異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第166話 予想外の人物現る

 都市の大通りは逃げ惑う亜人や警備の亜人のごった返しが酷く、俺たちは屋根伝いに走って、とにかく都市の入口へと向かった。

 そこに、主要人物たちが集合しているだろうから。

 

「なあ、朝倉」

「ん?」

「ママン……大丈夫だよな?」

「大丈夫じゃねえわけがねえ。俺もこれまで旅してて、四獅天亜人ってのがいかにヤバいかは十分に分かってる」

「あっ、やっぱ、ママンってスゲーんだ」

「ああ。つか、あれに勝てる人間は少なくとも、光の十勇者以外はいねーだろ。もし居たら、そいつは世界の英雄になってるよ」

 

 そう、それこそファルガみてーな特殊な事情で光の十勇者に入ってねえ限りはな。

 

「そっか、なら、安心か?」

 

 ああ。だから、心配はねえ。

 だが、そうなると気になるのは、やっぱり目的の方か。

 

「そろそろ口を閉じろ。見えてきたぞ、愚弟」

 

 俺たちが顔を上げると、城門の前には円が出来ていた。

 そこには、武装した多種多様な亜人族。

 そして、門の向こうからは向かい合うように全員が黒一色のスーツ姿の人間たちが居た。

 

「ぎゃはははは、ヤクザかよ! なあ、朝倉! あいつら、スーツばっちし決めてるよ!」

「ったく、加賀美の趣味か? スーツなんて、この世界に広めやがって」

 

 だが、まだ戦いは始まってねえみたいだな?

 ん? つか、そもそも戦いを始める様子があまり感じられねえ。

 どういうことだ?

 

 

「うふふふふふふふふふ。それだけ大人数で軍艦連れて、目的が侵略でも戦いでもなく、話し合い? どういうことかしらん?」

 

 

 亜人の集団の先頭に立つママンが、仁王立ちで笑っていた。

 それに対し、強面の人間代表っぽい真ん中の男が、姿勢を正して返した。

 

 

「軍艦は、途中の『海獣』などの対策として引き連れてきた。これまでの侵入は、急を要することであったことと、そちらが攻撃をしてきたために、火の粉を払うために撃ったに過ぎない!」

 

 

 まったく悪びれなくそう告げる男に対して、ママンの額に青筋が立った。

 

 

「あのね~ん。軍艦引き連れた人間が、亜人の領海を無理やり乗り越えて、さらに制止しても止まらなければ攻撃するに決まってんじゃない? 分かんない?」

 

「理解している! しかし、我々がユーバメンシュ殿を出すように伝えても、聞き入れなかった。時間もなかったので、強行した!」

 

「あら~ん、これはダメね。あなた、あんまり女の子にモテないでしょ? ジコチュ~~って」

 

 

 一体どういう展開だ? ママンが怒る怒らないは別にして、ラブ・アンド・マニーの目的が、話し合い?

 それに、流れからしてママンに用事があって来ているようだ。

 

「どーいうことだ?」

「略奪でも侵略でもない? ユーバメンシュと話をするのが目的? あのクソども、マジで何を考えてやがる」

「これは、意外な展開でござるな」

「あのさ、あたし、全然意味がわかんねーんだけど」

 

 ああ、意味がわかんねーのは俺も同じだ。

 つか、ママンと何の話をしに来たんだ?

 

 

 

「私が彼らに依頼した」

 

 

 

 すると、その時だった。

 人間の集団が、真っ二つに別れ、その奥から何者かが歩いてきた。

 

 

「ッ、あなたわん!?」

 

 

 ママンがその人物を見て驚愕した。

 そして……

 

 

「………………えっ?」

 

「な、ん、だと?」

 

 

 俺とファルガは、目を疑ってしまった。

 その声、その姿、その顔。

 俺たちは、その男に見覚えがあった。

 

 

「これはこれは、また随分と久しぶりというかん、意外な人物というかん………まずは、お久しぶりと言うべきかしらねん?」

 

「ふっ、十数年ぶりだ。互いに老けたと言いたいところだが、お前は全く変わらないな」

 

 

 嘘だ…………

 

 

「なんで、あなたほどの人が、ラブ・アンド・マニーにん?」

 

「亜人や魔族の評価がどうであれ、組織そのものは人類に大きな利益を生んでいる。それゆえに、組織の手は各国の中枢にまで及んでいる。おかしくはあるまい」

 

「……あなた……関係者だったのん?」

 

「別に隠してはいない。あまり知られていないだけだ。普段はあまり関わっていないからな。社長のマッキー曰く、一応私は『社外取締役』という役職のようだがな」

 

 

 なんで、あんたが……

 

 

「それで、一体何しに来たのん? かつて殺し合いをした戦友と、コーラでも飲みに来たのかしらん?」

 

「ユーバメンシュ、お前と面談するために来た。事は一刻を争う事態だから、無理やり押し通った。殺生はしないように告げたが、それでも警備隊の者たちに被害が出たのならば、謝罪しよう」

 

 

 知らねえ。

 俺もファルガも、あんなに冷たい目で、厳しい口調で話すあいつを知らねえ。

 あいつは違う! 俺たちの知っている奴じゃねえ! 

 別人だ! 

 でも、誰だ?

 それなら、あそこに居るあの男は、誰だ?

 

 

「あら、じゃあ、一体何の話があるのかしらん? ねえ? 『聖王』に選ばれた六人の聖騎士の一人……エルファーシア王国の将軍、『聖騎士将軍・タイラー』様が、私に何の用ん?」

 

 

 なんで、タイラーがここに居るんだよ!

 

 

「大体、人類でも最高戦力クラスのあなたが、こんな所に来ている暇があるのかしらん? まだ新聞には載っていないけど、私も知っているのよん? 先日の神族大陸で行われた大規模な大戦……人類大連合軍は『ジーゴク魔王国』に大敗したってねん」

 

 

 ん? ん!? ちょ、え……!? ママンの奴……今、なんて……

 

 

「流石に情報が早いな……」

 

「ふふふ、人類大連合軍は出陣した六人の光の十勇者の内、『魔導老師ダウン』、『聖獣騎士ディラン』の二名が戦死。多数の死傷者と共に、人類大連合軍は占有していた神族大陸領土を半分以上失った」

 

 

 ただでさえ訳の分からない状況の中で、ママンが口にした言葉が余計に俺を混乱させた。

 隣を見ると、ファルガも言葉を失っている。

 

 

「ああ……予想以上の被害だったそうだ。やはり、七大魔王国家の中でも一~二を争う最強の超巨大国家の力は人類の想定を大きく超えていた」

 

「当然よ~ん。ジーゴク魔王国……『鬼魔族』たちの国家。その凶暴性と強靭性は、生物界最強種族とも呼ばれている……何よりも、『魔王キシン』は私やイーサムですら決着をつけられなかったほどの伝説の怪物よん? さらに、『大将軍ゼツキ』もいるしねん。人類連合軍が勝てなくても仕方ないわ~ん」

 

 

 バカな。人類大連合軍が大敗? 十勇者にも戦死者が出るほど、甚大な被害を受けただと?

 みんなはどうした?!

 フォルナは?! バーツやシャウトは?! 他の奴らは!? 

 綾瀬は!?

 俺がちょっと子供作って、フットサルやっている間に、世界は何てことになってんだよ!?

 

 

「そうだ。まだロア王子やフォルナ姫たちは反撃を試みようとしているが、既に勢いは……だからもし、残る十勇者たちも戦死するようなことになれば……」

 

「……そうねん……バランスが崩れるわねん」

 

「その通りだ。何百年と続いた三種族の軍事バランスがついに崩れる。それに伴い……始まってしまうぞ? 地上世界の崩壊、そして何千万と積み重なった屍を贄として現れる……『神族』との戦がな……それだけは防がねばならぬ」

 

「あらそうなのん? ふふふ、あなたも相変わらず大変ね~ん。聖騎士なんかになったがために……人類『だけ』のために戦えなくなって……せっかくの英雄が裏工作ばかりの日々……見るに堪えないわねん」

 

 

 だから、何なんだよ……あいつはやっぱり、本物のタイラーなのか? 

 でもだとしたら、どうしてラブ・アンド・マニーと? 

 ジーゴク魔王国? 神族? 

 そして、ママンと何の会話をしてんだよ!

 

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