異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第248話 いざ、改めて旅立ちへ

 振り返ったら、先生が少し切なそうな表情をしていた。

 

「行くんだな、ヴェルト」

「ああ、カミさんとハナビにはよろしく……って、俺のこと覚えてねーんだけどな」

「ッ、バカが!」

 

 冗談なのに冗談と捉えてくれなかった。先生は心底複雑な表情で俺の肩を掴んだ。

 

「……もし、宮本と会ったら、よろしく言っといてくれ」

「ああ。あいつが老衰する前に、ラーメン食いに連れてくるよ」

「ああ」

 

 本当はもうちょいゆっくりしたい気もするが、さすがに綾瀬やカー君、さらにミルコや加賀美を連れた状態でこれ以上この国に居るのも危険だからな。

 国王様なら先生に対して多少の融通は利かせてくれるだろうし、ママもさっきの様子だとこれ以上は聞く様子もなさそうだ。

 だが、他の兵士たちの目もあるし、これ以上騒ぎが大きくなる前に退散したほうが良さそうだと思い、俺たちはすぐにでも立ち去ることにした。

 

「ま、待つでござる!」

 

 その時、ムサシが立ち去ろうとする俺を呼び止めた。

 

「そ、そなた、何者でござる! なぜ、二年前捕らえたおぬしがこの国で、それに店長や国王様、さらには……カイザー将軍や、アルーシャ姫、ジャックポット王子にユズリハ姫まで……、そなた自身は何者でござる!」

 

 お前の元ご主人様なんだけどな……

 

「そんなこと、どーでもいいじゃねえか」

「な、なんと! 拙者の疑問を誤魔化さないで欲しいでござる!」

「なんでだ? それによ、お前にとって一番大事なのは……俺じゃねーだろ?」

 

 そう、今のムサシが優先すべきは俺じゃねえ。だが、それは悪い意味ばかりではない。

 それは、俺ではなく、俺の大事なものをこいつがしっかりガードしてるからだ。

 

「ハナビとコスモス……お前は二人を何よりも守ってりゃそれでいいのさ。分かったな?」

「な、む、無論でござる! 言うまでもない! そのような当たり前のことを今更拙者に言うとは何事……って、あれ? な、なぜ拙者は片膝ついて頭を下げてるでござるか!」

「くははははは、か~わい~ね~、お前は。ほれ、ナデナデ」

 

 思わずムサシの頭を撫でてやった。

 すると、馬鹿にされたと思ったのか、ムサシは烈火のごとく……

 

「き、貴様ッ! 拙者を愚弄するなでごろにゃ~~~ん♥」

 

 烈火のごとく、犬猫のように腹見せて地面をゴロゴロ、尻尾をパタパタ、耳がピコピコ……

 

「って、拙者としたことがああああああああああああああ!」

 

 ヤバイ、ハマる!

 

「……む~……ガブっ!」

「って、いって! なにすんだ、ユズリハ! オラッ!」

「ひ、ひんっ! ま、まだぶっだ! まだたたいた! そいつはあたまなでるのに……私の方がかわいいのに……うぅ……」

「な~~~、ゆ、ユズリハ姫~! お、おぬし! なんということを! イーサム局長に殺されるでござる!」

 

 ま、名残惜しいが、いつまでもじゃれてるわけにもいかねーな。

 正直、ムサシを目の前にして、他にも色々したいことも話したいこともあるが、これ以上はダメだな。

 余計に名残惜しくなる。

 今はただ、こいつがこうして元気で、今では俺の大事なもんを守る番犬になってくれてることを喜ぶべきなんだろうな。

 

「ムサシ……」

「ハハッ! ……って、また拙者は~~! う~、な、なれなれしく拙者の名を呼ぶなでござる!」

「……先生のこと、カミさんのこと、ハナビ、コスモス、んで、エルジェラとウラのことを頼んだぞ!」

「御意ぃ~~~って、も~~なぜ拙者は~~~!」

 

 これ以上笑いを堪えるのも無理そうだから、俺は視線で「先生もムサシの面倒頼む」とだけ合図を送り、先生もウインクで応えてくれた。

 

「ヴェルト……」

「国王様。なんで、先生が俺の記憶を覚えてるかは……聞かないでくれ……先生にも手出しは絶対にやめてくれ……」

「……分かった……今日のことは私の中だけにとどめよう」

 

 国王様にも最後に釘だけさして、そして最後に待ち受けるは、ママ。

 

「またな、マ……女王様……」

「……ふん、なんだろうね~、……まっ、簡単にくたばるんじゃないよ」

 

 これだけでいい。アッサリとした別れだがこれで十分だ。

 

「ほな行くか、あんさん。北の海に位置するスモーキーアイランド」

「YES。バーット、どうやって行く?」

「だな。おい、ユズリハ、お前ドラゴンの姿になって、背中に乗せてくれるか?」

「なっ! ふ、ふざけるな! この誇り高い竜族の私の背中に乗るとでも言うのか! 兄がやれ! 私を馬や騎獣と一緒にひいいいいいん♥ ま、またお尻……♥」

 

 なんだかすっかりチワワみたいに震えだしたユズリハは、ちょこんと俺の裾を掴んで、震える唇でこう言った。

 

「のせる……いいこする……だから、いじめないで」

「ああ、いいこいいこしてやる」

 

 やばい、ちょっと可愛い。ムサシは懐くのすごい早かったから躾もなにも必要なかったが、この叱って言うことを聞かせる感覚は、なんか今までなかったものだ。断じてイジメているわけではない。俺なりの愛情があるんだ。だいたい、この程度でイジメだったら、俺はこの国の女王を虐待だとかで訴えて百パー勝てる自信がある。

 

「でも、そこくさいんだろ? 私、そこまでとびたくない」

 

 何だか俺にビクビクして、それだけはできないと訴えてくるユズリハ。

 やばい、ギュッとしてやりたくなる……じゃなくて、確かに話によれば、騎獣の類が近づくのは相当キツいらしいが……

 

「それなら心配ないゾウ」

「そうね、近くまで飛んでくれたら、問題ないわ、ユズリハ姫」

 

 自信アリげに、カー君と綾瀬がそう言った。

 

「小生らそれぞれの力を出せば、それほど上陸まで難しいことではあるまい」

「そうね。それに、ファンレッド女王の言うとおり、この程度をどうにかできないようでは、世界なんて夢のまた夢だからね」

 

 なんとも頼もしい。カー君はもとより、綾瀬が初めて頼もしく見えた。

 ならば、問題ない。

 

「ほな、ユズリハ、ガンバや!」

「う~~~~~、ううう~~~、竜化は可愛くないから嫌なんだ……うう~、ウウウウウウウッ!」

 

 その瞬間、渋々ながらも咆哮するユズリハの肉体が変化していく。

 小柄な肉体が盛り上がり、その全身が赤いウロコを纏い、鋭い二本の角、巨大な両翼、光る爪、腕、脚、そして……

 

 

「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 

 そして、巨大な威厳、威光、威圧、圧倒的な『威』。

 

「お、おお~……」

「ヒュ~、ビューティフォー!」

「パナパナイ!」

「お美しいゾウ、ユズリハ姫」

 

 見上げながら思わず息を飲んだ。以前、クレランが能力で生み出したドラゴンたちともオーラが違う。

 その身に纏う神々しさが、生物としての格を物語っていた。

 

「な、なんとも巨大な」

「う、美しいでござる」

「くく、伝説の朱色の竜……また、随分とレアなペットを飼ってるじゃないかい」

 

 ドラゴンを初めて見るものもそうでないものも、そのユズリハの完全竜化した姿には圧倒されていた。

 てか今、噛まれたりしたら、俺、百パー死ぬな。

 

「ゴミ……じゃなかった、え、えと……のっていい」

 

 でも、ちょっとビクビクしてて、目が弱々しい! 圧倒的な『威』が一瞬で萎んだ。

 誰だ、ユズリハいじめたのは! 俺だ!

 でも、良かった。さっきみたいな態度でこの姿になられたら、命がいくつあっても足りねえからな。

 だが、ムチばかりじゃ、ストレス溜まりすぎて癇癪を起こされる可能性もある。

 ここは…………

 

「ユズリハ……その……かわいいぞ」

「グルッ! ば………馬鹿だお前は! バカ……じゃ、なかった、バカって言ってすまん……でも……バカゴミ……」

 

 あら? ちょっと体を撫でて褒めてやったら、なんか巨大なドラゴンが身をよじらせてモジモジしだした。

 

「ぼけ~~~~~」

「おい、ムサシ、なに羨ましそうな顔してんだ?」

「て、店長! な、なにを、拙者、別にあの男に褒められて頭撫でられるユズリハ姫が羨ましいなどとは決して思っていないでござる!」

 

 その背中は、俺たちが乗るには十分すぎるスペース。

 俺たちはユズリハの背中に飛び乗り、空の旅へと出発をする。

 この感覚、そういや、ドラの背中に乗った時以来だな。 

 だが、物質だったドラの背中に比べて、ユズリハの鼓動を感じ、そして温かさも感じるな。

 

 

「落ちたら知らないぞ」

 

 

 巨大な両翼が羽ばたく。墓地に突風が吹き飛ばれ、先生たちが飛ばされないようにしっかり堪えてる。

 どんどん地上から離れていくのを見下ろしながら、俺や綾瀬は大きく手を振る。

 

「先生ッ! じゃ、また行ってくる! 国王様も女王様も、じゃっ!」

「先生、またご挨拶に伺います! エルファーシア国王様、女王様、大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません!」

「See you again!」

「また、ラーメンよろしくっす!」

 

 先生が思いっきりピースサインをこっちに向けている。

 俺も綾瀬も真似してピースサインで合図。

 

「ヴェルト! いつか……必ずまた……」

「ふん、……まっ、……体に気をつけな」

 

 国王様とママの呟きは風に乗って確かに聞こえた。

 ムサシが何だか寂しそうにアタフタしてるが、大丈夫か?

 

 

「おい、ゴミども、飛ぶぞ? ちゃんと捕まってろ」

 

 

 ユズリハが一言そう呟いた瞬間、身を切るような風の刃が俺たちの肌を駆け抜けた。

 

 

「うおっ!」

「つっ!」

 

 目も開けられないような世界。強烈な逆風を受けながら、一瞬で空を駆け抜けるユズリハの速度から見る世界は、一瞬でエルファーシア王国が遠い彼方へと消えてしまった。

 

「こ、これはすごい速度ね……」

「パナイね~、なんつ~世界一贅沢な飛行機だね」

「くぅ~、ユズリハ、すげーじゃねえか。お利口さん」

 

 ポンポンとユズリハの体を叩くと、なんだか心臓の音がすごい大きく、そして速く聞こえ、体も若干温度が上がっているような気がした。

 

「ぬ、ほ、褒めたのか? お前が私を褒めたのか! どうしたんだ、優しくなったのかお前は! もう、ぶたないのか!」

「ああ、すげーすげー。お前がこんなにスゲーとは思わなかったよ。すごいな、お前」

「ッ! ……~~~~~~~……えへへ、褒められた♥ ……お前、これからも私の頭撫でるなら、たまにならお尻触ってもいいぞ?」

 

 

 

 

――第七章完――

 

 

 

 




これにて第七章は終わり。次の章に入ります。次の章もまた前世組含めた色々な連中の心の葛藤があったり、恋愛やら、さらには天使の子供が絡んだりします。そう、ようやくあいつが……。お楽しみに。引き続き、作品の『お気に入り登録』だったりご評価お願い申し上げます。では!
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