異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第197話 俺だからこそ行く

「魔王キシンと六鬼大魔将軍のゼツキが終戦を宣言しているものの、兵たちの不満が爆発! 後に処刑されようともこちらへ突撃する構えを見せております!」

 

 

 ミルコは言った。止めることはできないと。

 そして、俺はそれに対する考えが甘かった。ここまで、戦わなくちゃ気がすまねえもんなのかよ?

 

「ロア! やはり信用すべきではない! 我々も迎撃の態勢を整えねば、逆に全滅させられる!」

「ああ、悲しい。やはり、分かり合うことはできないのですね」

 

 ほれ見たことかと、兵たちは再び抗戦の声を上げる。

 ママンの声でようやく収まりかけたものが、まさか敵の方からもぶち壊しにかかってくるとは、まったくの予想外だった。

 

「やってやる! 全滅させてやるぜ、鬼どもが!」

「おい、隊列を整えろ! 鬼どもに後悔させてやるぞ!」

 

 ああ、終わったはずの、誰もが終わらせたかったはずの戦争を、どいつもこいつも自らの意思で再び始めようとしやがる。

 

「やめないか! 敵はまだ攻めてきていない! こちらから仕掛けるような真似は許しません!」

「現実を見ろ、ロア! やらねばこちらがやられるのだぞ!」

「ダメよ! ダメ、村田くんを……キシンを信じて!」

「アルーシャ姫。もう止まりません」

「ロア! アルーシャ! ゴメン……でも、やっぱり戦うしかないよ!」

「やられてたまるかよ!」

 

 光の十勇者でも、反対するのはロアと綾瀬のみ。

 他の連中も、敵の動きを見せて即座に抗戦の意思を示す。

 

「あ~~~~んもう! これだからいやなのよ~~~~ん、戦争って!」

 

 ママンがそう言いながら飛び出した。どこへ?

 荒野のど真ん中。

 両軍が向かい合う中心に向かった。

 

「ママン! まさか、まさか止める気かよ!」

 

 無理だ! いくらなんでも両方向から万の軍で突撃してくる両軍を、いくらママンでも止められるはずがねえ。

 

 

「構うな! 四獅天亜人のユーバメンシュをも踏み越えて行け!」

「人類は絶対に滅びない! 家族を、友を、仲間を、絶対に守る!」

 

「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」」」」」

 

 

 もう、止まらねえ。

 そして、その怒号にも似た雄叫びが、敵軍からも聞こえてきた。

 ミルコ………お前もダメだったか?

 

 

「ちっ、くそがああああ!」

 

 

 気づいたら俺は飛んでいた。

 止められるわけがねえ。でも、ママンを一人でやらせるわけにはいかねえ!

 

 

「ッ、ヴェルトオオオオオオオオ!」

 

 

 だが、フォルナが飛んだ俺を雷速で捕まえた。

 

「フォルナ! 離せ、このままじゃ取り返しのつかねえことになるんだよ!」

「いや、ダメ! 絶対に離しませんわ! ダメ、ダメ、いやあああああああああああ!」

「フォル……ナ……」

「離しませんわ離しませんわ離しませんわ……絶対に……イヤアアアアアアアアア!」

 

 フォルナが……あの、いつも誇り高く、堂々としたフォルナが、幼い子供のみたいに錯乱して泣きじゃくった。

 

「お、おい、落ち着け、フォルナ! それに、今はそれどころじゃ……」

「亜人が何なのですの! 鬼魔族が何なのですの! そんなの……放っておけばよろしいですわ!」

 

 俺は、フォルナの口からありえない言葉を聞いた。

 

 

「分かりますでしょう! もう、どうしようもありませんの! 戦うしかありませんの! でも、ヴェルトがそれを気に止む必要はありませんの! あなたは全力を尽くした。多くの者を救った。どうして、どうしてこれ以上をあなたがする必要がありますの!」

 

「バカやろう! お前だって見てただろうが! 俺の事情も知ってるだろうが! 俺のかつてのダチが、テメエを押し殺してまで止めようとしてたんだ。それがこんなことになろうとして、無視できるかよ!」

 

「ダメ! 無視しなさい! あなたはヴェルト・ジーハなのだから……もう、アサクラリューマに振り回されるのはおやめなさい!」

 

 

 俺はその言葉に、思わず胸が傷んだ……

 

「もう、いや。あなたと共に歩む未来を守るために、戦い続けたのに……あなたと過ごす時間を犠牲にしてまで頑張ったのに……あなたはフラッと現れて……みんなを救ったり、戦いを止めたり……でも、一歩間違えたら死んでしまったかもしれませんのに! そして、挙げ句の果てに、キシンは友達で、アサクラリューマの顔で、アサクラリューマだけの思い出の会話をして、ワタクシは蚊帳の外で……」

 

 フォルナには、俺の全部を話してやった。

 でも、それが逆に、こいつにとって俺はヴェルト・ジーハとして生きるよりも、朝倉リューマとして生きることを優先させているように見えたのかもしれない。

 そして、俺が朝倉リューマを優先した結果、傷つくかもしれない。取り返しのつかないことになるかもしれない。死ぬかもしれない。

 それが、もうフォルナには耐えられないんだろう。

 

「おい、ヴェルト!」

「ヴェルト、姫様!」

「ヴェルト!」

「ヴェルトくん!」

 

 人類大連合軍が抗戦の意思を叫ぶ中、シャウトやバーツを始め、旧友たちが俺とフォルナの下へ駆け寄ってきた。

 そして、フォルナと同じような目で、俺の肩を掴む。

 

「ヴェルト、もう何があったか、ゼツキ、魔王キシン、そしてユーバメンシュまで、君がどうしてそこまで彼らとつながっているかは聞かない。でも、頼む、行かないでくれ!」

 

 シャウトが……

 

「お前、この戦いを止めるために、ど真ん中に行こうとしてんだろ? やめろ、そんなマネぜってーさせねえよ!」

 

 バーツが……

 

「バカやろう。もう事情なんて知らねえよ。でもな、今の姫様を置いていったら、ぜってーぶっとばすぞ!」

 

 シップが……

 

「ヴェルトくん。もう、無理はやめてくれ」

 

 チェットが……

 

「どうして? どうしてヴェルトくんがそんなことをするの?」

 

 サンヌが……

 

「もう、あなたは英雄、人類の英雄よ! もう、いいじゃない。十分やったわ!」

 

 ホークが……

 

「ヴェルトくんは……私たちのヴェルトくんなの……だから、お願い……」

 

 ペットが……

 

「ヴェルトくん! ダメだ、もうこれ以上は! 姫様が、私たちが……ボナパさんたちがどう思うか、考えて欲しい!」

 

 ガルバが……

 俺が、どうしてそんなことをしようとしているのかは分からないが、俺が何をしようとしているのかを分かったからこそ、こいつらはこんなツラして慌てて駆け寄ってきた。

 もう、この戦争は止まらない。だからもう、無茶なことをするな。

 みんながそう言っていた。

 だが、その時だった。

 

 

「ヴェルト。あんたがそんなにまでして無茶しようとするのは……世界の真実を知ったからかい?」

 

 

 一人だけ、冷静な口調でハウが俺に問いかけた。

 

「ハウ? 何を言ってますの?」

 

 ハウの言葉の意味が分からず、フォルナたちが問いかけるが、ハウは真っ直ぐ俺を見たままだ。

 

「答えな、ヴェルト。あんたは……戦争結末の先と、神族のことを知ったんだろ?」

「……ハウ……テメェ、なんでそのことを……」

「ヴェルト、答えな。あんたは、その真実を知って、世界を守るために戦おうとしているのかい?」

 

 俺はその問いかけに一瞬だけ止まった。どうしてハウがそのことを知っている?

 その答えは分からない。でも、その代わり、問いかけだけには回答する。

 何故、俺が戦おうとするのか? 

 神族と世界の真実を知ったから?

 

「んなバカな」

「じゃあ、なんでだい?」

 

 違う。タイラーの話は関係ない。

 俺が今動くのは…………

 

「ハウ……そして、フォルナ、もしこれが……俺が朝倉リューマなら逃げていたし、関わらないでいた。でも、この世界で過ごし、お前たちと出会い、そして多くのもんを見てきた、ヴェルト・ジーハだからこそ、行くんだよ!」

 

 ああ、昔の俺なら興味ねえし、アホらしいから関わらなかった。

 でも、ヴェルト・ジーハは違う。

 俺は朝倉リューマに振り回されてんじゃねえ。

 ここで動いちまう、ヴェルト・ジーハという人間になったからこそ、動いちまうんだ。

 

「ヴェルト……ッ……」

 

 すると、フォルナは強くしがみついていた俺の腕から手を離し、今度は優しく手を握った。

 そして……

 

「ヴェルト、あなたは帝国でも、そして今回も、遠く離れたワタクシのもとへと来てくれましたわ。だから、今度はワタクシがあなたのもとへ行きます」

「フォルナ?」

「あなたを一人で行かせませんわ。それでも行くというのなら、ワタクシも一緒ですわ」

 

 死ぬときは一緒……まるでそう言っているように見えた。

 だが、フォルナは本気だ。その柔らかい笑みは、光の十勇者でも、王国の姫としての顔でもなく、昔から見せていたただの女の子の顔。

 なんだか、それを見ると、色々とおかしくなってきた。

 

「愛されてるね~……俺は……」

「十年前から知っていたでしょう?」

 

 上等だ。俺はフォルナの手を強く握った。

 

「一緒に行くぞ!」

「ええ、二人なら、最強無敵ですわ!」

 

 俺は、フォルナの手を引いて、そしてフォルナも並んで、俺たち二人は人類大連合軍を飛び越えていった。

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