異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第150話 郷に従う

 帝国の半分の高さの城郭は、あまり攻め込まれることを想定しないで作られた意識を感じられる。

 しかも、門の入口から見える街の雰囲気はとてもごっちゃりしている。

 エルファーシア王国やアークライン帝国では、建物の並びや材質や高さなども統一されて、大通りに左右対称のように綺麗に建物が並んでいた。

 だが、『ジェーケー都市』と呼ばれるここは違う。

 並びも材質も高さも幅も、何よりも色までもが違う。統一感がまるでない。

 四角い建物ではなく、何故が円筒上に作られた建物には『139』という数字が書かれていたり、何故か無造作に犬の銅像が飾られていたり、そこで亜人たちが待ち合わせしていたり…………

 

 

「しっかし、まさかこんな服に着替えさせられるとはな」

 

 

 真っ黒いズボン、真っ黒な上着には金色の塗料が塗られた縦一列のボタン。一度も締めたことのないホックと第一ボタン、第二ボタンは開けるのはお約束。

 ちなみに、ボタンは全開派とボタン閉じる派があったが、俺は普通に締める派だったな。

 それにしても、懐かしい。もう、どの程度懐かしいかというと、五年十年の話ではない。

 前世以来となる服に、俺は戸惑いとともに、笑いが止まらなかった。

 

「学ランねえ」

 

 そう、真っ黒な学ランだ。

 日本の中学生、高校生御用達の服。一年で私服よりも一番多く着る服だ。

 

「ほう。普通は初めて見る形の服に戸惑うのですが、随分と迷わず着られましたな」

 

 ここは、都市の入口となる門の隣にある、貸衣装部屋。

 門をくぐる前に、ここで制服に着替えなければ入場することはできないという意味不明なルールだ。

 意味不明でくだらねえ。なのに、俺は少しだけ気分が良くなっているのが困りものだ。

 

「クソが。なんてめんどくせえ」

 

 グチグチと文句を言いながら、槍を長い袋に入れてファルガが出てきた。

 それは、全身上下がベージュ色の、ボタンなしのホック止めタイプの制服。

 ホックのラインは縦一列に赤く塗られていて、何だか……似合いすぎるだろ、こいつ。

 

「おい、愚弟。テメエは随分とすんなり受け入れたが、何なんだ、こりゃ?」

「ん~、そうだな。まあ、もうフォルナには教えたから、ぶっちゃけ言ってもいいんだけどさ」

 

 しかし、制服姿のファルガを見ることになるとはな。

 こんなイケメンが電車ん中に乗ってたら、大騒ぎだろうな。

 

「オイラ、オイラはこれしかなかったっす!」

 

 次はドラが騒いで出てきた。というより、ドラは制服なんか着なくていいんだが、なんか仲間はずれが嫌だったのか、珍しい制服用の帽子だけをかぶって出てきた。

 おお、えらいな、こいつ。

 

「じゃじゃ~ん。どう? どう? ファルガの着ている服の女の子用だって。どう?」

 

 次に両手を広げて見せびらかすように、クレランが制服姿を披露。

 それは、ファルガの制服の女子バージョン。ベージュ一色で、首元には赤いリボン。

 そして、お約束のミニスカート。いや、正直、俺からすればミニではない。

 膝上で腿がそこそこ見える程度。多少優等生でもこれぐらいの高さにはしていた気がする。

 

「おおお! ね、姉さん、す、スカート短すぎっす! 似合ってるっスけど」

「ありがと。ね~、ファルガ、どう? どう? 弟くんも、お姉ちゃんどう?」

「あ~、……AV女優の撮影みたい……いや、なんでもねえ。似合ってる」

「クソ茶番だ」

 

 つーか、クレランって、十代だっけ? 二十代だっけ?

 どっちにしろ、十八を越えたクレランとファルガにまで制服着せるなよな。

 何考えてんだよ、この都市の黒姫様とやらは。

 趣味? まあ、おもしれーけど。

 

 

「きゃきゃきゃ、あぶう!」

 

「ふふ、素敵です。これが地上世界の服なのですね。なんと可憐な」

 

 

 いや、ちょっと待って…………

 

 

「そんな制服は漫画の世界にしか存在しねえよ! つか、ミニスカートじゃねえじゃん!」

 

 

 ハニカミながら出てきたエルジェラに思わず突っこみを入れてしまった。

 エルジェラの衣装は全身を真っ白に包まれた、ロングスカートで、胸元に大きめな赤いリボン。

 なんか、物語のお姫様やお嬢様だけが通う学校の制服にしか見えない。

 死ぬほど似合っているけども!

 

「そ、そうなのですか? そんな……でも、他は胸元が苦しくて、これしかサイズが……これも、スカートはこの長さしかないとのことで……」

「………ふ~ん、エルジェラちゃん、そんなこと言うんだ~、へ~、とっくに胸の成長期を終えた私の前で~」

「きゃ、きゃあ、クレランさん!」

「なによ、こんな胸! 美味しそうな胸! もう、私が食べちゃう!」

「い、いや、きゃあ、やめてください、クレランさん! 私の胸は、コスモスとヴェルト様のもので……」

 

 不思議だ。

 こんなコスプレにしか見えない制服なのに似合っている。

 しかも、巨乳なのにエロさは感じず、むしろ神聖さを感じる。

 毎朝早くに登校して、学校内の教会で祈りを捧げている清楚な生徒にしか見えねえ。

 赤ん坊を抱えているのも、学生のデキちゃった感よりも、むしろ聖母を意識させる。

 

「まあ、でも、やっぱり偽物は偽物。本物じゃねえけどな」

 

 そう、コスプレだ。

 ファルガやクレランはとっくに高校生を超えているし、エルジェラの制服だって実際には存在しねえ。

 珍しいかもしれないが、俺の学ラン以外はそれほど懐かしいとは……

 

 

「ヴェ、ヴェルト~、こ、このスカート、み、短い……スースーするというか、風が吹いたり階段に登れば、し、下着が見える……」

 

「それだああああああああああああ!」

 

 

 ようやく本物の登場に、俺は思わず叫んじまった。

 

「う、うわ、な、なんだ、ヴェルト、興奮して」

「い、いや、思わず……」

 

 ウラだ。上着は紺のブレザーで、胸元にはよく分からいエンブレム。

 下は紺色チェックの超ミニ。あまりの短さに、ウラは顔を赤らめて裾をひっぱったり、お尻を手で押さえたりとモジモジ状態。

 しかし、本当に短い。こんなのが毎朝居たかと思うと、恐ろしいな。

 

「わ~お、ウラちゃん、可愛い!」

「ひゃああああ、いいっす! マジいいっす! ウラ姉さん、激マブっす!」

「まあ、なんて素敵な。ウラさん、とてもお似合いです」

 

 美しい……確かにそうだ。

 

「そう、なのか? ヴェルト……どうだ?」

「お、おお、似合ってるよ。むしろ、一番、それっぽい」

「それなら、まあ、いいか………でも、このスカートはどうにかならんか? ヴェ、ヴェルト以外に下着を見られるのは……」

「いや、それはむしろ……そんなもんだ。それに、意外と見えないから気にすんな」

「そうか………うん、それなら、うん」

 

 赤目と魔族の角は置いておいて、流れる美しい銀髪に制服姿を重ねると、何だか外国人留学生に見えなくもない。

 さらに、ミニスカートに恥ずかしがっている姿も、微妙にそそった。

 ただ、美しいというか、むしろ……かわ……

 

 

「では、まいるでござる!」

 

 

 スーパーオーソドックスな、白いセーラー服の剣道部所属の学生……に見えるムサシが登場。

 つうか、こいつが一番に似合っていた。いるよ、こんな学生。

 まあ、ムサシがミニスカートっていうのも意外性もあるし、なかなか可愛いもんだ。

 

「みなさん、ご苦労様です。では、これより入場の手続きを行っていただきますが、私の案内はこれまでです。後は、他の方に案内を頼んでおります」

「おお、そうか。なんか、色々と世話んなったな」

「いいえ。それに、あなたがたをどうされるかは黒姫様次第ですので」

 

 そう言って、半魚人は門をくぐらずに俺たちを見送った。

 そう言えば、最後まで名前を聞かなかったけど、誰だったんだ? まあ、また今度聞けばいいか。

 俺たちは持ち場に戻る半魚人に手を振って別れを告げた。

 

「さて、ほかの人が私たちを案内してくれるって言ってたけど、誰が来るのかな? いきなり、襲いかかったりしないよね」

「大丈夫でござろう。話は通っているようでござるから、こちらが問題を起こさない限り……」

 

 すると、その時だった。

 俺たちの前に三人の小柄な亜人娘が現れた。

 三人ともムサシと同じセーラー服で、剣道部の竹刀袋のようなものを抱えている。

 

 

「お前たちか、黒姫様に面会する侵入者たちは!」

 

 

 元気のいい生意気そうな娘の声。

 長い緑色の髪を後ろで一本にまとめた、虎の耳と尻尾を生やした少女……アレ?

 

 

「ジューベイ、初対面の人にそんなに敵意むけちゃいけないだよ」

 

 

 黒いおさげの髪型の、猫耳と猫の尻尾の……アレ?

 

 

「私たちが、あなたたちを案内、及び監視するの。……って、あれ?」 

 

 

 茶色いポニーテールの、狐耳と狐の尻尾の……アレ?

 

 

「「「「アレ?」」」」

 

 

 俺と、ファルガと、ウラ、そしてムサシは現れた三人の小柄な亜人剣士を見て固まった。

 そして、

 

 

「べ、ベンケイ! ウシワカ! ジュウベイ!」

 

「お、お姉ッ!」

 

「ムサシ様ッ!」

 

「お姉様ッ!」

 

 

 思わず抱き合う四人。

 クレランたちは首を傾げるが無理はない。

 つうか、俺たちも驚いていた。

 

 まさか、ムサシの妹と妹分たちと、こんな形でまた再会することになるとは思ってもいなかったからだ。

 

 

 

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