 とりあえず、ここから移動したほうが良さそうだと、俺たちは歩きだそうとした。

 まずは、村でも街でも誰かがいるところを目指そうとした。

 だが、その時だった。

 

 

「クソが…………三十……四十か」

 

「結構近くになるまで気がつかなかったね」

 

「殿! コスモス殿を連れて下がってくだされ」

 

「ふん、光の十勇者やら、天使やらと立て続けに会った。もう、よほどの者が来ても私は驚かんぞ」

 

「警戒の波動を感じます」

 

 

 歩きだそうとしたら、不意に、ファルガ、クレラン、ムサシ、ウラ、エルジェラが何かに気づいてピタリと足を止めた。

 というより、何が何だかわからないのが、俺とドラとコスモス。

 

「あぶ?」

 

 ああ、俺も、「あぶ?」状態だった。

 すると…………

 

 

「ほほ~、気づいたか。どうやら、なかなかの手練のようだな」

 

 

 声が聞こえた。

 だが、俺は周囲を見渡すが、誰もいない。

 なら、この声はどこから?

 すると、俺は目の前で、砂浜の砂が途端に盛り上がったのが気づいた。

 次の瞬間、立て続けに俺たちを取り囲むように砂が盛り上がり、中から、何かが飛び出した。

 

 赤い棘付きの鎧を纏った怪物。その腕と頭部は、正に……蟹!

 

 

「おぬしらは、砂蟹人族!」

 

 

 子供の頃に亜人百科みたいな本を読んだことがあるが、もはやここまで来るとまるで未知。

 見たことも聞いたこともない蟹の怪人たちが砂の中から飛び出してきた。

 

「ッ、なんだよ、こいつら!」

「ギャー、こわいっす!」

「えう、あぶ、ほ、ほぎゃー!」

 

 そりゃー、コスモスは泣くよ。俺だってコエーもん。

 

「けっ、さっそく登場か」

「今夜は蟹鍋?」

「いや、あれは食べれないだろ!」

「そなたたち、拙者たちに何用でござる!」

「よしよし、コスモス。大丈夫よ。マーマとパーパがついてますから」

 

 しかし、驚いているのが俺たちだけってことは、他のみんなは気配的なもので察知したわけか。

 いいな……俺、そういうのはできないし。

 ん? そういえば、さっきファルガが、気配が三十とか四十とか言ってなかったか? 他は?

 

 

「ここは、我らの警備区域。密航船などを防ぐために、この海域を見張っていたが、まさか空から現れるとは……」

 

 

 数が合わない。そう思ったとき、背後から声が聞こえて振り返ると、二十人ぐらいの全身ウロコのヒレやらエラやらを有した亜人。

 サメやらタコやら亀やらの特徴をそれぞれ持った多種多様な亜人。

 全員が、ノースリーブのシャツに短パンという軽装で、非常に人間っぽいが人間ではない。

 彼らをひと括りにするなら……

 

「半魚人族!」

 

 そう。半魚人だった。

 人間と魚類の特徴を持った中間的な存在。

 

「ギョジン? 水棲人のことでしょうか?」

「似たようなものだ。……エルジェラ……絶対にコスモスを手放すな。私たちが必ず守る」

「ほぎゃーほぎゃーほぎゃー!」

 

 エルジェラが驚くのも無理はない。

 俺も半魚人は初めて見た。

 そして、本来人を見かけで判断していいものではないんだろうが、正直、その奇怪な姿に俺が引きかけたのは否定しない。

 もっとも、奇怪なのは姿形だけで、現れたこいつらの目は、かなりマジメで真剣だった。

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