異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第25話 本当の俺たち

 魔王の一言。

 

「二人で話がしたい」

 

 護衛の連中やウラたちが止めたが、今、俺たちは魔王の天幕に二人だけでいる。

 誰も聞いていない。その状況を確認して、俺たちは互いに言葉をかけた。

 

 

「とりあえず、久しぶりだな、鮫島」

 

「うむ、久しい…………おほん、よ、よお、久しぶりだな、朝倉」

 

 

 魔王が人間の高校生になった。

 

「くはははは、まっさか、あの空手部の堅物くんが魔王様になってるとはな。どーせなら、自分のことをワガハイとかって言ってみたらどうだ?」

 

 魔王の天幕で、俺は腹を抱えて爆笑してしまった。

 そして、魔王はさっきまでの威厳が消え、急に顔を赤くしてしまう。

 

「ぐっ、い、いいんだよ! 俺は、本当に魔王に生まれて育ったんだから! つーか、今は鮫島遼一が死んだときより年齢が上なんだから、むしろ今の口調の方が不自然なんだよ!」

「くはははは、口調がガキに戻ってるぞ? てか、キャラ変わりすぎじゃね?」

「お前が変わってなさすぎなんだよ! つーか、何だよその姿は! お前は今、何歳なんだよ!」

「十歳。お前の娘とタメみたいだな」

「な、なんて生意気なクソガキなんだ……」

 

 目の前にいるのは、もう魔王ではなかった。

 鮫島だった。

 

 

「は~……鮫島という名前や日本のことを思い出しても、正直俺には関係なかった。自分は本当に魔王だと思っていたし、変な幻覚を見たぐらいにしか思わなかった」

 

「まあ、そういうこともあるのか? 俺も不思議な感覚ではあったからな」

 

「戦争中だから気にしている余裕もなかったけど……あの記憶は、全部本物だったんだな」

 

 

 少し気を落ち着け、深いため息をしながら上を見上げる鮫島は遠くを見るような切ない瞳で俺に問いかけた。

 あの世界、あの記憶、俺たちの前世は本物だったのか?

 それはもう俺たちの存在そのものが、本物である証明。

 

「ああ。んで、お前が妄想だと思っていた記憶……それって修学旅行まででいいんだよな?」

「あ、ああ。バスが転落して、そこまでは覚えている。は~、どっちが本当の俺だったんだかな」

「まあ、そりゃーそうだよな。俺だって、しばらくは自分がヴェルト・ジーハなのか、朝倉リューマなのか分からなかったからな」

「そうか。皮肉もんだよな。もう二度と戻れない道へと踏み出して、兵を率いて人間たちと戦い続けた俺の正体が、もともと人間だったなんてな」

「ああ。運が悪かったな」

「ったく、簡単に一言で済ませやがって。俺の転生してからの人生は波瀾万丈だったんだぞ?」

 

 ハッキリ言って、俺たちはそれほど仲が良かったわけではない。

 一緒に弁当を食べるとか、土日に遊びに行くとかもなかった。

 体育祭で一緒にリレーで走ったことはあったが、それぐらいしか関わりがない。

 でも、どうしてだろう。俺たちの会話は止まらなかった。

 

 

「あの世界の、鮫島遼一の記憶が全て幻でなく、実際にあったことなのだとしたら…………あの頃は幸せだったな。学校も楽しかったし、クラスも最高だった」

 

「まあ、それなりにな」

 

「みんな面白かったよ。残念王子のイケメン星川と学校一美人のテニス部主将だった綾瀬、天然劇場でいつもクラスの中心にいた神乃や、女にだらしないチャラ男のイケメンのくせに、本当はスゲー友達思いだった加賀見、ジジイ臭くて大人しかったけど実はメチャクチャ強かった剣道部の宮本、普段はスゲー派手でイヤらしいギャルのくせに、本当はピュアだった備山。そうそう、お前とツルんでいた木村、村田の木村田コンビもお前が学校に来るようになってからは、フツーに行事に参加したりと打ち解けてたな」

 

 

 俺も覚えている。仲がイイ悪いは別にして、他にも色んな奴がクラスにいて、それを思い出すとすごく懐かしかった。

 

「んで、堅物だけど熱いところもある……空手部エースだった鮫島」

「ははは、そして、不良で喧嘩ばかりというわりには、情に脆くて、ひねくれてるけど実は義理堅い、好きな子に素直になれない、朝倉リューマを忘れちゃいけないな」

「え? す、すす、好きな子?」

「ああ。お前、神乃が好きだっただろ?」

「えっ……俺ってそんなにバレバレだったか?」

「だって、ほとんどみんな知ってたぜ? っていうか、今だから言えるけど、結構お前の恋愛事情は注目されてたんだぜ?」

「ちっ、そんなに俺はみっともなかったかよ」

「いや、そうじゃなくて、綾瀬と備山はお前が好きだったんだぜ?」

「えっ? マジで!」

「ああ。綾瀬は確か、あいつが文化祭の時に実行委員として仕事に追われて過労で倒れそうになったとき、お前がおぶって保健室に連れて行ってから気になってとか」

「ちょ、あれは近くに俺しか男子はいなくて、それで神乃に頼まれただけであって、特になんかあったわけじゃねーよ」

「備山は体育祭のムカデ競争であいつが転けて、クラスの優勝が絶望的だったとき、お前がリレーのアンカーとして見事優勝した瞬間にやられたそうだが」

「あ、あれは、神乃も泣きそうだったから、死んでも勝とうと思って、って、まさかそれ以来、あいつが俺の前でよくパンチラ連発してたが、ワザとか? やべえ、なんか恥ずかしくなってきた」

「ははは、お前は不良を名乗るにはクラスにとけ込みすぎていた。お前、結構みんなに人気あったんだぞ? 男子の中でお前の恋がどうなるかの賭もあったしな」

 

 話していて、楽しかった。

 前世ではそれほど仲が良かったわけではなくても、共通の話題が出来るということで、これほど心が救われるとは思わなかった。

 だが、いくら俺たちが朝倉リューマと鮫島遼一だったとしても、今はヴェルト・ジーハであり、魔王シャークリュウでもある。

 その事実と現実は変わらない。

 

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