異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと   作:アニッキーブラッザー

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第269話 天賦の才

「ね、ねえ……マッキーくん、今、あの魔王……さらっと、ヴェルト君に『俺を倒した』とか言ってたけど、私の聞き間違いかしら?」

「い~~~~や、ハッキリ言ってたね。つか、なにそれ? パナ……」

「なになに、あいつ七大魔王倒したの? ヴェルトって強さイマイチ分かんねー感じだったけど、フツーにスゲーじゃん!」

 

 いや、今のこいつはパワーアップしているから、どうなるかはわかんねーし、あの時はお父さんパワー的な覚醒状態だったしな。

 

「ま、待て、どういうことだ? あの魔王は二年前、私たちが天空世界に行った時に、天空族が力を合わせて倒したはずだろ?」

「え、ええ。ただ、そこから一回脱走されて、でもあの時は……そう、それでも倒して……あの時はコスモスが生まれて……えっ? あれ?」

 

 だが、それでも俺がこいつを倒したのは事実。

 しかし、その事実は歪んだものとして認識していた奴らには、驚きを隠せないものだった。

 ウラやエルジェラを始め、チーちゃんの言葉に誰もがザワつき始める中、俺をずっと持ち上げてたチーちゃんの足元に、コスモスが飛びついた。

 

「ダメ、チーちゃん、ケンカやだ! パッパいじめないで!」

「って、アブねえ、コスモス! 来るんじゃねえよ!」

「や、やーなの! やっ! やなの! パッパ約束してくれたもん、もうずっと一緒だもん! だから、そしたらマッマもニコーってなるから!」

 

 えっ……いや……そんなこと……アルーシャ、お前、「そんなこと約束したの?」的な顔で睨むなよ。 

 してねーよ、そんな約束。

 

「おい、その話は本当か? もう泣かせねーか?」

 

 つか、何でそれをこのバケモンに聞かれて答えなけりゃいけねーんだっつーの。

 

「コスモス……どういうことなのですか? もう、私にはもう、何が、何がどうなっているのか……」

「マッマ! パッパだよ。パッパが今度からずっと一緒! そうなの! パッパ約束したの!」

 

 だから、してねーのに…………

 

「パッパ……そうでしょ?」

「……………………」

「……コスモスちゃんと、いうこときくから……コスモスとってもいいこにするから……パッパ!」

「……コスモス……俺は……その……やることが……あって、その……一緒にってのは……その……」

「ッ!?」

 

 胸が痛む。どう言えばいいのか分からない。

 この、あまりにもショックを受けたコスモスの表情に心が抉られる。

 

「みんな一緒! マッマも、ジッジもバッバもハナビねーねも、ムサシも、クレランおばちゃんも、ファルおじちゃんも、ウラちゃんも一緒だよ……でも……でも……パッパだけいないの……パッパいない……ぱっぱいないのやだ……」

 

 また泣き出したコスモスの涙が、もはや魔王がどうとか、サイクロプスがどうとかの問題を俺に忘れさせた。

 

「パッパのうそっこ……うそっこ、うそっこ、うそっこ! ぱっぱいっしょじゃないのやだ!」

 

 いや、それはこの場にいる誰もがそうだったのかもしれない。

 魔王の復活? だから? みたいな感じだ。

 気づけば、エルジェラもウラも、ラブ・アンド・ピースやサイクロプスの連中まで何故かもらい泣きしてる。

 

 

「おい、クソガキ。今のテメェの野望はなんだ?」

 

「……俺はただ……みんなが俺を忘れても……それでも世界を征服できりゃ……ずっと続くと思ってたんだ……ッ、事情も何も知らねえくせに……」

 

「事情だ~? 家族を大事にするやり方を勘違いしてるクソバカ野郎に、変えられる世界なんて一つもねーんだよボケナスがッ!」

 

 

 俺は、力任せにぶん殴られた。

 まともに喰らえば全身ミンチになると思える程のパンチを、生身で顔面に食らって、甲板の床の上をひっくり返った。

 それは、全身に来る痛みというより、胸に来る痛みだった。

 ズキズキと、俺の心を打ち砕いた。

 

「テ、テメェ……」

 

 つか、何で俺は、こいつにぶん殴られてんだ?

 

「ヴェルト君!」

「えっと……そろそろ、これはパナイぐらいどういう展開なのか、誰か教えてくれないかい?」

「結局、ヴェルトとこいつ、どういう関係なん?」

 

 なんも関係ねーよ。

 でも、何でだろうな。

 なんにも関係なくて、なんの事情も知らない奴から見れば、俺はそこまで殴られるほどムカつかれたのか?

 

「けっ、サイクロプスどもの家族のあり方にイラついてたのに……こんな野郎に家族云々で説教くらうとはよ……しかも、世界を壊しまくった魔王に、なんで言われなきゃならねーんだよ!」

 

 しかし、反撃の気すらおきねえ。

 体を起こしても、俺は反論する気も起きなかった。

 

「じゃあ……俺はどうすりゃ良かったっつーんだよ……パッパなんて言われても、肝心のマッマや他の奴らは誰も俺のことを知らねーってのに」

 

 みんなが俺を忘れているからこそ、俺は俺のやり方をやろうとした。

 でも、コスモスだけは俺に気づいた。コスモスだけが分かった。

 でも、たったそれだけのことで、こんなにブレちまうとは思わなかった。

 だが、そんな時だった。

 

 

「やだ……やだやだやだやだやだやだやだ」

 

 

 泣きじゃくったコスモスに異変が起こった。

 

「ッ!」

「おい、おい、コスモス! どうしたのだ? か、体が発光している!」

「ッ!? コスモス、落ち着いて、マッマはここよ! 泣き止んで!」

 

 まさかまた暴走か? コスモスの体が眩い緑色の光に包まれていく。

 

「な、こ、コスモス様!」

「なんだ、何が起こった!」

「まさか、また!」

 

 さっきの状況を誰もが頭をもう一度過ぎり、すかさず身構えた。

 だが、少し様子がおかしい。

 

 

「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ! イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 

 眩い光が強烈な光の柱となって天を突いた。

 その瞬間、コスモスの体がゆっくりと浮かび上がり、その瞳には見たこともない模様が浮かび上がった。

 その模様は、太陽のような八芒星に似た紋様だった。

 

「コスモス、そ、その目は!」

「……ま、まさか……コスモス、あなた、……それは、まさか! 『創造の紋章眼』!」

 

 エルエジェラが叫んだと同時に、コスモスは空高く舞い上がり、その光は余計に強さを増し、大気が大きく震えた。

 

「ど、どうな、コ、コスモス!」

「どあああ、どうなってんだ、おい、テメエが泣かすからだろうが!」

「俺だってどうなってんのか分かんねえよ!」

 

 俺たちの声が聞こえていないのか?

 コスモスの異変に俺たちはただ、叫ぶしかできなかった。

 そんな中、アルーシャが何かに気づいたかのように、呟いた。

 

「ちょっと待って……『紋章眼』ですって? エルジェラ皇女。コスモスちゃんの目に浮かび上がったあの紋様が……紋章眼の一種だというの?」

「ええ……一瞬でしたが……私の『お姉さま』と同じ紋様でした…………」

「そんな……じゃあ、あの子も兄さんと同じ……いえ、むしろ、あの子だからこそなのかも……」

 

 何の話だ? いや、紋章眼……どこかで聞いたことがあるような……

 

 

「おい、アルーシャ……どういうことだよ……なんなんだ、その中二みてーな目ん玉は!」

 

「ええ。神眼と呼ばれた紋章眼……それは、神族の末裔が住むと言われる、三大未開世界……深海世界、地底世界、そして天空世界……その種族と地上の種族、二つの力を受け継ぎしものは……何千億分の一、何百年に一人の確率でその瞳を覚醒させると言われているわ……何百年も昔、一人の深海族と結ばれたアークライン帝国の王……その遺伝子が何百年の時を経て受け継がれ、そして覚醒した……私の兄さんが持つ、『真理の紋章眼』と同じ!」

 

「ひはははは、パナいね~。あれが……タイラーたちの言ってた……神族の封印を解く、三つの鍵の一つなわけか……」

 

 

 嘘だろ……なんで、よりにもよってコスモスが……

 だが、それが事実であれ、勘違いであれ、コスモスの放つエネルギーは、それを納得させるほど大きく溢れ出ている。

 そして、ついにコスモスだけでなく、世界に異変が起こった。

 

「な、ど、どうなってんだ!」

「スモーキーアイランドが!」

「スモーキーアイランドに散らばる破片が……宙に!」

 

 スモーキーアイランドを覆う大量のゴミ。

 鉄板から難破船の破片に至るまでが次々と空へと舞い上がり、コスモスへと引き寄せられていく。

 

「HEY! What’s happened?」

「これはどうなっているゾウ!」

 

 お、おお、キシンやカーくんたち、スモーキーアイランドを舞台に暴れてた奴らも思わず声を上げて避難を始めてる。

 それだけこの状況は誰にとっても予想外。

 そして、俺たちがただ呆然と見上げる空では、次々と集まっていく破片が、徐々に何かを型どり始めた。

 それは、あまりにも巨大な人型の物質。

 

「うそ……でしょ……ジーゴク魔王国の城……ハンニャーラほどではないけれど……なんて巨大な!」

「パナ……え、えええ?」

 

 誰もがうまく言葉を発せない。

 何故なら、全世界が見捨てたゴミ溜めの島が、そのまま超巨大な人型へと変形したようなものだからだ。

 しかも、その人型っつうのもなんて言うか…………

 

「あの顔の形とか……なあ、マッキー……」

「いや、コスモスちゃんパネーとか思うよ? 思うけどさ……なんかに似てねえ?」

 

 それは、俺もあまり詳しいわけじゃないが、なんつうか、ロボットだった。

 このファンタジー世界には無縁すぎる、科学の世界というべきか。

 しかもただのロボットじゃねえ。

 

「なんか……ダンガムに似てねえ?」

「うん、パナイ巨大で歪だけど……」

「俺もあんま詳しくねえし。つか、なんでコスモスが知ってるんだ?」

 

 かつて、俺たちの世界で一つの時代を作り語り継がれていた伝説のロボットアニメ、機動戦人ダンガム!

 まさか、それをこの世界で見ることになるとは、誰が想像できた?

 

 

「この前、遊んでくれたオネーチャンがコスモスに教えてくれたの……だんがあむのこと……それと……」

 

 

 その時、巨大兵器の中から、コスモスの声が俺たちの頭の中に響くように聞こえた。

 

 

「もし、パッパと会えて、……でもイジワルされたら……懲らしめちゃえって……そして、こういうふうに言ってやれって………」

 

 

 お、おねーちゃん? 何のことだ? 誰だ?

 

 

「パッパ! コスモス………激おこぷんぷん丸なんだからね! てーやんでぇ、べらんめーだよ!」

 

 

 その言葉に、俺も、マッキーも、アルーシャも、そしてアルテアですら耳を疑っちまった。

 誰だ!? コスモスにこんなことを教えたのは! 

 誰だ!? コスモスにそんな廃れた死語みてーな言葉を教えたのは!

 だが、誰か分からないのに、なぜかこの時俺たちは全員、とある一人の女が頭の中に浮かんだ。

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