異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第187話 噂

 触れた瞬間、肉片が飛ぶ。

 俺の魔法も、接近すればするほど効力が増すみたいだが、アレを相手にして効果があるかどうかはやってみないと分からない。

 だが、失敗すれば死ぬ。ゼロか一かのギャンブルだな。

 こうやって一歩一歩、暴れる青鬼へ向かうだけでもギリギリなんだからよ。

 毎回チロタンの時のようにうまくいくとは限らねえしな。

 

「ヴェルト様、遠距離、中距離でお願い致しますであります」

「奴の間合いは果てしなく長い。金棒の風圧だけで常人の肉体は消し飛ぶなり」

 

 ああ、近づいても、出来るだけ接近はしたくねえ。何とか遠目から放つ技で対処するしかねえ。

 それに、広範囲の技を繰り出されても困るからな。

 

「マジックガトリング!」

「古の雷鳥よ、野性の雷を持ってして相手を討ち取るなり! ライトニング!」

「魔極神空手・正拳砲!」

「ふわふわ空気爆弾」

 

 ルンバの魔法銃の連射。

 バルドの召喚した雷を纏った魔鳥の雷撃。

 ジョンガの正拳突きから放たれた拳圧。

 そして、俺の見えない空気爆弾。

 

 

「ガハハハハハハハ、フハハハハハハハハハ! どうした、人間ども! 決死で臨む者はもう居ないか!」

 

 

 軍のど真ん中で猛る、ゼツキ。だが、隙だらけだ。当たる!

 

 

「ん?」

 

 

 気付いた。でも遅い!

 

 

「ふん、こそこそと……つまらぬマネをするなァ!」

 

 

 その瞬間、ゼツキの肉体に足元の大地がまとわりついていく。

 それはやがて、全身から頭部の全てを覆う、プロテクターとなり、完全無欠な鎧と化した。

 

 

「魔道装備・怨虎地神!」

 

 

 完全に捉えたはずの攻撃だが、硝煙の中から現れたゼツキの鎧には、傷一つついてなかった。

 圧倒的な攻撃力に加えて防御力。

 

「む、無傷であります」

「化け物なり」

 

 ルンバたちの表情が引きつる。

 だが、俺は逆にチャンスだと思った。

 どんなに外部からの強度がすごかろうと、鎧そのものが攻撃したらどうだ?

 

 

「ふわふわ圧迫!」

 

 

 全身土だらけなら好都合。その土で全身を締め付ける。

 

「潰れろオ!」

「ん? おっ、お? おお! ッぬどりゃああああ!」

「お、おお……」

 

 鎧の意味あったのか? ゼツキが全身の筋肉を盛り上がらせた瞬間、鎧が粉々に砕け散った。

 鎧よりも遥かに強い強度じゃねえかよ。

 

「ふん、ちょこざいな。何者だ! 出て来い! 吾輩と勇敢に戦え!」

 

 アホが。誰が付き合うか!

 だったら、ヤケクソだ!

 

 

「ふわふわ世界《ヴェルト》!」

 

 

 どうせ兵隊が何人がかりでも勝てないんだ。

 なら、利用させてもらう。

 

「な、なんだ! け、剣が勝手に!」

「盾が!」

「俺の槍が!」

「引き寄せられる!」

 

 死んだ人間から生きてる人間に至るまで。

 この戦場で俺の可能な範囲で届く武器全てに浮遊《レビテーション》をかけてゼツキの上空へ一点に固める。

 

 

「これは…………」

 

 

 数百数千の刃をむき出しにした巨大な球体は直径二十メートルほどの大きさになり、それを落下速度と、俺自身が操ることによって生み出される加速で、一気に叩きつける。

 

 

「ふわふわ剣《ソード》の隕石《メテオ》」

 

 

 ただ、落下させるだけじゃねえ。回転させる。

 むき出しになった刃が回転することによって、ズタズタに引き裂く。

 手抜きも遠慮も容赦も一切するわけにはいかねえ。そう思った。

 こいつの金棒が、フォルナたちに届くぐらいならと。

 ただ……

 

 

「ふふふふふ、ふははははは、面白いものだ! こんな芸は初めてだぞ!」

 

 

 簡単にはいかねえか。

 激しい閃光と共に剣の隕石が粉々になり、クレーターの底からゼツキが飛び出してきた。

 それに、スゲー機嫌良さそうで、元気満々だった。

 だが……

 

「なんという男であります」

「いや、それでも見るなり!」

「ッ、我らの王が、これほどとは……」

 

 ルンバたちがゼツキの強さに驚愕する一方で、僅かな希望を表情に浮かべた。

 それは、

 

 

「くくくく、見事だ。久方ぶりだぞ? 吾輩が血を流したのはな!」

 

 

 ゼツキの額から僅かに血が流れ出す。それは致命傷とまではいかないまでも、確かに数ミリほどの切り傷を負わせた。

 最強クラスであっても、無敵じゃねえ。それを証明できたからだ。

 

「ちっ、これだから脳筋は。脳味噌まで最強に出来てやがる」

 

 どうする? 腹くくってチロタンの時みたいにガチンコでやるか……それとも……ん?

 

「今の、彼がやったのか?」

「彼だ! ヴェルト様だ! フォルナ姫の婚約者にして、帝国防衛の英雄!」

「すごい! あの……あの、ゼツキを相手に傷を負わせるなんて!」

 

 ちょっ、ちょっと待て!

 

「おい、頼むからざわつくんじゃねえ! 相手にバレるだろうが」

 

 あんま俺に注目しないでくれ。

 何とかある程度の距離から姑息にセコくダメージを与えようとしてるんだから、居場所がバレちまったら意味ねえだろうが。

 

「何とも頼もしい限りであります、ヴェルト様!」

「我らの王は、やはりとてつもないお方だったなり!」

「命をかけて付き従いたい。そう思ったのは魔王、王女、姫、そしてあなたで四人目でしょうが!」

 

 って、お前ら意外に頭がお花畑だな!

 つか、やべえ! 何でだ? なんか、俺の目の前に居たはずの連中が二手に分かれて、道を開けやがった。

 そして、その道の向こうには、金棒担いだゼツキが笑みを浮かべてた。

 

「ほう、貴様か。これまでの面白い攻撃は」

「クソが! バレた!」

 

 おもくそ、目が合った。

 すると、ゼツキは暴れるのをやめて、落ち着いた様子で一歩一歩道を歩き、俺へと近づいてきやがる。

 んで、人類大連合軍たちに俺を守る意思はまるでなし。

 まるで、俺とゼツキの決闘を演出するかのように、やがて道を開けるだけでなく、直径百メートルほどの円を作って俺たちを囲んだ。

 いらねえ、計らいをしやがって。

 

「ん? おお、そちらの三人は見覚えがあるぞ。シャークリュウに仕えていた四人のロイヤルガードたちだな」

 

 ルンバたちを指差すゼツキ。ルンバたちは無言でゼツキを睨みかえした。

 そして、ゼツキの視線が俺に注がれる。

 

「ふむ。貴様も知っているぞ、若造。名は、ヴェルトだったな?」

 

 えっ? マジで? 

 

「確か、麦畑で生まれたこの世で最も凶暴な男だったな」

「やめろおおおおおおおお! それを言うなあああああああああ!」

 

 不意打ちっていうか、予想外すぎる。

 まさか、こいつの口から出てくるとは。

 黒歴史。あの日に戻れるなら殴ってでも訂正させてえ!

 フォルナに対して言った言葉で、世界に向けて言った自覚はないのに!

 

「なんと、ヴェルト様にそのような異名があったでありますか!」

 

 ちげーよ! それを真に受けんなよな!

 

「はっはっはっは、面白いな若造」

「おもしろくねーし! 頼むからそんなあだ名を広げるの、マジやめてくれ!」

「もとよりそのつもり。貴様の異名が別にあることぐらい、吾輩も存じている」

「あっ? 異名? ねーよ、そんなもん」

「フォルナ姫の弱点を探っているうちに、貴様のことは調査報告に上がっていた。エルファーシア王国周辺で名を上げていた男」

 

 はっ? 俺の異名? このオヤジ、何を言ってんだ?

 俺に異名なんて……

 

 

「リモコンのヴェルトよ」

 

「それもやめろおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 

 何でだ? 名前が売れること自体は別に悪くねえけど、いらんもんまで広まってやがる。

 つか、何でこいつは知ってるんだよ!

 

「ふふ、若造。貴様とまさかここで出会えるとは思わなかった。だが、一度会ってみたいとは思っていた」

「はあ? おいおい、あんたみたいな最強無敵な鬼様が、あんなマッキーラビット倒したぐらいの俺と会ってどうすんだよ?」

「いや、ラブ・アンド・マニーのこととは関係ない。フォルナ姫の調査とは別に、お前のことは、ある男から酒の肴に聞いていた」

「な、なんだと?」

 

 どういうことだ? 俺のことを誰かから聞いていた?

 酒? おいおい、こんな鬼と酒飲めるようなすごい奴、俺は知らな……

 

 

「四獅天亜人の一人、武神イーサムだ」

 

「はあっ?」

 

 

 イーサム! その名前に俺の心臓は跳ね上がった。

 いや、ルンバやその場にいた人類大連合軍も驚愕していた。

 

「ま、待てよ! 何でイーサムが! つか、そもそもあいつは亜人だろうが! 魔族のお前と何で酒を飲むんだよ!」

 

 そうだ。人間と魔族同様に、魔族と亜人だって戦争相手だ。

 それなのに、何で酒を飲めるんだ? という問いに、ゼツキは笑った。

 

 

「ふはははははは、随分と小さなことを言うではないか。イーサムから聞いたぞ? お前が、人間、魔族、亜人という種族の壁を越えた仲間と共に、イーサムと戦ったことを。そして、シロムを襲撃していたイーサムを見事撤退させたことを」

 

「「「「「え………えええええええええええええええっっ!!!!」」」」」

 

 

 俺よりも、聞いてた周りが驚いていた。

 

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