異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと 作:アニッキーブラッザー
都市の大通りは逃げ惑う亜人や警備の亜人のごった返しが酷く、俺たちは屋根伝いに走って、とにかく都市の入口へと向かった。
そこに、主要人物たちが集合しているだろうから。
「なあ、朝倉」
「ん?」
「ママン……大丈夫だよな?」
「大丈夫じゃねえわけがねえ。俺もこれまで旅してて、四獅天亜人ってのがいかにヤバいかは十分に分かってる」
「あっ、やっぱ、ママンってスゲーんだ」
「ああ。つか、あれに勝てる人間は少なくとも、光の十勇者以外はいねーだろ。もし居たら、そいつは世界の英雄になってるよ」
そう、それこそファルガみてーな特殊な事情で光の十勇者に入ってねえ限りはな。
「そっか、なら、安心か?」
ああ。だから、心配はねえ。
だが、そうなると気になるのは、やっぱり目的の方か。
「そろそろ口を閉じろ。見えてきたぞ、愚弟」
俺たちが顔を上げると、城門の前には円が出来ていた。
そこには、武装した多種多様な亜人族。
そして、門の向こうからは向かい合うように全員が黒一色のスーツ姿の人間たちが居た。
「ぎゃはははは、ヤクザかよ! なあ、朝倉! あいつら、スーツばっちし決めてるよ!」
「ったく、加賀美の趣味か? スーツなんて、この世界に広めやがって」
だが、まだ戦いは始まってねえみたいだな?
ん? つか、そもそも戦いを始める様子があまり感じられねえ。
どういうことだ?
「うふふふふふふふふふ。それだけ大人数で軍艦連れて、目的が侵略でも戦いでもなく、話し合い? どういうことかしらん?」
亜人の集団の先頭に立つママンが、仁王立ちで笑っていた。
それに対し、強面の人間代表っぽい真ん中の男が、姿勢を正して返した。
「軍艦は、途中の『海獣』などの対策として引き連れてきた。これまでの侵入は、急を要することであったことと、そちらが攻撃をしてきたために、火の粉を払うために撃ったに過ぎない!」
まったく悪びれなくそう告げる男に対して、ママンの額に青筋が立った。
「あのね~ん。軍艦引き連れた人間が、亜人の領海を無理やり乗り越えて、さらに制止しても止まらなければ攻撃するに決まってんじゃない? 分かんない?」
「理解している! しかし、我々がユーバメンシュ殿を出すように伝えても、聞き入れなかった。時間もなかったので、強行した!」
「あら~ん、これはダメね。あなた、あんまり女の子にモテないでしょ? ジコチュ~~って」
一体どういう展開だ? ママンが怒る怒らないは別にして、ラブ・アンド・マニーの目的が、話し合い?
それに、流れからしてママンに用事があって来ているようだ。
「どーいうことだ?」
「略奪でも侵略でもない? ユーバメンシュと話をするのが目的? あのクソども、マジで何を考えてやがる」
「これは、意外な展開でござるな」
「あのさ、あたし、全然意味がわかんねーんだけど」
ああ、意味がわかんねーのは俺も同じだ。
つか、ママンと何の話をしに来たんだ?
「私が彼らに依頼した」
すると、その時だった。
人間の集団が、真っ二つに別れ、その奥から何者かが歩いてきた。
「ッ、あなたわん!?」
ママンがその人物を見て驚愕した。
そして……
「………………えっ?」
「な、ん、だと?」
俺とファルガは、目を疑ってしまった。
その声、その姿、その顔。
俺たちは、その男に見覚えがあった。
「これはこれは、また随分と久しぶりというかん、意外な人物というかん………まずは、お久しぶりと言うべきかしらねん?」
「ふっ、十数年ぶりだ。互いに老けたと言いたいところだが、お前は全く変わらないな」
嘘だ…………
「なんで、あなたほどの人が、ラブ・アンド・マニーにん?」
「亜人や魔族の評価がどうであれ、組織そのものは人類に大きな利益を生んでいる。それゆえに、組織の手は各国の中枢にまで及んでいる。おかしくはあるまい」
「……あなた……関係者だったのん?」
「別に隠してはいない。あまり知られていないだけだ。普段はあまり関わっていないからな。社長のマッキー曰く、一応私は『社外取締役』という役職のようだがな」
なんで、あんたが……
「それで、一体何しに来たのん? かつて殺し合いをした戦友と、コーラでも飲みに来たのかしらん?」
「ユーバメンシュ、お前と面談するために来た。事は一刻を争う事態だから、無理やり押し通った。殺生はしないように告げたが、それでも警備隊の者たちに被害が出たのならば、謝罪しよう」
知らねえ。
俺もファルガも、あんなに冷たい目で、厳しい口調で話すあいつを知らねえ。
あいつは違う! 俺たちの知っている奴じゃねえ!
別人だ!
でも、誰だ?
それなら、あそこに居るあの男は、誰だ?
「あら、じゃあ、一体何の話があるのかしらん? ねえ? 『聖王』に選ばれた六人の聖騎士の一人……エルファーシア王国の将軍、『聖騎士将軍・タイラー』様が、私に何の用ん?」
なんで、タイラーがここに居るんだよ!
「大体、人類でも最高戦力クラスのあなたが、こんな所に来ている暇があるのかしらん? まだ新聞には載っていないけど、私も知っているのよん? 先日の神族大陸で行われた大規模な大戦……人類大連合軍は『ジーゴク魔王国』に大敗したってねん」
ん? ん!? ちょ、え……!? ママンの奴……今、なんて……
「流石に情報が早いな……」
「ふふふ、人類大連合軍は出陣した六人の光の十勇者の内、『魔導老師ダウン』、『聖獣騎士ディラン』の二名が戦死。多数の死傷者と共に、人類大連合軍は占有していた神族大陸領土を半分以上失った」
ただでさえ訳の分からない状況の中で、ママンが口にした言葉が余計に俺を混乱させた。
隣を見ると、ファルガも言葉を失っている。
「ああ……予想以上の被害だったそうだ。やはり、七大魔王国家の中でも一~二を争う最強の超巨大国家の力は人類の想定を大きく超えていた」
「当然よ~ん。ジーゴク魔王国……『鬼魔族』たちの国家。その凶暴性と強靭性は、生物界最強種族とも呼ばれている……何よりも、『魔王キシン』は私やイーサムですら決着をつけられなかったほどの伝説の怪物よん? さらに、『大将軍ゼツキ』もいるしねん。人類連合軍が勝てなくても仕方ないわ~ん」
バカな。人類大連合軍が大敗? 十勇者にも戦死者が出るほど、甚大な被害を受けただと?
みんなはどうした?!
フォルナは?! バーツやシャウトは?! 他の奴らは!?
綾瀬は!?
俺がちょっと子供作って、フットサルやっている間に、世界は何てことになってんだよ!?
「そうだ。まだロア王子やフォルナ姫たちは反撃を試みようとしているが、既に勢いは……だからもし、残る十勇者たちも戦死するようなことになれば……」
「……そうねん……バランスが崩れるわねん」
「その通りだ。何百年と続いた三種族の軍事バランスがついに崩れる。それに伴い……始まってしまうぞ? 地上世界の崩壊、そして何千万と積み重なった屍を贄として現れる……『神族』との戦がな……それだけは防がねばならぬ」
「あらそうなのん? ふふふ、あなたも相変わらず大変ね~ん。聖騎士なんかになったがために……人類『だけ』のために戦えなくなって……せっかくの英雄が裏工作ばかりの日々……見るに堪えないわねん」
だから、何なんだよ……あいつはやっぱり、本物のタイラーなのか?
でもだとしたら、どうしてラブ・アンド・マニーと?
ジーゴク魔王国? 神族?
そして、ママンと何の会話をしてんだよ!